NHPT・Purdue Pegboard 評価法|このページで決めること
NHPT( Nine Hole Peg Test / 9 ホールペグ )と Purdue Pegboard は、手指の巧緻性を短時間で把握できる代表的な評価です。ただし、臨床でズレやすいのは「何を測るか」よりも「どう測るか」です。利き手の順番、練習の有無、計時の開始・停止、落下時の扱い、反復回数が測定者ごとに違うと、同じ人でも比較しにくくなります。
このページで答えるのは、NHPT と Purdue Pegboard を同条件で実施し、記録まで固定する方法です。答えないのは、上肢評価全体の選び方や、脳卒中 OT 評価の最小セット全体です。選定から迷う場合は、まず下の親ページから戻ると整理しやすくなります。
NHPT と Purdue の役割分担(結論)
NHPT は、指先操作の速さと左右差を短時間で追いやすい評価です。書字、ボタン、スマホ操作など「細かい操作の速度」を見たいときに向きます。経時変化も追いやすく、再評価の軸を 1 本に絞りたい場面で使いやすいのが強みです。
Purdue Pegboard は、片手だけでなく両手協調や系列動作( assembly )まで見られるのが強みです。復職支援や作業分析では、片手で遅いのか、両手の同時性が崩れているのか、順序立てた組立で止まるのかを切り分けやすくなります。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 評価 | 主に見るもの | 強み | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| NHPT | 手指の速さ・左右差 | 短時間、経時変化を追いやすい | 書字、ボタン、スマホ、つまみ動作の速度を見たい |
| Purdue Pegboard | 片手・両手協調・ assembly | 両手同時性と系列動作まで見やすい | 復職、部品操作、両手作業、工程の切り分けをしたい |
準備物とセットアップ
再現性は、評価名よりもセットアップの固定で決まります。姿勢・ボード位置・合図・落下時対応を先にそろえ、記録欄にも残してください。
| 項目 | 推奨 | ポイント | 記録に残す欄 |
|---|---|---|---|
| 用具 | 各キット一式(欠品・破損なし) | 穴径差・ペグ欠損があると比較が崩れる | 欠品・破損:なし・あり(内容) |
| 姿勢 | 座位(足底接地、体幹安定) | 前腕支持の有無を毎回そろえる | 前腕支持:あり・なし/椅子高さ |
| ボード位置 | 体幹正面で固定 | NHPT は容器を評価手側に置く | 位置メモ(机端から距離など) |
| 合図・計時 | 練習後に開始合図を統一 | 計時開始・停止点を文章で固定 | タイマー種別/測定者 |
| 例外ルール | 無効条件を先に決める | 外乱・安全問題・手順逸脱を混ぜない | 無効理由/再試行の有無 |
NHPT:標準手順と記録
NHPT は、利き手 → 非利き手の順で行い、各手で非計時の練習 1 回のあとに実測する形にそろえると比較しやすくなります。施設で 2〜3 回測る場合も、標準値比較に使う実測と、院内の参考反復を混ぜないのがコツです。
- ボードを体幹正面に置き、容器は評価する手の側に置く。
- 利き手で非計時の練習を 1 回行い、課題理解を確認する。
- 実測は「用意、始め」で開始し、最初のペグに触れた時点で計時開始。
- ペグを 1 本ずつ穴に入れ、すべて入れたら 1 本ずつ容器へ戻す。
- 最後のペグが容器に入った時点で計時停止。
- 非利き手も同様に行う。追加反復を行う場合は、備考で「参考反復」と明記する。
| 手 | 練習(非計時) | 実測 1 | 実測 2(任意) | 実測 3(任意) | 標準記録 | 院内代表値 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 利き手 | 完了・未完了 | ___ | ___ | ___ | ___ | ___ |
| 非利き手 | 完了・未完了 | ___ | ___ | ___ | ___ | ___ |
解釈メモ:NHPT は値が小さいほど良好です。左右差を見るときは、利き手、罹患側、疼痛、前腕支持の有無をセットで残してください。経時変化は「速くなった」だけでなく、書字・ボタン・スマホ操作などの生活課題にどう翻訳できるかまで 1 行添えると共有しやすくなります。
Purdue Pegboard:構成・手順・記録
Purdue Pegboard は、右手 30 秒 → 左手 30 秒 → 両手 30 秒 → assembly 60 秒の順で固定するとブレが減ります。右手・左手は挿入本数、両手はペア数、assembly は部品数(点)で記録するのが基本です。
- 右手( 30 秒):右手だけで挿入した本数を数える。
- 左手( 30 秒):左手だけで挿入した本数を数える。
- 両手( 30 秒):左右同時に入れたペア数を数える。
- assembly( 60 秒):ピン → ワッシャー → カラー → ワッシャーの順で組み立てる。
- assembly score は完成ユニット数ではなく部品数で残す。 1 完成 = 4 点、途中の正しく置かれた部品も加点する。
- 反復する場合は 2〜3 回までとし、試行数を固定する。
| パート | 試行 1 | 試行 2 | 試行 3 | 代表値 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 右手( 30 秒) | ___ | ___ | ___ | ___ | 落下:___ |
| 左手( 30 秒) | ___ | ___ | ___ | ___ | 落下:___ |
| 両手( 30 秒) | ___ | ___ | ___ | ___ | 同時性:あり・なし |
| assembly( 60 秒) | ___ | ___ | ___ | ___ | 手順ミス:あり・なし |
解釈メモ:右手・左手で差が大きいのか、両手で一気に落ちるのか、assembly で順序処理まで崩れるのかで、次の一手が変わります。復職や家事では、数値を「片手で遅い」「左右同時で崩れる」「工程で止まる」に翻訳して共有すると、訓練課題や職務調整が決めやすくなります。
