脳卒中の重症度・転帰評価の使い分け|NIHSS・mRS・BI・FIM 総論
脳卒中評価は、神経学的重症度と生活の到達点(転帰)を分けて運用すると、判断が速くなります。本記事は NIHSS・mRS・BI・FIM を「いつ・何のために使うか」で整理し、急性期から退院後まで迷いにくい流れを示す総論ページです。
結論はシンプルです。急性期は NIHSS、回復期は BI/FIM、退院前後は mRS を主軸に置くと、評価→共有→次アクションがつながります。
まず結論:4 尺度は「競合」ではなく「役割分担」
NIHSS は神経症候の重さをそろえる尺度、mRS は生活到達点をそろえる尺度、BI/FIM は介助量と機能の変化を具体化する尺度です。1 つで完結させるより、病期と目的で主尺度を切り替える方が実務で再現しやすくなります。
特にカンファレンスでは、点数単体より「点数+条件+次の対応」をセットで示すと、職種間の認識差が減ります。
早見表:NIHSS/mRS/BI/FIM の使い分け
| 尺度 | 主目的 | 主な場面 | 強み | 運用上の注意 |
|---|---|---|---|---|
| NIHSS | 神経学的重症度の把握 | 急性期初期、悪化時 | 神経症候を分解して共有しやすい | 意識・失語・注意障害の影響を併記 |
| mRS | 転帰(生活到達点)の把握 | 退院時、外来フォロー | 転帰を短く共通言語化できる | ADL の細部は BI/FIM で補う |
| BI | ADL 自立度の把握 | 病棟運用、退院調整 | 短時間で介助量の概略を示せる | 補助具・介助量など条件固定が必須 |
| FIM | ADL+認知を含む機能評価 | 回復期、多職種共有 | 項目粒度が高く介入計画に直結 | 施設内で採点基準を統一する |
病期×尺度マップ(いつ何を主軸にするか)
病期と目的を先に合わせると、評価の迷いが減ります。急性期は神経学的重症度、回復期は ADL 機能、退院前後は転帰を主軸に置く運用が実践的です。
図は差し替え用です。公開時は画像 URL を実ファイルに置き換えてください。
| 病期 | 主尺度 | 補助尺度 | 意思決定の焦点 |
|---|---|---|---|
| 急性期 | NIHSS | BI(必要に応じ FIM) | 神経症候の変化と離床リスクの共有 |
| 回復期 | FIM(または BI) | NIHSS(参照) | ADL 改善の優先順位と介助量最適化 |
| 退院前後〜生活期 | mRS | BI/FIM | 到達点の共有と支援量の最終調整 |
症例でみる使い分け(急性期と回復期)
ここでは 2 症例で、評価の回し方を比較します。共通ルールは「目的を宣言→条件を固定→前回比で解釈→次アクションを明記」です。
症例 A:急性期で NIHSS を主軸に進める
背景:発症早期。片麻痺と構音障害があり、神経症候の変動確認が最優先。
評価セット:NIHSS を主軸、BI を補助、退院調整で mRS を追加。
介入の要点:NIHSS の推移と離床レベルを同時に追い、BI で介助量の理由を明文化。
再評価:点数だけでなく、時間帯・介助者・補助具を固定して前回比を解釈。
結論:急性期は NIHSS 主軸+BI 補助、退院時に mRS で到達点をそろえる。
症例 B:回復期で BI/FIM を主軸に進める
背景:回復期病棟。神経症候は大きく変動せず、ADL 改善が主課題。
評価セット:FIM を主軸(必要に応じ BI 併用)、NIHSS は参照、退院前に mRS。
介入の要点:FIM 下位項目で詰まりを特定し、移乗・更衣・トイレ動作の優先順位を統一。
再評価:週単位で前回比を確認し、改善停滞時は課題設定と採点基準を見直す。
結論:回復期は BI/FIM 主軸、退院前に mRS を重ねると共有が速い。
2 症例の比較まとめ
| 観点 | 症例 A(急性期) | 症例 B(回復期) |
|---|---|---|
| 主尺度 | NIHSS | FIM(必要に応じ BI) |
| 補助尺度 | BI → 退院前に mRS | NIHSS は参照 → 退院前に mRS |
| 焦点 | 神経症候の変化把握 | ADL 改善と介助量最適化 |
| 記録の要点 | 条件固定+前回比 | 項目別の詰まり+週次比較 |
現場の詰まりどころ
評価が止まる原因は「尺度の選択ミス」より「運用の不一致」であることが多いです。まず次の 3 点をそろえると、点数が行動につながります。
よくある失敗
代表的なのは、NIHSS と mRS を同じ軸で比較することです。NIHSS は神経症候、mRS は生活到達点で、比較対象が異なります。次に多いのは BI/FIM の測定条件が毎回違うこと、そして点数のみ記録して解釈理由を残さないことです。
点数・条件・次の対応を 1 セットで残せば、再評価とカンファレンスの再現性が上がります。
回避の手順(チェック)
- 評価前に「何を決めるための尺度か」を宣言する(重症度/機能/転帰)
- 測定条件を固定する(時間帯、介助量、補助具、環境)
- 前回比を短文で記録する(改善・不変・悪化の理由)
- 次回評価の時点を明記する(再評価タイミング)
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. NIHSS と mRS はどちらを優先しますか?
急性期初期の重症度把握は NIHSS、退院時や外来フォローの到達点整理は mRS を優先します。代替ではなく、目的別の併用が基本です。
Q2. BI と FIM はどちらを使うべきですか?
短時間で介助量の概略を示すなら BI、項目粒度を上げて多職種共有するなら FIM が有効です。施設内で主尺度を固定するとブレにくくなります。
Q3. 点数が改善しない時に最初に見るべき点は?
まず測定条件の不一致を確認します。時間帯・介助者・補助具が違うと、前回比較そのものが成立しません。
Q4. カンファでの最短共有フォーマットは?
「今回点数/前回比/測定条件/次アクション」の 4 点を 1 文で伝えると、連携が速くなります。
次の一手
- 運用を整える:脳卒中評価ハブ(全体像)
- 共有の型を作る:NIHSS・CNS・JSS の重症度比較(すぐ実装)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Brott T, Adams HP Jr, Olinger CP, et al. Measurements of acute cerebral infarction: a clinical examination scale. Stroke. 1989;20(7):864-870. doi:10.1161/01.STR.20.7.864
- van Swieten JC, Koudstaal PJ, Visser MC, Schouten HJ, van Gijn J. Interobserver agreement for the assessment of handicap in stroke patients. Stroke. 1988;19(5):604-607. doi:10.1161/01.STR.19.5.604
- Mahoney FI, Barthel DW. Functional evaluation: The Barthel Index. Md State Med J. 1965;14:61-65.
- Keith RA, Granger CV, Hamilton BB, Sherwin FS. The Functional Independence Measure: a new tool for rehabilitation. Adv Clin Rehabil. 1987;1:6-18.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


