総合実施計画書と目標設定等支援・管理シートの違い【比較・使い分け】
リハビリテーション総合実施計画書と目標設定等支援・管理シートは、どちらも「目標を書く書類」に見えます。しかし現場では、役割を混ぜるほど文章が長くなる/多職種で解釈が割れる/差し戻しが増えるのが実情です。本記事は、PT/OT/ST が迷わないように目的・書く順番・使い分けを 1 ページで整理します。
結論はシンプルで、総合実施計画書=チームの「計画とアプローチの地図」、管理シート=患者・家族に「経過と目標を説明して渡す 1 枚」です。両者を同じ文章で埋めず、役割に合わせて短く具体的にそろえましょう。
まず結論: 2 つの役割はこう違う
どちらも ICF に接続しますが、書く「深さ」と「相手」が異なります。差し戻しを減らすコツは、総合=チーム向けに具体アプローチまで、管理=患者向けに経過と目標を短くです。
スマホは表を横スクロールして確認してください。
| 比較軸 | 総合実施計画書 | 目標設定等支援・管理シート | 混ぜると起きること |
|---|---|---|---|
| 主な相手 | 多職種チーム(院内運用) | 患者・家族(説明・交付) | 読み手が決められず文章が膨らむ |
| 主目的 | 評価 → 目標 → 具体的アプローチを統一 | 経過・現状・目標を共有し、方向性をそろえる | 「計画」と「説明」が混線して要点が消える |
| 強いポイント | 短期目標とアプローチのセット化 | ADL 変化と見通しを 1 枚で説明 | 短期/長期や ADL の書き方がブレる |
| 記入のコツ | 「評価項目:内容」を短く具体化し、目標と介入に結ぶ | 条件(補助具/介助量/環境)を入れて短文で書く | 抽象語だらけで差し戻しが増える |
| 再評価の回し方 | 介入とセットで週次・節目で更新 | 説明タイミングで更新(見通しを含む) | いつ更新するか不明になり形骸化する |
どっちを先に書く?現場で迷わない使い分け
迷ったら、総合実施計画書で「チーム内の地図」を作り、その内容を管理シートに「患者向けに翻訳」するのが最短です。逆(管理シート先行)だと、介入の具体が薄くなりがちです。
| 場面 | 優先 | 理由 | 1 行の判断基準 |
|---|---|---|---|
| 入院初期で情報が散らかる | 総合実施計画書 | 評価 → 目標 → アプローチを統一しやすい | 「チームが同じ方針で動けるか」 |
| 説明・交付のタイミング | 管理シート | 経過と見通しを患者言語でまとめる必要がある | 「患者が次に何をすれば良いか」 |
| 退院前カンファで調整が必要 | 両方(総合→管理) | 支援内容を多職種で固め、見通しを共有する | 「誰が/いつ/何を」まで決まっているか |
| 生活期で目標がぶれやすい | 管理シート | 参加・環境因子まで含めて見通しを整える | 「生活で困る場面が 1 行で言えるか」 |
書く順番テンプレ:総合で作って管理で翻訳する
作業は「書く」より「決める」が 9 割です。次の順で固定すると、書類が短くなり差し戻しが減ります。
① 総合実施計画書:評価 → 目標 → 具体的アプローチ
- 評価項目は「内容」を短く具体化(例:起立耐性:起立 2 分で血圧低下)
- 短期目標は期限と条件を入れる(例: 1 か月後、屋内 20 m を T 字杖で見守り)
- 具体的アプローチは「担当 × 頻度 × 手段」で 1 行化
② 管理シート:経過・現状・目標・見通しを短文で
- 経過(何が変わったか)を 2 行で
- ADL の変化は「開始時 → 現在」で 1 点だけ強調
- 目標文は条件(補助具/介助量/環境)を必ず入れる
- 見通しは「順調/停滞」の 2 シナリオで 1 行ずつ
差し戻しが減る NG→OK の型( 2 書類共通)
差し戻しの多くは、抽象語で「同じ場面が想像できない」ことが原因です。共通ルールは、条件を足すことです。
| NG | OK(短く具体的) | 条件の例 | 評価の 1 指標 |
|---|---|---|---|
| 歩行訓練を行う | 屋内 20 m を T 字杖で見守り 1 回、転倒なし | 補助具、介助量、環境 | 距離/転倒回数 |
| ADL 自立 | 更衣(上衣)を座位で 5 分以内、声かけのみ | 姿勢、時間、介助の種類 | 所要時間 |
| 家事ができる | 食事準備を 10 分、休憩 1 回で完遂 | 課題、時間、休憩 | 休憩回数 |
| 転倒予防 | 夜間のみセンサーライト、段差マット撤去、転倒 0 | 環境調整、頻度、結果 | 転倒回数 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 2 つの書類で同じ文章を書いてもいい?
A.おすすめしません。総合実施計画書は「チームが動くための地図」、管理シートは「患者に渡す説明の 1 枚」です。総合で決めた内容を、管理シートでは短文に翻訳する方が、読み手が迷いません。
Q2.管理シートの目標が「抽象的」と言われます。
A.条件(補助具/介助量/環境)を 1 つ足してください。「歩ける」ではなく「屋内 20 m を T 字杖で見守り」のように、同じ場面が想像できる文にします。
Q3.総合実施計画書の「具体的アプローチ」が長くなります。
A.「担当 × 頻度 × 手段」で 1 行化します。詳細は記録に寄せ、計画書は「意思決定に必要な最小限」に絞ると運用が回ります。
Q4.見通し(退院後)が弱いと言われます。
A.順調/停滞の 2 シナリオで 1 行ずつ書くと強くなります。停滞時は福祉用具やサービス調整など「次の一手」を書いておくのがコツです。
次の一手(今日やること)
- 総合実施計画書で「評価 → 目標 → アプローチ」を短文で固定し、管理シートへ翻訳する流れを院内ルール化する
- NG→OK 変換表をチームで共有し、抽象語を「条件付き短文」に置換する
- 説明のタイミング(作成・交付日)に合わせて、管理シートの見通しを更新する
続けて読む:
参考文献
- 厚生労働省. 目標設定等支援・管理シート(別紙様式 23 の 5). 様式(Word)
- 厚生労働省. 診療報酬関連様式( PDF ). 掲載 PDF
- (別紙様式 23 の 2)リハビリテーション総合実施計画書(参考 PDF ). PDF
- 目標設定等支援・管理料(通知の要点). 掲載ページ
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

