構音・音声障害のST評価|10〜15分の最小セットと赤旗【PDF】

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構音・音声障害のST評価|10〜15分で初回所見と次の一手をそろえる

成人・脳卒中患者の構音・音声評価では、最初から検査を増やすより、前提条件・安全 → 聴覚的評価 → 発声発語器官 → MPT・DDK → 鑑別の当たり → 赤旗 → 共有の順番を固定すると、初回所見を整理しやすくなります。

この記事では、ベッドサイドで使える10〜15分の最小セットを中心に、ディサースリア・発語失行(AOS)・音声障害を混ぜずにみるポイント、耳鼻咽喉科へつなぐ赤旗、多職種へ共有する3行テンプレ、記事連動の記録シートPDF・Excelまでまとめます。詳細な尺度マニュアルではなく、「最初に何を確認し、次に何へ進むか」を決めるための記事です。

ST初回評価全体の流れから確認したい方はこちらです。

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まずはこれだけ|10〜15分で回す構音・音声評価の最小セット

初回評価では、細かな検査を網羅するより、同じ順番で観察し、再評価できる条件を残すことを優先します。特に呼吸状態や覚醒、疲労などが不安定な場合は、数値の取得より前提条件と安全性の確認を先に行います。

※表はスマホでは横スクロールで見てください。

構音・音声評価の7ステップ(成人・脳卒中のベッドサイド想定)
順番 見るもの 観察ポイント 次の一手
1 前提条件・安全 覚醒、呼吸状態、痰、姿勢、疲労、時間帯など 実施可能範囲と再評価条件を決める
2 聴覚的評価 明瞭度、話速、抑揚、声量、声質 発話のどこが崩れているか整理する
3 発声発語器官 口唇、舌、軟口蓋、下顎、呼吸・発声 運動機能と発話所見の関係を確認する
4 MPT・DDK 数値、規則性、正確性、反復や後半での変化 同じ条件で追跡できる指標を残す
5 鑑別の当たり ディサースリア、AOS、音声障害のどこを深掘りするか 次に必要な詳細評価を選ぶ
6 赤旗 呼吸・気道症状、最近の手術・挿管、頸部腫瘤、喫煙歴、持続する嗄声 必要時は喉頭評価・医師連携を優先する
7 3行で共有 困り場面、主な所見、対応・工夫 病棟対応と再評価へつなげる
構音・音声障害のST評価を10〜15分で行う最小セットを7ステップで整理した図版
構音・音声障害の初回評価を、前提条件・安全確認から多職種共有まで7ステップで整理した図版です。

聴覚的評価|明瞭度・話速・抑揚・声量・声質を分けて聴く

「なんとなく聞き取りにくい」だけでは、次に何を詳しく評価するか、再評価で何を比べるかが決まりません。まずは明瞭度・話速・抑揚・声量・声質を分けて観察します。

重要なのは、すべての項目を細かく文章化することではなく、生活上の困りにつながっている主要所見と、再評価で比較したい所見を残すことです。たとえば「会話前半は明瞭だが、長話になると声量と明瞭度が低下する」のように、場面や負荷条件まで添えると次の評価につながります。

発声発語器官|非発話運動だけでなく呼吸・発声との関係を見る

発声発語器官では、口唇・舌・軟口蓋・下顎の運動に加え、呼吸の準備、呼気の持続、発声開始、過剰な努力なども観察します。

ただし、「舌の動きが悪いからこの発話障害」「MPTが短いから声門閉鎖不全」のように、単独所見だけで原因を確定しないことが重要です。発話時の聞こえ方、器官運動、呼吸・発声、課題による変化を組み合わせ、次に詳しく確認する機能の当たりを付けるために使います。喉頭病変や声帯運動の確認が必要な場合は、耳鼻咽喉科での喉頭評価につなげます。

MPT・DDK|数値だけでなく実施条件と崩れ方を残す

MPTやDDKは、短時間で繰り返せる追跡指標として便利です。ただし、単回の数値だけから障害部位や原因を決めることはできません。姿勢、理解、疲労、発声努力、課題への慣れなどの影響も受けるため、実施条件と変化をセットで記録します。

DDKの具体的な課題設定や測定条件は、オーラルDDK(ODK)の測り方と解釈で詳しく整理しています。

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簡便指標を次の評価へつなげる見方
指標 確認すること 次の確認 記録例
MPT 持続時間、後半の声質・音量変化、努力性 姿勢、吸気準備、息漏れ、会話での声量維持 「MPT:◯秒。後半で声量低下」
DDK 速度、規則性、正確性、反復による変化 同じ課題・姿勢・指示で再評価する 「DDK:◯回/秒。反復で不規則性↑」
音量維持 短文と会話での差、長話での変化 会話量、姿勢、活動中の変化 「長話で声量↓、対面では伝達可」

