30°側臥位は「角度」より仙骨・大転子の除圧で確認する
結論:30°側臥位は、30°ぴったりに合わせることより、仙骨と大転子への圧を避け、安定して姿勢を保持できているかを確認することが重要です。30°前後を起点に、体幹・骨盤後方の支持、上側下肢の前方支持、骨突出部の保護、ライン・ずれを整えます。この記事では、PT・OT・看護師がチームで再現しやすい作り方、確認ポイント、記録例を図解とA4 PDFで整理します。
褥瘡予防のポジショニング全体から確認する
30°側臥位は、褥瘡予防における体位変換の選択肢の1つです。ただし、見た目が30°でも仙骨が支持面へ強く接している、大転子へ直接荷重している、クッションがつぶれて姿勢が崩れている場合は、目的を達成できているとはいえません。
したがって、この記事では「30°にする」ではなく「30°前後から始め、仙骨・大転子を除圧できる条件を作る」ことを基本にします。
30°側臥位の作り方|支持・除圧・保護をセットで整える
30°側臥位は、体幹・骨盤後方を支え、上側下肢を前方で支持したうえで、仙骨と大転子の除圧を確認すると再現しやすくなります。さらに上肢、膝・足部、ライン、寝具まで確認して初めて、臨床で使えるポジショニングになります。

30°側臥位でそろえる7つのポイント
- 体幹・骨盤後方を支持する:背部から骨盤後方へクッションやウェッジを配置し、30°前後の半側臥位を保持します。
- 上側下肢を前方で支持する:上側の股関節・膝関節を無理のない位置に置き、枕やクッションで前方から支えます。
- 上肢の巻き込みを防ぐ:上肢が体幹の下へ入り込まないよう前方で支持し、肩や肘への圧迫・牽引を避けます。
- 膝・足部を保護する:膝、外果、踵などの骨突出部同士が接触し続けないようクッション位置を調整します。
- 仙骨と大転子を除圧できているか確認する:30°という角度だけで判定せず、両部位へ直圧が集中していないかを確認します。
- ラインを保護する:ドレーン、胃瘻、酸素チューブなどが身体の下へ入り込まず、牽引・折れ・局所圧がないことを確認します。
- しわ・ずれを整える:寝衣やシーツのしわ、皮膚の引きつれ、前滑りが残っていないかを最後に確認します。
クッションは「どこを支えるか」で考える
クッションは数を増やすことが目的ではありません。姿勢を保持する場所と、骨突出部への直接荷重を避ける場所へ配置します。特に体幹・骨盤後方の支持が不十分だと、時間とともに仰臥位へ戻ったり、大転子側へ倒れ込んだりします。
※スマホでは表が横スクロールできます。
| 支持する場所 | 目的 | 避けたい状態 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| 体幹・骨盤後方 | 半側臥位を保持する | 仰臥位へ戻る/真横へ倒れる | 仙骨・大転子へ直圧が集中していない |
| 上側下肢 | 前方で支持して姿勢を安定させる | 上側下肢が下側へ落ちる | 股関節・膝関節に無理な回旋がない |
| 膝・足関節周囲 | 骨突出部同士を離す | 膝・外果などが接触し続ける | 骨突出部への局所的な当たりがない |
| 上肢 | 肩・肘の巻き込みを防ぐ | 上肢が体幹の下へ入り込む | 肩・肘への圧迫や牽引がない |
| ライン周囲 | 圧迫・牽引を防ぐ | チューブや固定部が身体の下へ入る | 牽引・折れ・局所圧がない |
30°ぴったりではなく仙骨・大転子の除圧で角度を調整する
30°は起点であり、すべての人に共通する絶対的な角度ではありません。2025年のInternational Guidelineでは、褥瘡リスクのある人に30°側臥位を用いることが条件付きで提案されています。一方で、エビデンスの確実性は非常に低く、仙骨と大転子を最大限除圧できるよう角度を個別化することが示されています。
判断のポイント:「身体が30°傾いているか」だけではなく、仙骨と大転子の両方へ直圧が集中していないかを確認します。30°前後で十分な除圧が得られない場合は、体格や支持具を考慮して角度・支持位置を調整します。
International Guidelineでは、体格などによって30°では仙骨を十分に除圧できない場合、40°程度への調整が必要になる可能性も示されています。これは「40°の方がよい」という意味ではなく、30°という数字より実際の除圧状態を優先するという考え方です。
