IMTのやり方|負荷設定・回数・増負荷・中止基準【記録PDF】

臨床手技・プロトコル
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IMT(吸気筋トレーニング)のやり方|負荷設定・回数・中止・記録

結論:IMT(Inspiratory Muscle Training/吸気筋トレーニング)は、「30% MIP・10回×2セット・+5% MIP」を全患者へ固定するのではなく、開始負荷、実施量、症状・フォーム・回復を確認しながら個別に調整するのが基本です。COPDでは30% MIP前後以上が開始負荷の目安として用いられてきましたが、研究では50% MIP、30呼吸×2回/日、15分×2回/日など複数の処方があります。

本記事では、主に自発呼吸下でIMTデバイスを使用する成人を想定し、負荷設定→回数・頻度→実施→増負荷・減量→中止・記録までを整理します。MIP・MEPの詳しい測定方法、人工呼吸器離脱や術後・神経筋疾患などの疾患別プロトコルは扱いません。

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先に確認したい4項目

負荷・回数
中止・相談
増負荷
記録PDF

IMTは「負荷・量・反応・増負荷・安全」を先に決める

IMTを再現可能にするには、特定の回数を暗記するより、何を基準に処方し、何を見て次回設定を変えるかを先に決めることが重要です。

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IMT開始前に決める5項目
項目 決めること 記録
① 負荷 MIPに対する割合、またはデバイスの設定値を決める %MIP、cmH2O、設定段階など
② 実施量 1セットの呼吸数、セット数、1日・週の頻度を決める 呼吸数、セット数、頻度
③ 反応 息切れ、フォーム、SpO2、HR、回復を確認する 症状・バイタル・回復時間
④ 調整 増負荷・維持・減量の条件をあらかじめ決める 判定と次回設定
⑤ 安全 実施前確認と、その場で中止・相談する条件を共有する 中止理由・対応

「30% MIPから始める」ことは選択肢の一つですが、それだけでIMT処方は完成しません。同じ30%でも、回数、頻度、デバイス、対象疾患、吸気筋力低下の程度によって介入量は変わります。

IMTの負荷設定と増負荷の判断フロー
図:IMTは、開始前評価から負荷設定、実施、反応確認、次回設定までを一連の流れで判断します。30% MIP・10回×2セット・+5% MIPなどの固定値を全患者共通の標準とせず、患者反応に応じて増負荷・維持・減量を選択します。

IMTの負荷設定|30% MIPは「開始目安」であり絶対値ではない

30% MIPは、特にCOPDを対象としたIMTで用いられてきた負荷水準の一つです。一方、30%を超える負荷や50% MIP前後から開始する研究もあり、回数・時間・増負荷方法まで含めて統一された1種類の処方があるわけではありません。

代表的な研究プロトコルを並べると、処方の幅が分かりやすくなります。

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IMTで報告されている代表的な処方例
研究・対象 負荷 実施量・期間 この記事での位置づけ
Larsonら
COPD
15%と30% PImaxを比較 2か月 30%前後が有効な負荷水準として検討されてきた根拠の一つ
Hsiaoら
COPD
50% MIP 15分×2回/日、週5日、8週間 30%以外の開始負荷・時間処方も存在する例
Langerら
COPD・吸気筋力低下
個別に高いトレーニング負荷を設定 30呼吸×2回/日、8週間 呼吸数で量を規定する代表例
Tounsiら
COPD
50% PImaxから開始 30呼吸×2セット/日、8週間 段階的に負荷を上げる処方の一例

したがって、臨床では「30%だから正しい」「10回×2だから標準」ではなく、採用するプロトコルとデバイスを決め、その条件を同じ方法で繰り返せることが重要です。

初期評価|MIPだけでなく症状と回復まで確認する

IMTの開始時は、負荷計算のためのMIPだけでなく、実施前後の症状と安全性を縦比較できる状態を作ります。

  • 吸気筋力:MIPなど、採用する負荷設定の基準
  • 症状:安静時・実施時の呼吸困難、胸部症状、めまいなど
  • バイタル:SpO2、HR、必要に応じて血圧・呼吸数
  • フォーム:口漏れ、呼吸パターン、補助呼吸筋の変化
  • 回復:終了後に症状・バイタルがどの程度で基準状態へ戻るか

MIPの値だけを追うのではなく、同じ負荷で以前より楽に完遂できるか、回復が速くなったか、活動時の症状が変わったかを合わせて確認すると、次の負荷設定につなげやすくなります。