測定者用スクリプト(読み上げ例)
測定者ごとの差を減らすには、文面を固定しておくのが近道です。施設基準に合わせて最小限だけ編集し、読み上げを統一してください。
| 場面 | 文言(例) |
|---|---|
| NHPT:練習 | 「この手だけで、ペグを 1 本ずつ穴に入れ、全部入ったら 1 本ずつ容器に戻してください。まずは練習です。」 |
| NHPT:実測 | 「同じ手順で、できるだけ速く行ってください。用意、始め。」 |
| Purdue:右手/左手 | 「この手だけで、上から順にできるだけ多く入れてください。落としても拾わず、次を続けてください。用意、始め。」 |
| Purdue:両手 | 「両手で同時に 1 本ずつ持ち、左右同時に入れてください。用意、始め。」 |
| Purdue:assembly | 「ピン、ワッシャー、カラー、ワッシャーの順で組み立てます。できるだけ多く続けてください。用意、始め。」 |
よくある失敗と対策
“評価値”より先に、“評価条件”が崩れるのが定番の落とし穴です。NG を固定し、記録に残して再現性を上げます。
| NG(よくある失敗) | 対策 | 記録ポイント |
|---|---|---|
| ボード位置が毎回違う | 体幹正面・椅子高さ・前腕支持の有無を固定する。 | ボード位置/椅子高さ/支持条件 |
| NHPT の開始・停止点が人で違う | 最初のペグ接触で開始、最後のペグが容器に入ったら停止で統一する。 | 測定者/タイマー種別 |
| Purdue assembly を完成個数だけで記録する | 完成ユニットではなく部品点で残す。 | assembly の採点単位 |
| 標準法と院内平均を混ぜる | 標準記録と参考反復を別欄で残す。 | 標準値比較か、院内比較か |
| 疲労・疼痛で後半に低下 | 休息時間を固定し、疼痛増悪時は中止を検討する。 | 休息時間/疼痛 NRS |
現場の詰まりどころ
“測り方”より“どう使うか”で詰まりやすいポイントを先回りで整理します。
| 詰まりポイント | 背景 | 整理の視点 |
|---|---|---|
| 「どちらを選ぶか」で止まる | 速さを見たいのか、両手協調まで見たいのかが曖昧 | NHPT=手指の速さ、Purdue=片手+両手+系列動作で切り分ける |
| 左右差の解釈が曖昧 | 利き手差と罹患側・疼痛が混在しやすい | 利き手・罹患側・疼痛・支持条件をセットで残す |
| 反復回数が測定者で違う | 標準法とローカル運用が混ざりやすい | 標準記録と参考反復を分け、用途を明記する |
| 数値が目標に落ちない | 点数だけでは生活課題につながりにくい | 書字・ボタン・スマホ・両手作業に翻訳して 1 行補足する |
選定そのものから迷うときは、上肢機能評価の使い分けに戻り、「何を知りたいか」から 1 本に絞ってからこのページへ戻ると、運用を固定しやすくなります。
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
NHPT は 2〜3 回測った方がいいですか?
標準法に寄せるなら、各手で「練習 1 回+実測 1 回」を基準にするのが分かりやすいです。院内で 2〜3 回測る場合は、標準値比較に使う実測と、参考反復としての平均を混ぜずに残してください。
Purdue の assembly は完成ユニット数で数えますか?
臨床では完成個数でメモしたくなりますが、標準的には部品点で残す方がズレにくいです。 1 完成 = 4 点で、途中の正しく置かれた部品も加点する運用にそろえると、採点のブレが減ります。
ペグを落としたら無効ですか?
外乱や安全問題、手順逸脱で測定自体が崩れた場合は無効扱いが妥当です。一方で、軽い落下を毎回すべて無効にすると比較できなくなるため、「どこから無効にするか」を施設内で先に決め、無効理由を備考に残してください。
NHPT と Purdue は両方やるべきですか?
両方必須ではありません。指先の速さや左右差を短時間で見たいなら NHPT、両手協調や assembly まで見たいなら Purdue が向きます。目的が 1 つなら 1 本、復職や両手作業まで見たいときだけ追加すると運用しやすいです。
記録用紙(日本語 PDF )
現場に 1 枚持っていけば、実施 → 記録 → 集計までが止まらない “運用・記録シート” を用意しました(日本語版)。
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参考文献
- Mathiowetz V, Weber K, Kashman N, Volland G. Adult norms for the Nine Hole Peg Test of finger dexterity. Occup Ther J Res. 1985;5(1):24-38. DOI: 10.1177/153944928500500102
- Wang YC, Bohannon RW, Kapellusch J, Garg A, Gershon RC. Dexterity as measured with the 9-Hole Peg Test across the age span. J Hand Ther. 2015;28(1):53-59. DOI: 10.1016/j.jht.2014.09.002
- Tiffin J, Asher EJ. The Purdue pegboard: norms and studies of reliability and validity. J Appl Psychol. 1948;32(3):234-247. DOI: 10.1037/h0061266
- Buddenberg LA, Davis C. Test-retest reliability of the Purdue Pegboard Test. Am J Occup Ther. 2000;54(5):555-558. DOI: 10.5014/ajot.54.5.555
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


