結論|整形外科的テストは「部位 × 判断目的」で最初の 1〜2 本を決めます
整形外科的テストは、知っている数を増やすより、部位・主訴・判断目的から最初の 1〜2 本を選ぶことが大切です。この記事では、肩・膝・足関節・股関節・手関節 / 手部・肘関節を対象に、初回評価で迷わない選び方を整理します。
このページで扱うのは、手技の細かな実施方法ではなく、どの順番で選び、どう記録し、再評価につなげるかです。部位別の詳細手順は子記事へ分け、ここでは整形外科的テストを臨床で回すための親記事として位置づけます。
選び方|最初に決めるのはテスト名ではなく判断目的です
最初に決めるべきことは「どのテストを知っているか」ではなく、何を確かめたいかです。疼痛の局在、受傷機転、荷重時症状、しびれ、可動域終末痛などを見て、まず判断目的を 1 つに絞ります。
たとえば膝なら「半月板由来か」「靱帯不安定性か」、肩なら「腱板・インピンジメント寄りか」「不安定性寄りか」を先に分けます。判断目的が決まれば、最初の 1〜2 本を選びやすくなり、陽性所見が増えすぎても解釈がブレにくくなります。評価全体の順番は 評価ハブ で整理しています。
部位別 5 分フロー|最初の 1〜2 本を決める流れ
初回評価では、部位 → 判断目的 → 最初の 1〜2 本 → 追加条件 → 記録の順で進めると、検査の増やしすぎを防げます。すべてのテストを網羅するより、仮説に合う検査だけを選ぶほうが実務的です。
以下の部位別フローは、詳細手順へ進む前の入口です。陽性・陰性だけで断定せず、問診、動作観察、疼痛部位、左右差、再現性を合わせて判断します。

肩
肩は、疼痛の角度・部位・受傷機転から、腱板 / インピンジメント寄りか、不安定性寄りかを分けます。まず侵襲の少ない確認から入り、目的に合う 1 本で補強します。
詳細手順と最小セットは、肩関節の整形外科テスト一覧|最小セットと使い分け に集約しています。
膝
膝は、不安定性、半月板、荷重時痛、水腫、ロッキングの有無を整理します。受傷機転と症状の出方を合わせ、最初の検査群を決めます。
詳細手順は、膝の整形外科テスト一覧|半月板・靱帯を最小セットで に集約しています。
足関節
足関節は、まず骨折を疑う所見が強い場合に徒手テストを優先しないことが重要です。荷重可否、圧痛部位、腫脹、捻挫方向を確認し、骨折除外後に不安定性や疼痛再現を見ます。
実施順の詳細は、足関節の整形外科テスト|骨折除外〜捻挫を最小セットで を参照してください。
股関節
股関節は、鼠径部痛、可動域終末痛、荷重時痛、動作再現の一致度を見ます。腰椎や仙腸関節の影響も混ざりやすいため、主訴と誘発所見が一致するかを重視します。
判定のコツは、股関節の整形外科テスト一覧|最小セットと判定のコツ で具体化しています。
手関節・手部 / 肘関節
上肢末梢は、しびれの分布、圧痛部位、把持・回内外・手関節偏位などの症状誘発動作を先に確認します。仕事動作やスポーツ動作で再現するかも重要です。
症状別の入り口は 手関節・手部の整形外科テストまとめ|症状別、肘の鑑別は 肘関節の整形外科テスト|鑑別フローと最小セット を確認してください。
使い分け早見表|部位別・目的別に整理します
以下の表は、初回評価で「どの方向に検査を進めるか」を決めるための簡易マップです。テスト名を丸暗記するより、判断目的と次のアクションをそろえるほうが再評価につながります。
| 部位 | 主な判断目的 | 最初の最小セット | 次のアクション | 詳細記事 |
|---|---|---|---|---|
| 肩 | 腱板 / インピンジメント、不安定性の方向づけ | 疼痛部位・角度・誘発動作を固定し、目的に合う 1 本で補強 | 一致度が低い場合は頸部や肩甲帯も確認 | 肩の整形外科テスト一覧 |
| 膝 | 不安定性 / 半月板由来の症状整理 | 受傷機転、水腫、機械的症状から群を選ぶ | 所見一致なら追加検査を最小限で補強 | 膝の整形外科テスト一覧 |
| 足関節 | 骨折除外後の捻挫評価 / 不安定性 | 荷重可否、疼痛部位、捻挫方向で選択 | 急性期は刺激量を下げ、再現性を優先 | 足関節の整形外科テスト |
| 股関節 | 関節内由来の疑い整理 | 鼠径部痛、終末痛、動作再現を軸に選択 | 腰椎関連所見も併せて確認 | 股関節の整形外科テスト一覧 |
| 手関節・手部 | しびれ、母指側痛、尺側痛、外傷の整理 | 症状分布と圧痛部位の一致度で選ぶ | 機能課題で再現性を確認 | 手関節・手部テストまとめ |
| 肘関節 | 腱・靱帯・神経由来の鑑別 | 主訴動作を起点に最小限の確認へ進む | 局在と再現動作が一致するか確認 | 肘関節の整形外科テスト |
中止・保留の判断|徒手テストより優先する所見があります
整形外科的テストは、すべての場面で最初に行うものではありません。強い外傷、骨折を疑う所見、急激な腫脹、荷重不能、神経症状の進行、強い夜間痛などがある場合は、徒手テストを増やすより医師への共有や精査を優先します。
特に急性期は、疼痛反応だけで陽性が増えやすくなります。無理に誘発テストを重ねず、実施可否、荷重可否、疼痛の変化、再評価時期を記録して、次に安全に評価できる条件を残します。
| 場面 | 優先する判断 | 記録に残すこと |
|---|---|---|
| 強い外傷後・荷重困難 | 徒手テストより骨折や重篤損傷の除外を優先 | 受傷機転、荷重可否、圧痛部位、腫脹 |
| 神経症状が進行 | 誘発検査を増やさず、症状変化を共有 | しびれ範囲、筋力低下、感覚変化、経過 |
| 疼痛が強く再現性が低い | 急性反応が落ち着いてから再評価 | 中止理由、再評価時期、代替評価 |
現場の詰まりどころ|検査数より選択基準をそろえます
整形外科的テストで詰まりやすいのは、検査数の不足ではなく、選択基準が曖昧なまま検査を増やすことです。仮説が弱いまま陽性所見を集めると、判断はかえって難しくなります。
迷ったときの “解決の三段”
- ① 目的別の早見表 で最初の 1〜2 本を決める
- ② 記録テンプレ で条件を固定し、再評価できる形にする
