協調性検査の評価|やり方・判定・記録用紙

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協調性検査の評価|やり方・判定・記録の型をまとめて確認

協調性検査では、指先や踵が目標から外れたかだけでなく、姿勢・距離・速度・視覚条件をそろえ、誤差の方向、運動の分解、振戦、リズム、左右差を観察します。ただし、検査結果は筋力低下、感覚障害、疼痛、視覚障害、理解力などの影響も受けるため、単独所見だけで小脳性・感覚性などを断定しません。この記事では、指鼻指試験、反復拮抗運動、踵膝脛試験の実施手順と、再評価しやすい記録の型を整理します。

運動失調の分類や尺度を含めて確認すると、徒手検査の役割を整理しやすくなります。

運動失調の評価まとめを見る

このページで扱うのは、ベッドサイドで行う四肢協調運動検査の実施・観察・記録です。SARA、ICARS、BARSによる重症度の点数化や、運動失調全体の鑑別については関連記事で扱います。

協調性検査は「条件をそろえて、崩れ方を分けてみる」

協調性検査の基本は、同じ条件で左右を比較し、運動のどこが崩れたかを分けて観察することです。「できた・できない」「ぎこちない」だけでは、再評価や多職種への共有に使いにくくなります。

協調性検査でそろえる条件と観察項目
区分 確認する内容 記録例
条件 姿勢、支持面、目標までの距離、速度、反復回数、開眼・閉眼 端座位、検者指まで約50cm、開眼、自己選択速度で5往復
正確性 目標への到達、過大・過小、軌道のずれ 右上肢で目標を外側へ越える誤差あり
運動の連続性 滑らかさ、運動の分解、途中停止、修正回数 肩・肘運動が分離し、到達前に2回修正
時間的要素 開始の遅れ、速度、リズム、反復時の崩れ 速度上昇に伴いリズムが不規則となる
付随所見 企図振戦、筋緊張、疲労、疼痛、代償運動 目標接近時に振幅が増える振戦を認める

検査前に筋力・感覚・疼痛・理解力を確認する

協調性検査で異常がみられても、それだけで協調運動障害とは判断できません。検査動作を妨げる別の要因がないか、先に確認します。

  • 覚醒・理解:検査指示を理解し、注意を持続できるか
  • 筋力:検査肢位を保持し、重力に抗して動かせるか
  • 関節可動域・疼痛:目標への到達を制限する疼痛や拘縮がないか
  • 感覚:位置覚、運動覚、振動覚、表在感覚に左右差がないか
  • 視覚:目標を認識できるか、視野障害や複視がないか
  • 不随意運動:安静時振戦、舞踏運動、ジストニアなどが混在していないか
  • 失語・失行・半側空間無視:指示理解や目標到達へ影響していないか

筋力低下や疼痛によって運動が遅い場合と、タイミングや距離調整が崩れている場合では意味が異なります。検査前の状態を記録しておくと、所見を過大評価しにくくなります。

ベッドサイドでは3つの代表検査から確認する

四肢の協調性は、指鼻指試験、反復拮抗運動、踵膝脛試験を組み合わせると、上肢・下肢の正確性と反復運動を確認できます。すべての検査を一律に行うのではなく、対象者の安全性と課題に応じて選択します。

協調性検査の評価手順。検査前の確認、代表的な3つの検査、観察するポイント、所見の整理と記録の流れを示した図版
協調性検査は、検査前の確認から所見の整理・記録まで条件をそろえて進めます。
代表的な協調性検査と主な観察項目
検査 主に確認すること 観察する所見
指鼻指試験 上肢の目標到達と距離調整 測定異常、軌道のずれ、運動分解、企図振戦、左右差
反復拮抗運動 運動方向の素早い切り替え 速度低下、リズム不良、振幅の不均一、左右差、反復による崩れ
踵膝脛試験 下肢の目標到達と軌道調整 膝への到達誤差、脛からの逸脱、運動分解、振戦、左右差

