外反・内反ストレステストとは
外反ストレステストは主に膝内側のMCL、内反ストレステストは主に外側のLCL/FCLを評価する徒手検査です。判定で重要なのは、疼痛の有無だけではなく、健側と比較した関節裂隙の開大と終末感を確認することです。
また、30°屈曲位と0°伸展位では所見の意味が異なります。本記事では、外反・内反ストレステストのやり方、陽性所見、30°と0°の読み分け、判定に迷う場面、記録方法までを整理します。徒手検査だけで損傷部位を断定せず、どこまで損傷範囲を疑うべきかを判断できることを目標にします。
外反・内反ストレステストの陽性所見|疼痛だけで判断しない
外反・内反ストレステストでは、健側より明らかな関節裂隙の開大があるか、そのときの終末感が保たれているかを中心に判断します。疼痛は重要な所見ですが、疼痛の再現だけをもって靱帯不安定性があると断定しません。
| 所見 | 確認すること | 解釈のポイント |
|---|---|---|
| 関節裂隙の開大 | 患側と健側の差 | 靱帯性の不安定性を考える中心所見 |
| 終末感 | 明瞭な抵抗があるか、不明瞭か | 開大の程度と合わせて支持組織の状態を考える |
| 疼痛 | 部位、再現性、負荷との関係 | 損傷部位を考える補助所見。疼痛単独で不安定性を決めない |
| 角度 | 30°屈曲位か0°伸展位か | 同じ開大でも角度によって疑う損傷範囲が異なる |
もともとの関節弛緩性には個人差があります。そのため、「少し開いた」という患側だけの印象で判断せず、反対側と同じ条件で比較することが重要です。
30°と0°の違い|損傷範囲を考える手掛かりにする
30°屈曲位では側副靱帯を中心とした不安定性を確認しやすくなります。一方、0°伸展位では側副靱帯以外の関節包や十字靱帯なども安定性に関与します。そのため、伸展位でも開大が残る場合は、より広範な支持組織損傷を疑う手掛かりになります。

| 方向・角度 | 主に確認する構造 | 開大がある場合の考え方 |
|---|---|---|
| 外反・30° | MCLを中心とした内側支持機構 | MCLを中心とした内側不安定性を疑う |
| 外反・0° | 内側支持機構+他の安定化組織 | 後内側支持機構や十字靱帯などを含む、より広範な損傷を考える |
| 内反・30° | LCL/FCLを中心とした外側支持機構 | LCL/FCLを中心とした外側不安定性を疑う |
| 内反・0° | 外側・後外側支持機構+他の安定化組織 | PLCや十字靱帯などを含む、より広範な損傷を考える |
重要なのは、「30°で開けば単独損傷、0°で開けば複合損傷」と徒手検査だけで確定しないことです。30°と0°の違いは、損傷範囲を絞り込み、次に確認する評価を決めるための情報として使います。
外反ストレステストのやり方|MCLを評価する
外反ストレステストでは、膝に外反方向の力を加え、内側関節裂隙の開大、終末感、疼痛を確認します。30°屈曲位と0°伸展位の所見を分けて確認し、健側と比較します。
- 仰臥位とし、下肢をリラックスさせます。
- 大腿が不用意に動かないよう支持し、内側関節裂隙を確認できる位置を作ります。
- 膝を約30°屈曲させ、外反方向へ徐々に負荷を加えます。
- 内側関節裂隙の開大、終末感、疼痛部位を確認し、健側と比較します。
- 0°伸展位でも外反ストレスを加え、開大がみられるかを確認します。
30°屈曲位で健側より内側関節裂隙が開大する場合は、MCLを中心とした内側支持機構の損傷を疑います。さらに0°伸展位でも明らかな開大がみられる場合は、MCLだけでなく後内側支持機構や十字靱帯などを含む、より広範な損傷の可能性を考えます。
このとき、内側部痛があっても開大が明確でない場合は、「疼痛あり」と「不安定性あり」を分けて記録します。
内反ストレステストのやり方|LCL・FCLを評価する
内反ストレステストでは、膝に内反方向の力を加え、外側関節裂隙の開大、終末感、疼痛を確認します。LCLはfibular collateral ligament(FCL、腓側側副靱帯)とも呼ばれ、外側・後外側支持機構との関係も意識して所見を読みます。
- 仰臥位とし、大腿が不用意に動かないよう支持します。
- 膝を約30°屈曲させ、外側関節裂隙を確認できる位置を作ります。
- 内反方向へ徐々に負荷を加え、外側関節裂隙の開大と終末感を確認します。
- 健側でも同じ条件で確認し、左右差を比較します。
- 0°伸展位でも内反ストレスを加え、外側の開大がみられるかを確認します。
30°屈曲位で外側関節裂隙の開大がみられる場合は、LCL/FCLを中心とした外側支持機構の損傷を疑います。0°伸展位でも内反不安定性がみられる場合は、LCL/FCLだけではなく、PLCや十字靱帯などを含む、より広範な損傷を考える必要があります。
外側膝では、外側関節裂隙、腓骨頭周囲、後外側部などで症状部位が異なります。「外側が痛い」だけでまとめず、疼痛部位も分けて記録しておくと次の評価につながります。
判定に迷う場面|痛みだけ・開大だけならどう読むか
実際の評価では、疼痛と開大が一致しない場合や、防御収縮によって終末感を評価しにくい場合があります。このようなときは、陽性・陰性の二択に急いで当てはめず、確認できた所見を分解して記録します。
| 所見 | 考え方 | 記録のポイント |
|---|---|---|
| 疼痛あり・明らかな開大なし | 靱帯や周囲組織の損傷は否定できないが、不安定性を疼痛だけで断定しない | 疼痛部位と角度を記録する |
| 開大あり・疼痛が軽い | 疼痛が少なくても不安定性所見は無視しない | 左右差と終末感を優先して残す |
