脳卒中の重症度・転帰スケール総論|NIHSS・mRS・BI・FIMの使い分け

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脳卒中の重症度・転帰スケール総論| NIHSS / mRS / BI / FIM の使い分け

評価が「点数」で止まると、方針が決まりません。

臨床で迷わない「評価 → 目標 → 介入 → 再評価」の組み立てを、チェックリストでまとめています。

PT キャリアガイド(評価→方針の型)を見る

この記事でわかること

結論:脳卒中の評価は「神経学的重症度( impairment )」と「生活自立度( disability )」を分けて持つと、説明と意思決定が速くなります。急性期は NIHSS で “いまの神経学的欠損” を揃え、経過・退院・研究比較は mRS で “生活の到達点” を揃えます。介助量の具体化は BI FIM が担当し、チーム共有(看護・ MSW ・ケアマネ)まで一気に通せます。

本記事は、 NIHSS / mRS / BI / FIM を「いつ・何のために・どう記録するか」で整理し、点数を “判断の言葉” に翻訳するための最短ルートを作ります。まずは比較表で役割分担を押さえ、次に病期別フローで運用に落とし込みましょう。

早見: 4 尺度の役割分担(どれを使う?)

表は横にスクロールできます。

脳卒中でよく使う 4 尺度の比較(成人・病期別の基本)
尺度 何を見る(軸) いつ使う(病期) 目安時間 使い方のコツ(要点)
NIHSS 神経学的欠損の重症度(急性の変化) 急性期(入院直後〜治療前後) 約 5–10 分 「いま悪い所」を揃える。経時で “悪化/改善” を見逃さない。
mRS 生活自立度の到達点(転帰) 回復期〜生活期(退院前後・ 90 日など) 約 3–10 分 “できる ADL ” ではなく “生活として回っているか” を確認する。
BI 基本 ADL の介助量(全体像) 急性〜回復期(スクリーニング・経過) 約 5–10 分 ボトルネック(移乗・歩行・更衣など)を先に特定して共有する。
FIM 介助量の段階( 1–7 )+ 認知も含む 回復期(入退院・週次の変化) 約 15–30 分 「している ADL 」で採点し、家族介助・サービス設計に翻訳する。

病期別:評価 → 方針につなぐ 5 ステップ

結論:点数は “全て書く” より、意思決定に効く情報だけ抽出して並べると現場が回ります。以下の 5 ステップを型にすると、急性期〜退院支援までブレにくくなります。

脳卒中の病期別フロー(評価 → 方針 → 共有の最短手順)
ステップ 目的 主に使う尺度 記録で書く一文(型)
1 重症度を揃える(治療・リスク共有) NIHSS 「急性期の神経学的重症度は NIHSS で共有し、経時変化を監視する」
2 介助量の全体像を掴む(まず困る所) BI 「基本 ADL のボトルネックは BI で抽出し、観察ポイントを統一する」
3 介助量を段階化(退院説明・家族負担) FIM 「している ADL の介助量を FIM の段階で示し、支援量に翻訳する」
4 生活自立度の到達点を言語化(転帰) mRS 「生活として回る水準を mRS で整理し、到達点(転帰)を共有する」
5 目標・介入・再評価を一本化(説明できる計画) 上の 4 尺度を要約して統合 「評価 → 目標 → 介入 → 再評価の順で、次の 1 週間の焦点を 2 行で書く」

mRS を使うときの “迷いどころ” と解決策

mRS は「生活自立度の到達点」を揃える強い指標ですが、現場では判定のブレが起こりやすいのも事実です。ここは “コツ” ではなく、確認順を決めると安定します。

mRS の判定がブレる場面と、詰まりを減らす確認順(成人・脳卒中)
場面 ありがちミス 直し方(確認順) 記録ポイント
退院前後 「訓練場面の ADL 」で判定してしまう 生活として “回っているか” → 介助の頻度 → 見守りの必然性 の順で確認 「誰が・いつ・何を手伝うか」を一文で残す
家族同居 手厚い介助で “できているように見える” 本人単独での成立度 → 家族が不在でも回るか → 代替手段 の順で確認 家族介助の “中身” を具体語で書く
高次脳機能 運動は軽いのに生活が回らない理由が曖昧 安全管理(服薬・火の元・外出)→ 監督の必要性 → 具体例 の順で確認 事故リスクと監督の要否を明確化
外来・生活期 改善が “点数” に出にくく、伝わらない 生活範囲 → 役割(家事・仕事)→ 支援量 の順で変化を言語化 「できるようになった生活行為」を例で残す

mRS の判定手順や 0–6 の考え方を先に整理したい場合は、当ブログの 修正ランキンスケール( mRS )の記事 から入ると、用語が揃って迷いが減ります。

点数を「意思決定の言葉」に翻訳するコツ

結論:同じ点数でも、次の 3 つが書けないと「評価したのに決められない」状態になります。逆に言うと、ここまで書けば “評価が効く” ようになります。

  • どの場面で、誰の介助が、どの頻度で必要か(介助量の具体)
  • 安全管理(転倒・誤嚥・せん妄・内服)で、監督が要るか(赤旗)
  • 退院先の要件(家族の支援量・住環境・サービス)に照らして成立するか

