肘関節の整形外科テスト一覧|4入口の鑑別フローと記録

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肘関節の整形外科テストは「4つの入口」から選ぶ

肘関節の整形外科テストは、すべてを順番に行うのではなく、外側痛・内側痛・外反ストレスでの内側痛・小指〜環指のしびれの4つから入口を決め、最初の1〜3テストへ絞ると整理しやすくなります。

この記事では、肘痛を評価するPT・OTなどの医療従事者向けに、症状別の最小セット、60秒の鑑別フロー、結果の読み方、記録例をまとめます。大切なのはテストの陽性・陰性だけではなく、いつもの症状がどこに、どの負荷で再現されたかを圧痛や神経所見とそろえて判断することです。

まずやる最小セット|外側・内側・外反・しびれで分ける

最初に決めるのは病名ではなく、症状の入口と最初に確認する1〜3項目です。特殊テストを増やす前に、痛み・しびれの場所と症状が再現する動作をそろえます。

※表は横スクロールできます(スマホOK)。

肘症状から選ぶ整形外科テストの最小セット
入口 先に確認 最初のテスト 結果を見るポイント
外側痛
握る・手首を伸ばすと痛い
外側上顆周囲の圧痛、把持時痛 抵抗性手関節伸展(Cozen系)
中指伸展テスト
普段の外側痛と同じ部位に再現するか
内側痛
掌屈・回内で痛い
内側上顆周囲の圧痛、しびれの有無 抵抗性手関節掌屈
抵抗性前腕回内
屈筋・回内筋への負荷で局所痛が再現するか
外反ストレスで内側痛
投球などで不安感
投球・体重支持との関連、クリック、不安感 Valgus stress
moving valgus stress
疼痛部位・疼痛角度・左右差・不安感を確認
小指〜環指のしびれ
肘屈曲で悪化
感覚、筋力、夜間症状、症状誘発姿勢 肘屈曲+尺骨神経圧迫
Tinel sign(肘部管)
普段のしびれが同じ分布に再現するか

テストを増やす前に|先に止めておきたい所見

特殊テストは診断を確定するために強い痛みを再現するものではありません。外傷後の明らかな変形・著明な腫脹、急激に進むしびれや筋力低下、強い安静時痛などがある場合は、疼痛誘発テストを重ねるより医師への共有や追加評価を優先します。

また、テスト中にしびれの範囲が広がる、強い不安感が出る、検査後も症状が増悪したまま残る場合は、その時点でいったん負荷を戻します。再現できた所見が得られた後に、確認目的で同じ刺激を何度も反復する必要はありません。

評価の順番|問診 → 圧痛 → 負荷 → 神経 → 不安定性

肘の評価では、特殊テストから始めるのではなく、症状が出る場所と条件を先に固定します。基本は、①問診 → ②圧痛 → ③抵抗運動などによる負荷 → ④神経所見 → ⑤必要時に不安定性テスト、の順で考えます。

  1. 問診:いつ、どこが、何をしたときに痛む・しびれるか
  2. 圧痛:患者が示す症状の場所と圧痛部位が一致するか
  3. 負荷:把持、手関節伸展、掌屈、回内などで普段の痛みが再現するか
  4. 神経:しびれ、感覚変化、筋力低下、肘屈曲との関連がないか
  5. 不安定性:投球や外反ストレスとの関連があればUCL系テストを追加する

外側痛があるだけで外側上顆炎、内側痛があるだけで内側上顆炎と決めず、普段の症状と検査所見が一致するかを次のテストへ進む基準にします。

肘痛の鑑別フロー|60秒で最初のテストを決める

迷ったときは、「外側痛・内側痛・外反ストレスでの内側痛・小指〜環指のしびれ」の4入口から症状を整理すると、必要なテストを絞りやすくなります。

肘関節の整形外科テストを4入口で選ぶ鑑別フロー図。外側痛、内側痛、外反で痛い、しびれから、Cozenテスト、中指伸展テスト、抵抗性手関節掌屈、抵抗性回内、Valgus stress、moving valgus stress、肘屈曲と尺骨神経圧迫、Tinelテストへ分岐し、記録で残す項目を示す
外側痛・内側痛・外反での内側痛・しびれの4入口から、最初に行うテストを絞ります。記録では症状の場所、再現動作、圧痛・神経症状、必要時の角度・時間・左右差を残します。

