FILS( Food Intake LEVEL Scale )とは?嚥下障害の食事摂取レベルを 1〜10 で共有する評価軸
FILS( Food Intake LEVEL Scale )は、嚥下障害の「いま、どの程度経口摂取が成立しているか」を 1〜10 で整理し、チームで共有するための尺度です。ポイントは、食形態そのものではなく、経口摂取の成立度と代替栄養の併用状況を同時に捉えることです。
このページでは、定義だけで終わらせず、判定で迷いやすい場面、記録の残し方、更新タイミングまでを「現場で回る型」にまとめます。まずは判定軸をそろえ、申し送りのズレを減らしていきましょう。
FILS は何を測る?食形態ではなく「摂取成立度」を測る
FILS は「何を食べたか」より、「どの程度、経口摂取として成立しているか」を追う尺度です。したがって、同じ食形態でも、見守りの要否や代替栄養の有無で評価は変わります。
一方、食形態コード(例:学会分類や施設コード)は「食べ物の形」をそろえるための枠組みです。混同を防ぐには、記録で 摂取レベル(FILS)と食形態を併記する運用が有効です。
FILS・FOIS・食形態コードの違い(早見)
| 指標 | 主に見るもの | 段階 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| FILS | 経口摂取の成立度+代替栄養の併用 | 1〜10 | 経過共有、申し送り、退院時の要約 |
| FOIS | 機能的な経口摂取レベル | 1〜7 | 機能変化の追跡、研究・比較 |
| 食形態コード | 食物物性・形態の標準化 | 施設・分類依存 | 配膳・調理指示、厨房連携 |
5 分でできる判定フロー(現場用)
次の運用サイクル図を使って、観察→判定→共有→再評価をチームで反復すると、FILS の更新精度が安定しやすくなります。

- 直近 24〜48 時間の摂取実態を確認する(食事量、むせ、疲労、介助量)。
- 代替栄養の有無を確認する(経管・補液など)。
- 経口摂取が「成立しているか」を軸に FILS を仮判定する。
- 判定理由を 1 行で残す(例:昼食 8 割摂取、薄い液体で咳 2 回、経管併用)。
- 次回更新条件を決める(例:3 日連続で安定すれば再判定)。
続けて読む:摂食機能療法の記録テンプレ(書き分け例)
現場の詰まりどころ
FILS が動かない原因は、判定スキル不足よりも「観察項目がそろっていない」ことが多いです。次の 3 点を先に固定すると、評価の再現性が上がります。
よくある失敗(FILS がぶれる原因)
| 失敗 | 起こる理由 | 起こる問題 |
|---|---|---|
| 食形態だけで判定する | 配膳情報のみで判断してしまう | 摂取成立度を反映できず、過大評価/過小評価が起きる |
| 単回観察で固定する | 時間帯差や体調差を見ない | 日内変動を取りこぼし、更新が遅れる |
| 代替栄養の記載漏れ | 経口摂取情報だけを記録する | チーム共有時に実態とズレる |
回避の手順(チェックリスト)
| チェック項目 | 見るポイント | 記録例(短文) |
|---|---|---|
| 摂取量 | 主食・副食・水分の実摂取 | 昼 7 割、夕 8 割 |
| 安全性 | むせ、湿性嗄声、SpO2 低下 | 薄い液体で咳 1〜2 回 |
| 介助量 | 全介助/一部介助/見守り/自立 | 見守りで完食可能 |
| 代替栄養 | 経管・補液の併用状況 | 夜間経管 400 ml 併用 |
| 更新条件 | 再判定のタイミング | 3 日安定で再評価 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
FILS と FOIS はどちらを優先して使うべきですか?
病棟での申し送りや日々の運用では、まず FILS で摂取成立度をそろえると実装しやすいです。研究比較や施設間の共通化を重視する場面では FOIS を併記すると解釈が安定します。重要なのは「どちらか一方」ではなく、目的で使い分けることです。
食形態コードと FILS は重複しませんか?
重複しません。食形態コードは「何を出すか」、FILS は「どの程度成立しているか」を示します。記録では併記すると、配膳と臨床評価の橋渡しができます。
FILS はどのタイミングで更新すればよいですか?
病態変化、食形態変更、介助量変化、代替栄養の変更時は更新候補です。加えて、安定期でも週次など定期更新を置くと、退院時サマリーの根拠が明確になります。
次の一手
- 運用を整える:栄養・嚥下ハブ(全体像)
- 共有の型を作る:摂食機能療法の記録テンプレ(すぐ実装)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Kunieda K, Ohno T, Fujishima I, et al. Reliability and validity of a tool to measure the severity of dysphagia: The Food Intake LEVEL Scale. J Pain Symptom Manage. 2013;46(2):201-206. doi:10.1016/j.jpainsymman.2012.07.020(DOI)
- Crary MA, Mann GDC, Groher ME. Initial psychometric assessment of a functional oral intake scale for dysphagia in stroke patients. Arch Phys Med Rehabil. 2005;86(8):1516-1520. doi:10.1016/j.apmr.2004.11.049(PubMed)
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会医療検討委員会. 嚥下調整食分類 2021(JDD2021).
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


