COPDの運動処方をPT実務で回す:強度→進行→中止基準

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COPD の運動処方は「強度の決め方」と「止めどき」を固定すると回ります

COPD の運動療法は、やみくもに歩かせると「息切れが怖くて低負荷のまま」か「 SpO2 低下や過換気で中断」のどちらかに寄りがちです。迷いを減らすコツは、強度設定 → 進行 → 中止基準 → 記録の順に “型” を固定することです。

本記事は、 PT が現場でそのまま使えるように、 Borg・ SpO2・会話テスト・ 6MWT を使った強度設定と、種目別の進め方、よくある失敗の回避、カルテに残す最小項目までをまとめます。肺リハ( PR )が運動耐容能や症状、 QOL を改善する点は、 GOLD やガイドラインでも繰り返し示されています。

同ジャンルの回遊(まず全体像)

呼吸リハ/内部障害のハブへ(全体像)

関連: GOLD でみる COPD の重症度と評価の流れ

続けて読む: COPD 増悪予防(前兆→行動→記録の型)

結論:処方は「 Borg を軸」に、 SpO2 と会話テストで安全に寄せます

運動強度は、まず Borg(息切れ/下肢疲労)で “ちょうどいい” を作り、 SpO2 と会話テストで安全域に収めます。これだけで「低すぎる/高すぎる」のブレが減ります。

さらに、 6MWT(または ISWT )が取れる環境なら、歩行速度の目安を作って再現性のある処方にできます。強度設定の考え方は、 PR ガイドラインや実践レビューでも整理されています。

5 分で決める: COPD 運動処方の流れ( PT 用)

  1. 安全確認:安静時の呼吸状態、 SpO2、脈拍、胸痛・めまい、直近の増悪(発熱/痰増加/喘鳴)
  2. 強度を決める: Borg を目標域に合わせる(必要に応じて会話テスト/ SpO2 )
  3. 種目を選ぶ:歩行/自転車/ステップ、筋トレ(下肢・体幹)
  4. 時間と回数:短時間から積み上げ(連続が無理ならインターバル)
  5. 記録: Borg・ SpO2・内容(種目/時間/休息)・次回の変更点を 1 行で残す

強度設定の早見: Borg・ SpO2・会話テスト・ 6MWT の使い分け

表はスマホでは横スクロールでご覧ください。

COPD の運動強度を決める指標の使い分け( PT 実務向け)
指標 何が分かる 目安(考え方) よくある落とし穴 回避のコツ
Borg(息切れ/下肢疲労) 主観的負荷(再現性が高い) 「楽ではないが続けられる」帯に固定 SpO2 だけ見て息切れを無視 Borg を主、 SpO2 は安全の補助にする
SpO2 低酸素のリスク 「落ち方」と「回復の速さ」を見る 測定値に振り回され過停止 指先冷え/体動アーチファクトを疑う
会話テスト 過負荷のスクリーニング 短文が言えるかで調整 過換気の人は “話せる” だけで過負荷 Borg と併用して判断を固定
6MWT(または ISWT ) 歩行の基準(速度) 速度の目安を作り処方に落とす テストが “全力” になっていない プロトコル順守(環境・声かけ)を揃える

有酸素(歩行/自転車)の処方:連続が無理ならインターバルで積む

COPD は、同じ強度でも呼吸困難が先に頭打ちになりやすいので、「連続 20 分」を目標にすると詰まります。最初は短い運動+短い休息で総量を確保し、徐々に “連続時間” を伸ばす方が回ります。

PR の実践レビューでも、患者の状態に合わせた運動様式(連続/インターバル)や強度設定の重要性が整理されています。

インターバルの例(迷わないテンプレ)

  • 運動: 1 〜 3 分( Borg が上がりすぎない範囲)
  • 休息: 1 〜 2 分(呼吸が整うまで)
  • 合計:まず 10 〜 15 分 → 20 分へ
  • 進行:先に総時間、次に強度(速度/負荷)

筋トレ(下肢・体幹):息切れが強い人ほど “短時間で効く” を作る

息切れが強い人ほど、有酸素だけで追い込むと中断しやすいので、筋トレで「短時間で負荷を入れる」枠を作ると継続しやすくなります。 PR の推奨では、週の回数や反復回数、 1RM を用いた強度設定が整理されています。

ただし 1RM 測定が難しい現場も多いので、実務では反復回数で “余力” を残す運用(最後の 2 〜 3 回がきつい程度)から入ると安全です。

SpO2 低下・過換気・胸部症状:中止と減量の判断を固定します

COPD の運動中断は「 SpO2 だけで止める」か「止めどきが遅い」の両極になりやすいです。ここは中止( NG )/減量(黄信号)/継続( OK )を表で固定すると、チームで揃います。

