PASSとは?評価方法・採点・記録のポイント

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PASSは「脳卒中後の姿勢コントロール」を12項目で評価する尺度です

PASS(Postural Assessment Scale for Stroke Patients)は、脳卒中後の臥位・座位・立位における姿勢コントロールを評価する尺度です。姿勢を保つ能力と、姿勢を変える能力を含めて確認し、12項目・各0〜3点・合計0〜36点で整理します。

PASSで大切なのは、合計点だけを見ることではありません。どの姿勢保持・姿勢変換で止まったか評価条件が前回と同じか次に何を練習するかまで記録すると、介入方針やカンファレンスに活かしやすくなります。この記事では、PASSの目的、評価方法、採点、記録の注意点、他尺度との使い分け、PDF記録補助シートまで臨床向けに整理します。

PASSの全体像。脳卒中後の姿勢コントロールを12項目・0〜36点で評価し、姿勢保持と姿勢変換を整理する図

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PASSの要点
項目 内容
目的 脳卒中後の姿勢保持・姿勢変換を評価し、姿勢コントロールの回復を追う。
構成 12項目。姿勢を保つ課題と、姿勢を変える課題で構成される。
採点 各項目0〜3点。合計0〜36点。
向く時期 急性期〜回復期前半など、臥位・座位・立位の土台を見たい時期。
注意点 装具、杖、履物、ベッド高、声かけなどの条件固定が重要。

PASSで何がわかるか

PASSは、歩行評価やADL評価だけでは見えにくい姿勢コントロールの準備段階を確認する評価です。臥位から座位、座位から立位へ進む過程で、どこで安定しにくいか、どの課題で介助や見守りが必要かを整理しやすい特徴があります。

特に、急性期〜回復期前半の脳卒中患者では、歩行練習の前に「起き上がれるか」「端座位を保てるか」「立位へ移れるか」が重要になります。PASSは、その土台を数値化し、経時変化を追いやすくするための尺度です。

PASSで見やすいこと・見にくいこと
観点 PASSが得意 PASSだけでは不足しやすい
姿勢保持 臥位、座位、立位で姿勢を保つ力。 高難度の動的バランスや二重課題。
姿勢変換 寝返り、起き上がり、立ち上がりなどの土台。 屋外歩行、方向転換、複雑な環境適応。
経時変化 急性期〜回復期前半の回復過程。 生活期の活動量や参加レベル。

PASSが向いている場面・向いていない場面

PASSは、すべての時期で主役になる評価ではありません。臥位・座位・立位の姿勢制御を確認したい時期には有用ですが、歩行や屋外活動が主な課題になってきたら、BBS、Mini-BESTest、FGAなどへ評価の主役を移すことも検討します。

PASSが向く場面/向かない場面
観点 PASSが向く PASSだけでは不足
フェーズ 急性期〜回復期前半。ベッドサイド中心の時期。 回復期後半〜生活期。歩行・屋外・二重課題が主になる時期。
意思決定 起き上がり、端座位、立ち上がりの安全性や介助量を見たい場面。 転倒リスクの精査、歩行の質、生活場面のバランス評価。
臨床での強み 「姿勢の土台が整ってきたか」を追いやすい。 高次のバランス戦略、環境変化への適応、活動参加。

PASSの評価方法|まず条件固定をそろえる

PASSの点数は、評価条件が変わると比較しにくくなります。毎回、装具、杖、履物、ベッド高、足底接地、支持物、声かけ、見守り位置をそろえて評価することが重要です。

公式の評価用紙や採点基準は、配布元の資料に沿って確認します。この記事内では、公式項目の全文転載ではなく、臨床で記録・運用するときの考え方を整理します。

SRALab:PASS概要と入手先

PASS実施前に固定したい条件
項目 固定する内容 記録ポイント
環境 ベッド高、足底接地、支持物、見守り位置。 ベッド高や足底条件を短く記録する。
装具・杖・履物 短下肢装具、杖、靴、素足などの条件。 前回と違う場合は条件変更として残す。
声かけ 原文に近い言い回しで統一する。 評価者による誘導差を減らす。
補助 安全確保は行うが、姿勢保持を助ける物理的補助は混ぜない。 中止理由や介助が入った場面を明記する。

PASSの採点|合計点より停滞項目を見る

PASSは各項目0〜3点、合計0〜36点で採点します。合計点は経時比較に便利ですが、臨床でより重要なのは、どの項目で止まっているかです。

たとえば、寝返りは改善しているのに端座位や立位で停滞している場合、体幹の支持性、荷重移動、注意障害、lateropulsionなど、介入仮説が変わります。PASSは、合計点だけでなく停滞項目を1〜2個に絞って記録すると、次の一手につながりやすくなります。

