GOLD 2026は「診断・ABE・GOLD 1〜4」を分けると迷いません
GOLDでCOPDを整理するときは、①COPDの診断、②症状と増悪歴によるABE、③FEV1によるGOLD 1〜4を別々に考えることが重要です。GOLD 2026では、前年に中等度または重度の増悪が1回以上あればE群となるよう基準が変更されました。
この記事ではCOPD患者を担当するPT向けに、GOLD 2026のABE判定、GOLD 1〜4との違い、CAAT(旧CAT)の見方を整理します。特に、ABEは運動強度を直接決める分類ではないというPT実務上の境界まで確認します。
結論:ABEとGOLD 1〜4は別の分類です
最初に押さえたいのは、ABEとGOLD 1〜4は同じ「重症度」を表しているわけではないことです。COPDの診断にはスパイロ、症状と増悪歴の整理にはABE、気流閉塞の程度にはFEV1を使います。
| 項目 | 主に見るもの | 分かること | PTでの位置づけ |
|---|---|---|---|
| COPDの診断 | 気管支拡張薬吸入後のFEV1/FVC | COPDに一致する持続性気流閉塞があるか | 診断条件と検査結果を確認する |
| ABE | 症状+過去1年の増悪歴 | 症状負担と増悪リスク | 症状・増悪歴を把握し、評価や連携に生かす |
| GOLD 1〜4 | FEV1 % predicted | 気流閉塞の程度 | 肺機能上の背景として併記する |
たとえば、「GOLD 2・B群」という併記は成立します。GOLD 2はFEV1による気流閉塞のグレード、B群は症状と増悪歴から決めるABE分類だからです。

GOLD 2026のABE分類:E群は増悪1回以上に変更されました
GOLD 2026で特に注意したい変更は、E群に入る増悪歴の基準が変更されたことです。前年に中等度または重度の増悪が1回以上あれば、症状の程度にかかわらずE群として整理します。
したがって、従来の「中等度増悪2回以上、または入院を要した増悪1回以上」という基準で覚えている場合は更新が必要です。まず過去1年の増悪歴を確認し、増悪がなければ症状からA・Bを整理すると混同しにくくなります。
| 群 | 過去1年の増悪歴 | 症状の目安 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| A | 中等度・重度増悪 0回 | mMRC 0〜1 / CAAT < 10 | 増悪歴はなく、症状負担が比較的小さい |
| B | 中等度・重度増悪 0回 | mMRC ≥ 2 / CAAT ≥ 10 | 増悪歴はないが、症状負担が大きい |
| E | 中等度または重度増悪 ≥ 1回 | 症状の程度を問わない | 増悪歴を優先してEと整理する |
PTが確認するときも、まず「過去1年に中等度または重度の増悪があったか」を診療録や治療経過から確認すると、E群の見落としを減らせます。単なる一時的な息切れ増加を自己判断で「増悪1回」と数えるのではなく、診断や治療経過と合わせて整理します。
増悪歴を前兆・自己管理・記録までつなげたい場合は、COPDの増悪予防|前兆から記録までの考え方で詳しく整理しています。
CAAT(旧CAT)は症状負担をみる尺度です
GOLD 2026では、これまで広く使われてきたCAT(COPD Assessment Test)について、CAAT(Chronic Airways Assessment Test)という名称が用いられています。既存のCATとCAATは同じ8項目・同じスコアリングを用いるため、過去のCATスコアとの継続的な比較が可能です。
記事や記録では、当面は「CAAT(旧CAT)」と併記すると、従来のCATに慣れているスタッフにも伝わりやすくなります。
mMRCとCAATは見ている範囲が異なります
mMRCは主に呼吸困難による活動制限をみる尺度で、CAATは咳、痰、胸部症状、活動、睡眠、エネルギーなどを含めてCOPDが健康状態へ与える影響を評価します。そのため、両方を測定した場合に結果が完全には一致しないことがあります。
GOLDのABE図では、症状の目安としてmMRC 0〜1/CAAT < 10とmMRC ≥ 2/CAAT ≥ 10が示されています。両尺度の結果が食い違う場合は、分類だけを見て終わらず、どの症状が負担になっているのかを確認することが重要です。
