【Lawtonの尺度】ロートンIADL評価【手段的日常生活動作】

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ADL・QOL 評価
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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

この記事は「Lawtonの尺度」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

      

IADL についてはリハビリテーション専門職、特に作業療法士であれば詳しいことかと思いますが、あまりよく知らない方もいらっしゃると思います。

  

IADL は手段的日常生活動作と呼ばれており、自分自身で自立した生活を送る上で欠かせない能力です。IADL を喪失してしまうと、認知症などの様々な病気を併発してしまう恐れがあるので、できる限り自分のことは自分で行うことが重要になります。

  

ADL と IADL で比較すると基本的には IADL の方がより難しい生活行為になります。そのため、順序的には IADL が維持できなくなると、やがて ADL も維持できなくなっていく、という流れになります。つまり、IADL を維持することが生活の質の維持・向上に繋がるため、IADL 能力を定期的に評価し、対策に繋げることが重要になります。

リハビリくん
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理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

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IADL(手段的日常生活動作)とは

IADL とは「Instrumental Activities of Daily Living」の略で、日本語では「手段的日常生活動作」と呼ばれます。ADL(Activities of Daily Living)が「食事」「排泄」「更衣」「移動」「入浴」など生活の基本的な動作であるのに対し、IADL はより複雑で高度な判断や認知機能を要する「応用的な日常生活動作」を指します。

具体的には、「買い物」「料理」「洗濯」「掃除」「金銭管理」「服薬管理」「電話の使用」「交通機関の利用」などが含まれます。これらは在宅生活を自立して送る上で不可欠な動作であり、ADL が自立していても、IADL に困難があれば社会参加や地域生活の維持が難しくなることがあります。

IADL は、年齢、性別、生活様式、居住環境などの個別要因に影響を受けるため、評価や支援には対象者の背景を十分に踏まえる必要があります。また、IADL には単なる身体機能の有無だけでなく、認知機能や意思決定能力、生活上の習慣や価値観なども深く関与しています。

そのため、リハビリテーションでは ADL の回復だけでなく、IADL の評価と支援も欠かせません。IADL の維持・向上は、QOL(生活の質)やその人らしい生活の継続につながるため、対象者の目標設定や在宅復帰の可否を判断する上でも重要な指標となります。

IADL評価尺度の種類

手段的日常生活動作(IADL)の評価尺度は今日までにさまざまな指標が開発されています。代表的なものについて、いくつかご紹介します。

  • Lawton(ロートン)の尺度
  • 老研式活動能力指標
  • JST 版活動能力指標
  • DASC-21
  • Frenchay Activities Index(FAI)

本邦では上記の 5 種類の IADL 評価法が一般的に使用されています。こちらの記事では「Lawton(ロートン)の尺度」について詳しく解説していきます。

Lawton(ロートン)の尺度とは

Lawton(ロートン)の尺度は、1969 年に Lawton と Brody らによって開発された、手段的日常生活動作(IADL)を評価するためのスクリーニングツールです。別名「IADL 尺度」とも呼ばれ、高齢者の自立度や在宅生活能力を客観的に把握するために広く使用されています。

この尺度は、IADL に関する複数の項目について、対象者がどの程度自立して実行できるかを評価するものです。各項目には具体的な動作内容と複数の選択肢が提示されており、実際の能力に最も近い選択肢を選ぶことで得点が決定されます。総得点が高いほど、自立度が高いと判断されます。

特徴的なのは、性別によって評価項目が異なる点です。伝統的な生活役割を反映しており、男性は 5 項目(電話の使用、交通機関の利用、買い物、金銭管理、服薬管理)、女性は 8 項目(上記 5 項目に加えて、調理、掃除、洗濯)が評価対象となっています。なお、近年では性別にかかわらず 8 項目を評価することも推奨される場面が増えており、柔軟な運用が求められます。

Lawton の尺度は、在宅復帰の可否判断、介護サービスの必要度の把握、認知症や加齢による生活能力低下のスクリーニングなど、さまざまな場面で活用されています。また、IADL は身体機能のみならず認知機能にも影響を受けるため、認知症の早期発見や経過観察にも有効な指標となります。