一方、90°に近い側臥位では大転子などへ圧が集中しやすいため、褥瘡予防を目的とする場合は避け、半側臥位を基本に調整します。
※スマホでは表が横スクロールできます。
| 確認部位 | 確認したい状態 | 修正が必要な状態 | 修正例 |
|---|---|---|---|
| 仙骨 | 直接的な荷重が十分に減っている | 仙骨が支持面へ強く接している | 後方支持の位置・厚み・角度を調整 |
| 大転子 | 大転子直上へ荷重が集中していない | 真横に近く大転子で支えている | 角度を浅くして半側臥位へ戻す |
| 姿勢保持 | 支持具で安定して保持できる | 仰臥位や90°側臥位方向へ崩れる | 支持具の位置・大きさ・硬さを再検討 |
| 膝・足関節 | 骨突出部同士が接触していない | 膝・外果などが当たり続ける | クッション位置・厚みを調整 |
| 寝衣・シーツ | 強いしわ・引きつれがない | 皮膚が引かれる/しわが集中する | 寝衣・シーツを整えてずれを解除 |
体位を変更・中止して再評価する所見
30°側臥位を維持すること自体が目的ではありません。皮膚、疼痛、呼吸状態、ライン、術後・整形外科的制限などに問題が生じた場合は、無理に体位を続けず再評価します。疾患別・術後の肢位制限、医師の指示、院内手順がある場合は、それらを優先してください。
※スマホでは表が横スクロールできます。
| 領域 | 確認する変化 | その場の対応 |
|---|---|---|
| 皮膚・創部 | 新たな発赤、疼痛、水疱、創部への圧迫、医療機器による局所圧 | 直圧を外し、体位・支持位置を変更して再評価する |
| 疼痛 | 新規疼痛または明らかな疼痛増悪 | 無理に保持せず、関節位置・支持位置・圧迫部位を確認する |
| 呼吸・循環 | 呼吸困難、努力呼吸、顔色不良、モニター中のSpO₂低下など | 耐えられる体位へ戻して再評価し、必要時は院内手順に従って相談する |
| ライン・医療機器 | 牽引、折れ、固定部の緊張、抜去リスク | 体位変換を止め、ライン経路・固定・介助方法を見直す |
| 術後・整形外科的制限 | 禁忌肢位への接近、固定部の疼痛、不安定性 | 指示された肢位制限を優先し、別の除圧方法を検討する |
設定直後に確認すること
体位を整えた直後は、姿勢がすぐ崩れていないか、骨突出部の当たり、疼痛、呼吸状態、ライン、寝衣・シーツを確認します。実務上は設定後30〜60秒程度を最初の確認タイミングとしておくと、クッションの沈み込みやラインの牽引など、体位変換直後の問題を拾いやすくなります。
30〜60秒は褥瘡リスクを判定する公式基準ではありません。設定直後の見落としを減らすための運用上の確認目安であり、その後も皮膚状態や姿勢保持を継続して再評価します。
30°側臥位の記録|次の担当者が再現できる条件を残す
記録では「30°側臥位実施」だけで終わらせず、左右、支持位置、仙骨・大転子の除圧、皮膚・疼痛、ライン、次回の修正点を残します。長文を書くより、次の担当者が同じ条件を再現できる情報をそろえることが重要です。
【30°側臥位 記録テンプレ】
体位:____(例:左30°側臥位)/開始:__:__ 終了:__:__
目的:____(仙骨除圧/大転子除圧/安楽確保 など)
支持:体幹・骨盤後方(__)/上側下肢(__)/膝・足部(__)/上肢(__)
除圧:仙骨(良好・要修正)/大転子(良好・要修正)/その他骨突出部(__)
皮膚・疼痛:____
ライン:牽引(なし・あり:__)/局所圧(なし・あり:__)
耐容:安楽・疼痛・呼吸状態など____
次回:____(角度/支持位置/時間/体位など)
30°側臥位の記録シート PDF
体位と支持条件を紙で共有したい場合は、A4 1枚の記録シートを使用できます。手書きで記録したい場面や、病棟・チーム内でポジショニング条件をそろえたい場面で活用してください。
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30°側臥位のよくあるミス|角度だけ合わせない
30°側臥位がうまくいかないときは、角度を測り直す前に仙骨、大転子、後方支持、骨突出部、ライン、ずれを順番に確認します。「見た目は30°だが仙骨が当たっている」「真横に近づき大転子で支えている」といった状態は、角度より支持方法を修正する必要があります。
※スマホでは表が横スクロールできます。
