直立検査(4-Stage)は 4 段階で静的バランスを確認する評価です
直立検査(4-Stage Balance Test)は、閉脚、セミタンデム、タンデム、片脚立位の順に足位を難しくし、静的バランスを確認する評価です。各段階を 10 秒保持できれば次へ進み、足部移動・支持・介助が必要になればその段階で中止します。
この記事では、PT / OT / ST が現場で使いやすいように、4 段階の手順、中止基準、タンデム 10 秒未満の読み方、記録例を整理します。広いバランス評価の選び方ではなく、「この検査を安全に実施し、どう記録するか」を決めるための記事です。
A4 記録シートを使って実施条件と結果をそろえる
直立検査は、足位・計時・中止基準が少し変わるだけで結果がブレます。再評価やチーム共有で使う場合は、到達段階、保持秒数、中止理由、背景因子、次のアクションを同じ型で残すことが重要です。
下の A4 記録シートでは、閉脚、セミタンデム、タンデム、片脚立位の 4 段階を 1 枚で記録できます。印刷して使う場合は、まず実施前チェックを埋めてから、各段階の保持秒数と中止理由を記入してください。
実施から記録までの流れを確認する
直立検査は、閉脚から片脚立位まで順に進め、各段階で 10 秒保持できるかを確認します。途中で足部移動・支持・介助が出た場合は、その段階で中止して、秒数と理由を記録します。
4-Stage Balance Test で決めること
4-Stage Balance Test で決めるのは、「どの足位まで安全に保持できるか」と「どの段階で崩れるか」です。閉脚で安定していても、支持基底面が狭くなるセミタンデムやタンデムで崩れる場合があります。
この検査は、転倒リスクを 1 つの数値で断定するためではなく、離床・歩行・見守りレベル・バランス練習の入口をそろえるために使います。特にタンデムを 10 秒保持できない場合は、転倒リスク上昇のサインとして、他の評価や背景因子と合わせて判断します。
やり方|閉脚から片脚立位まで各 10 秒で進めます
評価者は対象者の横に立ち、必要に応じて足位を介助でセットします。姿勢が安定した時点で計時を開始し、10 秒保持できれば次の段階へ進みます。対象者には「腕や体幹でバランスを取ってよいが、足は動かさない」と事前に説明します。
転倒兆候がある場合は、秒数の完遂より安全を優先します。検査中は、前方や後方から離れて見るのではなく、すぐに介助できる距離で見守ることが重要です。
| 段階 | 足位 | 合格基準 | 次へ進む条件 |
|---|---|---|---|
| 1 | 閉脚(両足をそろえる) | 10 秒保持 | 足部移動・支持なしで保持 |
| 2 | セミタンデム(後足の足背が前足の母趾に触れる) | 10 秒保持 | 足部移動・支持なしで保持 |
| 3 | タンデム(踵と足尖を接する) | 10 秒保持 | 足部移動・支持なしで保持 |
| 4 | 片脚立位 | 10 秒保持 | 足部移動・支持なしで保持 |
中止基準|足が動く・支持が出る・介助が必要なら止めます
中止の判断は、結果の再現性と安全性を保つうえで重要です。足部が動いた、壁や手すりに触れた、評価者の介助が必要になった、強い不安や転倒兆候が出た場合は、その時点で中止します。
「少し動いたけれど継続する」と、結果が過大評価になります。検査の目的は最大努力を引き出すことではなく、同じ条件で比較できる結果を残すことです。中止理由は、秒数とセットで記録します。
| 中止場面 | 判断 | 記録例 |
|---|---|---|
| 足部が動いた | その段階で終了 | タンデム 6 秒、右足前方へステップあり |
| 支持が出た | その段階で終了 | セミタンデム 8 秒、右手で手すり支持 |
| 介助が必要 | 安全優先で終了 | タンデム 3 秒、後方動揺にて軽介助 |
| 恐怖心・疼痛が強い | 無理に継続しない | 片脚立位は恐怖心強く未実施 |
判定|到達段階・保持秒数・背景因子をセットで読みます
判定は、「どの段階まで到達したか」だけでなく、到達段階の保持秒数を併記して読みます。たとえば、タンデム 2 秒と 9 秒では同じ未達でも臨床的な意味が異なります。
タンデムを 10 秒保持できない場合は、転倒リスク上昇のサインとして扱います。ただし、結果だけで歩行可否を断定せず、疼痛、恐怖心、装具、視覚、感覚障害、服薬、起立性低血圧、歩行速度なども合わせて確認します。
| 結果 | 読み方 | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 閉脚で不安定 | 静的立位そのものが不安定 | 立位保持、起立性低血圧、下肢支持性、環境調整 |
| セミタンデムで崩れる | 支持基底面が狭くなると不安定 | 見守りレベル、方向転換、狭い場所での移動 |
| タンデム 10 秒未満 | 転倒リスク上昇のサイン | 歩行補助具、バランス練習、住環境、転倒歴 |
| 片脚立位のみ不安定 | 高難度課題での左右差・支持性低下を疑う | 片脚立位、下肢筋力、感覚、疼痛、荷重戦略 |
現場の詰まりどころ|結果がブレる原因を先に固定します
直立検査で結果がブレる主因は、対象者の能力差だけではありません。足位の作り方、計時開始のタイミング、見守り位置、中止基準が毎回変わると、再評価で比較しにくくなります。
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。
よくある失敗と対策
| 失敗 | 起きること | 対策 | 記録に残すこと |
|---|---|---|---|
| 足位が毎回ズレる | 難易度が変わり比較不能になる | 足位の定義を共有し、必要時は同じ位置に介助でセットする | 足位の作り方 |
| 開始合図が曖昧 | 計時の誤差が増える | 姿勢安定後に「開始」と伝えて計時する | 開始条件 |
| 見守り位置が遠い | 転倒時の介助が遅れる | 対象者の横で即時介助できる距離を保つ | 見守り位置・介助量 |