PASS採点後に見るポイント
見る順番 確認すること 次の一手
1. 条件 装具、杖、履物、ベッド高、足底接地が前回と同じか。 条件が違えば、条件変更後の基準として記録する。
2. 合計点 前回から何点変化したか。 変化量を確認し、改善・停滞・低下を整理する。
3. 停滞項目 どの姿勢保持・姿勢変換で止まっているか。 介入課題を1〜2個に絞る。
4. 破綻パターン 後方へ崩れる、側方へ崩れる、支持が外れないなど。 カンファレンスや申し送りに使える所見にする。

PASSの解釈|変化量・カットオフの考え方

PASSの解釈では、まず評価条件をそろえたうえで、変化量と停滞項目を確認します。装具や杖、履物、ベッド高などが変わった日は、そのまま前回と比較せず、条件変更後のベースラインとして扱う方が安全です。

変化量の目安として、サブアキュート期の脳卒中患者で、PASSのMIDが3.0点と報告されています。また、アンカーの種類により、3.5〜4.5点が臨床的に意味のある変化として提案されています。実務では、3点以上の変化をひとつの目安にしつつ、停滞項目や評価条件と合わせて解釈します。

PASSの読み方
観点 確認すること 臨床での扱い
条件固定 評価条件が前回と同じか。 条件が違う場合は、単純比較を避ける。
変化量 3点以上の変化があるか。 意味のある変化の可能性として、所見と合わせて読む。
停滞項目 どの姿勢保持・姿勢変換で止まっているか。 介入課題を絞り、次回評価で追う。

PASS記録補助シート(PDF)

PASSは、点数だけでなく、条件固定・前回比較・停滞項目・破綻パターンまで残すと運用しやすくなります。病棟やカンファレンスで使いやすいように、A4印刷用のPASS記録補助シートを用意しています。

注意:このPDFは、臨床記録を補助するための自作シートです。公式評価用紙や認定教材の代替ではありません。正式な採点は、配布元資料や施設の運用ルールに沿って行ってください。


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PASSと関連スケールの使い分け

PASSは、姿勢保持と姿勢変換を含めて評価できる点が強みです。一方で、歩行や生活場面のバランスを詳しく見るには、別の評価を組み合わせる必要があります。

PASSと関連スケールの使い分け
スケール 主に見るもの 使いやすい場面
PASS 臥位・座位・立位における姿勢保持と姿勢変換。 急性期〜回復期前半の姿勢制御を追いたい場面。
TCT 寝返り、起き上がり、端座位保持を含む体幹機能。 ベッドサイドで短時間に体幹機能を確認したい場面。
FACT 体幹機能の実用的な側面。 座位や体幹機能を臨床的に整理したい場面。
TIS 静的・動的座位バランス、協調性。 体幹機能を下位項目で詳しく追いたい場面。
BBS 立位バランス。 立位・歩行フェーズのバランス評価。
FGA 歩行中の動的バランス。 歩行能力や生活場面の課題を確認したい場面。

PASSでよくある失敗

PASSは、評価条件のズレや介助の混入があると、点数の意味が変わりやすい評価です。特に、装具・杖・履物の条件、声かけ、物理的補助の扱いは、チームでルールをそろえる必要があります。

PASSで起こりやすい失敗と回避策
失敗 起こる理由 回避策
評価条件が毎回違う 装具、杖、履物、ベッド高などが統一されていない。 条件固定欄を作り、前回と違う場合は必ず記録する。
声かけが評価者ごとに違う 誘導の差が点数に影響する。 原文に近い声かけを短く統一する。
安全確保のつもりで支える 物理的補助が入ると点数の意味が変わる。 見守り位置を固定し、補助が入った場合は記録する。
合計点だけで判断する どの姿勢課題で止まっているかが見えない。 停滞項目を1〜2個に絞って記録する。
PASSに固執する フェーズが進んでも同じ評価を使い続ける。 立位・歩行課題が主になったらBBSやFGAへ主役交代する。

臨床での使い方|点数から次の一手へつなげる

PASSは、評価して終わる尺度ではありません。合計点、停滞項目、破綻パターンをセットで見ることで、次に練習する姿勢課題を決めやすくなります。

PASSを介入へつなげる視点
状況 考えたいこと 次の一手
臥位課題で停滞 寝返り、体幹回旋、麻痺側への注意が課題になっていないか。 寝返り、体幹回旋、視線・上肢誘導を含めて練習する。
座位課題で停滞 体幹支持、荷重、上肢支持、lateropulsionが影響していないか。 端座位保持、荷重練習、支持面調整、注意配分を確認する。
立位課題で停滞 荷重移動、下肢支持性、恐怖感、装具条件が影響していないか。 立位保持、左右荷重、立ち上がり、BBSなどへ接続する。

