下腿三頭筋トレーニング|立位・座位・ベッド上メニューと記録シート
下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)は、立ち上がり、歩行の推進、方向転換、階段昇降に関わる重要な筋群です。臨床では「カーフレイズを何回行うか」だけでなく、立位・座位・ベッド上のどの姿勢で、どの代償を見ながら進めるかを決めることが大切です。
この記事では、下腿三頭筋トレーニングを姿勢別に整理し、代償の見方、進行・後退の基準、記録の書き方までまとめます。A4 記録シートも使いながら、患者説明・実施・記録・次回方針までを 1 つの流れで運用できる形にします。
結論|下腿三頭筋は「姿勢選択・代償確認・記録」で回す
下腿三頭筋トレーニングは、最初に姿勢を決め、次に代表メニューを 1〜2 個に絞り、代償が増える手前で終了する流れが実装しやすいです。立位にこだわらず、座位やベッド上から始めても、目的が明確であれば十分に臨床運用できます。
開始目安は 8〜12 回 × 2 セットです。ただし、回数を完遂することより、反動、足部内外反、疼痛、ふらつき、息切れを見ながら質を保つことを優先します。次回は「回数・セット・負荷・姿勢」のうち、増やす変数を 1 つに絞ると安全に進めやすくなります。
下腿三頭筋を鍛える目的は「蹴り出し」と「立位安定」をそろえること
下腿三頭筋は足関節底屈に関わり、歩行終期の推進、立位保持、階段昇降、方向転換時の安定に影響します。筋力低下があると、蹴り出し低下、歩幅低下、立位でのふらつき、足関節戦略の使いにくさとして表れやすくなります。
一方で、代償が出やすい筋群でもあります。体幹前傾、膝主導、反動、足部内外反が目立つ場合は、狙った下腿三頭筋への負荷がずれている可能性があります。まずは安全に反復できる姿勢でフォームを整え、必要に応じて立位へ進めます。
腓腹筋とヒラメ筋は膝角度で狙いを分ける
膝伸展位での底屈は腓腹筋の関与が増えやすく、膝屈曲位での底屈はヒラメ筋を狙いやすくなります。歩行の蹴り出しを意識するなら立位カーフレイズ、立位保持や反復性を重視するなら座位カーフレイズを組み合わせます。
迷った場合は、目的動作から逆算します。歩行終期の推進を高めたいのか、立位での安定を高めたいのか、ベッド上で足関節運動を再学習したいのかを先に決めると、姿勢とメニューを選びやすくなります。
姿勢別メニュー比較|立位・座位・ベッド上を使い分ける
姿勢別メニューは、患者の安全性と実施可能性で選びます。立位が難しい場合は座位やベッド上で始め、フォーム・症状・代償が安定してから立位へ進めます。
以下の表では、代表メニュー、目安、よくある代償、修正キューをまとめています。患者説明やチーム内共有では、この表と PDF シートをセットで使うと運用しやすくなります。
| 姿勢 | 代表メニュー | 目安 | よくある代償 | 修正キュー |
|---|---|---|---|---|
| 立位 | カーフレイズ(両脚 → 片脚) | 8〜12 回 × 2 セット | 反動で上下する、体幹前傾が強い、足部が内外反する | 足裏で床を押す/かかとを真上へ/下ろしをゆっくり |
| 座位 | 座位カーフレイズ(膝上荷重) | 10〜15 回 × 2 セット | つま先だけで動かす、膝角度が崩れる、足部が傾く | 足底全体で押す/膝角度を保つ/上げ下ろしを一定にする |
| ベッド上 | 底屈運動(自動運動・セラバンド) | 8〜12 回 × 2 セット | 膝の曲げ伸ばしで代償する、股関節が回旋する | つま先を正面へ/膝を安定/反動を使わない |
進行・維持・後退の基準
進行は、フォームが保てて症状が増悪しない場合に検討します。反対に、疼痛増悪、ふらつき、息切れ、代償増加がある場合は、姿勢を下げる、回数を減らす、負荷を軽くするなど後退調整を行います。
次回方針は「進行・維持・後退」の 3 択で記録すると、担当者が変わっても介入方針を引き継ぎやすくなります。進行する場合も、回数・セット・負荷・姿勢のうち 1 つだけ変えると、反応を確認しやすくなります。
| 判断 | 目安 | 次回の調整 |
|---|---|---|
| 進行 | フォーム良好、疼痛増悪なし、代償少ない、RPE が許容範囲 | 回数・セット・負荷・姿勢のうち 1 つだけ上げる |
| 維持 | 実施は可能だが、軽い代償や疲労が残る | 同条件で再実施し、安定性を確認する |
| 後退 | 疼痛増悪、ふらつき、息切れ、足部内外反、反動が強い | 姿勢を下げる、回数を減らす、負荷を軽くする |
A4 記録シート(PDF)