IMTの中止・相談基準|一律のSpO2値だけでは決めない

安全管理では、「SpO2が何%なら全員中止」という単一値だけで判断せず、基礎値、酸素投与条件、循環・呼吸状態、症状、主治医の指示を合わせて判断します。

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IMT前後で確認する中止・相談の目安
場面 確認する所見 対応
開始前に確認 循環・呼吸状態が不安定、急性増悪・急性感染、未治療の気胸や圧負荷に注意が必要な病態、医師から負荷制限が指示されている場合など 自己判断で開始せず、主治医・チームで適否を確認する
その場で中止 新たな胸痛、失神前症状・強いめまい、耐えがたい呼吸困難、意識状態の変化、予想外の酸素化悪化など IMTを中止し、安静・バイタル確認と必要な報告・対応を行う
負荷を再検討 設定回数を繰り返し完遂できない、フォームが大きく崩れる、症状やバイタルの回復が遅い、介入後の疲労が強い 負荷・呼吸数・セット数・休息時間のいずれかを調整する

中止した場合は「中止した」だけで終わらせず、どの設定で、何回目に、どの症状・バイタル変化があり、休息後にどう回復したかまで記録します。

1セッションの流れ|事前確認から回復確認まで固定する

1回のIMTは、呼吸数そのものより毎回同じ確認手順で実施できることを優先します。

  1. 開始前:体調、呼吸困難、胸痛・めまい、SpO2・HRなどを確認する
  2. 設定:採用したプロトコルに沿って負荷、呼吸数・時間、セット数を決める
  3. 実施:口漏れやフォーム、症状を観察し、必要な休息を入れる
  4. 終了後:呼吸困難、SpO2・HR、回復時間を確認する
  5. 次回設定:完遂状況・症状・フォーム・回復から増負荷、維持、減量を選ぶ

30呼吸×2回/日など、研究で用いられている代表的な量をそのまま採用する場合も、対象患者と機器、症状、継続可能性を確認して運用します。

IMTの増負荷|+5%固定ではなく反応で3択にする

増負荷・維持・減量の3択を先に決めておくと、担当者によるばらつきを減らせます。ただし、増加幅そのものは研究・機器によって異なるため、「毎回+5% MIP」を普遍的な基準にはしません。

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IMTの増負荷・維持・減量を判断する視点
判定 確認すること 次回
増負荷 設定した量を完遂でき、症状が許容範囲で、フォームと回復も安定している 採用プロトコルまたは機器の設定刻みに沿って負荷を上げる
維持 完遂できるが、後半にフォーム変化や症状増加、回復遅延がみられる 同じ設定で再確認する
減量・中止 完遂困難、症状が強い、予想外のバイタル変化、フォームの大きな崩れがある 負荷または量を減らし、必要に応じて中止・相談する

当サイトの記録シートについて:既存PDFでは「30% MIP開始」「10回×2セット」「±5% MIP」を運用例として採用しています。これらを全患者共通の標準値とはせず、施設・疾患別プロトコル、使用機器、患者反応に合わせて読み替えてください。

デバイス選び|製品名より負荷の再現性を確認する

IMTデバイスは、一定の圧に達すると弁が開く圧閾値型や、抵抗を調整するタイプなどがあります。選択時は、製品名そのものより設定した負荷を再現できるか、患者が継続できるか、記録時に設定値を追えるかを確認します。

デバイスによって設定単位や負荷の上げ方が異なるため、同じ「+5% MIP」という運用がそのまま適用できるとは限りません。変更時は、MIPに対する割合と実際の機器設定を両方残しておくと比較しやすくなります。

IMTと全身運動|IMTだけで呼吸リハを置き換えない

IMTは全身運動の代わりではありません。特にCOPDでは、IMT単独による吸気筋機能や症状への効果が報告される一方、通常の呼吸リハビリテーションへIMTを一律に追加すれば、呼吸困難、運動能力、QOLがさらに改善するとは限りません。

そのため、吸気筋力低下や呼吸困難が患者の活動制限にどの程度関係しているかを確認し、歩行・全身持久力、下肢筋力、排痰、栄養など他のボトルネックと合わせて介入を選択します。

IMTでよくある失敗|数値より「再現できる条件」を残す

IMTが続かないときは、負荷の数字だけでなく、測定条件、フォーム、実施量、症状、回復のどこが変わったかを確認します。

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IMTで起こりやすい失敗と修正ポイント
失敗 問題 修正
30%を絶対値として扱う 患者の能力や採用プロトコルを反映できない 開始目安として使い、実施反応から個別化する
回数だけを追う 症状・フォーム・回復の変化を見落とす 量と反応をセットで記録する
毎回同じ幅で増負荷する 機器の設定刻みや患者反応と合わない場合がある 増負荷・維持・減量の条件を先に決める
「中止」のみ記録する 次回の設定変更につながらない 中止時の負荷、回数、症状、回復まで残す

