IMS(ICU Mobility Scale)の採点方法|境界と記録

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IMSは「最高到達レベル」を0〜10で共有するICUの活動度評価です

IMS(Intensive Care Unit Mobility Scale)は、ICU患者が評価期間内に到達した最も高い身体活動・移動レベルを0〜10で表す評価尺度です。採点では、単に「立てた」「歩けた」と判断するのではなく、公式日本語版に沿って足踏み回数、歩行距離、介助人数、歩行補助具を確認することが重要です。

この記事では、IMSの尺度全文を転載するのではなく、採点で迷いやすい4↔5、6↔7、7↔8、8↔9、9↔10を中心に整理します。さらに、IMS点数だけで終わらせず、次回の離床へつながる記録方法と、Excel・PDFの記録シートも紹介します。

まず全体像を確認したい方へ

基本動作評価ハブを開く

IMSは「どこまで動けたか」を表す尺度です。離床を開始してよいか、中止すべきかをIMS点数だけで決める尺度ではありません。IMSの採点と安全判断は分けて考えます。

IMSとは|何を評価する尺度なのか

IMSは、ベッド上で活動がない状態から、歩行補助具を使わず自立して歩ける状態までを0〜10で示し、患者の最高到達活動レベルを簡潔に共有するための尺度です。

日本語版IMSは、原版との整合性を確認する翻訳・逆翻訳の過程を経て作成され、日本語版の評価者間信頼性や妥当性も検証されています。

一方、IMSは順序尺度であり、点数だけでは「何m歩いたか」「何人介助だったか」「酸素やライン管理がどうだったか」「どのような症状が出たか」までは十分に分かりません。そのため、実務ではIMS点数と実施条件を分けて記録することが重要です。

日本離床学会:集中治療室活動度スケール(IMS)日本語版を確認する

IMSの採点方法|まず最高到達レベルを1つ決めます

IMSでは、評価期間内に患者が実際に達成した最も高い活動レベルを採点します。最後に実施した動作や、最も長く続けられた動作を採用する尺度ではありません。

IMSを採点するときに確認する3つのポイント
確認 見ること 採点時の考え方
最高到達 評価期間内で最も高い活動 最後に行った動作ではなく、実際に達成した最高レベルを確認します。
その点数の条件 足踏み回数、歩行距離など 「少し歩けた」だけで上位の歩行レベルになるとは限りません。
歩行時の条件 介助人数、歩行補助具 7〜10では、5m以上の移動を確認したうえで介助人数と補助具を整理します。

迷ったときは独自の判断基準を追加せず、公式日本語版へ戻って確認することが基本です。

IMSで迷いやすい採点境界|どこで点数が変わるのか

IMSで特に迷いやすいのは、立位から移乗、足踏みから歩行、介助歩行から自立歩行へ変わる境界です。「見た目としてできたか」ではなく、各レベルを分ける条件を確認します。

IMSで迷いやすい境界と判断ポイント
境界 主な判断ポイント 迷いやすい場面
0 ↔ 1 患者自身によるベッド上活動があるか スタッフによる他動運動だけなのか、患者自身が能動的に動いているのかを分けます。
2 ↔ 3 他動的な椅子移乗か、能動的な端座位か リフトやスライドによる移乗と、患者自身が参加する端座位を混同しないようにします。
4 ↔ 5 立位だけか、椅子へ向けて能動的に足を動かして移乗したか 立位介助用リフトなどで立てても、足を踏み出さず移動した場合は5とは分けて考えます。
6 ↔ 7 その場足踏みか、5m以上の歩行か 数歩前進しただけで7と判断しないことが重要です。
7 ↔ 8 5m以上の歩行に必要な介助人数 2名以上の介助か、1名介助かで分かれます。
8 ↔ 9 人による介助が必要か 歩行器を使用していても、人の介助が必要なら9とはなりません。
9 ↔ 10 歩行補助具が必要か どちらも人による介助なしが前提で、歩行補助具の有無を確認します。

4↔5|立てたことと、移乗できたことを分けます

IMS 4と5では、単に立位になれたかではなく、立位から椅子へ向けて患者自身が足を動かし、体重移動を伴って移乗したかを確認します。

たとえば、立位介助用リフトを使って立位になり、そのまま患者が足を踏み出さず椅子へ移動した場合は、立位には到達していますが、5の移乗条件とは分けて判断します。

6↔7|足踏みと歩行を「5m」で分けます

IMS 6では、その場で左右交互に少なくとも4回、各足2回ずつ足踏みできることが基準に含まれます。介助の有無だけで6を決めるわけではありません。

一方、IMS 7以降の歩行レベルでは、ベッドや椅子から離れて少なくとも5m移動することが条件に含まれます。

そのため、「ベッドサイドで2〜3歩前進した」というだけでは7〜10の条件を満たしません。実際に達成した下位レベルまで戻って採点します。

IMS 6〜10の採点フローを示した図版
図:IMS 6〜10の採点フロー(5m・介助人数・歩行補助具で判断)