指鼻指試験は到達誤差と目標接近時の変化をみる

指鼻指試験では、検者の指と自分の鼻を交互に触れてもらい、目標への到達、軌道、修正、振戦を観察します。単に指が触れたかではなく、目標へ近づく過程を確認します。

実施方法

  1. 対象者を安定した座位または背臥位にします。
  2. 対象者の上肢が無理なく届く位置へ検者の指を提示します。
  3. 示指で自分の鼻と検者の指を交互に触れるよう説明します。
  4. 数回反復し、左右を同じ条件で比較します。
  5. 必要に応じて検者の指の位置や運動速度を変え、変化を確認します。

観察するポイント

  • 目標を越える、または手前で止まる到達誤差
  • 直線的に到達できず、軌道が蛇行する
  • 肩、肘、手関節の運動が連続せず、段階的になる
  • 目標へ近づくほど振戦が目立つ
  • 一度で到達できず、複数回修正する
  • 左右差や反復による変化がある

検者の指を動かす場合は、左右で距離や方向が大きく変わらないようにします。毎回条件が異なると、再評価で変化を比較できません。

反復拮抗運動は速度だけでなくリズムと振幅をみる

反復拮抗運動では、手掌と手背を交互に返す運動などを行い、方向転換の滑らかさ、リズム、振幅、左右差を観察します。速くできないことだけで異常と判断せず、筋力、疼痛、理解、麻痺の影響を分けて考えます。

実施方法

  1. 座位を安定させ、前腕を動かしやすい位置に置きます。
  2. 検者が回内・回外運動、または手掌・手背で膝を交互に叩く動作を示します。
  3. まず対象者が行いやすい速度で反復します。
  4. 安全に行える場合は、少し速度を上げて変化を確認します。
  5. 左右を同じ姿勢、同じ課題、同程度の反復時間で比較します。

観察するポイント

  • 運動開始や方向転換の遅れ
  • 一定のリズムを保てない
  • 回内・回外の振幅が徐々に小さくなる、または不均一になる
  • 速度を上げると運動の順序が崩れる
  • 左右で速度、振幅、正確性が異なる
  • 疲労、疼痛、筋力低下によって途中から変化する

メトロノームを使用する場合は、診断のための固定された基準値としてではなく、同一対象者の条件をそろえる補助手段として扱います。使用したテンポは記録に残します。

踵膝脛試験は膝への到達と脛上の軌道を分けてみる

踵膝脛試験では、踵を反対側の膝へ置くまでの到達と、脛骨上を滑らせる軌道を分けて観察します。膝へ正確に到達できない場合と、脛上を滑らかに移動できない場合では、記録すべき所見が異なります。

実施方法

  1. 対象者を背臥位にし、下肢を動かせるスペースを確保します。
  2. 片側の踵を反対側の膝付近へ置くよう指示します。
  3. 踵を脛骨前面に沿わせ、足関節方向へ滑らせてもらいます。
  4. 必要に応じて開始位置へ戻し、数回反復します。
  5. 左右を同じ姿勢と速度条件で比較します。

観察するポイント

  • 踵が膝から外れる、または到達前に修正する
  • 踵が脛骨上から繰り返し外れる
  • 滑走が連続せず、途中で止まる
  • 股関節、膝関節、足関節の運動が段階的になる
  • 目標接近時や滑走中に振戦がみられる
  • 左右差、反復による変化、視覚条件による変化がある

下肢筋力低下、股・膝関節痛、可動域制限があると、踵を持ち上げることや脛上を滑らせること自体が難しくなります。協調性の問題と混同しないよう、検査前の運動機能を併記します。

所見は単独で病型を決めず、他の神経所見と組み合わせる

協調性検査は運動失調の検出に役立ちますが、1つの検査結果だけで原因や病変部位を確定することはできません。筋力、感覚、眼球運動、構音、筋緊張、姿勢、歩行などを組み合わせて解釈します。

協調性検査でみられる所見と解釈時の注意点
所見 考えること 追加で確認すること
目標を越える・届かない 測定異常が疑われる 視覚、筋力、感覚、失行、目標認識
目標接近時に振戦が増える 企図振戦を疑う所見となる 安静時・姿勢時の振戦、薬剤、左右差
運動が段階的になる 運動分解が疑われる 関節可動域、疼痛、麻痺、代償運動
反復運動のリズムが崩れる 反復拮抗運動の障害を疑う 筋力、痙縮、動作緩慢、理解、疲労
閉眼で誤差が増える 視覚への依存や固有感覚障害を検討する 位置覚、振動覚、ロンベルグ徴候、末梢神経所見
開眼時から著明に不安定 小脳、前庭、運動系を含めて検討する 眼振、構音、体幹、歩行、筋力、急性発症の有無