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肘痛・しびれの鑑別フロー
Step 確認すること YESの場合 NOの場合
1 小指〜環指尺側のしびれ、肘屈曲での増悪、夜間症状があるか 尺骨神経ルート Step 2へ
2 投球・体重支持などの外反ストレスで内側痛や不安感が出るか UCLルート Step 3へ
3 主症状は外側痛で、把持や手関節伸展などで再現するか 外側痛ルート Step 4へ
4 主症状は内側痛で、掌屈・前腕回内の抵抗で再現するか 内側痛ルート Step 5へ
5 首の運動や姿勢で上肢症状が変化する、近位からの放散があるか 頸椎要素を確認 局所所見を再整理し、必要に応じて評価範囲を広げる

肘だけで説明しにくいときは頸椎要素も確認する

  • 首の運動や姿勢で上肢症状が増減する
  • しびれや放散痛が肘より近位から続いている
  • 局所の圧痛・抵抗運動と、患者が訴える「いつもの症状」が一致しない

このような場合は肘の特殊テストを追加し続けるのではなく、症状が変化する姿勢・動作や神経学的所見まで評価範囲を広げます。

結果の読み方|陽性・陰性ではなく3点をそろえる

整形外科テストは、1つの陽性所見だけで病態を確定するのではなく、①症状の場所、②症状が再現する負荷、③圧痛・神経・不安定性所見が同じ仮説を支持するかで整理します。

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肘関節テストをカルテへまとめる3点
疑う状態 症状の場所 再現条件 記録例
外側上顆部の腱障害 外側上顆周囲〜近位前腕 把持、抵抗性手関節伸展など 抵抗性手関節伸展で右外側上顆部に普段と同じ疼痛を再現。圧痛部位と一致
内側上顆部の屈筋・回内筋由来症状 内側上顆周囲 抵抗性掌屈・前腕回内 抵抗性回内で右内側上顆周囲に局所痛を再現。尺骨神経症状なし
UCL関連症状 肘内側 外反ストレス、投球動作 moving valgus stressで肘内側に普段と同じ疼痛を再現。疼痛は約90°付近で最大
尺骨神経症状 環指尺側〜小指 肘屈曲保持、肘部管周囲の圧迫 肘屈曲+尺骨神経圧迫で右環指尺側〜小指の普段と同じしびれを再現。発症までの時間も記録

肘関節の整形外科テスト記録用PDF・Excel

初回評価と再評価で確認項目をそろえたい場合は、記録シートを使用できます。今回のv2では、外側痛・内側痛・外反ストレス・しびれの4入口から必要なテストを選び、症状の場所・再現条件・関連所見を同じ流れで記録できるように整理しています。

印刷して手書きする場合はPDF、施設や自分の運用に合わせて入力・編集したい場合はExcel原本を使用してください。

肘関節の整形外科テスト記録シートPDFを開く

Excel原本をダウンロードする

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外側痛|外側上顆部の腱障害を疑うテスト

外側痛では、テスト名よりも把持や手関節伸展で患者の普段の外側痛が再現し、圧痛部位と一致するかを確認します。単一テストだけで病態を確定しないことが重要です。

Cozen test|抵抗性手関節伸展

  • 見ること:抵抗性手関節伸展で外側上顆周囲の症状が再現するか
  • 陽性所見として残す内容:痛みの場所と、患者が普段感じる痛みとの一致
  • 再評価:肘・前腕・手関節の条件を毎回そろえる

Cozen testは外側上顆部の疼痛誘発に用いられますが、陽性だけで診断を固定せず、圧痛、把持時痛、ほかの抵抗運動との整合を確認します。

中指伸展テスト(Maudsley)

  • 見ること:中指伸展への抵抗で外側肘痛が再現するか
  • 使い方:外側痛の再現条件を増やす補助所見として扱う
  • 注意:前腕外側へ広く症状が出る場合は、局所の腱障害だけで説明しない

Mill test

  • 見ること:伸筋群を伸張したときに外側症状が再現するか
  • 位置づけ:抵抗性手関節伸展や圧痛所見を補う疼痛誘発テスト
  • 注意:強い疼痛を繰り返し誘発せず、必要最小限の負荷で確認する