- ③ 評価の順番がブレるときは 理学療法評価の進め方(初回・再評価・記録の型) で順番を先に揃える
| よくある失敗 | 起こりやすい理由 | 回避のポイント | 記録で残す項目 |
|---|---|---|---|
| 検査を増やしすぎる | 最初の判断目的が未設定 | 最初は 1〜2 本に限定する | 選択理由、判断目的 |
| 疼痛誘発だけで確定する | 局在・動作・受傷機転の統合不足 | 単独陽性で断定せず、一致度で解釈する | 痛み部位、再現動作、左右差 |
| 陰性で鑑別を閉じる | 追加評価の条件が未設定 | 陰性時の次手を先に決める | 次回評価条件、再評価時期 |
評価の型が職場で共有されていないと、判断は個人差が出やすくなります
評価が苦手に感じる背景には、本人の努力不足だけでなく、見本・相談相手・共通フォーマットなどの環境要因が関係することもあります。
記録の型|再評価できる条件まで残します
整形外科的テストを臨床で使うなら、陽性・陰性だけでなく、どの条件で実施し、何を根拠に解釈したかまで記録します。ここが残っていないと、再評価時に比較できません。
記録は長く書く必要はありません。主訴、判断目的、実施条件、所見、解釈、次の一手を固定しておくと、担当者が変わっても経過を追いやすくなります。
| 項目 | 記録例 |
|---|---|
| 主訴 / 受傷機転 | 階段降段時に膝内側痛。 1 週間前に捻り動作あり。 |
| 判断目的 | 半月板由来の症状か、不安定性由来かを整理する。 |
| 実施テスト | 目的に合わせて 1〜2 本実施。名称と左右を明記。 |
| 実施条件 | 姿勢、角度、荷重条件、疼痛誘発の有無を記載。 |
| 所見 | 疼痛部位、再現動作、左右差、クリック感、終末痛。 |
| 解釈 | 第一仮説と、現時点で否定しきれない仮説を 1 行で記載。 |
| 次の一手 | 追加評価、医師共有、 48〜72 時間後の再評価など。 |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
最初は何本のテストを実施すれば十分ですか?
原則は 1〜2 本です。最初に「何を判断したいか」を固定し、その目的に合うテストを選びます。所見が一致しない場合のみ追加すると、時間と精度のバランスを取りやすくなります。
陽性所見が複数出たときは、どう解釈すればよいですか?
陽性の数ではなく、一致度で見ます。主訴、受傷機転、誘発動作、疼痛部位、左右差が同じ仮説を支持しているかを確認してください。
テスト単独で診断を確定できますか?
基本的にはできません。整形外科的テストは、診断を確定する道具というより、仮説を絞るための評価です。問診、動作観察、画像所見、医師の診断と合わせて解釈します。
陰性ならその病態は除外してよいですか?
陰性でも完全除外はできません。症状経過、荷重時反応、近接関節の所見、再評価時の変化を合わせて判断します。
部位をまたぐ症状がある場合はどう進めますか?
まず主訴動作を最も再現しやすい部位から開始します。所見が不十分な場合に、腰椎、頸部、隣接関節へ広げます。最初から全領域を同時に評価しないほうが整理しやすくなります。
次の一手|部位別の詳細記事へ進みます
次は、主訴に近い部位の詳細ページで、実施手順と陽性所見の読み方を確認してください。親ページで選択基準をそろえたうえで子記事に進むと、評価の再現性が上がります。
参考文献
- Hegedus EJ, Cook C, Goode A, et al. Which physical examination tests provide clinicians with the most value when examining the shoulder? Update of a systematic review with meta-analysis of individual tests. Br J Sports Med. 2012;46(14):964-978. DOI: 10.1136/bjsports-2012-091066
- Logerstedt D, Snyder-Mackler L, Ritter RC, Axe MJ. Knee pain and mobility impairments: meniscal and articular cartilage lesions revision 2018. J Orthop Sports Phys Ther. 2018;48(2):A1-A50. DOI: 10.2519/jospt.2018.0301
- Martin HD, Kelly BT, Leunig M, et al. The pattern and technique in the clinical evaluation of the adult hip: the common physical examination tests of hip specialists. Arthroscopy. 2010;26(2):161-172. DOI: 10.1016/j.arthro.2009.07.002
- van Dijk CN, Lim LS, Bossuyt PMM, Marti RK, Rowe BH. Physical examination is sufficient for the diagnosis of sprained ankles. J Bone Joint Surg Br. 1996;78(6):958-962. PubMed: 8951013
- Michener LA, Walsworth MK, Burnet EN. Effectiveness of rehabilitation for patients with subacromial impingement syndrome: a systematic review. J Hand Ther. 2004;17(2):152-164. DOI: 10.1197/j.jht.2004.02.004
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