7〜10|5mを確認してから介助人数と歩行補助具を見ます

7〜10は、最初に5m以上移動できたかを確認し、その後に人の介助人数と歩行補助具を整理すると判断しやすくなります。

IMS 7〜10を判断するときの確認順
順番 確認すること 判断のポイント
1 5m以上移動したか 満たしていなければ7〜10の条件には入りません。
2 人による介助が何名必要か 2名以上なら7、1名なら8を確認します。
3 人の介助なしで移動できるか 可能であれば9または10を確認します。
4 歩行補助具が必要か 必要なら9、不要なら10を確認します。

IMS 9には、人による介助なしで歩行補助具を使用して5m以上歩ける場合のほか、車椅子使用者が自力で5m以上車椅子を操作して移動する場合も含まれます。詳細な定義は公式日本語版を確認してください。

ライン管理・酸素・見守りはIMS点数と分けて記録します

ICUでは、酸素療法、人工呼吸器、点滴、ドレーン、各種モニターなど、多くの条件下で離床を行います。しかし、これらの条件そのものを理由に独自にIMS点数を上下させると、評価者間で採点がずれる原因になります。

公式日本語版で7〜10を分ける中心的な条件は、5m以上の移動、人による介助人数、歩行補助具です。ライン管理や酸素条件は、IMS点数とは別に記録しておくと整理しやすくなります。

IMS点数とは別に残しておきたい実施条件
項目 記録例 残す理由
酸素・呼吸補助 酸素流量、人工呼吸器条件など 同じIMS点数でも実施負荷や安全条件が異なるためです。
ライン・ドレーン 管理が必要なライン、管理者の有無 次回に必要な人員や準備を共有できます。
休息 途中休息の有無、回数 距離だけでは分からない耐久性を補足できます。
見守り・安全管理 方向転換時のみ接触介助など 実際に必要だった援助内容を共有できます。

IMSの記録方法|「点数+採点根拠+反応」を残します

IMSの点数だけでは、翌日に「なぜその点数だったのか」「次は何を変えればよいのか」が分からなくなることがあります。

そこで、記録ではIMS点数、採点根拠、実施条件、反応、次回条件を分けて残します。

IMSと一緒に残したい記録項目
項目 記録内容 目的
IMS点数 その日の最高到達レベル 活動度を多職種で共有します。
採点根拠 最高到達動作、足踏み回数、歩行距離 点数を付けた根拠を残します。
介助・補助具 介助人数、歩行補助具 7〜10の採点根拠を共有します。
実施条件 酸素、ライン、休息、安全管理 IMS点数では表せない条件を補足します。
反応 必要なバイタル、症状、所見 次回の安全な離床条件を考える材料になります。
中止・次回条件 中止理由、次に変更する条件 評価を次の介入へつなげます。

記録例|点数だけで終わらせない

例:IMS 8。歩行10m、1名介助、歩行器使用。酸素2L/分、ライン管理1名。方向転換時にふらつきあり。歩行後に息切れを認めたが休息で改善。次回は方向転換時の介助量を再評価する。

この例では歩行器を使用していますが、人による1名介助が必要なため、歩行補助具の使用だけを見てIMS 9とは判断しません。

IMS記録シート|Excel・PDFをダウンロード

IMS採点後に「何点だったか」だけでなく、なぜその点数なのか、どの条件で実施したのか、患者がどう反応したのかまで残せるA4記録シートを作成しました。

この記録シートにはIMSの0〜10の定義そのものは掲載していません。採点は公式日本語版で確認し、このシートは採点結果と根拠を記録する補助用紙として使用してください。

IMS記録シートに記録できる内容

  • IMS点数・最高到達動作
  • 足踏み回数・歩行/移動距離
  • 介助人数・歩行補助具
  • 酸素・呼吸補助、ライン・ドレーン
  • HR・血圧・SpO2・RR、症状・所見
  • 中止・中断理由
  • 次回に変更する条件

IMS記録シート Excel版を開く・ダウンロード

IMS記録シート PDF版を開く・ダウンロード

Excel版は電子入力や施設内での運用調整に、PDF版は印刷してベッドサイドで記入する用途に使い分けられます。

IMSの採点と離床の安全判断は分けて考えます

IMSは、患者がどの活動レベルまで到達したかを評価する尺度です。IMSの点数自体が、離床を開始してよいか、中止すべきかを決める安全基準ではありません。

実際の離床では、呼吸・循環・神経学的状態、治療内容、ライン・デバイスなどを含めて安全性を確認します。施設の離床基準やチームのプロトコルがある場合は、それを優先してください。