| 足を動かしても継続する | 過大評価になる | 足部移動・支持・介助の時点で終了する | 終了条件 |
| 背景因子を書かない | 前回との比較が難しくなる | 疼痛、恐怖心、装具、疲労、服薬などを併記する | 背景因子 |
回避チェックリスト|実施条件を 30 秒で固定します
検査前に、環境、足位、計時、中止基準を短く確認しておくと、検者間のブレが減ります。院内・施設内で共有する場合は、下の 4 項目だけでも先にそろえると運用しやすくなります。
| 確認項目 | OK の条件 | 記録欄 |
|---|---|---|
| 環境 | 周囲障害物なし・転倒時の介助動線を確保 | 実施環境 |
| 足位セット | 閉脚、セミタンデム、タンデム、片脚の定義を統一 | 足位定義 |
| 計時ルール | 姿勢安定後に開始し、10 秒で終了 | 計時方法 |
| 終了条件 | 足部移動、支持、介助、強い不安で終了 | 終了条件 |
記録テンプレ|到達段階・秒数・中止理由を残します
記録では、到達段階だけでなく、各段階の保持秒数と中止理由を残します。再評価で見たいのは「できた/できない」だけではなく、どの条件で、どの程度安定していたかです。
| 記録項目 | 残す内容 | 記録例 |
|---|---|---|
| 到達段階 | 1〜4 のどこまで実施できたか | 段階 3(タンデム)まで実施 |
| 保持秒数 | 各段階の最大 10 秒までの保持時間 | 閉脚 10 秒、セミタンデム 10 秒、タンデム 6 秒 |
| 中止理由 | 足部移動、支持、介助、不安、疼痛など | タンデム 6 秒で左足部移動あり終了 |
| 背景因子 | 疼痛、恐怖心、装具、疲労、服薬、環境 | 右膝痛 NRS 3、恐怖心あり、装具なし |
| 介助・見守り | 見守り位置、介助量、転倒兆候 | 右側近位見守り、後方動揺時に軽介助 |
記録例:4-Stage Balance Test:閉脚 10 秒、セミタンデム 10 秒、タンデム 6 秒で左足部移動あり終了。片脚立位は未実施。右側近位見守り、介助なし。右膝痛 NRS 3、恐怖心軽度あり。タンデム 10 秒未満のため、歩行時見守りと環境調整を継続。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
杖や歩行器を使ったまま実施してもよいですか?
4-Stage Balance Test は、原則として補助具なし・開眼で実施します。補助具なしでは安全に実施できない場合は、無理に検査せず、別の評価や見守り下での立位・歩行評価へ切り替えます。
計時はいつから開始しますか?
足位をセットし、対象者の姿勢が安定した時点で開始します。足位を作っている途中から計時すると結果がブレるため、「準備、開始、10 秒で終了」の合図を統一します。
腕を広げてバランスを取っても中止ですか?
腕や体幹でバランスを取ることは許容される運用があります。ただし、足部移動、手すり支持、評価者の介助が出た場合は終了条件として扱います。院内ルールを決め、同じ基準で記録することが重要です。
タンデムが 10 秒未満だった場合はどう判断しますか?
転倒リスク上昇のサインとして扱い、歩行補助具、見守りレベル、環境調整、バランス練習を見直します。ただし、単独で断定せず、疼痛、恐怖心、感覚障害、起立性低血圧、転倒歴などと合わせて判断します。
片脚立位まで進めないと評価として不十分ですか?
不十分ではありません。4-Stage は「どこで崩れるか」を見る評価です。タンデム以前で中止した場合も、その段階と保持秒数、中止理由を残せば、再評価やチーム共有に使えます。
次の一手
- 全体像をそろえる:静的バランス評価の総論を見る
- すぐ実装する:片脚立位テストの記録ルールを確認する
参考文献
- Centers for Disease Control and Prevention. The 4-Stage Balance Test(STEADI). 2017. Official PDF.
- bpacnz / Health Quality & Safety Commission. The Four Stage Balance Test. Official PDF.
- Rossiter-Fornoff JE, Wolf SL, Wolfson LI, Buchner DM. A cross-sectional validation study of the FICSIT common data base static balance measures. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 1995;50A(6):M291-M297. doi:10.1093/gerona/50A.6.M291. DOI / PubMed.
- Joo B, Marquez JL, Osmotherly PG. Ten-Second Tandem Stance Test: A Potential Tool to Assist Walking Aid Prescription and Falls Risk in Balance Impaired Individuals. Arch Rehabil Res Clin Transl. 2022;4(1):100173. doi:10.1016/j.arrct.2021.100173. DOI / PubMed.
- de Abreu DCC, Bandeira ACL, Magnani PE, et al. Standing balance test for fall prediction in older adults: a 6-month longitudinal study. BMC Geriatr. 2024;24:947. doi:10.1186/s12877-024-05380-9. DOI.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