BI や FIM は “介助の中身” を書くための道具、mRS は “生活自立度の到達点” を揃える道具、NIHSS は “急性期の神経学的欠損” を揃える道具です。役割を分けて持ち、最後に 2 行で統合すると、説明も記録も速くなります。

症例でイメージ:同じ ADL でも「転帰」の説明は変わる

例:歩行は見守りで可能、トイレも何とか自立している一方で、注意障害と失行があり、外出・服薬管理・火の元が不安で家族の監督が必要なケースを想定します。

このとき、BI や FIM は “介助量” を具体に示すのに強い反面、「生活として回るか」は別軸です。mRS は “生活の成立度” を軸にしているため、安全管理の監督が必須なら転帰の説明が変わることをチームで共有しやすくなります。評価は点数で終わらせず、「生活が回る条件」を 1 文で言語化して、次の介入(環境調整・家族指導・サービス設計)に落としましょう。

現場の詰まりどころ:よくある失敗と直し方

結論:詰まりは「尺度の問題」ではなく、並べ方で起きます。 4 つを同列に書くのではなく、「急性(欠損)→ 介助量 → 生活の到達点」の順に並べるだけで、説明が通ります。

よくある失敗(OK / NG)早見(成人・脳卒中の記録とカンファ)
場面 NG(点数だけ) OK(判断の言葉) 直すコツ
急性期カンファ 「 NIHSS ○ 点」だけで終了 「 NIHSS で欠損を共有し、 24–48 時間で悪化の兆候を監視」 経時の “変化” を一言で足す
回復期の週次 「 BI / FIM が上がった」だけ 「移乗が監視へ、トイレは準備のみ。家族介助は 1 人で可能」 介助の “中身” を 1 例で示す
退院支援 「 mRS だけで退院先を決める」 「生活が回る条件(監督・環境・サービス)を満たすかで判断」 要件(条件)で書く
家族説明 点数を読み上げて終わる 「誰が・いつ・何を」手伝うかを、日課に沿って説明 1 日の流れで翻訳する

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

NIHSS と mRS は、どちらを優先して見ればいいですか?

病期で優先が変わります。急性期は NIHSS が優先で、治療前後の変化や悪化の見逃し防止に向きます。回復期〜生活期は mRS が優先で、「生活として回る到達点(転帰)」を揃えるのに向きます。両者は同じ “重症度” ではなく、見る軸が違います。

BI と FIM は両方必要ですか?

運用目的で決めます。短時間で ADL の全体像とボトルネックを掴むなら BI が便利です。介助量を段階化して、家族介助や退院調整に翻訳するなら FIM が強みを発揮します。施設の運用(会議体・記録様式)に合わせて、主軸を決めるとブレません。

mRS の判定がスタッフでズレます。どうすると良いですか?

ズレは “印象採点” が原因になりがちです。生活が回る条件(監督の要否、介助の頻度、外出や安全管理)を、確認順に沿って聞き取るとブレが減ります。研究では構造化面接で一致度が改善した報告もあります。

点数が良くなっているのに、退院後に困ります。

点数は「できる/できない」を示せても、「生活が回る条件」まで自動で教えてくれるわけではありません。安全管理、環境、支援量、サービス設計の要件を別で確認し、点数を “生活の言葉” に翻訳して説明するのがコツです。

参考文献

  1. Brott T, Adams HP Jr, Olinger CP, et al. Measurements of acute cerebral infarction: a clinical examination scale. Stroke. 1989;20(7):864-870. doi:10.1161/01.STR.20.7.864 / PubMed:2749846
  2. van Swieten JC, Koudstaal PJ, Visser MC, Schouten HJ, van Gijn J. Interobserver agreement for the assessment of handicap in stroke patients. Stroke. 1988;19(5):604-607. doi:10.1161/01.STR.19.5.604 / PubMed:3363593
  3. Mahoney FI, Barthel DW. Functional evaluation: the Barthel Index. Md State Med J. 1965;14:61-65. PubMed:14258950
  4. Keith RA, Granger CV, Hamilton BB, Sherwin FS. The functional independence measure: a new tool for rehabilitation. Adv Clin Rehabil. 1987;1:6-18. PubMed:3503663
  5. Dodds TA, Martin DP, Stolov WC, Deyo RA. A validation of the functional independence measurement and its performance among rehabilitation inpatients. Arch Phys Med Rehabil. 1993;74(5):531-536. doi:10.1016/0003-9993(93)90119-U / PubMed:8489365
  6. Wilson JTL, Hareendran A, Grant M, et al. Improving the assessment of outcomes in stroke: use of a structured interview to assign grades on the modified Rankin Scale. Stroke. 2002;33(9):2243-2246. doi:10.1161/01.STR.0000027437.22450.BD / PubMed:12215594

おわりに

脳卒中の評価は、急性期の安全の確保 → 欠損の定量化 → 介助量の翻訳 → 生活の到達点(転帰)の共有 → 再評価、の順に “流れ” を作ると、チームの意思決定が速くなります。面談準備チェックと職場評価シートを使って、評価結果を「次の一手」に落とし込みたい場合は こちら も活用してください。

著者情報

rehabilikun rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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