座位 mFRT のやり方|記録シート付き

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座位 mFRT は条件固定で使う座位バランス評価です

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関連:歩行・バランス評価の選び方
代表子記事:FRT(立位)のやり方

座位 mFRT( Modified Functional Reach Test )は、立位が難しい対象者でも、座位での前方・側方リーチ距離を使って座位バランスを定量化できる評価です。脳卒中、脊髄損傷、車椅子生活、起立性低血圧、重度 deconditioning など、まず座位で安全に確認したい場面で使いやすい方法です。

この記事では、mFRT の準備、声かけ、測定方向、無効条件、記録の型、中止基準までを 1 ページで整理します。単に「何 cm 伸びたか」ではなく、「どの条件で測り、どの動きで距離が出たか」まで残せる形にすることで、再評価やチーム共有に使える数字へ変換します。

座位 mFRT 記録シートをダウンロード

座位 mFRT は、距離だけでなく「測定方向・姿勢条件・測定点・無効理由」を同じ形式で残すことが重要です。印刷して使える A4 記録シートを用意したので、評価時のメモや再評価の比較に活用してください。

PDF:座位 mFRT 記録シート(A4・1枚)

基本情報、測定条件、前方・左右リーチ、無効理由、再評価メモを 1 枚で記録できます。

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このページで決めること / 決めないこと

このページで決めるのは、座位 mFRT を誰に、どの条件で、何を無効にして、どう記録するかです。立位 FRT のカットオフや転倒リスク判定を詳しく扱うページではありません。

役割を分けると、記事同士の重複が減ります。立位で前方リーチを測る場合は FRT、立位が難しく座位で安定余裕を見たい場合は mFRT、歩行・バランス評価全体の選び方は親記事で確認する、という分担にします。

※ 表は横スクロールできます。

FRT と座位 mFRT の使い分け(成人・臨床運用)
評価 主に見ること 向いている場面 深追いしないこと
FRT(立位) 立位での前方安定余裕 立位保持が可能で、支持基底面を変えずに前方リーチを測れる場合 座位活動の左右差や車椅子上のリーチ課題
座位 mFRT 座位での体幹制御、前方・側方リーチ、支持条件の保ち方 立位困難、車椅子中心、脳卒中・脊髄損傷などで座位バランスを追いたい場合 歩行能力や転倒リスクを単独で断定すること

mFRT を使う場面

mFRT は「立てるかどうか」を見る評価ではなく、座位で支持条件を保ったまま、どこまでリーチできるかを確認する評価です。座位での安定余裕を数値化できるため、移乗、更衣、食事、車椅子上動作の課題と結びつけやすい特徴があります。

とくに、立位評価へ進む前の安全確認や、座位活動の左右差を追いたい場面で使いやすいです。

  • 立位が禁止、または見守りでも危険が高い
  • 起立性低血圧、疼痛、疲労、重度 deconditioning で立位評価が安定しない
  • 車椅子生活が中心で、座位での前方・側方リーチ課題が生活動作に影響している
  • 脳卒中後に体幹非対称、患側への荷重回避、側方リーチの左右差を確認したい
  • 脊髄損傷など非立位者の座位バランスを経時的に追いたい

準備は「椅子・足底・測定点・開始姿勢」を固定します

mFRT の価値は、同じ条件で繰り返せることです。数 cm の変化を再評価に使うには、椅子、座面高、足底、骨盤、上肢開始位置、測定点を固定しておく必要があります。

まずは、次の 6 点を院内でそろえると、評価者が変わっても結果を比較しやすくなります。

  • 座面:背もたれなしの椅子、またはプラットフォームを基本にする。車椅子で行う場合は背もたれ接触、クッション、座面高を必ず記録する。
  • 足底:左右足底接地を基本にする。足台や免荷条件が必要な場合は、毎回同じ条件で行う。
  • 骨盤:中間位を基本にし、過度な後傾や座り直しで距離を稼がないよう確認する。
  • 上肢:原則として肩 90° 屈曲・肘伸展で開始する。肩関節可動域制限がある場合は、同一肢位で追跡する。
  • 測定点:第 3 中手骨頭、第 5 指、尺骨茎状突起など、採用するランドマークを院内で統一する。
  • 測定ライン:壁固定メジャー、または水平に固定したメジャーを使い、測定中に被検者が触れない位置に置く。