運動の中止・減量・継続の判断( COPD / PT 用)
判定 サイン(例) その場の対応 次回の調整
OK(継続) Borg が許容範囲、 SpO2 が安定、会話が短文で可能 同一条件で継続 総時間を先に伸ばす
黄信号(減量) 息切れが急に上がる/ SpO2 が下がり回復が遅い/過換気っぽい 速度・負荷を下げ、休息を入れる インターバル化、ウォームアップを長めに
NG(中止) 胸痛、強いめまい、失神前駆、著明なチアノーゼ、異常な不整脈感など 中止し、バイタル再評価・必要なら報告 医師・チームで再開条件を整理

現場の詰まりどころ:うまくいかない原因は 3 つに集約できます

つまずきは、だいたい次の 3 つです。①強度が低すぎる( “散歩” で終わる)②強度が高すぎる(息切れ恐怖で中断)③記録が残らず再現できない。ここは「失敗パターン」と「回避の手順」を先に決めると、運用が整います。

よくある失敗:強度・休息・声かけがズレると “続かない”

失敗の多くは「強度の軸が毎回ズレる」ことです。 SpO2 だけを見て止めすぎたり、逆に “気合い” で押して過換気になったりします。まずは Borg を主軸にして、次に SpO2 と会話テストで安全に寄せる、と順番を固定してください。

  • 低負荷のまま: Borg が上がらない → 速度・負荷か “連続時間” を微増
  • 中断が多い:連続にこだわる → インターバルで総量を確保
  • 記録が残らない:次回が別物 → 5 行テンプレで固定(下へ)

回避の手順:その場で直せる 5 行チェック(記録テンプレ)

カルテやメモに残すのは、まずこの 5 行で十分です。次回は「 1 つだけ変える(強度か時間)」を守ると、再現性が上がります。

  • 種目:歩行/自転車/ステップ/筋トレ(部位)
  • 時間:連続 or インターバル(運動/休息の比)
  • 強度: Borg(息切れ/下肢疲労)
  • SpO2:最低値と回復(何分で戻るか)
  • 次回:変えるのは 1 点(速度/負荷/総時間/休息)

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. Borg はどのくらいを目標にすればいいですか?

A. まずは「息切れがあるが、フォームが崩れず、次もやれる」帯に固定します。ここが毎回揃うと、強度の微調整(速度・負荷)と総時間の積み上げがしやすくなります。迷ったら、 Borg を主、 SpO2 を安全の補助にして順番を固定してください。

Q2. SpO2 が下がったら、すぐ中止すべきですか?

A. 数値 “だけ” で即中止にせず、落ち方と回復の速さ、症状(胸痛・めまい等)で判断します。指先冷えや体動で誤差も出るため、再測定と症状確認をセットにし、黄信号なら減量(速度・負荷↓/休息↑)へ寄せる運用が現実的です。

Q3. 連続で 20 分歩けません。処方として失敗ですか?

A. 失敗ではありません。連続にこだわるより、インターバルで総量を確保して、徐々に連続時間を伸ばす方が続きます。まずは合計 10 〜 15 分を安定させ、次に 20 分へ積み上げます。

Q4. 筋トレは入れた方がいいですか?

A. 息切れが強い人ほど、筋トレで「短時間で負荷を入れる」枠を作ると継続しやすいです。 1RM 測定が難しい場合は、反復回数で余力を残す運用(最後の 2 〜 3 回がきつい程度)から入り、フォームと呼吸の安定を優先します。

Q5. 増悪の直後は、いつ運動を再開しますか?

A. まずは症状(息切れ、痰、発熱)とバイタルが落ち着いているか、日内変動が小さいかを確認し、低負荷・短時間から再開します。増悪の見極めと行動・記録の型は、別記事(増悪予防)に整理しています。

次の一手:運用を整える→共有の型→環境の詰まりも点検

教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。

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参考文献

  • GOLD. Global Strategy for the Diagnosis, Management, and Prevention of COPD ( 2025 Report ). 2024. PDF
  • GOLD. GOLD Pocket Guide 2026 ( v1.0, 11 Nov 2025 ). PDF
  • Rochester CL, et al. Pulmonary Rehabilitation for Adults with Chronic Respiratory Disease: An Official American Thoracic Society Clinical Practice Guideline. Am J Respir Crit Care Med. 2023;208(4):e7-e26. doi:10.1164/rccm.202306-1066ST. PubMed:37581410
  • Gloeckl R, Marinov B, Pitta F. Practical recommendations for exercise training in patients with COPD. Eur Respir Rev. 2013;22(128):178-186. doi:10.1183/09059180.00000513. PubMed:23728873
  • Singh SJ, et al. Learn from the past and create the future: the 2013 ATS/ERS statement on pulmonary rehabilitation. Eur Respir J. 2013;42(5):1169-1174. doi:10.1183/09031936.00207912. PubMed:24178930

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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