協調性検査の評価|やり方・判定・記録の型をまとめて確認
協調性検査は、検査名を覚えるだけでは実践で使いにくく、どの順でみるか・どの条件で比較するか・どう記録に残すかまでそろえて初めて再現性が出ます。この記事では、指鼻試験・膝打ち試験・踵膝試験を中心に、ベッドサイドで迷いやすい協調運動機能評価の流れを整理します。
このページで扱うのは、短時間での見分け方・代表検査のやり方・カルテ記載の型です。SARA / ICARS / BARS の点数化や長期経過の定量評価は別記事に分け、ここでは「今日すぐ使う徒手評価」に絞って解説します。
現場の詰まりどころ|判定を外しやすい 3 点
協調性検査でつまずきやすいのは、病型の切り分けを急ぐこと、速度条件を変えないこと、所見を曖昧語で終えることの 3 点です。先に以下だけ押さえると、評価と再評価がかなり安定します。
| 詰まりどころ | 起こりやすいこと | 先にそろえる点 |
|---|---|---|
| 開眼だけで判断する | 感覚性失調を取りこぼしやすい | 深部感覚・ロンベルグ・閉眼条件を先に確認する |
| 低速だけで終える | 速度依存性の崩れが見えにくい | ゆっくり → 速くの順で条件を固定する |
| 記録が曖昧になる | 再評価や申し送りで比較しにくい | 条件 → 所見 → 示唆 → 次アクションで残す |
協調運動機能とは|評価の意義
協調運動機能は、多関節・多筋の活動が秩序立って協働し、運動を円滑・正確・適時に遂行する能力です。主に 小脳系・固有感覚系(後索)・前庭系・錐体/錐体外路系が関与し、いずれかの破綻は「運動失調」を呈します。
協調性の低下は転倒や ADL 低下に直結するため、ベッドサイドで短時間に鑑別して、訓練設計(視覚代償、足底入力、固視、タイミング練習など)へつなげることが重要です。まずは「どの病型を疑うか」を整理し、そのうえで尺度評価へ進む流れにすると迷いにくくなります。
協調性検査の評価フロー(鑑別の道筋)
| ステップ | チェック | みるポイント | 主な示唆 | 次アクション |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 深部感覚(位置覚・振動覚)+ ロンベルグ | 閉眼で体幹動揺↑/偽性アテトーシス | 感覚性(脊髄・末梢) | 視覚代償・足底入力最適化・体性感覚再教育 |
| 2 | 失調出現部位 | 体幹優位(四肢は保たれる)か | 前庭性 | 固視・前庭眼反射訓練・頭位変換の評価 |
| 3 | 四肢協調検査の質 | 測定過大/運動分解/動作時振戦/反復障害 | 小脳性/大脳性 | タイミング学習・誤差フィードバック・課題難易度調整 |
代表的な協調性検査(要点早見表)
日常で頻用する検査を目的/手順の要点/異常所見/判定のコツで整理しました。ここでは「その場での見分け方」に集中し、点数化や経時比較は SARA / ICARS 側で補う前提で読むと整理しやすいです。
| 検査 | 目的 | 手順(要点) | 異常所見の例 | 判定のコツ |
|---|---|---|---|---|
| 指鼻試験(鼻指鼻) | 上肢の測定能とタイミング | 検者の指 ↔ 自鼻を交互にタッチ | 測定過大/過小、動作時振戦、遅延 | 距離を変化させ空間認知も観察 |
| 膝打ち試験 | 反復拮抗運動 | 手掌/手背で膝を交互に叩く | 反復変換運動障害、協働収縮不能 | ゆっくり→速くで規則性を比較 |
| 踵膝試験(踵脛試験) | 下肢の測定能 | 踵を対側膝に当て→脛上を足関節まで滑走 | 測定異常、分解、振戦 | 閉眼で悪化=感覚依存、視覚で改善を確認 |
| 向こう脛叩打 | 下肢のタイミング/強度制御 | 一側踵で反対側脛前面を反復叩打 | 測定障害、リズム不良 | 1–2 回/秒の速度指示で困難性評価 |
| Arm Stopping Test | 終末到達の誤差制御 | 肘伸展→耳朶へタッチ | 過大/過小測定 | 片側差と学習の可否を確認 |
| 線引き試験 | 視覚下の距離/方向制御 | 平行線間に横線を描画 | 過大/過小、振戦 | 非利き手比較で習熟影響を除外 |
記録用紙ダウンロード
評価条件と所見をそろえて残したいときは、協調性検査 記録シート PDF を使うと、再評価や申し送りの抜け漏れを減らしやすくなります。印刷してそのまま使える A4 1 枚版です。
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判定のコツとよくある失敗
| 詰まりどころ | 起こりやすい誤り | 見直しポイント |
|---|---|---|
| 開眼だけで判定する | 小脳性か感覚性かを早合点しやすい | 開眼 → 閉眼をそろえて比較し、ロンベルグや深部感覚も先に確認する |
| 低速だけで「できる」と判断する | 速度依存性の崩れを取りこぼす | ゆっくり → 速くへ段階づけ、どの速度で誤差が増えるかまでみる |