COPDの診断はスパイロと臨床情報を合わせて判断します
GOLD 2026でも、COPDの診断を確認するスパイロの基準は、気管支拡張薬吸入後のFEV1/FVC < 0.70です。ただし、この数値だけで機械的に診断するのではなく、呼吸器症状、喫煙などのリスク曝露、臨床経過、鑑別診断と合わせて判断します。
PTが診療録を確認する場合は、「COPD」という病名だけでなく、スパイロが実施されているか、気管支拡張薬吸入後の値か、FEV1/FVCとFEV1 % predictedはいくつかまで確認できると、その後の評価を整理しやすくなります。
GOLD 1〜4はFEV1による「気流閉塞の程度」です
GOLD 1〜4は、COPDと診断された患者の気流閉塞の程度をFEV1 % predictedで分類するグレードです。ABEとは別軸なので、「GOLD 1だからA群」「GOLD 4だからE群」とは限りません。
| GOLDグレード | FEV1(% predicted) | 気流閉塞の程度 |
|---|---|---|
| GOLD 1 | ≥ 80% | 軽度 |
| GOLD 2 | 50〜79% | 中等度 |
| GOLD 3 | 30〜49% | 高度 |
| GOLD 4 | < 30% | 極めて高度 |
重要なのは、FEV1と患者本人の息切れ・ADL制限が必ずしも一致しないことです。FEV1は気流閉塞の程度を示す重要な情報ですが、呼吸困難や活動制限には動的過膨張、筋力低下、脱条件化、併存疾患なども関係します。
そのため、「GOLD 1だから症状も軽い」「GOLD 4だから必ず歩けない」とは判断せず、症状と身体機能、運動時反応を別に評価します。
PTはABEだけで運動強度を決めません
PTにとってABEは、症状負担と増悪歴を整理するための重要な背景情報です。しかし、A・B・Eという群だけから「低負荷」「高負荷」と運動強度を直接決める分類ではありません。
具体的な運動内容や強度は、運動耐容能、呼吸困難・下肢疲労、SpO2、心拍数、血圧、併存疾患、直近の増悪からの回復状況、患者目標などを合わせて個別に設定します。E群だから一律に低負荷へ固定する、という使い方は避けます。
| 情報 | GOLDから分かること | PTが別に確認すること |
|---|---|---|
| ABE | 症状負担・増悪歴 | 具体的な運動耐容能と負荷への反応 |
| GOLD 1〜4 | 気流閉塞の程度 | 運動時SpO2、呼吸困難、疲労、回復 |
| 運動処方 | ABEだけでは決まらない | 運動評価・症状・バイタル・患者目標から個別化する |
GOLD 2026対応「5分確認シート」をExcel・PDFで配布しています
診断、増悪歴、症状、ABE、GOLD 1〜4、PT追加評価を5ステップで整理できる記録シートを作成しました。GOLD 2026のE群基準とCAAT(旧CAT)へ対応しています。
Excel版は、スパイロ・増悪歴・症状・FEV1 % predictedを入力しながら整理したい場合に使用できます。PDF版はA4・1枚で、印刷して手書きしたい場合に向いています。
Excel版|COPD GOLD分類 5分確認シート v3
入力しながらABE群とGOLD 1〜4を整理したいときに使用してください。
PDF版|COPD GOLD分類 5分確認シート v3
A4・1枚で印刷し、カンファレンス前や初回評価時の確認に使用できます。
PDFプレビューを開く
※ このシートはGOLD公式図の転載ではなく、GOLD 2026の基準をもとに、PTが情報を整理しやすいよう独自に構成した実務用フォーマットです。診断や治療方針そのものを決定するためのツールではありません。
GOLD分類で迷いやすい4つのポイント
GOLD分類で特に注意したいのは、旧E群基準、ABEとGOLD 1〜4の混同、息切れだけでのE判定、ABEからの運動強度決定です。2026年版へ更新するときは、この4点をまとめて修正しておくと混乱を減らせます。
| 迷いやすい考え方 | GOLD 2026での整理 |
|---|---|