| 30°で開大・0°では明らかでない | 側副靱帯を中心とする損傷を考える手掛かり | 30°と0°を分けて記録する |
| 30°と0°の両方で開大 | より広範な支持組織損傷を疑う | 他の靱帯評価や画像所見との統合を検討する |
| 防御収縮が強い | 開大や終末感を正確に評価しにくい | 判定困難であった理由を残す |
徒手検査で開大量を目測だけで厳密に定量することには限界があります。客観的な開大量の評価が必要な場合は、臨床所見だけで結論づけず、医師による診察やストレスX線などの画像評価と合わせて判断します。
強い疼痛・急性外傷では無理にストレスを加えない
急性外傷後に疼痛、腫脹、恐怖、防御収縮が強い場合は、強い負荷を加えて終末感を確認しようとすると、かえって判定しにくくなることがあります。実施できた範囲と判定困難であった理由を記録し、必要に応じて再評価します。
また、著明な不安定性や膝脱臼、多靱帯損傷が疑われる外傷では、徒手検査の続行よりも医学的評価を優先します。末梢循環の異常や新たな足関節・足趾背屈低下、足背の感覚異常などを伴う場合も、血管・神経損傷を念頭に速やかに共有・相談します。
記録方法|角度・方向・開大・終末感を残す
「外反ストレス陽性」「内反ストレス陰性」だけでは、どの条件で何が起きたのかが伝わりません。再評価できる記録にするには、方向、角度、左右差、終末感、疼痛、防御収縮を分けて残します。
| 項目 | 記録内容 |
|---|---|
| 方向 | 外反 / 内反 |
| 角度 | 30°屈曲位 / 0°伸展位 |
| 開大 | 健側比での関節裂隙の開大の有無 |
| 終末感 | 明瞭 / 不明瞭など、施設内で共有できる表現 |
| 疼痛 | 部位、角度、再現性 |
| 判定条件 | 防御収縮、腫脹、疼痛など判定へ影響した要因 |
外反ストレスの記録例:右膝。30°外反ストレスで健側比の内側関節裂隙開大あり。終末感不明瞭、内側関節裂隙痛あり。0°外反では明らかな開大なし。防御収縮軽度。
内反ストレスの記録例:左膝。30°内反ストレスで健側比の外側関節裂隙開大あり。0°内反でも開大を認める。外側関節裂隙痛あり。LCL/FCL単独所見として断定せず、後外側支持機構を含め追加評価が必要と判断。
よくある失敗|陽性・陰性を急いで決めない
- 疼痛だけで陽性とする:疼痛と不安定性を分けて記録します。
- 患側だけで開大を判断する:生理的な弛緩性には個人差があるため、健側と比較します。
- 30°だけ、または0°だけで終える:角度による所見の違いが損傷範囲を考える材料になります。
- 強く押して終末感を探す:疼痛や防御収縮が増えると、かえって評価しにくくなります。
- 「30°陽性=単独損傷」と断定する:徒手検査は損傷範囲を考える手掛かりであり、受傷機転や他の所見と統合します。
よくある質問
外反・内反ストレステストは痛みが出れば陽性ですか?
疼痛は重要な所見ですが、靱帯不安定性の判定を疼痛だけで決めるのは避けます。健側と比較した関節裂隙の開大と終末感を確認し、疼痛部位は別の所見として記録します。
30°で開大し、0°では開大しない場合はどう考えますか?
側副靱帯を中心とした損傷を考える手掛かりになります。外反ではMCL、内反ではLCL/FCLが中心になりますが、徒手検査だけで単独損傷と確定せず、受傷機転や他の所見と合わせて判断します。
0°でも開大する場合は何を疑いますか?
側副靱帯だけではなく、周囲の関節包、後内側または後外側支持機構、十字靱帯などを含む、より広範な損傷を考えます。明らかな不安定性がある場合は、他の靱帯評価や画像所見との統合が必要です。
外反・内反ストレステストでは何mm開けば陽性ですか?
徒手検査では、開大量を目測だけで厳密に定量するより、同じ条件で健側と比較し、開大と終末感を記録することが重要です。客観的な定量が必要な場合は、ストレスX線などの画像評価が用いられます。
次の一手|膝の他の靱帯所見と統合する
外反・内反ストレステストは、単独で膝外傷の診断を完結させる検査ではありません。受傷機転、腫脹、関節可動域、他の靱帯所見と統合して解釈します。
- 膝テスト全体から評価を組み立てる:膝の整形外科的テスト一覧
- ACLの前方不安定性も確認する:Lachmanテストのやり方と陽性判定
参考文献
- Chapman G, Vij N, LaPrade R, Amin N. Medial-Sided Ligamentous Injuries of the Athlete’s Knee: Evaluation and Management. Cureus. 2023;15(3):e36360. DOI: 10.7759/cureus.36360 / PubMed: 37082476
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- Kane PW, Cinque ME, Moatshe G, et al. Fibular Collateral Ligament: Varus Stress Radiographic Analysis Using 3 Different Clinical Techniques. Orthop J Sports Med. 2018;6(5):2325967118770170. DOI: 10.1177/2325967118770170 / PubMed: 29770342
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

