FES-Iの評価方法|採点・解釈・Short版と自動計算

評価
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FES-Iとは?(何がわかる尺度か)

結論:FES-Iは、日常活動ごとの「転倒への不安」を点数化し、どの場面で回避が起きているかを見つける尺度です。合計点だけでなく、高不安の項目を拾って介入へつなぐと価値が出ます。本記事は、FES-Iを臨床でどのように実施し、解釈し、記録して次の一手へ落とすかを1ページで整理した実務ガイドです。

このページで答えるのは、FES-Iのやり方・解釈・Short版の使い分け・記録の型です。ABCやMFESとの詳しい比較は別記事に任せ、このページでは「FES-I単独運用で迷わないこと」に絞ります。転倒歴がある、屋外活動が減った、家族が止めがち、自信低下で行動が縮んでいるケースで、身体機能テストだけでは拾いにくい回避行動を見える化したいときに向きます。

評価の型は、個人の努力だけで安定するとは限りません。今の職場で教育体制がない、相談相手がいない、教材に触れにくい、見本となる先輩が少ないと感じる場合は、学び方と環境の整え方を先に整理しておくと動きやすくなります。

評価は「実施→記録→解釈→次の介入」までつながって初めて回ります。

学び方や相談しやすい環境を先に整えると、FES-Iのような主観尺度もブレにくくなります。

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FES-Iは合計点、高不安項目、次の一手まで見ることを示した図版
FES-Iは「合計点」「高不安項目」「次の一手」をセットで見ると、介入へつなげやすくなります。

5分で回す運用フロー(実施→記録→次の一手)

FES-Iは、採点よりも高不安項目を介入へ翻訳する使い方が重要です。最初に歩行自立度・転倒歴・屋外頻度などの前提をそろえ、次に高不安項目を具体的な場面へ落とす流れに固定すると、チーム内での解釈のブレが減ります。

下の手順をテンプレートとして固定し、初回評価と再評価で同じ順番を使ってください。スマートフォンでは表を横にスクロールして確認できます。

FES-Iを5分で運用する手順(成人・高齢者の臨床用)
手順 実施内容 記録の要点
① 前提をそろえる 歩行補助具、屋外頻度、直近6〜12か月の転倒やヒヤリを確認する 転倒の有無だけでなく、回避行動の有無を併記する
② 実施する 転倒への不安に焦点を当て、各項目を4段階で回答する 自記または聞き取りの実施形態を記録する
③ 採点する 合計点と3〜4点の項目を抽出する 合計点だけで終えず、高不安項目を列挙する
④ 場面へ翻訳する 高不安項目を「場面・要因・代替手段」に分ける 段差、照明、手すりなどの環境要因も確認する
⑤ 介入へつなげる 環境調整、介助下練習、安全環境での単独実施、実生活への一般化と段階づける 成功体験を週単位で設計し、再評価時期を決める

実施と採点(FES-Iのやり方)

FES-Iは16項目を1〜4点で回答し、合計16〜64点で転倒不安の強さを把握します。運用のコツは、最初に質問の焦点を「転倒への不安」にそろえ、回答者が身体的な難しさや疲労だけで答えないようにすることです。

短時間で確認したい場面では、7項目のShort FES-Iも選択肢になります。ただし、初回と再評価で異なる版を使用すると得点を直接比較できないため、縦断比較では同じ版を継続してください。

合計点を算出した後は、3〜4点を付けた高不安項目を残します。どの場面を避けているかが分かると、環境調整や段階的な練習へつなげやすくなります。

FES-IとShort FES-Iの早見表
項目数 得点範囲 向いている場面 注意点
FES-I 16項目 16〜64点 不安のある場面を詳しく確認し、介入設計へつなげたい場合 合計点に加えて高不安項目を確認する
Short FES-I 7項目 7〜28点 短時間で転倒不安をスクリーニングしたい場合 16項目版と混在させて経時比較しない
  • 説明:転倒への不安に焦点を当てて回答してもらいます。
  • 採点:各項目を1〜4点で単純加算し、合計点と3〜4点の項目を記録します。
  • 実施形態:自記が難しい場合は聞き取りで実施できますが、再評価でも同じ方法を使います。
  • 欠測対応:FES-Iは4項目以下、Short FES-Iは2項目以下の欠測であれば、回答済み項目の平均を使って補正します。上限を超える場合は合計点を比較対象にしません。
  • 未経験の活動:無理に推定させず、回答できない理由と未経験の背景を記録します。

カットオフと解釈(地域在住高齢者の目安)

