脳卒中の重症度評価まとめ:NIHSS・CNS・JSSの使い分け

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NIHSS・CNS・JSS は「評価の目的」で使い分ける

脳卒中の重症度評価は、治療の優先順位づけ・急変の早期検知・リハ介入の安全判断を「同じ言葉」で共有するための共通言語です。結論として、スケールは万能ではなく、目的(詳細化/変化検知/定量共有)が違うので、目的から逆算すると選択が速くなります。

本記事は NIHSS / CNS / JSS を「採点の細部」ではなく「使いどころ」で整理し、再評価の間隔(いつ測るか)と、点数がブレた日の扱い(外乱・条件固定・所見 1 行)までを現場仕様でまとめます。

結論:詳細化は NIHSS 、変化検知は CNS 、定量共有は JSS

まず結論です。症候を「どこまで細かく分けたいか」なら NIHSS 、病棟やリハ前後で「変化を早く拾いたい」なら CNS 、急性期の全体像を「重み付きで数値化して共有したい」なら JSS が向きます。

実務では、単回の点数よりも「同じ条件で繰り返して、どう変わったか」が価値になります。評価者・体位・補助具・眠気や鎮静などの外乱をそろえるほど、点数は意思決定に使える情報へ近づきます。

表 1:NIHSS/CNS/JSS の役割分担(成人・急性期〜回復期の実務目安)
スケール 得意な目的 使う場面 つまずきポイント 運用の一言
NIHSS 神経症候を「詳細に分解」して共有 急性期の評価共有、治療・検査の優先度の議論 失語・無視・意識の影響で見かけの重症度が揺れる 点数+「主症候」を 1 行で残す
CNS 変化の「早期検知」と経時モニタ 病棟での悪化検知、離床前後、回復期のトレンド 疼痛・固定具・眠気・ ROM 制限など外乱の取り違え 短時間で回し、前回比を追う
JSS 重み付きで「定量的」に全体像を共有 急性期の状態共有、経時変化の追跡、連携資料 部分運用で価値が落ちやすい(条件がそろわない) 単回より「変化」を見せて判断をそろえる

5 分で決める:病期別の選び方(再評価の間隔つき)

選び方は「何を決めたいか」から逆算します。急性期は「詳細な神経症候の共有」が重要になりやすく、回復期〜生活期は「介入前後の変化を拾う」ことが価値になりやすいです。

迷いが減るコツは、まず 1 つを標準にして、必要に応じてもう 1 つで補完する発想です。最初から数を増やすと、条件ズレで再評価が崩れやすくなります。

表 2:病期・目的別の最短フロー(まず 1 つ選び、必要なら補完)+再評価の間隔
状況 まず使う 併用/切替の目安 記録の要点 再評価の間隔(目安)
急性期で詳細に共有したい NIHSS 変化が疑わしいときは、同条件で追加評価(同日中) 点数+「主症候」を 1 行で補完 毎日 1 回(同時刻)+変化疑いは追加 1 回
病棟で悪化を早く拾きたい CNS 変化が出たら、必要に応じて NIHSS で詳細化 体位・眠気・疼痛など条件固定を残す 急性期:毎日 1 回/回復期:週 1〜 2 回(曜日固定)
全体像を数値でトレンド化したい JSS 外乱が強い日は「解釈注意」を明記して継続 単回より「前回比」を重視して共有 急性期:毎日 1 回/回復期:週 1 回(曜日固定)
リハ介入前後の変化を見たい CNS 高次脳機能中心なら、所見の文章量を増やして補完 介入前後で環境と声かけをそろえる 週 1〜 2 回+方針変更/カンファ前に追加

図表 1 枚で迷いを減らす:選択フロー(表で代替)

「どれを使うか」で迷ったら、次のフローで決めると運用がそろいます。ポイントは、目的 → まず 1 本 → 変化が出たら補完の順にすることです。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

表 3:重症度スケール選択フロー(目的→ 1 本→再評価で運用を揃える)
最初の質問 Yes(推奨) No(次の分岐) 再評価の間隔(目安)
急性期で「症候を詳しく分けて共有」したい? NIHSS を標準にする 次へ 毎日 1 回(同時刻)+変化疑いは追加
病棟で「変化を早く拾う」運用にしたい? CNS を標準にする 次へ 急性期:毎日 1 回/回復期:週 1〜 2 回
全体像を「数値(重み付き)で共有」したい? JSS を標準にする この 3 つの目的を再確認(どれが最優先か) 急性期:毎日 1 回/回復期:週 1 回(曜日固定)
標準スケールで変化が出た(または疑う)? 補完で NIHSS(詳細化)を追加 標準を継続(条件固定を優先) 同日中に追加 1 回(前回比の確認)

詳しい評価手順は「各論」に渡す

このページ(親・総論)は「使い分け」と「運用」に絞るほど、各論(手順記事)とカニバりにくくなります。採点や実施手順を詳しく確認したい場合は、各論で「そのスケールだけ」を深掘りするのが最短です。

採点や実施手順を確認したい場合は、各論へ:NIHSS の評価方法(手順と採点のコツ)