Lawtonの尺度 評価項目

Lawton(ロートン)の尺度の評価項目は、以下の 8 つの項目から構成されています。

  • 電話の使用
  • 買い物
  • 食事の準備
  • 家事
  • 洗濯
  • 交通機関の利用
  • 服薬管理
  • 財産の取り扱い

評価対象が男性の場合には「食事の準備」「家事」「洗濯」の 3 項目については評価対象外となります。

Lawtonの尺度 評価方法

Lawtonの尺度の評価方法について、項目ごとにわかりやすく説明していきます。

電話を使用する能力

電話を使用する能力を評価する項目になります。1 ~ 4 の選択肢のうち適切なものを選択します。

  1. 自分から電話をかける(電話帳を調べる、ダイアル番号を回すなど)
  2. 2 ~ 3 種類程度のよく知っている番号をかける
  3. 電話に出るが自分からかけることはない
  4. 全く電話を使用しない

選択肢 1 ~ 3 のいずれかに該当する場合は男女ともに 1 点となります。「4.全く電話をしない」場合のみ 0 点となります。

買い物

買い物をする能力を評価する項目になります。1 ~ 4 の選択肢のうち適切なものを選択します。

  1. すべての買い物は自分で行う
  2. 少額の買い物は自分で行える
  3. 買い物に行くときはいつも付き添いが必要
  4. 全く買い物はできない

自分だけで全ての買い物を行うことができる場合のみ 1 点となります。選択肢 2 ~ 4 の中でも能力差はありますが、選択肢 2 ~ 4 に該当する場合には 0 点となります。

食事の準備

食事の準備をする能力を評価する項目になります。1 ~ 4 の選択肢のうち適切なものを選択します。男性の場合は除外項目となり、女性のみ判定を行います。

  1. 適切な食事を自分で計画し準備し給仕する
  2. 材料が供与されれば適切な食事を準備する
  3. 準備された食事を温めて給仕する、あるいは食事を準備するが適切な食事内容を維持しない
  4. 食事の準備と給仕をしてもらう必要がある

食事内容の計画と準備、給仕が全て自分だけで実施できる場合のみ 1 点となります。選択肢 2 ~ 4 に該当する場合には 0 点となります。

家事

家事を行う能力を評価する項目になります。1 ~ 5 の選択肢のうち適切なものを選択します。男性の場合は除外項目となり、女性のみ判定を行います。

  1. 家事を 1 人でこなす、あるいは時に手助けを要する(例:重労働など)
  2. 皿洗いやベッドの支度などの日常的仕事はできる
  3. 簡単な日常的仕事はできるが、妥当な清潔さの基準を保てない
  4. すべての家事に手助けを必要とする
  5. すべての家事にかかわらない

選択肢 1 ~ 4 では家事の実施能力に差がありますが、少しでも家事に携わっているようであれば 1 点となります。「5.全ての家事に関わらない」に該当する場合のみ 0 点となります。

洗濯

洗濯に関係する能力を評価する項目になります。1 ~ 3 の選択肢のうち適切なものを選択します。男性の場合は除外項目となり、女性のみ判定を行います。

  1. 自分の洗濯は完全に行う
  2. ソックス、靴下のすすぎなど簡単な洗濯をする
  3. すべてを他人にしてもらわなければならない

簡単な洗濯であっても日常的に洗濯に携わっているようであれば 1 点となります。「3.全てを他人にしてもらわなければならない」に該当する場合のみ 0 点となります。

移送の形式

近場の屋外移動ではなく、自家用車や公共交通機関を利用する必要がある場合の移動能力を評価する項目になります。1 ~ 5 の選択肢のうち適切なものを選択します。

  1. 自分で公的機関を利用して旅行したり自家用車を運転する
  2. タクシーを利用して旅行するが、その他の公的輸送機関は利用しない
  3. 付き添いがいたり皆と一緒なら公的輸送機関で旅行する
  4. 付き添いか皆と一緒で、タクシーか自家用車に限り旅行する
  5. 全く旅行しない

1 点と判定する条件をまとめると「自分で自家用車を運転する」「自分だけでタクシーを利用できる」「自分だけでバスや電車に乗ることができる」「付き添いがいたり、集団であればバスや電車に乗れる」以上のいずれか該当する場合となります。

一方、0 点と判定する条件は「自分で自家用車を運転することはできない」「1 人ではタクシーに乗ることができない」「付き添いがいたり、集団であってもバスや電車には乗れない」「そもそも旅行に行かない」となります。