手順は練習後に本番 3 回を測ります

mFRT は、練習で動きを確認してから本番を複数回測定する流れにすると安定します。前方だけでなく、右側方・左側方も測ると、体幹制御や左右差を拾いやすくなります。

基本の流れは次の通りです。施設内では、採用する方向と代表値の出し方を固定してください。

座位mFRTの実施と記録の5ステップを示す図版
図:座位 mFRT の実施・記録 5 ステップ
  1. 安全確認:めまい、疼痛、座位保持、血圧変動、疲労を確認する。
  2. 開始姿勢を固定:骨盤中間位、足底接地、体幹正中、肩 90° 屈曲を確認する。
  3. 開始位置を記録:測定点をメジャー上で確認し、開始位置を合わせる。
  4. 練習:1〜2 回行い、臀部離床、足の移動、回旋代償が出ないか確認する。
  5. 前方リーチ:「お尻と足はそのままで、届く範囲まで前に伸ばします」と声をかける。
  6. 側方リーチ:「おへそは正面のまま、横に寄せます」と声をかけ、体幹回旋で距離を稼がないようにする。
  7. 本番測定:各方向 3 回を測定し、平均値または最大値のどちらを採用するかを統一する。

記録は「距離+条件+無効理由」まで残します

mFRT は点数ではなく距離( cm )で残す評価です。そのため、距離だけを書くと、次回の評価者が同じ条件で再現できません。記録には、方向、代表値、姿勢条件、測定点、無効試行をセットで残します。

まずは、次の表を院内の最小記録セットとして使うと、再評価と申し送りが安定します。

※ 表は横スクロールできます。

mFRT の最小記録セット(成人・座位バランス評価)
記録項目 記録例 目的 注意点
測定方向 前方/右側方/左側方 方向差・左右差の確認 患側・非患側表記も統一する
姿勢条件 背もたれなし/足底接地/座面高 42 cm 再現性の担保 車椅子、クッション、足台使用は必ず残す
測定点 第 3 中手骨頭、または尺骨茎状突起 評価者間のズレを減らす 測定点を途中で変えない
試行回数 練習 2 回 → 本番 3 回 同条件での比較 疲労が強い場合は休息時間も残す
代表値 本番 3 回平均:前方 18.3 cm 経時比較 平均か最大値かを施設内で統一する
無効理由 臀部離床、足部移動、手支持、回旋代償 見かけの改善を避ける 無効時はやり直し、または中止理由として残す

解釈は「距離・方向差・代償」をセットで見ます

mFRT の結果は、距離が長いか短いかだけで判断しません。前方は出るが側方が短い、右側だけ短い、肩甲帯や体幹回旋で距離を稼いでいる、という背景を見ることで介入につながります。

臨床では、次の 3 点をセットで確認すると、次の一手が決めやすくなります。

  • 距離:同条件で前回より伸びたか、疲労後や介入後に変化するかを見る。
  • 方向差:前方、右側方、左側方の差から、側方制御や患側荷重の課題を拾う。
  • 代償:肩甲帯突出、体幹回旋、臀部離床、足部移動で距離を稼いでいないか確認する。

なお、mFRT の変化量を読むときは、対象疾患や測定条件が近いデータを参考にしつつ、まずは同一条件での経時比較を優先します。疾患横断で使える単一のカットオフとして扱わない方が安全です。

よくある失敗と修正( OK / NG 早見)

mFRT で多い失敗は、支持条件が変わったまま距離だけを採用してしまうことです。臀部離床、足部移動、手支持、体幹回旋が入ると、座位バランスではなく代償で距離が伸びて見えます。

評価前に NG と修正の声かけを共有しておくと、チーム内で結果の意味がそろいやすくなります。

※ 表は横スクロールできます。

mFRT で多い NG と修正ポイント(成人・座位)
場面 NG なぜ問題か 修正の声かけ例
支持基底面 臀部が浮く/座り直す リーチではなく身体移動になり、距離が過大になる 「お尻は座面につけたまま伸ばします」
足底 足が前に出る/踏ん張り直す 支持条件が変わり、前回値と比較できない 「足の位置は今のままにしましょう」
上肢 肩甲帯突出だけで稼ぐ 体幹制御の評価になりにくい 「胸ごとゆっくり前に動くイメージです」
側方 体幹回旋で近道する 側方荷重移動ではなく回旋距離になりやすい 「おへそは正面のまま、横に寄せます」
安全確保 恐怖で手支持する/途中停止する 距離低下の原因がバランスか恐怖か判断しにくい 「怖くなったら止めて大丈夫です」

