下腿周囲長(CC)の基準値・測り方|GLIMとAWGS 2025

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下腿周囲長(CC)は「目的別の基準値」と「測定条件」で読む

下腿周囲長(CC)は、特別な機器がなくても筋肉量低下の疑いを拾える身体計測です。ただし、検索すると男性34cm・女性33cm男性33cm・女性32cmの両方が出てくるため、「どちらを使うのか」で迷いやすい指標でもあります。結論は、AWGS 2025のサルコペニア症例抽出と、GLIMの筋肉量減少の評価ではCCの役割が異なるため、目的を先に決めることです。本記事では、CCの基準値・測り方・浮腫や肥満時の注意に加え、AC・TSFからMAMCを求める方法と記録例まで整理します。

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まず結論:AWGS 2025とGLIMではCCの基準値の意味が違う

CCの基準値は、数値だけを切り取らず「何を評価するための値か」までセットで使うことが重要です。AWGS 2025では、65歳以上の症例抽出に男性34cm未満・女性33cm未満を用います。一方、GLIMではCCを筋肉量減少の代理指標として利用できますが、一律のカットオフは設定されていません。日本栄養治療学会が示す例では、男性33cm未満・女性32cm未満が掲載されています。

下腿周囲長(CC)の基準値を目的別に使い分ける
枠組み CCの役割 目安 対象・注意 次に確認すること
AWGS 2025 サルコペニアの症例抽出 男性 <34cm
女性 <33cm
症例抽出のCCカットオフは65歳以上に適用 筋力を評価し、必要に応じて筋肉量評価へ進む
GLIM 筋肉量減少の代理指標 提示例:男性 <33cm
女性 <32cm
一律のカットオフではない。人種・年齢・性別・疾患などを考慮 他の表現型基準・病因基準と合わせて判断する
下腿周囲長CCの基準値について、AWGS 2025の男性34cm未満・女性33cm未満と、GLIMの提示例である男性33cm未満・女性32cm未満の違いを比較した図
図:下腿周囲長(CC)はAWGS 2025とGLIMで評価目的と基準値の意味が異なる

34/33cmと33/32cmは、どちらかが間違いなのではありません。AWGSでサルコペニアの症例抽出をするのか、GLIMで筋肉量減少の代理指標として使うのかで役割が異なります。カルテにはCCの値だけでなく、「AWGSの症例抽出として評価」「GLIMの筋肉量評価として使用」のように目的まで残しておくと混同を防げます。

下腿周囲長(CC)の測り方:最大周径を同じ条件で測る

CCは、ふくらはぎの最も太い部分(最大周径)を、巻尺で圧迫しないように測定します。重要なのは、単発値のわずかな差に意味を持たせることより、測定側・肢位・測定位置・タイミングを再現できる形で残すことです。

CCで固定しておきたい4項目

下腿周囲長を再評価できるデータにするための固定項目
固定するもの 確認すること 記録例
測定側 右・左を記録し、縦比較では同側をそろえる 右CC
肢位 立位・座位など採用した方法を記録する 立位、左右均等荷重
測定位置 下腿の最大周径を同じ手順で探索する 下腿最大周径
影響因子 浮腫、圧迫、装具、時間帯などを確認する 10時、浮腫なし、圧迫前

座位・立位など測定方法が変われば値にも影響します。地域在住高齢者を対象とした研究では、立位測定のCCがサルコペニアスクリーニングで良好な診断性能を示していますが、病棟や在宅では安全に立位を取れない患者もいます。縦比較では採用した肢位を記録し、できるだけ同じ条件で再測することが重要です。

CCを誤読しやすい3場面:浮腫・肥満・麻痺

CCは筋だけを直接測っているわけではありません。水分、皮下脂肪、左右差、測定条件の影響を受けるため、カットオフだけで筋肉量低下を断定しないことが重要です。

浮腫がある場合

浮腫があると、筋肉量が少なくてもCCが大きく測定される可能性があります。そのため、CCが基準値以上でも「筋肉量が保たれている」とは断定しません。圧痕、左右差、浮腫の程度、測定時刻などを併記し、筋肉量評価が目的であれば状態の変化も踏まえて再評価します。