自分の服薬管理

服薬管理に関係する能力を評価する項目になります。1 ~ 3 の選択肢のうち適切なものを選択します。

  1. 正しいときに正しい量の薬を飲むことに責任がもてる
  2. あらかじめ薬が分けて準備されていれば飲むことができる
  3. 自分の薬を管理できない

 薬の仕分けを含めて自分だけで薬の管理ができる場合に 1 点となります。自分で薬を袋から開けて飲むことができたとしても、薬の仕分けなどの管理ができていなければ 0 点となります。

財産取り扱い能力

財産取り扱い能力を評価する項目になります。1 ~ 3 の選択肢のうち適切なものを選択します。

  1. 経済的問題を自分で管理して(予算、小切手書き、掛金支払い、銀行へ行く)一連の収入を得て、維持する
  2. 日々の小銭は管理するが、預金や大金などでは手助けを必要とする
  3. 金銭の取り扱いができない

 財団管理について、銀行での手続き、各種支払い等を自分だけで管理ができる場合に 1 点となります。何かしら財産管理に対して手助けを受けている場合には 0 点となります。

Lawtonの尺度 評価用紙

Lawton(ロートン)の尺度の評価用紙、評価表は以下の通りになります。

評価用紙のダウンロードが必要な方はこちらからどうぞ☺

カットオフ値、結果の解釈

Lawton(ロートン)の尺度は、手段的日常生活動作(IADL)を評価する代表的なツールであり、対象者の生活自立度や在宅生活能力を把握するために用いられます。本尺度は 8 項目(もしくは 5 項目)から構成され、それぞれの項目について 0 点または 1 点で採点されます。

採点とスコアの意味

  • 最高得点:8点(女性)/5点(男性)
  • 最低得点:0点(性別共通)

得点が高いほど、IADL の自立度が高いと判断されます。ただし、カットオフ値(基準値)は厳密には定められておらず、個別の文脈や目的によって解釈が必要です。そのため、単に数値を比較するのではなく、評価項目の中身に着目することが重要です。

項目の解釈に注意が必要な理由

Lawton 尺度の各項目では、一定の基準を満たさなければ 1 点とはなりません。たとえば「買い物」の項目では、「すべての買い物を自分で行える場合」のみが 1 点とされます。一方で「少額の買い物は可能」といったケースや、「まったく行えない」といった場合はいずれも 0 点となるため、得点が同じでも実際の生活能力には大きな差があることがあります。

このように、得点だけでなく、各下位項目の遂行内容を丁寧に確認することが、臨床評価者に求められる視点です。

評価の難しさと限界

Lawton 尺度は IADL の中でも比較的難易度の高い動作を扱うため、病院や施設に入所中の高齢者ではスコアが自然と低くなる傾向があります。また、評価項目には判断力や記憶力が必要とされるため、認知機能障害や高次脳機能障害がある対象者に対しては、正確な評価が困難になることもあります。

さらに、評価は基本的に自己申告式で行われるため、本人の認識の偏りにより、過大評価や過少評価が起こる可能性もあります。特に認知症や軽度認知障害がある場合は、家族や介護者からの補足情報も含めて総合的に判断することが大切です。

性別による項目差と現代的な見直し

従来の Lawton 尺度では、男性は 5 項目、女性は 8 項目で構成されており、家事関連の項目(調理、掃除、洗濯)が男性には含まれません。しかし、現代では男女問わず家事を担うことが一般的となっており、性別で評価項目を分けることが不十分とされる場面も増えています。

そのため、近年では性別にかかわらず全 8 項目を評価する運用も多く見られ、より実態に即した柔軟な運用が求められています。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

Lawton の尺度は、IADL の具体的な動作を通して高齢者の自立度を把握するシンプルかつ有効なツールです。リハビリテーションや在宅支援の現場において、対象者の生活全体を見渡した包括的な評価を行うために、非常に有用な手段の一つといえます。

こちらの記事を読むことで Lawton の尺度についての理解が深まり、臨床における IADL 評価の一助へとなれば幸いです。

参考文献

  1. 町田綾子,鳥羽研二,櫻井孝,鷲見幸彦.手段的日常生活動作を用いた軽度認知症スクリーニング項目の検討.日老医誌 .2013,50,p266-267.
  2. 角徳文.ADL・IADLの評価尺度.総合リハビリテーション.2017,45巻,8号,p853-855.
  3. 溝部聡士.IADLのアセスメントツールと使い方.リハビリナース.12(2),p127-133,2019.
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