内側痛|内側上顆部の屈筋・回内筋由来症状を疑う

内側痛では、抵抗性手関節掌屈や前腕回内で局所痛が再現するかを確認します。ただし、投球などの外反ストレスで増える痛みや、小指〜環指のしびれがある場合は、屈筋・回内筋だけで説明しないことが重要です。

  • 抵抗性手関節掌屈:内側上顆周囲に普段の痛みが再現するか
  • 抵抗性前腕回内:回内負荷で同じ内側痛が再現するか
  • UCLとの分岐:投球・外反ストレスとの関連、不安感、クリックを確認する
  • 尺骨神経との分岐:環指尺側〜小指のしびれ、感覚変化、筋力低下がないか確認する

外反ストレスでの内側痛|UCLを疑うテスト

投球などの外反ストレスで内側痛や不安感が出る場合は、UCL関連所見を確認します。疼痛誘発だけでなく、どの角度で、どの場所に、どの程度の不安感を伴って症状が出たかを記録します。

Valgus stress test

  • 見ること:外反ストレスによる内側痛、不安感、左右差
  • 記録:疼痛部位、左右差、終末感、不安感を分けて残す
  • 注意:強い恐怖感や鋭い疼痛が出た場合は反復しない

moving valgus stress test

  • 見ること:外反トルクを加えながら肘を屈曲位から伸展し、内側痛が再現する角度を確認する
  • 記録:疼痛開始角度、最大になる角度、疼痛部位
  • 注意:元の診断研究は内側肘痛を有するオーバーヘッドアスリートを中心とした集団であり、単独結果だけでUCL損傷を確定しない

原著では、UCL由来の内側痛が再現され、70〜120°付近の範囲で疼痛がみられることが陽性所見として検討されています。臨床では角度そのものだけでなく、患者の競技・動作と症状の一致を確認します。

Milking maneuver

  • 見ること:外反ストレスによる肘内側痛や不安感
  • 使い方:Valgus stressやmoving valgus stressを補う所見として使用する
  • 注意:単独陽性を診断確定として扱わない

小指〜環指のしびれ|肘部管での尺骨神経症状を疑う

尺骨神経症状では、Tinel signだけを見るのではなく、しびれの分布、肘屈曲との関連、感覚・筋力所見、圧迫による普段の症状の再現を組み合わせます。

Tinel sign(肘部管)

  • 見ること:肘部管周囲への刺激で環指尺側〜小指方向へ普段のしびれが再現するか
  • 記録:単なる局所痛ではなく、放散する症状の分布を残す
  • 注意:Tinel sign単独で肘部管症候群を確定しない

肘屈曲+尺骨神経圧迫

  • 見ること:肘屈曲位と肘部管周囲への圧迫で普段の尺骨神経症状が再現するか
  • 記録:症状の分布に加えて、発症までのおおよその時間を残す
  • 再評価:肘角度、圧迫条件、保持時間をできるだけそろえる

しびれが進行する、手内在筋などの筋力低下が疑われる、症状範囲が肘局所だけでは説明できない場合は、疼痛誘発テストを追加するより神経学的評価や医師との連携を優先します。

中止・中断の目安|強く再現することを目的にしない

特殊テストは「痛みを出せるか」を競う検査ではありません。患者の普段の症状が必要最小限の刺激で再現できたら、その所見を記録して次の評価へ進みます。

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肘関節の整形外科テストを中断して評価方針を切り替える目安
状況 対応 次に確認すること
しびれが広がる・強くなる 負荷や圧迫を解除する 感覚、筋力、症状分布、頸椎を含む神経学的評価
鋭い疼痛や強い不安感が出る ストレステストを中止する 外傷歴、不安定性、追加評価・連携の必要性
検査後も症状が増悪したまま残る 追加の疼痛誘発を避ける 評価負荷を下げ、得られた所見で仮説を整理する

よくある失敗と回避チェック

肘の整形外科テストで迷いやすいのは、テストの手順そのものより、陽性所見をどうまとめ、どこでテストを止めるかです。

よくある4つの失敗

  • 外側痛=テニス肘と固定する:症状の分布や神経所見を確認せず病名を決めない
  • 陽性/陰性だけ記録する:痛み・しびれの場所と再現条件まで残す
  • 同じ疼痛誘発テストを繰り返す:普段の症状が再現できたら追加刺激は最小限にする
  • 内側痛をすべて内側上顆炎として扱う:外反ストレスとの関連と尺骨神経症状を確認する

