外反・内反ストレステストとは:30°→0°で解釈をそろえる
外反ストレステストは主に MCL、内反ストレステストは主に LCL の不安定性を確認する膝の基本テストです。この記事で決めることは、外反・内反ストレステストを「どの角度で、どの順番で、何を記録するか」です。結論として、臨床では 30°→0° の順で確認すると、側副靱帯単独の不安定性と複合的な不安定性を分けて考えやすくなります。
本記事では、体位・固定・力の方向をそろえたうえで、開大、終末感、疼痛部位を記録へ落とし込む形に整理します。画像で覚えるよりも、実施条件を固定して再評価できることを重視し、膝外傷後の評価、経過確認、医師・チームへの共有に使える形を目標にします。
30°と0°の違い:単独損傷か複合損傷かを分ける
30°屈曲位では関節包や後方構造の影響が相対的に減り、側副靱帯そのものの不安定性を確認しやすくなります。一方、0°伸展位で明らかな開大がある場合は、側副靱帯だけでなく関節包や十字靱帯などを含む複合的な不安定性を疑いやすくなります。
そのため、実務では 30°で MCL / LCL の単独要素を確認し、0°で複合要素を確認する流れが有用です。最初から 0°だけで判断すると、側副靱帯の所見なのか、ほかの構造を含む所見なのかが曖昧になります。
| 角度 | 主に見たいこと | 解釈の方向性 | 記録の要点 |
|---|---|---|---|
| 30°屈曲位 | 側副靱帯の不安定性 | MCL / LCL 単独要素を確認しやすい | 開大、終末感、疼痛部位、左右差 |
| 0°伸展位 | 伸展位での不安定性 | 関節包や他靱帯を含む複合要素を疑う | 30°との違い、明らかな開大の有無 |
5分フロー:30°→0°の順で迷いを減らす
外反・内反ストレステストは、手技そのものよりも順番を固定することが重要です。毎回同じ条件で実施すると、左右差や経時変化を比較しやすくなります。
- 準備:仰臥位で防御収縮が入りにくい位置を作る
- 30°屈曲位:外反または内反をゆっくり加え、開大と終末感を確認する
- 0°伸展位:同じ方向で確認し、伸展位での不安定性をみる
- 左右比較:患側だけで判断せず、健側との差を確認する
- 記録:角度、方向、開大、終末感、疼痛部位を固定語で残す
やり方:固定と力の方向をそろえる
手技の再現性は、大腿の固定と力の方向で決まります。大腿が動くと関節裂隙の開大が読みにくくなり、斜め方向の力が入ると回旋が混ざって終末感の判断が不安定になります。
検者は大腿が動かない位置を先に作り、膝関節裂隙を触知しながら、外反または内反方向へゆっくり一定の力を加えます。強く押すことよりも、同じ条件で左右差を確認できることを優先します。
外反ストレステスト:MCLの開大と終末感をみる
外反ストレステストでは、膝に外反方向の力を加え、内側関節裂隙の開大を確認します。主に MCL の不安定性をみるテストであり、30°屈曲位での開大や soft end feel があれば、内側支持機構の損傷を疑いやすくなります。
記録では、単に「外反ストレス陽性」と書くより、30°外反で内側裂隙の開大あり、終末感 soft、内側裂隙痛ありのように条件と所見を分けて残すと、再評価時の比較がしやすくなります。
内反ストレステスト:LCLの開大と終末感をみる
内反ストレステストでは、膝に内反方向の力を加え、外側関節裂隙の開大を確認します。主に LCL の不安定性をみるテストであり、外側裂隙の開大、終末感の変化、疼痛部位を左右差で確認します。
外側の痛みは訴えが分散しやすいため、外側裂隙、腓骨頭周囲、外側広筋遠位部など、痛みの部位を曖昧にせず記録します。必要に応じて、膝のほかの整形外科的テストと組み合わせ、単独所見で断定しないことが重要です。
中止・保留の判断:強い疼痛や防御収縮では無理に続けない
強い疼痛、腫脹、恐怖、防御収縮がある状態では、開大や終末感の判定精度が落ちます。無理にストレスを強めると、所見の再現性が下がるだけでなく、患者の不安も強くなります。
この場合は、強い負荷を加えず、実施条件、疼痛部位、左右差の有無、保留理由を記録します。明らかな不安定性や急性外傷後の強い症状がある場合は、徒手評価だけで結論づけず、医師の診察や画像所見と合わせて判断します。
よくある失敗:開大が読めない原因を先に潰す
外反・内反ストレステストで迷うときは、損傷の有無よりも、実施条件が崩れていることが多いです。特に大腿固定、力の方向、角度設定の 3 点をそろえるだけで、所見の読みやすさは大きく変わります。
| 失敗 | 起きること | 回避策 |
|---|---|---|
| 大腿固定が甘い | 患側のぐらつきか、検者側のブレか判断しにくい | 大腿が動かない位置を先に作り、体幹を近づけて支える |
| 力の方向が斜め | 回旋が混ざり、終末感が読みにくくなる | 外反 / 内反の方向を優先し、ゆっくり一定に加える |
| 0°だけで判断する | 側副靱帯単独か複合損傷かが曖昧になる | 30°→0°の順で確認し、角度ごとの所見を分けて記録する |