| よくある状態 | 問題 | まず行う修正 | 記録すること |
|---|---|---|---|
| 見た目は30°だが仙骨が当たる | 仙骨の除圧が不十分 | 後方支持の位置・厚み・角度を調整する | 仙骨の接触と変更した支持条件 |
| 真横に近く大転子で支える | 大転子へ荷重が集中しやすい | 角度を浅くして半側臥位へ戻す | 大転子の当たりと角度 |
| 時間とともに仰臥位へ戻る | 後方支持で姿勢を保持できていない | 支持具の位置・大きさ・硬さを見直す | 使用した支持具と姿勢の崩れ方 |
| 膝・外果などが当たる | 別の骨突出部へ局所圧が生じる | 下肢の位置とクッションの厚みを調整する | 接触部位とクッション位置 |
| 上肢が体幹の下へ入る | 肩・肘への圧迫や牽引につながる | 上肢を前方へ出して支持する | 上肢支持位置と疼痛の変化 |
| ラインが身体の下へ入る | 局所圧・牽引・抜去リスクになる | ライン経路を確認して圧迫を解除する | ライン位置・牽引・当たりの有無 |
| シーツのしわ・前滑りが残る | 皮膚への圧・ずれが増えやすい | 寝衣・シーツを整え、皮膚の引きつれを解除する | しわ・ずれ所見と修正内容 |
30°側臥位のよくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。
Q1.30°ぴったりに合わせる必要がありますか?
必要ありません。30°前後は体位を作る起点であり、重要なのは仙骨と大転子へ圧が集中していないことです。30°に見えても仙骨が強く接していれば、支持位置や角度を調整します。
Q2.30°より少し深く傾けてもよいですか?
個別調整が必要です。2025年のInternational Guidelineでは、仙骨と大転子を最大限除圧できるよう角度を個別化し、体格などによっては40°程度への調整が必要になる場合も示されています。数字だけで決めず、実際の除圧状態を確認します。
Q3.90°側臥位ではだめですか?
褥瘡予防を目的とする場合、90°側臥位のように圧を高める体位は避けることが2025年のInternational Guidelineで示されています。大転子への直接荷重を避けるため、30°前後の半側臥位を起点に調整します。
Q4.30°側臥位がすぐ崩れるときはどうしますか?
角度より先に、体幹・骨盤後方の支持を確認します。クッションが小さい、柔らかすぎてつぶれる、骨盤まで支えられていない場合は姿勢が戻りやすくなります。上側下肢を前方で支持することも安定化につながります。
Q5.「側臥位30°」と「頭側挙上30°」は同じですか?
別の角度です。30°側臥位は身体を左右方向へ傾ける角度で、頭側挙上30°はベッドの背上げ角度を指します。記録では「左30°側臥位」「頭側挙上30°」のように区別すると誤解を防げます。
Q6.記録は最低限どこまで残せばよいですか?
左右と角度、支持位置、仙骨・大転子の除圧、皮膚・疼痛、ライン、次回の修正点を残すと再現しやすくなります。「30°側臥位実施」だけでは、次の担当者が同じ条件を再現できません。
次の一手|体位交換間隔と介助技術へつなげる
30°側臥位の作り方をそろえた後は、皮膚状態や支持面、本人の反応を踏まえて、体位交換間隔を個別に検討します。
参考文献
- National Pressure Injury Advisory Panel, European Pressure Ulcer Advisory Panel, Pan Pacific Pressure Injury Alliance. Repositioning. In: Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. The International Guideline: Fourth Edition. Haesler E, ed. 2025. International Guideline
- 日本褥瘡学会学術教育委員会 編. 褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版. 東京: 照林社; 2022.
- 日本褥瘡学会. 用語集「30度ルール」. 日本褥瘡学会
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

