- 四肢周径で「筋肉量低下の疑い」を拾う: CC ・ AC ・ MAMC の実務ガイド
- 印刷して使える:四肢周径( CC / AC / TSF / MAMC )記録シート( A4 )
- まずはここだけ:カットオフと使い分け早見
- 位置づけ: GLIM / AWGS と周径をどう扱うか
- 測定の原則:ブレを減らす 5 つの固定
- 下腿周囲長( CC ):測り方・カットオフ・読み方
- 上腕周囲長( AC )と上腕筋囲( MAMC ):計算で迷わない形にする
- 大腿周径:どこを測るかで「見ているもの」が変わる
- 数値の使い分け:結局、どう判断に落とす?
- 現場の詰まりどころ/よくある失敗
- よくある質問(タップで開閉)
- 次の一手(続けて読む)
- 参考文献
- 著者情報
四肢周径で「筋肉量低下の疑い」を拾う: CC ・ AC ・ MAMC の実務ガイド
四肢周径は、 BIA / DXA などの機器がなくても筋肉量の低下を“疑う根拠”を作れる、現場適合性の高い身体計測です。特に下腿周囲長( CC )はサルコペニアの症例抽出で使われやすく、上腕周囲長( AC )+皮下脂肪厚( TSF )から算出する上腕筋囲( MAMC )は上腕の筋量推定に役立ちます。
一方で、浮腫・麻痺・姿勢・時間帯などで数字が動くため、測定条件が揃っていないと誤判定につながります。本記事では「どこをどう測り、どう解釈し、どこで間違えるか」を、現場で回る形に整理します。
現場で迷わない「評価→記録→再評価」の型を先に押さえたい方へ。
印刷して使える:四肢周径( CC / AC / TSF / MAMC )記録シート( A4 )
記事内容に合わせて、測定条件の固定(再現性)と再評価ログ( Δ を追う)まで 1 セットにした A4 記録シートを用意しました。院内で運用するときは、まず「側・肢位・時間帯」だけでも固定するとブレが減ります。
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まずはここだけ:カットオフと使い分け早見
周径は「確定診断」ではなく筋肉量低下の“入口(疑い)”として使います。基準値はガイドラインや研究で幅があるため、本記事では臨床で使われやすい目安と、誤判定しやすい状況をセットで示します。
| 指標 | 何の「代理」か | 目安(例) | まず注意する誤差 | 次アクション |
|---|---|---|---|---|
| CC(下腿周囲長) | 下腿筋量(疑い) | 男 < 34 cm / 女 < 33 cm( AWGS 2019 ) | 浮腫、肥満、姿勢(立位/座位)、時間帯 | 握力・歩行/立ち上がりなどと併用して層別 |
| AC(上腕周囲長) | 上腕の体格(筋+脂肪) | 単独値より「変化( Δ )」を重視 | 巻尺のテンション、マーキングずれ | TSF とセットで MAMC を算出 |
| MAMC(上腕筋囲) | 上腕筋量(疑い) | MAMC( cm )= AC( cm )− 0.314 × TSF( mm ) | TSF の単位ミス( mm / cm )、皮膚ひだのつまみ方 | 「筋の減り」を追うなら縦比較(同条件) |
| 大腿周径 | 目的次第(腫脹/筋萎縮) | 膝蓋骨上縁から距離で固定(例: +5〜10 cm ) | 測定位置のブレが最大の誤差 | 術後腫脹と筋変化を部位で分けて読む |
位置づけ: GLIM / AWGS と周径をどう扱うか
GLIM は筋量低下の評価で BIA / DXA などを優先しつつ、地域や実装上の理由で困難な場合に上腕/下腿周径などの身体計測(代理指標)を用いることを許容しています。つまり周径は「代替として使える」一方で、手技の標準化(訓練)が前提です。
AWGS 2019 はサルコペニアの症例抽出で CC を推奨し、男 < 34 cm / 女 < 33 cm を目安として提示しています。確定は筋力・身体機能・筋量(可能なら BIA / DXA )と併用して判断します。
測定の原則:ブレを減らす 5 つの固定
