療養病棟の褥瘡対策加算 15点・5点の違いと算定フロー【DESIGN-Rで整理】

制度・実務
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療養病棟の褥瘡対策加算とは?

褥瘡対策加算は、療養病棟入院基本料(区分番号 A101)の患者のうち、別に定める状態の方に対して十分な褥瘡対策を行った場合に、1 日につき 褥瘡対策加算1:15 点/褥瘡対策加算2:5 点 を上乗せできる仕組みです。対象は原則として医療療養病棟・有床診療所療養病床に限られ、一般病棟や回復期リハ病棟では算定できない点に注意が必要です。

加算の算定そのものは医事課の仕事ですが、算定可否を左右する DESIGN-R による状態評価褥瘡対策チームの運用 は、看護・栄養・リハビリが一体となって回していく必要があります。本記事では、リハビリ専門職にも分かりやすいように、褥瘡対策加算1(15 点)と2(5 点)の違いと運用のポイントを整理します。

褥瘡対策も含めた学び方の流れを見る(PT キャリアガイド)

褥瘡対策加算1(15 点)と2(5 点)の違い

両者の違いは、簡単に言うと 「DESIGN-R 合計点の 3 か月推移」 です。別紙様式 46「褥瘡対策に関する評価」で、当該日の DESIGN-R 合計点(深さを除く)と、1 か月前・2 か月前・3 か月前の最も低い合計点を記録し、経時的な変化を判定します。診療報酬点数表 では、褥瘡対策加算は次のように規定されています。

  • 褥瘡対策加算1(15 点):入院後または新たに評価を始めて暦月で 3 月を超えない間、または褥瘡対策加算2を算定する日以外の日に算定。
  • 褥瘡対策加算2(5 点):DESIGN-R の合計点が、直近 3 か月連続して前月の合計点より上回った場合に、当該月から算定。

つまり、入院直後の 3 か月間や、3 か月のあいだに 悪化していない/改善している 場合は加算1(15 点)、3 か月連続で悪化している 場合は加算2(5 点)と整理できます。なお実務では、DESIGN-R が複数部位で異なるときに「最も低い合計点」を用いることや、ADL 区分 3 の患者で評価を行うことなど、様式上のルールも合わせて押さえておく必要があります。

DESIGN-R と「褥瘡対策に関する評価」様式のポイント

褥瘡対策加算の算定には、日本褥瘡学会の DESIGN-R(現在は DESIGN-R 2020)が必須です。深さ以外の 6 項目を点数化し、合計点で重症度と治癒経過を定量的に把握します。日本褥瘡学会の解説 でも、診療報酬と直結する評価スケールとして位置付けられています。

診療報酬上は、別紙様式 46「褥瘡対策に関する評価」 を用いて、以下を記録します。

  • 部位ごとの DESIGN-R 評価(深さは合計点に含めない)
  • 当該日の DESIGN-R 合計点と、1・2・3 か月前の最も低い合計点
  • 3 か月の推移を踏まえた「悪化の有無」

現場運用としては、褥瘡カンファレンスやラウンドのタイミングに合わせて、少なくとも月 1 回は DESIGN-R を正式に評価する 体制を整えることが重要です。普段の創部観察記録(分類・処置内容など)と、様式 46 の DESIGN-R 合計点を紐づけておくことで、算定の根拠とケアの質改善を同時に担保できます。

褥瘡対策加算の判定をラクにする A4 集計シートの使い方

褥瘡対策加算は「患者ごと」「月ごと」の DESIGN-R 推移を確認する必要があり、病棟全体を一覧で管理しないと取りこぼしや算定漏れが生じがちです。そこで、療養病棟向けに 「褥瘡対策加算 DESIGN-R 推移集計シート(A4)」 を作成しました。

褥瘡対策加算 DESIGN-R 推移集計シート(A4)をダウンロードする(HTML)

シートでは、患者ごとに今月・1 か月前・2 か月前の DESIGN-R 合計点を記録し、

  • 悪化なし/悪化/新規入院 の別をチェック
  • 加算1(15 点)/加算2(5 点)/算定なし の区分をチェック

できるようにしています。別紙様式 46 と合わせて活用することで、病棟カンファレンスで「今月誰が褥瘡対策加算の対象か」を一目で確認 でき、医事との情報共有もスムーズになります。ブレーデンスケールや褥瘡予防バンドルなど、既存の褥瘡対策プロトコルと組み合わせてご利用ください。