中止基準は距離より安全を優先します

mFRT は座位で実施できるため比較的安全に行いやすい評価ですが、循環変動、疼痛、恐怖、肩関節可動域制限がある場合は中止や条件変更が必要です。無理に最大距離を取るより、再現できる条件を残す方が臨床では使いやすくなります。

次の所見があれば、中止、休息、または条件変更を検討します。

  • めまい、悪心、冷汗、顔面蒼白、血圧低下など循環不良が出現する
  • 座位保持が不安定で、見守りだけでは転落リスクが高い
  • 疼痛や痙縮で動作が破綻し、同じ条件で反復できない
  • 肩 90° 屈曲が困難で、開始肢位が毎回変わる
  • 車椅子や座面条件が変わり、前回値との比較が難しい

現場の詰まりどころ

mFRT で止まりやすいのは、「距離は伸びたが代償だった」「再評価で条件が変わっていた」「側方リーチの左右差をどう記録するか迷う」の 3 点です。先に無効条件と記録の型を決めておくと、結果がチーム内で共有しやすくなります。

ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方や手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。評価・記録・報告の型をまとめて整理したい方は、PT キャリアガイドも参考になります。

PT キャリアガイドを見る

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. mFRT は前方だけで十分ですか?

A. 目的次第です。前方は体幹前方制御を見やすく、右側方・左側方は非対称や側方荷重移動の課題を把握しやすいです。移乗、更衣、車椅子上動作で左右差が問題になる場合は、側方も含めて同条件で測ると解釈しやすくなります。

Q2. 平均値と最大値はどちらを残すべきですか?

A. どちらか一方に統一することが重要です。臨床では「練習 1〜2 回 → 本番 3 回 → 本番 3 回の平均」を基本にすると、偶然の大きな 1 回に左右されにくくなります。最大値を採用する場合も、施設内で同じルールにしてください。

Q3. 車椅子でも実施できますか?

A. 実施できます。ただし、背もたれ接触、座面高、クッション、フットサポート、ブレーキ、足底接地の有無を必ず記録します。再評価では同じ車椅子・同じ座面条件で測ることが前提です。

Q4. 数 cm の変化は改善と判断できますか?

A. すぐに改善と断定せず、同一条件で測れているかを先に確認します。座面、足底、測定点、試行回数、代表値ルールがそろっていれば、経時変化として読みやすくなります。条件が変わっている場合は、距離の差よりも条件差として扱います。

Q5. 肩 90° 屈曲が難しい場合はどうしますか?

A. 原法通りの比較は難しくなります。痛みや可動域制限がある場合は、開始肢位を無理にそろえず、代替条件として記録します。再評価では同じ肢位で追跡し、他者の基準値やカットオフと単純比較しない方が安全です。

次の一手


参考文献

  1. Katz-Leurer M, Fisher I, Neeb M, Schwartz I, Carmeli E. Reliability and validity of the modified functional reach test at the sub-acute stage post-stroke. Disabil Rehabil. 2009;31(3):243–248. doi:10.1080/09638280801927830. PubMed
  2. Lynch SM, Leahy P, Barker SP. Reliability of measurements obtained with a modified functional reach test in subjects with spinal cord injury. Phys Ther. 1998;78(2):128–133. doi:10.1093/ptj/78.2.128. PubMed
  3. Duncan PW, Weiner DK, Chandler J, Studenski S. Functional reach: a new clinical measure of balance. J Gerontol. 1990;45(6):M192–M197. doi:10.1093/geronj/45.6.M192. PubMed
  4. Marchesi G, Ballardini G, Barone L, et al. Modified Functional Reach Test: Upper-Body Kinematics and Muscular Activity in Chronic Stroke Survivors. Sensors. 2022;22(1):230. doi:10.3390/s22010230. PubMed
  5. Shirley Ryan AbilityLab. Functional Reach Test / Modified Functional Reach Test. Rehabilitation Measures Database. Web
  6. SCIRE Professional. Modified Functional Reach Test (mFRT). Web

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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