肥満がある場合

GLIMの筋肉量評価では、肥満によるCCの過大評価にも注意が必要です。日本栄養治療学会が掲載するカットオフ例では、BMI 25〜30kg/m²では実測CCから3cm、BMI 30〜40kg/m²では7cmを減じて調整する例が示されています。

注意:この肥満補正はGLIMで紹介されている筋肉量評価の運用例です。AWGS 2025の症例抽出基準である34/33cmと機械的に組み合わせず、どの枠組みで評価しているのかを明確にしてください。

片麻痺など左右差がある場合

片麻痺がある場合は、単純に「非麻痺側だけ測ればよい」と固定するのではなく、何を評価したいのかを先に決めることが重要です。全身的な栄養・筋肉量評価として同一患者を追うなら、採用した側を記録して縦比較でそろえます。一方、麻痺側の筋萎縮や浮腫、左右差そのものを確認したい場合は両側を測定し、左右差を臨床所見として解釈します。

AC・TSFから上腕筋囲(MAMC)を求める

CC以外の身体計測で筋肉量低下を推定したい場合は、上腕周囲長(AC)上腕三頭筋部皮下脂肪厚(TSF)から上腕筋囲を算出できます。文献ではAMCなどの表記もありますが、本記事ではMAMCとして整理します。

ACは筋と皮下脂肪の両方を含むため、AC単独をそのまま筋肉量とみなしません。肩峰と肘頭を結んだ中点を基準としてACとTSFを測定し、TSFの影響を差し引いて上腕筋囲を推定します。

MAMCの計算式

  • MAMC(cm)= AC(cm)− π × TSF(cm)
  • TSFをmmで入力する場合:MAMC(cm)= AC(cm)− 0.314 × TSF(mm)

たとえばAC 28.0cm、TSF 12mmなら、28.0 −(0.314 × 12)= 24.232となり、MAMCは約24.2cmです。

計算ミスを防ぐポイント:TSFをmmで測ったのに、cm用の「π × TSF」をそのまま使わないようにします。院内でTSFをmm記録するなら、「AC − 0.314 × TSF」に式を固定すると確認しやすくなります。

TSFは皮膚ひだ厚計などを用いて測定するため、ACだけ測ってMAMCを推測することはできません。また、MAMCもDXAやBIAのように筋肉量を直接評価する方法ではなく、身体計測から求める代理指標として解釈します。

CC・AC・TSF・MAMCを同条件で残すA4記録シート

CCやMAMCは、数値だけでなく測定側・肢位・時間帯などの条件と一緒に残すことで再評価しやすくなります。既存のA4記録シートでは、CC・AC・TSF・MAMCと測定条件、再評価時の変化を1枚で記録できます。

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カルテは「値+条件+解釈+次アクション」で残す

CCの記録では、「32cmだった」だけでは次回の評価者が同じ意味で読めません。値、測定条件、評価目的、影響因子、次に確認することまで残すと、単なる周径測定から臨床判断につながる記録になります。

CC・MAMCを判断につなげる記録例
場面 記録例
AWGS 2025の症例抽出 右CC 32.8cm、立位、下腿最大周径、浮腫なし。65歳以上のAWGS 2025症例抽出基準に該当。筋力を評価し、必要に応じて筋肉量評価へ進む。
GLIMの筋肉量評価 右CC 31.5cm、測定条件固定。GLIMの筋肉量減少を評価する代理指標として確認。他の表現型基準・病因基準と合わせて評価する。
浮腫がある 右CC 34.2cm。下腿浮腫・圧痕あり。水分貯留の影響が考えられるためCC単独で筋肉量を判定せず、状態変化も踏まえて再評価する。
MAMCを算出 AC 28.0cm、TSF 12mm、MAMC 24.2cm。前回と同側・同測定点で実施し、経時変化を確認する。

とくにAWGSでは、CCが基準値未満でも「サルコペニア確定」「筋肉量低下確定」ではありません。CCは症例抽出の入口として扱い、その先の筋力・筋肉量評価へつなげます。GLIMでもCCだけで低栄養を診断するのではなく、少なくとも1つの表現型基準と1つの病因基準を組み合わせて判断します。

よくある質問

Q1. 男性34cm・女性33cmと、33cm・32cmのどちらを使えばよいですか?