周径は「 1 回の数値」より同条件での変化( Δ )が価値になります。測定は次の 5 点だけ固定すると、現場で再現性が上がります。
| 項目 | OK(推奨) | NG(ブレる) | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 対象側 | 同一患者は毎回同側(麻痺があるなら原則 非麻痺側 ) | 毎回違う側、左右を混在 | 「右/左・麻痺の有無」を固定で残す |
| 肢位 | 施設標準を明文化(例: CC は立位、不可なら座位で統一) | 安全性で毎回肢位が変わる | 変更したら理由まで 1 行で追記 |
| ランドマーク | 触診→マーキング→同位置で再測 | 見た目で毎回 “だいたい” | 「どこを基準にしたか」を書く |
| 巻尺テンション | 軽接触(圧迫しない)で水平に一周 | きつく締める/ゆるく垂れる | 同じメジャーを使い回す |
| 反復測定 | 2 回測定(差が大きければ 3 回目) | 1 回だけで確定 | 中央値 or 平均をルール化 |
下腿周囲長( CC ):測り方・カットオフ・読み方
測る場所は「ふくらはぎの最も太い部位」です。立位なら踵を肩幅、体重を左右均等にして下腿をリラックスさせ、巻尺を床と平行に当てます。座位で行う場合も、同一患者では肢位を統一してください。
読み方は「低値なら筋量低下の疑いが上がる」一方で、浮腫や肥満では過大評価になりやすい点が重要です。特に浮腫が強い日は、可能なら状態が落ち着いたタイミングで再測し、備考に「浮腫あり」を残します。
CC のカットオフ(実務目安)
AWGS 2019 では、症例抽出として男 < 34 cm / 女 < 33 cmが目安です。現場では「 CC 低値 + 握力低下 + 立ち上がり/歩行の遅れ」のように、複数の所見を束ねて解釈すると安全です。
CC で起こりやすい誤判定
- 浮腫:筋が増えたのではなく “水分で太い” ことがある(時間帯で動くことも)
- 姿勢:立位と座位で値が変わるため、縦比較では肢位固定が最優先
- 装具/包帯:外した直後は形が変わることがあるため、測定タイミングを決める
上腕周囲長( AC )と上腕筋囲( MAMC ):計算で迷わない形にする
AC は「筋+脂肪」を含む体格指標です。筋量をより見たいときは、同部位の TSF(上腕三頭筋部皮下脂肪厚)と組み合わせてMAMC( = AMC )を算出します。ここは単位ミスが一番多いので、手順と式を固定します。
測定位置は肩峰(アクロミオン)と尺骨肘頭を結んだ線の中点です。中点をマーキングしてから、巻尺を水平に一周させます(圧迫しない)。
MAMC の式(単位に注意)
- MAMC( cm )= AC( cm ) − π × TSF( cm )
- TSF が mm のとき:MAMC( cm )= AC( cm ) − 0.314 × TSF( mm )
上腕筋面積( AMA )を使う場合
より “面積” で見たい場合は AMA を使います。
- AMA( cm² )= MAMC² ÷( 4π )
- 骨成分補正の目安:男性 −10 cm² 、女性 −6.5 cm²(運用するなら施設内で統一)
大腿周径:どこを測るかで「見ているもの」が変わる
大腿周径は、測定位置の選び方で意味が変わります。目的(腫脹なのか、筋の変化なのか)を先に 1 行で固定し、膝蓋骨上縁からの距離で位置を標準化します。
| 目的 | 部位指定(例) | 主に反映するもの | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 術後・炎症の腫脹 | 膝蓋骨直上〜中央 | 関節周囲の腫脹 | 疼痛/熱感とセットで Δ を追う |
| 大腿四頭筋の変化 | 膝蓋骨上縁 +5〜10 cm | 内側広筋・外側広筋の萎縮/肥大 | 介入前後で同位置の Δ を比較 |
| 大腿全体の筋量 | 膝蓋骨上縁 +15〜20 cm | 大腿全体の体格 | 体重や活動量と合わせて解釈 |
数値の使い分け:結局、どう判断に落とす?