ディサースリア・発語失行(AOS)・音声障害を混ぜずに観察する

この段階の目的は確定診断ではなく、どの発話過程を次に詳しく評価するかを決めることです。ディサースリアでは発話運動に関わる神経筋機能、AOSでは発話運動の計画・プログラミング、音声障害では主に発声・声質の問題へ視点を分けます。

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ディサースリア・発語失行・音声障害を切り分ける観察ポイント
観点 ディサースリア 発語失行(AOS) 音声障害
主にみる機能 発話に必要な筋力、速度、可動域、筋緊張、協調など 発話運動の計画・プログラミング 発声、声質、声量、発声努力
発話で注目する所見 明瞭度、話速、プロソディー、発声・構音の崩れ 構音の歪み、音の連結障害、プロソディー異常、課題や反復による変化 嗄声、気息性、努力性、声量・声質の変化
次に確認すること 発声発語器官、発話課題、負荷による変化 音節・語・文など課題を変えたときの誤り方 発症時期、持続期間、赤旗、喉頭評価の有無

AOSでは、構音の歪み、音の連結障害、アクセント・プロソディーの障害などが手がかりになります。また、症候が一定しないことや、繰り返しによって増悪することがあります。これらを単独で診断根拠にするのではなく、課題を変えたときの発話の変化を合わせて確認します。

失語症は言語機能の障害であり、ディサースリアやAOSとは別に評価します。ただし、脳卒中では複数の障害が併存することがあるため、1つの所見だけから排他的に分類しないことが重要です。

CAPE-V・GRBAS・VHI|評価者の聴覚印象と本人の困りを分ける

音声障害を詳しく追う場合は、評価者が聴いた声の特徴本人が感じている生活上の困りを分けて評価すると整理しやすくなります。CAPE-VとGRBASは聴覚心理的評価、VHIは本人が感じる音声障害による生活への影響をみる尺度です。

日本語版CAPE-V、日本語版VHIについても検討報告があります。尺度の設問や評価用紙そのものは転載せず、使用時は公式版や利用条件を確認してください。

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音声評価尺度の役割の違い
尺度 主にみるもの 使い方
CAPE-V 評価者による声質の聴覚心理的評価 課題や条件をそろえて継続評価する
GRBAS 声質の聴覚心理的特徴 声質所見を簡潔に整理・共有する
VHI 本人が感じる音声障害による生活への影響 本人の困りや介入前後の変化を共有する

耳鼻咽喉科へつなぐ赤旗|喉頭評価を先に考える条件

声の変化には、STによる機能評価だけで進めず、喉頭の直接評価を優先すべき場面があります。呼吸・気道症状、最近の手術・挿管、頸部腫瘤、喫煙歴、改善しない嗄声などを確認します。

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成人の嗄声で早期の喉頭評価を検討する主な条件
確認項目 次の対応
呼吸・気道症状 呼吸困難、stridorなど 緊急性を含めて速やかに医師へ共有する
最近の手術・挿管 頭頸部・胸部手術、最近の気管挿管 早期の喉頭評価が必要か相談する
重篤な原因を疑う背景 頸部腫瘤、喫煙歴など 早期の耳鼻咽喉科評価を検討する
持続する嗄声 改善せず4週間以上持続する 喉頭鏡検査または耳鼻咽喉科への紹介を検討する

嗄声が4週間以内に改善しない場合は、喉頭鏡検査または実施できる医師への紹介が推奨されています。一方、重篤な原因が疑われる場合は、発症から4週間未満でも期間を待ちません。

また、音声障害に対して音声治療を開始する場合は、事前に喉頭の状態が評価され、その結果がSTへ共有されているかを確認します。呼吸困難やstridorなど緊急性が疑われる場合は、本記事の評価手順より施設の安全管理手順や医師への報告を優先してください。

よくある失敗|数値や単独所見だけで原因を決めない

構音・音声評価で避けたいのは、検査結果を集めたものの、次の評価や病棟対応につながらない状態です。特に以下の4点を確認します。

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構音・音声評価で詰まりやすいポイント
起きやすいこと 問題 対策
「聞き取りにくい」で終わる 発話のどこが崩れているか分からない 明瞭度・話速・抑揚・声量・声質に分ける
MPT・DDKの数値だけ残す 再評価や原因検討へつながらない 条件、崩れ方、会話所見を併記する
単独所見から原因を決める 呼吸・発声・運動・課題条件の影響を見落とす 複数の所見を組み合わせて次の評価を決める
毎回条件が変わる 経時変化なのか測定条件の差なのか分からない 姿勢、課題、指示、時間帯などを可能な範囲でそろえる