評価目的で分けます。65歳以上でAWGS 2025のサルコペニア症例抽出としてCCを使う場合は男性34cm未満・女性33cm未満です。GLIMで筋肉量減少の代理指標として使う場合は一律のカットオフではありませんが、日本栄養治療学会が紹介する例として男性33cm未満・女性32cm未満があります。

Q2. 50〜64歳でもCC 34cm・33cmをAWGS 2025の基準として使いますか?

AWGS 2025では50〜64歳も筋肉の健康に関する評価対象へ広げられていますが、CC 34cm・33cmなどの症例抽出カットオフは65歳以上に適用すると示されています。50〜64歳では、年齢群に設定された筋力・筋肉量の評価基準を確認して診断へ進みます。

Q3. CCは立位と座位のどちらで測ればよいですか?

サルコペニアスクリーニングでは立位測定を支持する研究がありますが、安全に立位が取れない患者へ無理に適用する必要はありません。採用した肢位を記録し、縦比較では同じ条件を再現することを優先します。

Q4. 浮腫がある場合、CCは使えませんか?

測定自体はできますが、筋肉量の代理指標としての解釈には注意が必要です。浮腫によってCCが大きくなり、筋肉量低下を見逃す可能性があります。圧痕や左右差などを併記し、CC単独で筋肉量が保たれていると判断しないようにします。

Q5. MAMCの計算で0.314を使うのはなぜですか?

MAMCは「AC − π × TSF」で求めます。TSFをmmで記録する場合、cmへの換算を含めるとπ÷10が約0.314になるため、「AC(cm)−0.314×TSF(mm)」と表せます。

測定位置・ランドマークを確認したい場合

本記事ではCCの基準値と筋肉量低下の解釈を中心に整理しました。大腿周径や四肢長を含め、どこを測るか・ランドマークをどう固定するかを確認したい場合は、形態測定(四肢長・周径)の測り方で確認できます。


参考文献

  1. Chen LK, Hsiao FY, Akishita M, et al. A focus shift from sarcopenia to muscle health in the Asian Working Group for Sarcopenia 2025 Consensus Update. Nat Aging. 2025;5(11):2164-2175. doi:10.1038/s43587-025-01004-y. PubMed
  2. Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition—A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. doi:10.1016/j.clnu.2018.08.002. PubMed
  3. Barazzoni R, Jensen GL, Correia MITD, et al. Guidance for assessment of the muscle mass phenotypic criterion for the Global Leadership Initiative on Malnutrition diagnosis of malnutrition. Clin Nutr. 2022;41(6):1425-1433. doi:10.1016/j.clnu.2022.02.001. PubMed
  4. 日本栄養治療学会. 筋肉量減少の判定に使用する評価法とカットオフ値. 2024年5月8日版. 公式資料
  5. Piodena-Aportadera MRB, Lau S, Chew J, et al. Calf Circumference Measurement Protocols for Sarcopenia Screening: Differences in Agreement, Convergent Validity and Diagnostic Performance. Ann Geriatr Med Res. 2022;26(3):215-224. doi:10.4235/agmr.22.0057. PubMed
  6. Heymsfield SB, McManus C, Smith J, Stevens V, Nixon DW. Anthropometric measurement of muscle mass: revised equations for calculating bone-free arm muscle area. Am J Clin Nutr. 1982;36(4):680-690. doi:10.1093/ajcn/36.4.680. PubMed

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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