Lachman テスト( ACL )とは:前方不安定性を “最小セット” で拾う
Lachman テストは、膝の前方不安定性(主に ACL 損傷)を評価する代表テストです。現場で迷いやすいのは「力の方向」「大腿の固定」「終末感( end feel )の言語化」。本記事では、① 体位 → ② 固定 → ③ 牽引 → ④ 終末感 → ⑤ 記録の順で、再現性が出る “運用” に固定します。
このテストを使う場面:まず “疑う条件” を揃える
Lachman は「 ACL を疑う状況」で精度が上がります。スポーツ外傷の回旋、急な減速・方向転換、膝崩れ( giving way )、腫脹、受傷直後の不安定感などが揃うほど、テスト結果の意味が明確になります。逆に、強い疼痛・恐怖・ハムストリングスの防御収縮が強いと偽陰性が増えるため、無理に強く引かず “条件を整える”のが先です。
5 分フロー: Lachman を “ブレない順番” に固定
- 準備:リラックス(呼吸/声かけ)・疼痛の許容範囲確認
- 体位:膝屈曲はおよそ 20–30° (最もやりやすい角度へ微調整)
- 固定:大腿を確実に止める( “大腿が動いた” を消す)
- 牽引:脛骨を前方へ “スッ” と引く(速さと距離は一定)
- 評価:移動量+終末感( firm / soft )を左右差で判断
- 記録:角度・痛み・防御・終末感・左右差をセットで残す
やり方:体位・固定・牽引の “ 3 点 ” を外さない
ポイントは「大腿固定」と「脛骨の把持位置」です。大腿がわずかに動くと、脛骨の前方移動が小さく見えて偽陰性になりやすいです。固定手は大腿遠位部を “押さえ込む” より、大腿をテーブルに “落とす” 方向で安定させるとブレが減ります。
牽引手は脛骨近位を包むように把持し、前方へ一直線に引きます。外旋や内旋が混ざると、終末感が読みづらくなります。まずは “まっすぐ前方” を優先し、必要なら軽い回旋を加えて症状再現の確認に使います。
解釈:移動量より “終末感+左右差” がブレにくい
Lachman は、単に「どれだけ動いたか」よりも、健側と比べた “終末感( end feel )” の違いが再現性を作ります。 ACL 損傷では、終末が “ふわっ( soft )” と感じやすく、健側の “止まる感じ( firm )” と対比すると判断しやすいです。
よくある失敗:偽陰性・偽陽性の作り方
| よくある失敗 | 何が起きる? | 回避のコツ |
|---|---|---|
| 大腿固定が甘い | 大腿ごと動き、前方移動が小さく見える(偽陰性) | 固定手は “押す” より “落とす” 。体幹も近づけて固定力を上げる |
| 脛骨を遠位で持つ | てこの影響でブレる/痛みが出る | 脛骨近位を包む。把持位置を膝に寄せる |
| 疼痛・恐怖で防御収縮 | 前方移動が止まり偽陰性 | 呼吸・声かけ・痛みを下げる工夫(体位調整/力を弱く) |
| 力の方向が斜め | 回旋が混ざり終末感が読めない | まず “前方へ一直線” 。回旋は “追加” にする |
現場の詰まりどころ:迷ったら “見る順番” を固定する
Lachman が難しいのは、結果が曖昧というより条件が揃わないことです。まずは「失敗を潰す順番」を固定すると安定します。
- 先に確認:よくある失敗(偽陰性)
- 次に確認:回避のチェック
- 同ジャンルの補助:膝の状態把握は KOOS(膝の PROM ) も併用すると、経過の説明と再評価が楽になります
回避の手順チェック: “できているか” を 10 秒で確認
- 膝は 20–30° くらいで楽な角度になっている
- 大腿が動かない(固定手+体幹の位置が近い)
- 牽引は “前方へ一直線” (回旋は混ぜない)
- 痛み・恐怖が強いなら、強く引かず条件調整を優先
- 記録は “左右差+終末感+痛み” をセットで残す
記録の型:終末感まで言語化して再現性を作る
おすすめは、角度・痛み・防御・移動量・終末感を固定フォーマットで残すことです。
- 体位:背臥位/膝屈曲 20–30°
- 所見:前方移動(健側比)、終末感( firm / soft )、痛み(部位・ NRS )
- 補足:腫脹、防御収縮の有無、恐怖感
よくある質問( FAQ )
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Lachman と前方引き出し( anterior drawer )は何が違う?
前方引き出しは膝屈曲が深く、ハムストリングスの防御収縮の影響を受けやすいです。 Lachman は比較的浅い屈曲で行えるため、条件が揃えば前方不安定性を拾いやすい運用になります。実務では、まず Lachman を軸にして、必要に応じて他テストで補強する流れが安定します。
痛みが強いときにやっていい?
強い疼痛・恐怖があると防御収縮が強くなり偽陰性が増えます。まずは体位調整・声かけ・力を弱めるなど “条件を整える” ことを優先し、無理に結論を出さない方が安全です。
終末感が分からない…どう練習する?
健側で “止まり方” を先に覚えてから患側へ移ると分かりやすいです。牽引速度と距離を一定にし、固定が甘くないか(大腿が動いていないか)だけを最初にチェックすると上達が早いです。
次の一手:評価を “意思決定” につなげる
- 運用を整える:膝の検査を一覧で固定するなら 膝の整形外科テスト一覧(親)
- 共有の型を作る:経過とアウトカムの共通言語は KOOS(膝 PROM )
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に「続ける/変える」の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Benjaminse A, Gokeler A, van der Schans CP. Clinical diagnosis of an anterior cruciate ligament rupture: a meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2006;36(5):267-288. DOI: 10.2519/jospt.2006.2011 / PubMed: 16715828
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