IMTの記録|最低限5項目を残す

記録は「実施した」だけで終わらせず、次回の処方を決められる情報を残します。

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IMT記録の最小構成
項目 記録例 目的
負荷 30% MIP、15 cmH2Oなど 設定条件を再現する
実施量 呼吸数、セット数、実施時間、休息時間 介入量を残す
症状・反応 Borg、胸部症状、めまい、SpO2・HRなど 忍容性を確認する
フォーム・回復 口漏れ、フォーム変化、回復までの時間 負荷が適切か判断する
次回設定 増負荷/維持/減量と、その理由 担当者間で判断をつなぐ

数値と判断根拠をセットにすることがポイントです。「次回35%」だけでなく、「完遂・症状許容・回復良好のため35%へ」のように理由まで残すと再評価しやすくなります。

IMT記録シートPDF

IMTを継続して記録するためのA4 1枚の記録シートPDFです。開始前確認、当日の負荷と反応、増負荷判定、次回設定をまとめて残せます。

使用前に確認:このv3記録シートには「30% MIP開始」「10回×2セット」「±5% MIP」の運用例が含まれます。本記事で示したとおり、これらは全患者共通の標準処方ではありません。採用するプロトコルと患者反応に合わせて使用してください。

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初回説明用というより、継続して「負荷・実施量・反応・次回設定」をつなぐ用途に向いたシートです。紙面に記載された固定値だけで判断せず、その日の患者反応と合わせて運用してください。

よくある質問(FAQ)

検索者が迷いやすい「開始負荷」「回数」「増負荷」「中止」の4点を簡潔に整理します。

Q1. IMTは30% MIPから必ず始めますか?

必ず30%で開始するわけではありません。30% MIP前後は、特にCOPDの研究で用いられてきた開始負荷の目安の一つです。50% MIPなど、より高い負荷から開始した研究もあります。対象疾患、吸気筋力、使用機器、症状、採用するプロトコルに合わせて設定します。

Q2. 10回×2セットと30呼吸×2セットのどちらが正しいですか?

どちらか一方が全患者共通の正解ではありません。研究では30呼吸×2回/日や15分×2回/日など複数の処方があります。本記事の既存PDFにある10回×2セットは、導入しやすさを重視した当サイトの運用例として扱ってください。

Q3. IMTの負荷はいつ上げますか?

設定した量を完遂できることに加え、呼吸困難などの症状が許容範囲で、フォームと終了後の回復が安定しているかを確認します。条件を満たせば採用プロトコルや機器の設定刻みに沿って増負荷し、境界なら維持、耐えられなければ減量します。

Q4. SpO2が何%になったらIMTを中止しますか?

すべての患者へ共通する単一のSpO2値だけでは決めません。基礎値、酸素療法、疾患、主治医の指示、症状、HRや呼吸状態を合わせて判断します。予想外の酸素化悪化や胸痛、強いめまい、耐えがたい呼吸困難などがあれば中止し、状態を再評価します。

次の一手


参考文献

  1. Langer D, Charususin N, Jácome C, et al. Efficacy of a novel method for inspiratory muscle training in people with chronic obstructive pulmonary disease. Phys Ther. 2015;95(9):1264-1273. doi:10.2522/ptj.20140245
  2. Vázquez-Gandullo E, Hidalgo-Molina A, Montoro-Ballesteros F, et al. Inspiratory muscle training in patients with COPD as part of a respiratory rehabilitation program: a systematic review. Int J Environ Res Public Health. 2022;19(9):5564. doi:10.3390/ijerph19095564
  3. Gosselink R, De Vos J, van den Heuvel SP, et al. Impact of inspiratory muscle training in patients with COPD: what is the evidence? Eur Respir J. 2011;37(2):416-425. doi:10.1183/09031936.00031810
  4. Laveneziana P, Albuquerque A, Aliverti A, et al. ERS statement on respiratory muscle testing at rest and during exercise. Eur Respir J. 2019;53(6):1801214. doi:10.1183/13993003.01214-2018
  5. Ammous O, Feki W, Khamis AK, et al. Inspiratory muscle training, with or without concomitant pulmonary rehabilitation, for chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev. 2023;1(1):CD013778. PubMed: 36606682
  6. Larson JL, Kim MJ, Sharp JT, Larson DA. Inspiratory muscle training with a pressure threshold breathing device in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Am Rev Respir Dis. 1988;138(3):689-696.
  7. Hsiao SF, Wu YT, Wu HD, Wang TG. Comparison of effectiveness of pressure threshold and targeted resistance devices for inspiratory muscle training in patients with chronic obstructive pulmonary disease. J Formos Med Assoc. 2003;102(4):240-245.
  8. Tounsi B, Acheche A, Lelard T, Tabka Z, Trabelsi Y, Ahmaidi S. Effects of specific inspiratory muscle training combined with whole-body endurance training program on balance in COPD patients: randomized controlled trial. PLoS One. 2021;16(9):e0257595. doi:10.1371/journal.pone.0257595

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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