現場の詰まりどころ:迷ったら角度・固定・記録に戻る
外反・内反ストレステストで詰まる場面は、「陽性か陰性か」よりも、条件がそろっていないまま判断していることが多いです。迷ったら、結果を急がず、角度、固定、記録の 3 点へ戻ります。
- 先に戻る:よくある失敗(固定と方向)
- 次に確認:回避の手順チェック
- 同ジャンルの内部リンク:膝の経過共有は KOOS(膝 PROM) を併用すると説明と再評価がそろいやすくなります
評価・記録の型で毎回つまずく場合
手順を整えても同じところで迷う場合は、個人の努力だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けていることもあります。
回避の手順チェック:10秒で実施条件を整える
テスト前後に、次の項目だけ確認すると記録のばらつきを減らせます。すべてを詳細に書く必要はありませんが、角度、方向、左右差、終末感は毎回そろえると再評価に使いやすくなります。
- 30°→0° の順で確認した
- 大腿が動かない位置を作った
- 外反 / 内反の方向が斜めになっていない
- 左右差で開大と終末感を確認した
- 疼痛部位を一点で記録した
記録の型:角度・方向・左右差・終末感を固定する
記録では「陽性」「陰性」だけで終わらせず、何度で、どの方向に、どの程度の左右差があり、終末感がどうだったかを残します。再評価や申し送りでは、この条件のそろい方が重要です。
| 項目 | 記録する内容 | 記載例 |
|---|---|---|
| 角度 | 30°屈曲位 / 0°伸展位 | 30°外反、0°外反 |
| 方向 | 外反 / 内反 | 外反ストレスで内側裂隙を確認 |
| 開大 | 健側比、明らかな左右差 | 健側比で内側裂隙の開大あり |
| 終末感 | firm / soft、不明瞭 | 終末感 soft |
| 疼痛 | 部位と再現性 | 内側裂隙に疼痛あり |
記録例:右膝 30°外反ストレスで内側裂隙の開大あり。終末感 soft。内側裂隙痛あり。0°外反では明らかな開大なし。防御収縮軽度あり。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
30°で陽性、0°で陰性ならどう考えますか?
30°で開大や終末感の変化があり、0°で明らかな開大がない場合は、側副靱帯単独の不安定性を疑いやすくなります。ただし徒手検査だけで断定せず、疼痛部位、腫脹、受傷機転、画像所見と合わせて判断します。
0°でも開大がある場合は何が違いますか?
0°伸展位で明らかな開大がある場合は、側副靱帯単独ではなく、関節包や他靱帯を含む複合的な不安定性を疑いやすくなります。負荷量、再評価頻度、医師への共有優先度が変わるため、30°と0°の所見を分けて記録します。
痛みが強いときも実施してよいですか?
強い疼痛や恐怖があると防御収縮が入り、開大や終末感の判定精度が落ちます。無理に強く行わず、実施できた範囲、疼痛部位、保留理由を記録し、必要に応じて医師と共有します。
開大は必ず定量しないといけませんか?
徒手検査では、まず左右差と終末感を一貫して記録することが優先です。定量が必要な場合は、ストレス撮影などの画像情報と合わせて判断します。
再評価では何をそろえればよいですか?
角度、方向、固定、患者の肢位、疼痛の状態をそろえます。条件が変わると開大や終末感の比較が難しくなるため、再評価では「前回と同じ条件で確認したか」を先に確認します。
次の一手:膝評価を再評価までつなげる
- 全体像をそろえる:膝テストの選び方を整理するなら 膝の整形外科テスト一覧
- 経過を共有する:疼痛・症状・ADL の変化を追うなら KOOS(膝 PROM)
参考文献
- LaPrade RF, Wijdicks CA, Griffith CJ, et al. Correlation of valgus stress radiographs with medial knee ligament injuries: an in vitro biomechanical study. Am J Sports Med. 2010;38(2):330-338. DOI: 10.1177/0363546509349347 / PubMed: 19966093
- Kane PW, Cinque ME, Moatshe G, et al. Fibular Collateral Ligament: Varus Stress Radiographic Analysis Using 3 Different Clinical Techniques. Orthop J Sports Med. 2018;6(5):2325967118770170. DOI: 10.1177/2325967118770170 / PubMed: 29770342
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