周径は「低い/高い」だけで断定せず、①同条件での変化( Δ )と、②機能所見(握力・歩行・立ち上がり)を束ねて判断すると運用が崩れません。迷ったら「筋量低下の疑い」→「次に何を確認するか」までを 1 行で書いておくと、再評価が強くなります。
現場の詰まりどころ/よくある失敗
周径が回らない原因は「テクニック」より運用(誰が・いつ・どの姿勢で・どこを測るか)が曖昧なことです。以下を潰すと、同じ巻尺でも“使えるデータ”になります。
- 肢位が毎回違う:立位/座位が混ざると、 Δ が解釈不能になります(まず固定)。
- ランドマークが共有されていない:マーキングを標準にし、記録欄に「どこを基準にしたか」を残す。
- 浮腫を筋量と誤解:皮膚所見と時間帯を一緒に書く( “浮腫あり” の一言で誤判定が減る)。
- MAMC の単位ミス:TSF が mm のままなのに cm として計算してしまう(式をテンプレ化)。
もし「測定が回らない」「標準化が難しい」背景に、教育体制や業務設計の問題があるなら、見学時に確認するポイントを先に揃えると改善が速いです(面談準備のチェックにも使えるので こちら も参考になります)。
よくある質問(タップで開閉)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. CC は立位と座位、どちらが正しいですか?
どちらか一方が絶対に正しいというより、同一患者の縦比較では肢位固定が最優先です。安全に立位が取れるなら立位、転倒リスクが高いなら座位で施設標準を決め、変更した場合は理由を記録します。
Q2. 麻痺がある場合、どちらの脚(腕)を測りますか?
原則は非麻痺側で統一し、毎回同側を測ります。ただし、左右差そのものが臨床的に重要なケースでは両側を測り、目的(筋萎縮/浮腫/装具影響)を明記して解釈します。
Q3. 浮腫があるとき、 CC は使えませんか?
使えないわけではありませんが、過大評価(筋量が多いように見える)リスクがあります。皮膚所見(圧痕・硬さ)とセットで記録し、可能なら状態が落ち着いた日に再測して縦比較します。
Q4. MAMC の計算で 0.314 を使うのはなぜ?
π(約 3.14 )と、 TSF が mm のときに cm へ換算する係数がまとまった形です。 TSF を mm のまま扱う運用なら、式を「 AC − 0.314 × TSF 」に固定すると単位ミスが減ります。
Q5. 周径は “増えたら筋がついた” と判断してよいですか?
単独では危険です。周径は筋だけでなく脂肪や水分の影響を受けます。介入の評価としては、同条件の Δ に加えて、筋力や歩行/立ち上がりなどの機能所見を束ねて判断するのが安全です。
次の一手(続けて読む)
- 評価ハブ(関連評価の全体像)
- 身体計測(形態測定)まとめ|目的別“最小セット”と標準化(親:入口と運用の全体像)
- 形態測定(四肢長・周径)の測り方|ランドマークと記録のコツ(辞書:測り方の確認)
参考文献
- Chen LK, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update. J Am Med Dir Assoc. 2020;21(3):300–307. doi:10.1016/j.jamda.2019.12.012. PubMed
- Cederholm T, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition—A consensus report. Clin Nutr. 2019;38(1):1–9. doi:10.1016/j.clnu.2018.08.002. PubMed
- Barazzoni R, et al. Guidance for assessment of the muscle mass phenotypic criterion for the GLIM diagnosis of malnutrition. Clin Nutr. 2022;41(10):2235–2247. doi:10.1016/j.clnu.2022.02.020. PubMed
- Piodena-Aportadera MRB, et al. Calf Circumference Measurement Protocols for Sarcopenia Screening. Ann Geriatr Med Res. 2022;26(3):214–223. doi:10.4235/agmr.22.0057
- Heymsfield SB, et al. Revised equations for bone-free arm muscle area. Am J Clin Nutr. 1982;36(4):680–690. doi:10.1093/ajcn/36.4.680. PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