多職種共有|「場面・所見・工夫」の3行に変換する

評価結果をそのまま専門用語で伝えるより、どこで困るか・何が観察されたか・どう対応するかの3行に変換すると、看護師、PT、OT、家族が同じ方法で対応しやすくなります。

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構音・音声障害の3行共有テンプレ
要素 書くこと
困り場面 どの条件で伝わりにくいか 「長話と活動後に不明瞭さ↑」
主な所見 評価で確認された特徴 「後半で声量と明瞭度が低下」
対応・工夫 その場で再現できる対応 「対面・短文・休息を入れて確認」

構音・音声障害の評価記録シート|PDF・Excel

評価内容を毎回同じ順番で残したい場合は、記事連動の「構音・音声障害 評価記録シート v3」を使用できます。成人・脳卒中の初回評価を想定し、前提条件・安全 → 聴覚的評価 → 発声発語器官 → MPT・DDK・音量維持 → 鑑別の手がかり → 赤旗 → 多職種共有3行 → 再評価をA4 1枚にまとめています。

PDFは印刷・手書き用、Excelは施設や運用に合わせて記録原本を管理したい場合に使用できます。記録補助用のシートであり、単独所見だけで診断や病変部位を確定するものではありません。

構音・音声障害 評価記録シート v3【PDF】を開く

構音・音声障害 評価記録シート v3【Excel】を開く

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よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。

どのタイミングで耳鼻咽喉科へ相談しますか?

呼吸困難やstridor、頸部腫瘤、最近の頭頸部・胸部手術や挿管、喫煙歴などがある場合は、早期の喉頭評価が必要か相談します。また、嗄声が改善せず4週間以上続く場合は、喉頭鏡検査または耳鼻咽喉科への紹介を検討します。重篤な原因が疑われる場合は4週間を待ちません。

CAPE-V・GRBAS・VHIは全部実施する必要がありますか?

毎回すべて実施する必要はありません。CAPE-VやGRBASは評価者による聴覚心理的評価、VHIは本人が感じている生活への影響をみる尺度です。何を追跡したいかに応じて選択し、使用する場合は公式版や利用条件を確認します。

MPTやDDKの値が毎回ばらつく場合はどうしますか?

数値だけを比較せず、姿勢、課題、指示方法、疲労、時間帯などの実施条件を確認します。数値に加えて「後半で崩れる」「反復すると不規則になる」などの変化も記録すると、経時変化を解釈しやすくなります。

ディサースリアと発語失行、失語症はどう分けますか?

ディサースリアは主に発話運動に関わる神経筋機能、発語失行は発話運動の計画・プログラミング、失語症は言語機能の障害として分けて評価します。ただし脳卒中では併存することがあるため、単独所見から1つに決めず、発話課題と言語課題の両方で崩れ方を確認します。

PT・OT・看護師には何を伝えるとよいですか?

点数や検査名だけでなく、「どの場面で伝わりにくいか」「どんな所見があるか」「どうすると伝わりやすいか」を共有します。たとえば「長話で声量と明瞭度が低下するため、対面で短文に区切り、休息を入れて確認する」のように、病棟で再現できる形にします。

次の一手


参考文献

  1. Kempster GB, Gerratt BR, Verdolini Abbott K, Barkmeier-Kraemer J, Hillman RE. Consensus auditory-perceptual evaluation of voice: development of a standardized clinical protocol. Am J Speech Lang Pathol. 2009;18(2):124-132. doi:10.1044/1058-0360(2008/08-0017). PubMed
  2. Kondo K, Mizuta M, Kawai Y, et al. Development and Validation of the Japanese Version of the Consensus Auditory-Perceptual Evaluation of Voice. J Speech Lang Hear Res. 2021;64(12):4754-4761. doi:10.1044/2021_JSLHR-21-00269. PubMed
  3. Taguchi A, Mise K, Nishikubo K, Hyodo M, Shiromoto O. Japanese version of voice handicap index for subjective evaluation of voice disorder. J Voice. 2012;26(5):668.e15-668.e19. doi:10.1016/j.jvoice.2011.11.005. PubMed
  4. De Bodt MS, Wuyts FL, Van de Heyning PH, Croux C. Test-retest study of the GRBAS scale: influence of experience and professional background on perceptual rating of voice quality. J Voice. 1997;11(1):74-80. doi:10.1016/S0892-1997(97)80026-4. PubMed
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  6. Stachler RJ, Francis DO, Schwartz SR, et al. Clinical Practice Guideline: Hoarseness (Dysphonia) (Update). Otolaryngol Head Neck Surg. 2018;158(1 Suppl):S1-S42. doi:10.1177/0194599817751030. PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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