地域在住高齢者では、FES-Iの合計点を16〜19点、20〜27点、28〜64点に分ける目安があります。ただし、この区分だけで転倒リスクや介入内容を決定することはできません。

合計点と併せて、何が怖いのか、どの活動を避けているのか、身体機能や環境と不安が一致しているかを確認します。施設入所者、脳卒中後、パーキンソン病などでは得点分布や意味合いが変わるため、対象集団と歩行自立度を明記して縦断比較してください。

FES-Iの解釈目安(地域在住高齢者)
合計点 転倒不安の目安 次に確認すること
16〜19点 低い 活動制限が少ないか、屋外頻度と生活範囲で確認する
20〜27点 中等度 3〜4点の項目を抽出し、屋内、屋外、段差などの場面に分ける
28〜64点 高い 閉じこもりや廃用の可能性を考え、環境調整と段階的な成功体験を設計する
不安が高いことと、身体的な危険性が高いことは同じではありません

身体機能が保たれていても過去の転倒経験から活動を避けている場合があります。反対に、不安が低くても身体機能や環境面の転倒リスクが高い場合があります。FES-Iは身体機能評価、転倒歴、生活範囲、環境評価と組み合わせて解釈してください。

併用と目標設定(実装テンプレート)

FES-Iは、身体機能・環境・実際の行動と並べて使うことで介入へつながります。身体機能テストで安全に実施できる範囲を確認し、FES-Iで避けている場面を特定すると、練習や環境調整の優先順位が明確になります。

  1. 身体機能を把握する:静的・動的バランス、歩行、反応性などを評価し、身体的にどこまで安全に動けるかを整理します。
  2. 高不安項目を抽出する:3〜4点の項目を、いつ・どこで生じる不安かという具体的な場面へ落とします。
  3. 要因を分解する:疼痛、めまい、視覚、疲労、注意配分、過去の転倒経験、段差、照明、手すりなどを確認します。
  4. 介入を段階づける:環境調整、介助下練習、安全環境での単独実施、実生活への一般化の順に進めます。

カルテ記録の型(そのまま使える例)

FES-Iは、合計点、高不安項目、解釈、次の介入をセットで記録します。点数だけを残すと、再評価時に何が改善したか判断できません。高不安項目と介入仮説を短く添えることで、次回の評価や多職種共有が速くなります。

FES-Iのカルテ記録テンプレート
項目 記録する内容 記録例
所見 使用版、合計点、高不安項目 FES-I 29/64点。高不安項目は段差、屋外移動、入浴。
解釈 身体能力と活動回避の関係 身体機能は保たれているが、屋外活動の回避が強く生活範囲が縮小している。
方針 環境調整、練習内容、再評価時期 手すりと照明を確認し、介助下で段差練習を開始する。2〜4週後に再評価する。

FES-I自動計算ツール

FES-I 16項目またはShort FES-I 7項目の得点を入力すると、合計点、欠測補正、高不安項目、記録文を自動表示します。使用する版を選択してから、正規用紙を確認しながら各項目の得点を入力してください。

FES-Iでは欠測4項目以下、Short FES-Iでは欠測2項目以下の場合に、回答済み項目の平均を使った補正合計を算出します。補正可能な上限を超えた場合は合計点を表示しません。

自動計算ツールの使い方
  1. FES-IまたはShort FES-Iを選択します。
  2. 正規用紙を確認し、各項目を1〜4点で入力します。
  3. 合計点、欠測数、3〜4点の高不安項目を確認します。
  4. 歩行条件、転倒歴、回避行動などを補足欄へ入力します。
  5. 生成された記録文へ、具体的な介入と再評価時期を追加します。
FES-I自動計算ツールを別画面で開く

記事内で操作しにくい場合や、入力画面を大きく表示したい場合に使用してください。

設問本文は正規用紙で確認してください

自動計算ツールには、尺度の設問本文を掲載していません。使用中の正規用紙と照合して入力してください。計算結果だけで転倒リスクや活動可否を決定せず、身体機能、転倒歴、生活範囲、環境、本人の希望を合わせて判断します。

FES-I記録用紙ダウンロード

FES-Iの合計点、高不安項目、次の一手を1枚で記録できるA4用紙を用意しています。自動計算ツールで採点を確認し、具体的な回避場面、介入方針、再評価時期を記録用紙へ残すと運用しやすくなります。

FES-I記録用紙(A4・PDF)

FES-I記録用紙PDFを開く

記録用紙のプレビューを表示する

PDFを表示できない場合は、FES-I記録用紙PDFを開いてください

FES-Iでよくあるミス

FES-Iの結果を身体的な転倒危険性と同一視したり、合計点だけで評価を終えたりすると介入がずれます。不安、身体能力、実際の活動、環境を分けて記録することが重要です。

