CPOT は「自己申告できない ICU 患者の疼痛」を見落とさない評価です
CPOT( Critical-Care Pain Observation Tool )は、挿管中・鎮静中・意識障害などで自己申告が難しい ICU 患者の疼痛を、表情・身体の動き・筋緊張・人工呼吸器との同調などの行動反応から評価する観察尺度です。
本記事では、CPOT の点数説明だけで終わらず、「いつ測るか」「何を見て判断するか」「どう記録するか」まで、リハ場面で迷わない形に整理します。
CPOT は「変化」を見る評価です
CPOT は、単発の点数ではなく、刺激や離床負荷によって“どう変化したか”を見る評価です。リハでは、端座位・体位変換・吸引・ROM などの刺激で反応が増えるか、負荷調整や休息で戻るかを確認します。
※スマホは横スクロールで確認できます。
| 領域 | 見るポイント | 増えやすい場面 | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 表情 | しかめ、硬さ、苦痛表情 | 起き上がり、吸引、離床 | 変化したタイミングを書く |
| 身体の動き | 抵抗、落ち着きのなさ | 移乗、ROM、体位変換 | 危険行動も添える |
| 筋緊張 | 抵抗感、緊張上昇 | ROM、ポジショニング | 増悪した動作を書く |
| 同調 / 発声 | 同調不良、うめき | 負荷増加時 | 呼吸苦との違いを残す |
CPOT は「安静→刺激中→介入後 5 分」で揃えます
測定タイミングが毎回違うと、CPOT の点数は比較できません。おすすめは「安静時」「刺激中」「介入後 5 分」の 3 点セットです。特に体位変換・吸引・端座位・立位では、刺激時の変化を見ると判断しやすくなります。
| タイミング | 目的 | 見る変化 | 次の判断 |
|---|---|---|---|
| 安静時 | 開始前の状態把握 | すでに高いか | 開始負荷を下げる |
| 刺激中 | 負荷への反応確認 | 急上昇、抵抗、同調不良 | 負荷を戻す |
| 介入後 5 分 | 回復確認 | 戻る / 戻らない | 次回条件を再設計 |
カットオフは「何点か」より「戻るか」で考えます
CPOT は 2 点以上で疼痛を疑う場面が多い一方、リハでは点数だけで中止を決めるとブレやすくなります。大切なのは、刺激で上がった反応が、休息・負荷調整・鎮痛で戻るかどうかです。
| 状況 | 解釈 | リハ判断 | 対応 |
|---|---|---|---|
| 刺激でも大きく上がらない | 疼痛反応は少ない | 継続 | 通常どおり実施 |
| 刺激で上がるが戻る | 一過性反応 | 条件付き継続 | 時間短縮、休息追加 |
| 上昇が続く | 負荷過多の可能性 | 注意 | 負荷を一段階戻す |
| 危険行動や同調不良あり | 安全優先 | 中止検討 | 安全確保して共有 |
カルテは「CPOT・根拠・対応・次回条件」で書きます
点数だけでは、次回担当者が判断できません。最低限、CPOT の推移、観察根拠、介入内容、負荷調整、次回条件まで残すと、チームで判断を揃えやすくなります。
| 項目 | 書く内容 | 例 |
|---|---|---|
| CPOT | 安静→刺激中→5 分後 | 0→3→1 |
| 根拠 | どこが変化したか | 端座位で表情硬さ増加 |
| 介入 | 負荷量 | 端座位 2 分実施 |
| 対応 | 調整内容 | 臥位休息で改善 |
| 次回条件 | 再開条件 | 次回は 1 分から開始 |
現場の詰まりどころ(よくある失敗)
CPOT は「点数だけ」で運用すると、離床判断や疼痛共有につながりません。測定タイミングと記録の型を揃えると、病棟全体で判断が安定します。
| 失敗 | 理由 | 対策 |
|---|---|---|
| 点数だけを書く | 次回判断に使えない | 変化した領域を書く |
| 測定タイミングが違う | 比較できない | 3 点セットを固定する |
| すぐ中止する | 戻し方が共有されていない | 時間短縮・休息を先に試す |
| せん妄と混同する | 疼痛を見落とす | 負荷と変化の関係で見る |
評価や記録の型が職場で揃わず、毎回判断に迷う場合は、学びやすい環境を整える視点も重要です。
PT キャリアガイドを見るよくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. CPOT は何点から疼痛を疑いますか?
A. 一般的には 2 点以上で疼痛を疑う場面が多いですが、リハでは「刺激で上がり、休息や調整で戻るか」という変化で解釈します。
Q2. CPOT が上がったらすぐ中止ですか?
A. まずは負荷を一段階戻します。時間短縮や休息で回復する場合は、条件付きで継続できることがあります。
Q3. せん妄と痛みはどう区別しますか?
A. 痛みは刺激で増え、調整で下がることがあります。変化の流れで見ると判断しやすくなります。
Q4. 深鎮静でも CPOT は使えますか?
A. 行動反応が出にくい場合は、CPOT 単独ではなく、循環反応や同調なども合わせて解釈します。
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参考文献
- Gélinas C, et al. Validation of the critical-care pain observation tool in adult patients. Am J Crit Care. 2006;15(4):420-427. DOI: 10.4037/AJCC2006.15.4.420
- Devlin JW, et al. Clinical practice guidelines for the prevention and management of pain, agitation/sedation, delirium, immobility, and sleep disruption in adult patients in the ICU. Crit Care Med. 2018;46(9):e825-e873. DOI: 10.1097/CCM.0000000000003299
- Society of Critical Care Medicine. PADIS Guidelines. SCCM
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