| 条件を毎回変えてしまう | 再評価で良し悪しが比較しにくい | 姿勢、距離、視覚条件、テンポ、左右差の見方を固定する |
| 記録が曖昧語で終わる | 「ぎこちない」「不安定」だけで共有しにくい | 「条件 → 所見 → 示唆 → 次アクション」の順で 1〜2 行に圧縮して残す |
記録の例(カルテ記載の型)
協調性検査は、条件固定 → 所見 → 示唆 → 次アクションの順で 1〜2 行に圧縮すると、再評価と連携が一気に整います。
| 場面 | 条件(固定する要素) | 所見(例) | 示唆(例) | 次アクション(例) |
|---|---|---|---|---|
| 指鼻(鼻指鼻) | 座位/距離一定/開眼→閉眼/速度漸増 | 低速は概ね良好だが高速で到達誤差↑、軽度の動作時振戦 | 小脳性の速度依存を疑う | テンポ提示で誤差フィードバック、課題難易度を段階化して反復学習 |
| 膝打ち | 座位/テンポ 60→90→120 bpm/左右比較 | テンポ上昇で規則性が崩れ、左右差が拡大(疲労で悪化) | 反復拮抗運動障害(タイミング破綻)を示唆 | 外部ペーシング(視覚/聴覚)で改善有無を確認し、タイミング課題へ |
| 踵膝(踵脛) | 背臥位/膝→足関節の距離一定/開眼→閉眼 | 開眼は概ね可能だが閉眼で蛇行・誤差が著明、視覚で改善 | 感覚性(後索/末梢)+視覚依存を示唆 | 深部感覚の再確認、足底入力・環境調整と視覚代償の比重を最適化 |
よくある質問(協調運動機能評価)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
指鼻試験と鼻指鼻試験の違いは?どちらを優先する?
鼻指鼻は検者の指 ↔ 自鼻の往復で測定能+空間認知を評価しやすく、指鼻は単発到達で終末誤差を把握しやすいです。まずは距離変化と速度漸増を組み込みやすい鼻指鼻を優先し、必要に応じて単発到達も追加します。
膝打ち試験と回内回外試験はどう使い分ける?
どちらも反復拮抗運動をみる検査ですが、膝打ちは座位で導入しやすく、テンポ変化や左右差を追いやすいのが利点です。回内回外は上肢の素早い運動変換をより直接みやすいため、必要に応じて追加します。まずは 1 つの条件を固定して反復評価しやすい検査を選ぶと実践しやすいです。
反復拮抗運動障害(dysdiadochokinesia)の判定のコツは?
膝打ち試験でゆっくり→速く(例:60→90→120 bpm)にテンポを上げ、規則性の崩れ・左右差・協働収縮を観察します。視覚や聴覚のペーシングで改善する場合は、タイミング依存の要素が強いと考えやすくなります。
閉眼で悪化する失調は「小脳性」ではなく「感覚性」と考えるべき?
はい。閉眼で著明に悪化し、開眼で改善する場合は感覚性(後索・末梢)が示唆されます。小脳性は開閉眼で大差なく、測定過大/運動分解/動作時振戦が目立つ傾向です。迷うときはロンベルグ試験+四肢協調検査を組み合わせて判断します。
次の一手
ベッドサイド所見を「全体像 → 定量化」へつなげるなら、次の 2 本を続けて読むと整理しやすいです。
参考文献
- Schmitz-Hübsch T, du Montcel ST, Baliko L, et al. Scale for the assessment and rating of ataxia: development of a new clinical scale. Neurology. 2006;66(11):1717-1720. DOI: 10.1212/01.WNL.0000219042.60538.92 / PubMed
- 水澤 英洋. 小脳失調症の病態と治療―最近の進歩―. 日本内科学会雑誌. 2012;101(3):669-674. DOI: 10.2169/naika.101.669
- Bodranghien F, Bastian A, Casali C, et al. Consensus Paper: Revisiting the Symptoms and Signs of Cerebellar Syndrome. Cerebellum. 2016;15(3):369-391. DOI: 10.1007/s12311-015-0687-3 / PubMed
- Klockgether T, Paulson H. Milestones in ataxia. Mov Disord. 2011;26(6):1134-1141. DOI: 10.1002/mds.23559 / PubMed
- 山内 康太, 小柳 泰宏, 岩松 公, ほか. Scale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA)を用いた脳卒中に伴う運動失調重症度評価の有用性について. 脳卒中. 2013;35(6):418-424. DOI: 10.3995/jstroke.35.418
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