| 中等度増悪2回以上でE | 前年に中等度または重度増悪1回以上でE |
| GOLD 2とB群は同じ重症度 | GOLD 2はFEV1、B群は症状+増悪歴による別分類 |
| 息切れが強いからE | Eは増悪歴で決まり、増悪0回なら症状からA・Bを整理する |
| Eだから運動は低負荷 | ABEだけで運動強度を決めず、個別の運動評価から処方する |
実務では5項目に分けて確認します
分類を1つの「重症度」としてまとめず、診断→増悪→症状→FEV1→PT追加評価の順に分けると整理しやすくなります。配布シートもこの順番で構成しています。
- 診断:気管支拡張薬吸入後FEV1/FVC < 0.70と臨床情報を確認する
- 増悪:過去1年の中等度・重度増悪の有無を確認する
- ABE:増悪が1回以上ならE、0回なら症状からA・Bを整理する
- 気流閉塞:FEV1 % predictedからGOLD 1〜4を併記する
- PT追加評価:運動耐容能、呼吸困難、疲労、SpO2、バイタル、回復状況などを別に評価する
この5ステップはGOLD公式の手順をそのまま転載したものではなく、診断・ABE・FEV1を混同せず、PT評価へつなげるための実務上の整理です。
よくある質問
Q1. 「GOLD 2」と「B群」は同じ意味ですか?
同じ意味ではありません。GOLD 2はFEV1 % predictedによる気流閉塞グレードで、B群は過去1年の中等度・重度増悪が0回で、症状負担が大きい患者を示すABE分類です。「GOLD 2・B群」のように併記できます。
Q2. GOLD 2026では何回増悪するとE群ですか?
前年に中等度または重度の増悪が1回以上あればE群です。従来の「中等度増悪2回以上、または入院を要した増悪1回以上」という基準から変更されているため、旧基準との混同に注意してください。
Q3. CATとCAATは別の尺度ですか?
GOLD 2026ではCAAT(Chronic Airways Assessment Test)という名称が用いられています。従来のCATと同じ8項目・同じスコアリングを用いるため、過去のCAT結果との継続的な比較が可能です。
Q4. ABEが分かればPTの運動強度も決められますか?
ABEだけでは決められません。ABEは症状負担と増悪歴を整理する重要な情報ですが、具体的な運動強度は運動耐容能、呼吸困難、疲労、SpO2、心拍数、血圧、併存疾患などを評価して個別に設定します。
次の一手
- 呼吸評価全体を確認する:呼吸理学療法の評価項目|観察・尺度・運動テストの順番
- 具体的な運動処方へ進む:COPDの運動処方|強度・進行・中止基準の考え方
参考文献
- Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease. Global Strategy for Prevention, Diagnosis and Management of COPD: 2026 Report. GOLD; 2026. Official page
- Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease. GOLD Report 2026 Key Changes Summary. GOLD; 2025. PDF
- Venkatesan P. GOLD COPD report: 2026 update. Lancet Respir Med. 2025 Nov 26. doi: 10.1016/S2213-2600(25)00432-1 / PubMed
- Cazzola M, Bajpai J, Calzetta L, Matera MG, Rogliani P. GOLD 2026: Transforming COPD Management with Early Intervention, Multi-dimensional Assessment, and Personalized Care. Drugs. 2026;86(5):581-597. doi: 10.1007/s40265-026-02303-3 / PubMed
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

