AWGS 2019 サルコペニア評価の運用プロトコル( PT )

評価
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AWGS 2019 サルコペニア評価プロトコル(目的と使いどころ)

評価は「実施 → 記録 → 解釈 → 次の一手」までが 1 セット。迷いを減らす “型” を先に作ると、サルコペニア対応が回り始めます。 理学療法士のキャリアガイドを見る

AWGS 2019( Asian Working Group for Sarcopenia )は、アジア人データに基づくサルコペニアの診断・運用基準です。本ページは、スクリーニング( SARC-F /ふくらはぎ周囲径: CC )→ 機能(筋力・身体機能)→ 筋量( ASMI )→ 判定までを、急性期・回復期・在宅でも “同じ型” で回すための運用プロトコルとして整理します。

ポイントは 3 つです。①測定条件を固定して縦変化を追えるようにする、②測定不能(立位・歩行が難しい等)でも評価が止まらない分岐を作る、③境界例は「介入を先行し、同条件で再評価」までをセットで設計する。カットオフの “辞書” は親ページに集約し、本ページは現場の迷いを潰すことに集中します。


運用フロー( 5 分で回す:疑い → 測定 → 判定)

まずは最短ルートを固定します。病棟ラウンドや外来、訪問でも、次の順で “止まらず” 回すとスムーズです。

  1. 疑い(スクリーニング): SARC-F(合計)と CC(左右)を取得し、「疑い例リスト」を作る。
  2. 機能(筋力・身体機能): 握力+(歩行速度 or 5xSTS or SPPB )を、可能な範囲で同日に取得する。
  3. 筋量( ASMI ): BIA / DXA の測定日を “固定枠” にし、疑い例をまとめて測る(条件を記録)。
  4. 判定: 低筋量 +(低筋力 または 低身体機能)で確定。 3 要素すべて低下なら “重症” と扱う( AWGS 2019 )。
  5. 次の一手: 介入(運動+栄養)を先行し、同条件で 4〜8 週後に再評価する。

測定不能でも止めません。歩けない・立てない場合は、「歩行速度 / SPPB / 5xSTS は測定不能」と記録し、握力・ CC ・栄養リスク・活動量などから介入を開始し、経過で “測定可能になった時点” で追加します。


カットオフ最小早見(詳細は “親=辞書” に集約)

ここでは “運用に必要な最小限” だけを置きます。数値の網羅確認は、親ページ( AWGS 2019 診断基準・カットオフ早見)に集約する設計がおすすめです。

AWGS 2019 の最小カットオフ早見(運用用:成人・臨床一般)
領域 指標 目安 メモ
筋力 握力 男 < 28 kg / 女 < 18 kg 左右 2〜3 回ずつ、最大値で判定
身体機能 通常歩行速度( 6 m ) < 1.0 m/s 助走・減速路を確保し、条件固定
身体機能 SPPB ≤ 9 点 下位項目の落ち方も所見に残す
身体機能 5xSTS ≥ 12 秒 座面高・腕組み・連続性を固定
筋量 ASMI( DXA / BIA ) 機器により基準が異なる 機種名・測定条件を必ず記録
抽出 CC(ふくらはぎ周囲径) 男 < 34 cm / 女 < 33 cm 浮腫が強い日は再測定で補足

親ページ(カットオフ辞書)はこちら:AWGS 2019 サルコペニア診断基準|カットオフ早見


ベッドサイド・チェックリスト(抜け漏れ防止)

評価が止まりやすいのは、「誰が何を取るか」が曖昧なときです。測定者・条件・次の分岐まで一緒に記録すると、チーム運用が安定します。

AWGS 2019 サルコペニア評価:ベッドサイド運用チェック(記録用)
ステップ 項目 記録欄(例) 条件固定メモ
抽出 SARC-F / SARC-CalF 合計( )点 聞き取り者、日付
抽出 CC 右( )cm / 左( )cm 最大周径、浮腫の有無、時間帯
筋力 握力 右( )kg / 左( )kg(最大値) 肘角度、姿勢、疼痛、利き手
身体機能 歩行速度( 6 m ) ( )秒 →( )m/s( 2 回:平均 / 最速 ) 補助具、靴、計測区間、助走路
身体機能 SPPB / 5xSTS SPPB( )点 / 5xSTS( )秒 座面高、腕組み、途中停止の有無
筋量 ASMI( DXA / BIA ) ( )kg/m² 機種名、食事/点滴、時間帯
判定 AWGS 2019 非該当 / サルコペニア / 重症 測定不能項目と理由
再評価 次回 ( )週後に同条件で再評価 同じ測定者・同じ条件を優先

よくあるミス( OK / NG 早見)