60秒チェック|迷ったらこの5項目へ戻る

  1. 患者に痛み・しびれの場所を指で示してもらう
  2. 何の動作・姿勢で症状が出るか確認する
  3. 圧痛や抵抗運動で「普段の症状」が再現するか確認する
  4. 内側痛では外反ストレスと尺骨神経症状を確認する
  5. カルテへ「部位+誘発条件+強さ+左右差+必要時は角度・時間」を残す

症例で確認|3パターンの組み立て方

症例1|握ると外側上顆周囲が痛い

状況:荷物を持つ、マウス操作などで肘外側に疼痛があり、しびれは認めない。

最初の評価:疼痛部位の確認 → 圧痛 → 抵抗性手関節伸展・中指伸展。

まとめ方:複数の負荷で外側上顆周囲に普段と同じ局所痛が再現し、圧痛部位も一致するなら、外側上顆部の腱障害を中心に仮説を立てます。一方、前腕へ広く症状が出る、しびれを伴う、頸部姿勢で変化する場合は評価範囲を広げます。

症例2|投球で内側が痛み、外反ストレスが怖い

状況:投球時の内側痛に加えて、クリックや不安感がある。

最初の評価:外傷歴・疼痛部位を確認 → Valgus stress → moving valgus stress。

まとめ方:抵抗性回内・掌屈だけでは説明しにくく、外反ストレスで普段の内側痛が再現する場合はUCL関連所見を確認します。記録では、疼痛部位と疼痛角度、不安感を残します。

症例3|夜間に小指〜環指がしびれる

状況:小指〜環指尺側のしびれがあり、夜間や肘屈曲位で悪化する。

最初の評価:感覚・筋力・症状分布を確認 → 肘屈曲+尺骨神経圧迫 → Tinel sign。

まとめ方:肘部管周囲で普段と同じ分布のしびれが再現するかを確認します。症状が進行する、筋力低下が疑われる、分布が局所所見と一致しない場合は、テストを増やすより神経学的評価や連携を優先します。

肘関節の整形外科テストでよくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。

Cozen testが陽性ならテニス肘で確定ですか?

1つのテストだけで確定とは考えません。外側上顆周囲の圧痛、把持や手関節伸展による普段の痛みの再現など、複数の所見が同じ仮説を支持するか確認します。

内側上顆炎とUCLの問題はどう分けますか?

掌屈・前腕回内への抵抗で局所痛が再現するかに加えて、投球などの外反ストレスとの関連を確認します。外反ストレスで普段の内側痛や不安感が再現する場合はUCL関連所見も評価します。

肘部管症候群はTinel signだけで判断できますか?

Tinel sign単独では判断しません。しびれの分布、肘屈曲との関連、感覚・筋力所見、尺骨神経圧迫で普段の症状が再現するかを組み合わせます。

テスト結果はカルテへ何を書けばよいですか?

「陽性/陰性」だけではなく、症状の部位、誘発した動作・姿勢、症状の強さ、左右差を基本にし、必要に応じて疼痛角度や症状出現までの時間を追加します。同じ条件で再評価できることが重要です。

次の一手


参考文献

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  2. Karanasios S, Korakakis V, Moutzouri M, Drakonaki E, Koci K, Pantazopoulou V, Tsepis E, Gioftsos G. Diagnostic accuracy of examination tests for lateral elbow tendinopathy (LET): a systematic review. J Hand Ther. 2022;35(4):541-551. DOI: 10.1016/j.jht.2021.02.002
  3. O’Driscoll SW, Lawton RL, Smith AM. The moving valgus stress test for medial collateral ligament tears of the elbow. Am J Sports Med. 2005;33(2):231-239. DOI: 10.1177/0363546504267804
  4. Novak CB, Lee GW, Mackinnon SE, Lay L. Provocative testing for cubital tunnel syndrome. J Hand Surg Am. 1994;19(5):817-820. DOI: 10.1016/0363-5023(94)90193-7

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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