閉眼による悪化は感覚性失調を検討する材料になりますが、前庭機能や課題理解などの影響も受けます。「閉眼で悪化したため感覚性」「開閉眼差がないため小脳性」と単独で断定せず、深部感覚検査や立位・歩行所見と照合します。

急な運動失調や新しい神経症状は検査を続けず報告する

突然出現した運動失調や、意識変化、構音障害、複視、強いめまい、頭痛、片麻痺などを伴う場合は、徒手検査を繰り返すよりも速やかな医学的評価を優先します。

立位や歩行を伴う検査では転倒へ備え、対象者の近くで介助できる位置を取ります。支持なしでの立位が危険な場合は、無理にロンベルグ試験や歩行検査を追加せず、安全に行える座位・背臥位の検査から情報を集めます。

記録は「条件・所見・解釈・次の確認」で残す

協調性検査の記録は、条件、観察した所見、限定的な解釈、次に確認する項目の順でまとめます。原因を断定するのではなく、何を根拠に何を疑い、何と照合するかを残します。

協調性検査のカルテ記載例
検査 記録例
指鼻指試験 端座位、開眼、左右各5往復。右は目標接近時に振幅の増える振戦と外側への到達誤差を認め、2回の軌道修正あり。左は明らかな誤差なし。右上肢の筋力・位置覚と併せて確認する。
反復拮抗運動 端座位、手掌・手背で膝を交互に叩打。右は左より速度が遅く、反復に伴いリズムと振幅が不均一となる。疼痛なし。右上肢の筋力、筋緊張、動作緩慢の影響を追加評価する。
踵膝脛試験 背臥位、左右各3回。右は膝への到達後、脛骨上から外側へ2回逸脱。閉眼で誤差が増加した。右下肢位置覚と振動覚を再確認し、立位・歩行所見と照合する。

「協調性低下あり」「ぎこちなさあり」だけでは、次回評価で変化を比較できません。姿勢、視覚条件、左右、反復回数など、再現に必要な条件も残してください。

協調性検査の記録用紙PDF

姿勢、視覚条件、左右差、異常所見を同じ形式で記録したい場合は、A4版の協調性検査記録シートを利用できます。検査前チェック、3つの代表検査、観察所見、次に確認する項目、再評価欄を1枚にまとめています。再評価では、前回と同じ条件を選び、誤差やリズムの変化を比較してください。

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協調性検査でよくある質問

検査名や所見の解釈で迷いやすい点を整理します。

指鼻試験と指鼻指試験は何が違いますか?

指鼻試験は、上肢を伸ばした位置などから自分の鼻へ指を運ぶ課題です。指鼻指試験では、自分の鼻と検者が示す指を交互に触れます。検者の指を適切な範囲で移動させることで、複数方向への目標到達も観察できます。施設や文献によって名称の使い方が異なることがあるため、記録には実際に行った方法を記載します。

膝打ち試験と回内・回外試験はどちらを使いますか?

どちらも反復拮抗運動を観察する方法です。対象者が理解しやすく、安全に反復できる課題を選びます。経時比較では同じ課題を使用し、姿勢、反復時間、速度の指示をそろえることが重要です。

閉眼で悪化すれば感覚性失調と判断できますか?

閉眼で誤差や動揺が増える場合は、視覚への依存や固有感覚障害を検討する材料になります。ただし、閉眼条件だけで原因を確定することはできません。位置覚、振動覚、ロンベルグ徴候、前庭症状、筋力、歩行などと組み合わせて判断します。

テンポは60・90・120bpmで統一すべきですか?

協調性検査全般に共通する診断上の固定テンポではありません。メトロノームは同一対象者の条件をそろえたり、速度変化による所見を確認したりする補助手段として使用できます。使用した場合はテンポと実施時間を記録します。

次の一手

徒手検査で協調運動の崩れ方を確認した後は、目的に応じて重症度尺度や運動失調全体の評価へ進みます。


参考文献

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  7. Newman G. 歩行、姿勢、および協調運動の評価. MSDマニュアル プロフェッショナル版. 2023年8月改訂. 公式ページ

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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