褥瘡対策の施設基準とチーム体制とのつながり

褥瘡対策加算を算定するには、前提として 「褥瘡対策の基準」 を満たした病棟である必要があります。地方厚生局の施設基準説明資料では、褥瘡対策チームの構成や診療計画書の作成者、DESIGN-R による評価の実施状況などが重点的に確認されています。代表的な指摘例としては、次のようなものがあります。

  • DESIGN-R 以外の独自様式で評価しており、診療報酬上の要件を満たしていない。
  • 褥瘡対策の診療計画書を、専任以外の看護師が作成している。
  • 危険因子評価がブレーデンスケールのみで、薬学的管理・栄養管理の視点が不足している。

実務では、厚労省の危険因子評価票や褥瘡対策に関する診療計画書をベースに、褥瘡対策チーム(専任医師・専任看護師・薬剤師・管理栄養士・リハビリ)が評価と計画・見直しを行うことが求められます。褥瘡対策加算は、そのアウトカムとプロセスの両方が適切に回っているかどうかを示す指標と捉えると分かりやすいです。

PT・OT・ST が押さえておきたい褥瘡対策加算の実務

リハビリ専門職は直接算定業務を行わないものの、褥瘡の悪化・改善に直結するケア を日々提供しています。褥瘡対策加算の観点から見ると、次のポイントを押さえておくと役立ちます。

  • ベッド上ポジショニングと体位変換スケジュールを、療養病棟看護師と共通言語で設計する。
  • 車椅子クッションやマットレスの選定・調整を通じて、骨突出部への局所的な圧負荷を減らす。
  • 栄養状態やサルコペニアを評価し、必要に応じて NST と連携して栄養介入を進める。
  • 褥瘡カンファレンスで、DESIGN-R の変化とリハ介入(離床量、荷重部位、関節拘縮など)の関係を簡潔にコメントする。

こうした取り組みを通じて、DESIGN-R 合計点の悪化を防ぎ、結果として加算1(15 点)を安定して算定できる状態を目指すことが、患者の QOL と病棟経営の両面で重要になります。褥瘡予防バンドルや危険因子評価票の運用と合わせて、病棟全体の褥瘡対策の流れを一度整理しておくとよいでしょう。

おわりに:DESIGN-R の推移とチームの「リズム」をそろえる

褥瘡対策加算は、単に点数を取るための制度ではなく、DESIGN-R による状態評価 → 危険因子評価 → 診療計画 → 介入 → 再評価 のリズムがきちんと回っているかどうかを映す鏡のような仕組みです。今回の A4 集計シートも活用しながら、療養病棟全体で「誰がいつ褥瘡対策加算の対象になるのか」を共有し、創部の経過とケア内容をセットで振り返る体制づくりを進めていきましょう。

働き方や教育体制そのものに不安があるときには、褥瘡対策を含めた実務の整理と並行して、今の職場をどのように位置付けるかを考えることも大切です。見学や情報収集の段階から使えるチェックリストを手元に置いておくと、将来の選択肢を検討する際の「ものさし」になります。働き方を見直すときの抜け漏れ防止に、見学や情報収集の段階でも使える面談準備チェック( A4・5 分)と職場評価シート( A4 )を無料公開しています。印刷してそのまま使えます。ダウンロードページを見る

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

DESIGN-R の合計点が改善と悪化を繰り返す場合、加算1と2はどう判定すればよいですか?

診療報酬上は、暦月ごとに「その月に評価した DESIGN-R のうち最も低い合計点」 を拾い、それを3か月並べて推移を判定します。「改善 → 悪化 → 改善」などの波があっても、各月の最も低い合計点を並べたときに3か月連続で前月を上回っていなければ加算2には該当しません。

実務では、月内に複数回評価する場合も多いため、「月1回以上は必ず正式評価を行う」「様式 46 にはその月で最も低い合計点を転記する」といった院内ルールを明文化しておくと混乱を防げます。判定に迷うケースは、褥瘡対策チームと医事課で一度共有し、翌月以降の運用を統一しておくと安心です。

DESIGN-R の評価日が月によってばらつき、3か月分そろわない場合はどうすればよいですか?

加算2の判定には「直近3か月連続して前月の最も低い合計点を上回る」ことが必要なため、そもそも評価していない月がある場合は、加算2の要件を満たせないと考えるのが安全です。そのうえで、評価が抜けている月がどれくらいあるのかを洗い出し、少なくとも月1回の DESIGN-R 評価が全症例で回るように体制を整えることが先決になります。

すでに評価日のばらつきが生じている年度については、「実施した評価の中から暦月単位で最も低い合計点を採用する」方針をチーム内で共有し、翌年度以降は評価日をカンファレンスやラウンドに合わせて固定するなど、再発防止の仕組みづくりまで含めて検討しておくとよいでしょう。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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