サルコペニア評価は “数値” よりも “条件” でブレます。よくある失敗を先に潰すと、再評価が強くなります。

AWGS 2019 評価で再現性を下げやすいポイント( OK / NG 早見)
場面 OK(再現性が上がる) NG(ブレる) 対策
握力 姿勢・肘角度を統一し、左右 2〜3 回ずつ測定して最大値 立位 / 座位が混在、試行 1 回のみ、利き手だけで判定 声かけと手順をテンプレ化し、記録に条件を書く
歩行速度 助走・減速路を確保し、 2 回測定(平均 / 最速をルール化) 計測区間が短い、 1 回だけ、途中で会話や方向転換 開始・停止ラインを固定し、補助具と靴を統一
5xSTS 座面高( 40〜45 cm 目安)と腕組みを固定し、連続 5 回 手押しや反動を許可、座面高が毎回違う、途中で一時停止 座面高をメモし、 “途中停止=測定不能” も許容する
SPPB 安全確保のうえで、同じ順序・同じ補助具条件で採点 介助量が毎回違う、実施手順が測定者でバラバラ 実施ルールを院内で 1 つに決める
ASMI 同一機器・同一条件(時間帯、食事/点滴)で縦変化を追う 機種を変えて単純比較、測定条件が毎回バラバラ 機種名と条件を “必須入力” にして運用する
CC 最大周径部を水平に測定し、浮腫が強い日は補足で再測定 メジャーが斜め、時間帯が毎回違う、強く締める 左右・時間帯・浮腫をセットで残す

現場の詰まりどころ(止まりやすい 3 点と解決策)

AWGS 2019 を回そうとして止まりやすいのは、①ASMI が取れない(依頼・導線の問題)、②5xSTS / SPPB を取り切れない(安全面・環境面)、③境界例(どこから介入するか)が曖昧、の 3 つです。

  • ASMI が取れない:病棟ごとに測定曜日を固定し、疑い例を “まとめ撮り” する。測定条件(食事/点滴、時間帯)を記録テンプレに組み込む。
  • 機能検査が取れない:安全上無理なら “測定不能” を許容し、握力・ CC ・栄養リスク・活動量から介入を開始し、経過で追加する。
  • 境界例:数値だけで結論を急がず、「介入を先行 → 同条件で再評価」をルール化する(再評価の条件固定が最重要)。

運用が詰まる背景に「教育・標準手順・振り返りの型」がないケースも多いです。見学前の整理や職場選びのチェックに使える資料もあるので、必要なら マイナビコメディカルの無料ダウンロード も参考にしてください。


よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. SARC-F と CC は、どちらを優先して使えばよいですか?

SARC-F は “困り感” を拾いやすく、 CC は筋量の proxy として客観的です。運用としては、SARC-F で拾って CC を測る 2 段構えが安定します。どちらか一方でも陽性なら「疑い」として次の測定へ進める形が回しやすいです。

Q2. 歩行速度 / SPPB / 5xSTS が取れない患者さんは、どう扱いますか?

安全上の理由で難しい場合は “測定不能” と記録し、握力・ CC ・栄養リスク・活動量などから総合的に判断します。測定不能だからサルコペニアではない、とは解釈しません。経過で測定可能になったタイミングで追加し、同条件で再評価します。

Q3. ASMI は BIA のみで追っていても問題ありませんか?

DXA が理想でも、現場では BIA が主力になることは多いです。重要なのは “機器と条件を固定” して縦方向の増減を追うことです。機種名・時間帯・食事/点滴状況など、条件を必ず残してください。

Q4. AWGS 2025 が出たと聞きました。AWGS 2019 のプロトコルは古いですか?

AWGS 2025 は 2025 年 11 月に公開され、診断アルゴリズムの考え方が整理されています。一方で、現場では研究・既存フローの都合で AWGS 2019 を参照する場面も残ります。本ページは “AWGS 2019 を現場で回す” ことに特化し、最新情報は一次情報(論文)を確認して運用をアップデートしてください。


次の一手(回遊用:ここから迷わず深掘り)


参考文献

  1. Chen LK, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020;21(3):300-307.e2. doi:10.1016/j.jamda.2019.12.012PubMed
  2. Yamada Y, et al. Validating muscle mass cutoffs of four international sarcopenia-working groups in Japanese people using DXA and BIA. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2021;12(4):1000-1010. doi:10.1002/jcsm.12732PubMed
  3. Li YH, et al. The optimal cut-off value of five-time chair stand test for sarcopenia-related outcomes. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2024. doi:10.1002/jcsm.13441
  4. Chen LK, et al. A focus shift from sarcopenia to muscle health in the Asian Working Group for Sarcopenia 2025 Consensus Update. Nature Aging. 2025. doi:10.1038/s43587-025-01004-yPubMed

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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