現場の詰まりどころ:点数が “ 神経症候 ” を表していない日

現場で一番ズレやすいのは、「動けない=神経症候が悪化」と短絡することです。実際には疼痛・固定具・倦怠感・鎮静・せん妄・睡眠不足などで「出力が落ちる」日があり、スケールはその影響も拾ってしまいます。

ここを区別できると、点数の読み違い(誤った悪化判定)が減ります。次の 3 つだけ固定すると、再評価の質が上がります。

記録・再評価のコツ:点数だけで完結させない

スケールは点数が強い一方、点数だけでは意思決定に足りない場面が出ます。おすすめは、点数に「条件」と「主症候」を 1 行だけ添える運用です。これだけで、他職種が読み違えにくくなります。

再評価では「前回と同じ条件」をどこまでそろえたかが結果を左右します。最低限、評価時刻・体位・補助具・鎮静や疼痛など外乱の有無はセットで残し、そろわない日は「そろわなかった理由」を 1 行で残すだけでも比較の質が上がります。

表 4:点数が揺れた日の “ 条件固定 ” 最小セット(そのままカルテに残す)
残す項目 一言テンプレ
評価時刻 朝回診前/リハ介入前/食後 「評価時刻を固定して経過比較」
体位・環境 ベッド角度、端座位、車椅子座位 「体位と環境を同条件で実施」
補助具・介助 装具、スリング、固定具、酸素、介助量 「補助具/介助量を前回と統一」
外乱 疼痛、眠気、せん妄、薬剤変更、疲労 「外乱あり:点数の解釈に注意」
主症候( 1 行 ) 注意、言語、片麻痺など 「主症候:◯◯(所見 1 行)」

よくある失敗: OK / NG の直し方(最小チェック)

点数がズレたときに「何がズレたか」を言語化できると、チームの判断がそろいます。下表は、現場で頻出の “ 読み違い ” を OK / NG と記録の型で固定したものです。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

表 5:よくあるズレ( NG → OK と記録の一言)
よくあるズレ NG 例 OK の整え方 記録の一言
疼痛や固定具で動けない 点数だけ記録して悪化扱い 固定具・疼痛・ ROM 制限を確認し、同条件で再評価 「疼痛(部位)と固定具の影響あり。同条件で再評価予定」
鎮静・眠気・せん妄 意識の揺れを無視して比較 評価時刻を固定し、眠気やせん妄の有無を併記 「眠気強く反応低下。点数の解釈に注意」
失語・注意障害で指示が通らない 不随意=麻痺と決めつける 声かけを単純化し、模倣など反応が出る条件を探す 「指示理解に波。模倣で反応確認し所見を併記」
点数は同じだが様子が違う 「変化なし」で終える 反応時間・疲労・代償の増減を 1 行で補足 「点数同等だが反応遅延・疲労増。経過観察」

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 点数が同じでも「様子が違う」と感じるとき、どう扱えばいいですか?

A. 点数が同じでも、反応の速さ、疲労の出方、代償運動、注意の散りやすさなどが変わることはよくあります。点数は “ 見取り図 ” と割り切り、変化を感じた要素を 1 行だけ所見で補完すると、経過が追いやすくなります。

Q2. 鎮静・眠気・せん妄がある日は、評価は中止した方がいいですか?

A. 中止よりも「条件が違う」と明記して残す方が実務的です。評価時刻を固定し、眠気やせん妄の有無を併記すると “ 点数の解釈の幅 ” が共有され、誤った悪化判定を減らせます。

Q3. 失語や注意障害が強いと、運動の評価が難しいです

A. 運動が出ない理由が「麻痺」なのか「指示理解・注意」なのかを切り分けるのが要点です。声かけを単純化し、模倣や視線誘導など反応が出やすい方法で “ できる条件 ” を探し、その条件を記録に残すと再評価がそろいます。

Q4. リハ介入の安全判断に直結するのは、どこをそろえるべきですか?

A. 最低限は「評価時刻・体位・補助具(装具や固定具)・外乱(疼痛/眠気/せん妄)」です。ここがバラつくと、点数差が “ 介入の効果 ” なのか “ 条件差 ” なのかが判別しにくくなります。まずは条件固定を先に整えると、安全判断がブレにくくなります。

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参考文献

  • Brott T, Adams HP Jr, Olinger CP, et al. Measurements of acute cerebral infarction: a clinical examination scale. Stroke. 1989;20(7):864-870. doi: 10.1161/01.STR.20.7.864PubMed
  • Côté R, Hachinski V, Shurvell BL, et al. The Canadian Neurological Scale: a preliminary study in acute stroke. Stroke. 1986;17(4):731-737. doi: 10.1161/01.STR.17.4.731PubMed
  • 日本脳卒中学会. Japan Stroke Scale( JSS )調査票(第 5 版).(PDF
  • Nishimura H, Tachibana H, Iwamoto Y, Sugita M. Clinical application of Japan Stroke Scale for acute stroke Patients. Japanese Journal of Stroke. 1999;21(4):423-429. doi: 10.3995/jstroke.21.4_423

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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