途中で症状やバイタル変化などを理由に中止した場合も、「中止した=IMS 0」ではありません。中止までに実際に達成した最高レベルを公式定義に照らして採点し、中止理由は別項目として記録します。

IMSだけでは「なぜ動けないか」までは分かりません

IMSの強みは、患者がその日にどこまで活動できたかを短時間で共有できることです。一方で、なぜそれ以上動けなかったのかを細かく分解する尺度ではありません。

たとえば、意識状態、疼痛、筋力低下、呼吸循環反応、ライン・医療機器などが活動を制限していても、IMS点数だけでは原因を十分に表現できません。

「最高到達レベル」だけでなく「動けない理由やバリア」まで評価したい場合は、PermeとIMSの違い・使い分けで両者の役割を確認してください。

IMS採点で起こりやすい失敗

IMSはシンプルな尺度だからこそ、施設や評価者ごとの独自解釈が入り込むと点数がずれやすくなります。迷ったときは、次のポイントを確認します。

IMS採点で起こりやすい失敗と修正方法
よくある失敗 問題 修正
数歩歩いたら7とする 7〜10では5m以上の移動条件を満たしていません。 実際の歩行/移動距離を確認します。
歩行器を使ったら9とする 人による介助が必要なら9ではありません。 補助具より先に介助人数を確認します。
ライン管理が必要だから点数を下げる ライン管理を独自の減点条件にすると評価者間でずれます。 IMS点数とライン管理条件を分けて記録します。
中止したら0に戻す それまでの最高到達レベルが失われます。 到達した最高レベルを採点し、中止理由を別記録します。
点数だけ記録する 翌日に採点根拠や実施条件が分かりません。 距離、介助、補助具、反応を合わせて残します。

IMSの採点でよくある質問

Q1. 3m歩けた場合はIMS 7になりますか?

7〜10では5m以上の移動が条件に含まれるため、3m歩いたという事実だけでは7〜10の条件を満たしません。それまでに実際に達成した下位レベルを公式日本語版に沿って確認します。

Q2. 歩行器を使って1名介助で5m歩いた場合は8ですか、9ですか?

人による1名介助が必要であればIMS 8を確認します。IMS 9は、人による介助なしで歩行補助具を使用し、5m以上移動できる場合です。歩行器を使用したことだけで9になるわけではありません。

Q3. 点滴スタンドやラインをスタッフが持っている場合は1名介助になりますか?

公式日本語版では、ライン管理そのものを独立した採点条件として詳細には定義していません。ラインを持っているという事実だけで独自に点数を変更せず、患者の移動に対して人による介助が必要だったかを公式定義に沿って確認します。迷う場面は施設内で運用を統一し、ライン管理の内容をIMS点数とは別に記録しておくと整理しやすくなります。

Q4. 離床途中で中止したらIMSは0に戻しますか?

中止したことだけを理由に0へ戻しません。それまでに実際に達成した最高レベルを公式定義に照らして採点し、中止理由、症状、バイタル反応などを別に記録します。

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まとめ|IMSは「最高到達+採点根拠」を残すと使いやすくなります

IMSは、ICU患者の最高到達活動レベルを0〜10で簡潔に共有できる尺度です。採点で特に重要なのは、6では少なくとも4回の足踏み、7〜10では5m以上の移動、さらに介助人数と歩行補助具を確認することです。

また、IMS点数と酸素・ライン・症状などの実施条件は分けて整理します。点数だけで終わらせず、採点根拠、実施条件、反応、中止理由、次回条件まで残すことで、次の離床へつながる記録になります。


参考文献

  1. Hodgson CL, Needham D, Haines K, et al. Feasibility and inter-rater reliability of the ICU Mobility Scale. Heart Lung. 2014;43(1):19-24. doi: 10.1016/j.hrtlng.2013.11.003
  2. Katsukawa H. Japanese version of the Intensive-Care Unit Mobility Scale. The Journal of Early Mobilization. 2018;4:5.
  3. Yasumura D, Katsukawa H, Matsuo R, et al. Feasibility and Inter-rater Reliability of the Japanese Version of the Intensive Care Unit Mobility Scale. Cureus. 2024;16(4):e59135. doi: 10.7759/cureus.59135
  4. Tanaka K, Nakanishi N, Watanabe S, et al. The Construct and Predictive Validity of the Japanese Version of the Intensive Care Unit Mobility Scale. J Clin Med. 2025;14(16):5843. doi: 10.3390/jcm14165843
  5. Unoki T, Hayashida K, Kawai Y, et al. Japanese clinical practice guidelines for rehabilitation in critically ill patients 2023 (J-ReCIP 2023). J Intensive Care. 2023;11:47. doi: 10.1186/s40560-023-00697-w
  6. 日本離床学会. 集中治療室活動度スケール(IMS)日本語版.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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