スマートフォンでは表を横にスクロールして確認してください。

FES-Iでよくあるミスと対策
よくあるミス 起こる問題 対策 記録ポイント
不安が高いことを危険性が高いと判断する 心理的な不安と身体的な転倒リスクが混同される 転倒歴、身体機能、環境を併記して総合判断する 身体的な安全域と行動上の回避を分けて書く
合計点だけで評価を終える 介入する場面が明確にならない 3〜4点の高不安項目を抽出する 高不安項目を2〜3項目まで記録する
Short版と16項目版を混在させる 前回との得点比較ができなくなる 縦断比較では同じ版を継続する FES-IまたはShort FES-Iの版名を明記する
欠測をそのまま合計する 本来の得点範囲と異なる結果になる 欠測数を確認し、補正可能か先に判断する 欠測理由、欠測数、補正の有無を残す
理解や注意への配慮が不足する 質問の焦点がずれ、回答が不安定になる 説明を統一し、必要に応じて聞き取りで補助する 自記または聞き取りの実施形態を記録する

現場の詰まりどころと解決方法

転倒への不安には、身体機能だけでなく環境、家族の対応、過去の転倒経験、成功体験の不足が関係します。合計点が高い理由を本人の能力低下だけに求めず、生活場面と支援方法を確認してください。

先に確認:よくあるミス5分で回す運用フロー
関連:歩行・バランス評価ハブ

FES-I運用で詰まりやすい場面と次の一手
詰まりやすい場面 起こっていること 整理の方法 次の一手
高得点だが転倒歴は少ない 活動を避けているため転倒していない可能性がある 屋外頻度、活動量、生活範囲を併せて確認する 安全な環境で成功体験を段階的に設計する
本人と家族の印象が一致しない 本人の遠慮や家族による過剰な制限が影響している どの場面で、何を怖いと感じるかを具体化する 家族へ、活動を止める以外の支援方法を提示する
環境要因が点数に埋もれる 段差や照明不足が本人の能力低下として扱われる 評価と環境確認をセットで実施する 環境調整後に同じ版で再評価する
版と採点ルールが統一されていない 担当者ごとに異なる方法で評価される 説明方法、使用版、欠測対応をチーム内で共有する 記録欄に版名と実施形態を固定して残す

FES-Iについてよくある質問

各質問をタップすると回答が開きます。

高得点なのに転倒歴が少ないのはなぜですか?

転倒への不安から難しい活動や屋外移動を避け、結果として転倒していない可能性があります。この場合は転倒歴だけでなく、屋外頻度、活動量、生活範囲の縮小を併せて評価してください。

ABCやMFESとはどのように使い分けますか?

FES-Iは転倒への不安を確認する尺度です。ABCは活動を安全に行える自信、MFESは転倒せずに活動できる自信を確認する性格があり、評価する方向が少し異なります。詳しくはFES-I・ABC・MFESの比較を確認してください。

欠測がある場合はどう扱いますか?

FES-Iは4項目以下、Short FES-Iは2項目以下の欠測であれば、回答済み項目の平均を用いて補正できます。上限を超える場合は合計点を比較対象にしません。欠測理由、欠測数、補正の有無を記録してください。

自動計算ツールと記録用紙はどのように使い分けますか?

自動計算ツールは、合計点、欠測補正、高不安項目を確認するときに向いています。記録用紙は、回避場面、環境要因、介入方針、再評価時期まで残すときに使用します。採点は自動計算ツール、臨床判断と共有は記録用紙という使い分けができます。

Short FES-Iにも16項目版と同じ区分を使えますか?

16項目版の16〜19点、20〜27点、28〜64点という区分をShort FES-Iへそのまま適用することはできません。Short FES-Iは7〜28点の範囲で評価し、同じ版での経時変化と高不安項目を中心に解釈してください。

再評価では何をそろえればよいですか?

使用する版、実施形態、補助具、生活環境、活動経験をできるだけそろえます。初回がFES-Iであれば再評価もFES-I、初回が聞き取りであれば再評価も聞き取りで実施し、条件が変わった場合は記録してください。

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参考文献

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  2. Kempen GIJM, Yardley L, van Haastregt JCM, Zijlstra GAR, Beyer N, Hauer K, Todd C. The Short FES-I: a shortened version of the Falls Efficacy Scale-International to assess fear of falling. Age Ageing. 2008;37(1):45-50. doi:10.1093/ageing/afm157. PubMed
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  6. University of Manchester. FES-I and Short FES-I official site. Web

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハビリテーションの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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