配布用の A4 シートは、患者説明と当日記録を 1 枚で扱いやすい構成です。説明・実施・記録・次回調整までを同じ用紙で完結しやすくしています。
記録欄は、実施姿勢、メニュー、実施量、症状、代償チェック、中止理由、次回方針を残せる形です。チーム内で同じシートを使うと、介入のばらつきと申し送り漏れを減らせます。
PDF の中身をプレビューする
記録の書き方|症状・代償・次回方針を残す
記録では、まず実施姿勢とメニューを明記します。次に、回数、セット数、休息、RPE、NRS 前後を残し、最後に代償の有無と次回方針を記載します。
「できた/できない」だけでは、次回の判断につながりにくくなります。フォームが保てたか、どの代償が出たか、次回は進行・維持・後退のどれにするかまで書くと、介入の連続性が高まります。
| 項目 | 記録例 |
|---|---|
| 実施内容 | 座位カーフレイズ 10 回 × 2 セット、休息 60 秒 |
| 症状 | NRS 1 → 2、息切れ軽度、めまいなし |
| 代償 | 後半で足部外反あり。足底全体で押すキューにて修正可能 |
| 次回方針 | 同条件で維持。フォーム安定後に回数を 12 回へ進行検討 |
現場の詰まりどころ・よくある失敗
よくある失敗
よくある失敗は、回数達成を優先してフォームが崩れたまま続けることです。下腿三頭筋を狙っていても、反動、足部内外反、体幹前傾、膝主導が強くなると、目的とする負荷がずれやすくなります。
もう 1 つは、立位が不安定な患者に対して、最初から立位カーフレイズにこだわることです。座位やベッド上でフォームと症状を確認してから立位へ進める方が、安全に継続しやすくなります。
回避手順
回避手順は、フォーム優先、代償が増える手前で終了、症状と次回方針を固定記録することです。進行判断を感覚だけにせず、増やす変数を 1 つに絞ると、チームで標準化しやすくなります。
関連:筋トレの 3 原理・ 6 原則(臨床で迷わない運動処方)
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
立位が不安定な患者では、どの姿勢から始めますか?
座位またはベッド上から始めます。まずはフォーム、症状、代償を確認し、安定して反復できるようになってから立位へ進めます。
回数は毎回 8〜12 回で固定すべきですか?
固定ではありません。8〜12 回は開始目安であり、疼痛、RPE、ふらつき、代償の増加に応じて調整します。質を保てる反復回数を優先します。
腓腹筋とヒラメ筋はどう狙い分けますか?
膝伸展位の底屈は腓腹筋、膝屈曲位の底屈はヒラメ筋を狙いやすくなります。歩行の蹴り出し、立位保持、階段昇降など、目的動作に合わせて姿勢を選びます。
中止判断で優先して見る所見は何ですか?
疼痛増悪、めまい、息切れ増悪、ふらつき、足部の崩れです。該当する場合は中止または負荷を下げ、施設プロトコルと医師指示を優先します。
次回は何を増やせばよいですか?
まずは 1 つだけ増やします。回数、セット数、負荷、姿勢難易度を同時に上げると、症状や代償の原因が分かりにくくなります。
次の一手
まず 1 週間、同じ PDF シートで実施率、症状、代償、次回方針を記録してください。記録が蓄積すると、進行・維持・後退の判断がそろいやすくなります。
続けて読む:筋トレメニュー ハブ / 大腿四頭筋トレーニング(姿勢別)
参考文献
- Silbernagel KG, Hanlon S, Sprague A. Current Clinical Concepts: Conservative Management of Achilles Tendinopathy. J Athl Train. 2020;55(5):438-447. doi:10.4085/1062-6050-356-19
- Murtaugh B, Ihm J. Eccentric Training for the Treatment of Tendinopathies. Curr Sports Med Rep. 2013;12(3):175-182. doi:10.1249/JSR.0b013e3182933761
- Hébert-Losier K, Newsham-West RJ, Schneiders AG, Sullivan SJ. Raising the standards of the calf-raise test: a systematic review. J Sci Med Sport. 2009;12(6):594-602. doi:10.1016/j.jsams.2008.12.628
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