FAQ|PASSでよくある質問

各項目をタップすると回答が開きます。

Q. PASSは何点満点ですか?

A. PASSは12項目を各0〜3点で採点し、合計36点満点で評価します。

Q. PASSは何を評価する尺度ですか?

A. 脳卒中後の臥位・座位・立位における姿勢コントロールを評価する尺度です。姿勢を保つ能力と、姿勢を変える能力の両方を確認します。

Q. PASSはいつ使うとよいですか?

A. 急性期〜回復期前半など、ベッドサイドで姿勢保持や姿勢変換の土台を確認したい時期に使いやすいです。

Q. PASSは毎週実施すべきですか?

A. 週次固定よりも、評価結果を意思決定に使う場面があるかで決めるのが実務的です。起き上がり、端座位、立ち上がりの安全性を追いたい時期には、定期的に実施する価値があります。

Q. 装具や杖の条件が変わった場合、前回と比較してよいですか?

A. 条件が変わった場合は、単純比較を避けた方が安全です。装具・杖・履物の変更後は、条件変更後のベースラインとして記録すると解釈しやすくなります。

Q. PASSの変化量は何点から意味がありますか?

A. サブアキュート期の脳卒中患者では、MIDが3.0点と報告されています。実務では3点以上の変化をひとつの目安にしつつ、評価条件や停滞項目と合わせて判断します。

Q. PASSとTCTの違いは何ですか?

A. TCTは体幹機能を4項目で簡便に確認する評価です。PASSは臥位・座位・立位を含めて、姿勢保持と姿勢変換をより広く確認できます。

Q. PASSとBBSはどう使い分けますか?

A. PASSは急性期〜回復期前半の姿勢制御、BBSは立位バランスをより詳しく見たい時期に使いやすいです。立位・歩行課題が主になったらBBSへ主役交代を検討します。

Q. 合計点以外に何を記録するとよいですか?

A. 評価条件、停滞項目、破綻パターン、次回確認したい課題を記録すると、再評価やカンファレンスで使いやすくなります。

Q. PASSだけで転倒リスクを判断できますか?

A. PASSだけで転倒リスクを判断するのは不十分です。立位バランス、歩行能力、注意機能、環境要因などを含めて、BBS、TUG、FGAなどと組み合わせて確認します。

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まとめ|PASSは脳卒中後の姿勢制御を経時で追う評価です

PASSは、脳卒中後の臥位・座位・立位における姿勢コントロールを、12項目・0〜36点で評価する尺度です。急性期〜回復期前半など、姿勢保持や姿勢変換の土台を確認したい時期に使いやすい評価です。

重要なのは、合計点だけを見ることではありません。評価条件、停滞項目、破綻パターン、次の一手を一緒に記録することで、再評価やカンファレンスに活かしやすくなります。フェーズが進んだら、BBS、Mini-BESTest、FGAなどへ評価の主役を切り替えながら活用しましょう。


参考文献

  1. Benaim C, Pérennou DA, Villy J, Rousseaux M, Pelissier JY. Validation of a standardized assessment of postural control in stroke patients: the Postural Assessment Scale for Stroke Patients(PASS). Stroke. 1999;30(9):1862-1868. doi:10.1161/01.STR.30.9.1862PubMed
  2. Lien HP, et al. The minimal important difference for the Postural Assessment Scale for Stroke Patients in the subacute stage. Braz J Phys Ther. 2024;28(1):100595. doi:10.1016/j.bjpt.2024.100595PubMedPMC
  3. Aka T, et al. Minimal Clinically Important Difference for Postural Assessment Scale for Stroke Patients(PASS)and Trunk Impairment Scale(TIS)in Persons With Stroke. Arch Phys Med Rehabil. 2025. doi:10.1016/j.apmr.2025.06.017PubMed
  4. Huang YC, et al. Postural Assessment Scale for Stroke Patients Scores as a predictor of stroke patient ambulation at discharge from the rehabilitation ward. J Rehabil Med. 2016;48(3):259-264. doi:10.2340/16501977-2046PubMed
  5. Shirley Ryan AbilityLab. Postural Assessment Scale for Stroke(PASS). Web

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下、姿勢・バランス評価

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