ICU リハは「開始→中止→再開」を 1 枚の SOP にすると安全に回ります
ICU の早期離床は有害事象が少ない一方で、現場で詰まりやすいのは「どこまでやるか」よりも、いつ開始し、どの条件で中止し、いつ再開するかが担当者ごとにブレる点です。結論として、開始→中止→再開を同じ判断軸で運用し、記録を監査できる粒度に揃えると、事故予防とチーム連携が安定します。
本記事は “ 閾値の暗記 ” ではなく、安全チェック→実施→中止理由→再開条件→申し送りまでを ICU リハの SOP(標準手順)として整理します。ICU / HCU / 急性期病棟で「判断が人によって違う」「申し送りで再開条件が抜ける」と感じている方向けの記事です。
ICU の安全 SOP を “チーム運用” に落とす導線
プロトコルの全体像(ハブ)を見るチェックリスト(A4 1 枚)のダウンロード
現場でブレやすい判断を “同じ順番・同じ言葉” に揃えるために、A4 1 枚のチェックリストを用意しました。まずは病棟で配れる形で運用し、詰まった箇所だけチームで修正していくと、標準化が前に進みます。
プレビュー(院内での見え方を確認)
この SOP の対象と前提
対象は ICU / HCU / 急性期の重症患者で、離床レベルは関節可動域・座位・端座位・立位・移乗・歩行までを想定します。前提として、離床は単独行為ではなく、多職種で「中止基準」を共有して安全を担保します。
| 区分 | 具体 |
|---|---|
| 向く | 担当者ごとの判断がブレる/中止理由が曖昧/申し送りで再開条件が抜ける |
| 不足しやすい | ECMO 装着、特殊体位管理など高難度ケース(施設プロトコルを優先) |
開始→中止→再開のフロー(これを 1 枚で固定)
迷いを減らすコツは、開始・中止・再開を「呼吸・循環・意識・ライン・その他」の同じ観点で判断することです。以下の図版と表を、そのまま病棟 SOP の土台として使えます。
| ステップ | 確認ポイント | アクション | 記録(最小セット) |
|---|---|---|---|
| 1. 事前ブリーフ | 今日の目的、禁忌・注意、ライン類 | 役割分担(見守り・ライン管理)を決める | 目標、担当、注意点 |
| 2. 開始判定 | 呼吸・循環・意識・鎮痛・出血リスク | 開始 or 保留(理由を明記) | 開始可否、保留理由、再評価予定 |
| 3. 実施 | 段階的に負荷を上げる | 段階ごとに安全確認 | 到達レベル、介助量、バイタル推移 |
| 4. 中止判定 | 低酸素、血圧低下、頻脈、意識変化、ライン異常 | 中止し原因対応 | 中止理由、発生時刻、対応 |
| 5. 再開判定 | 原因が解消し安定しているか | 同日再開/翌日再開/段階を下げて再開 | 再開条件、次回開始レベル |
開始前の安全チェック(まず “保留条件” を決める)
開始基準は施設差があるため、絶対値だけではなく、保留理由を言語化して共有できるかが重要です。
| 観点 | OK の目安 | 注意 | 保留 |
|---|---|---|---|
| 呼吸 | 酸素化が安定 | 分泌多い → 先に排痰 | 急な SpO2 低下、強い呼吸苦 |
| 循環 | 血圧・心拍が安定 | 起立性低下疑い → 段階を刻む | 循環動態不安定 |
| 意識 | 最低限の指示理解 | 不穏傾向 → 見守り強化 | 覚醒不十分/危険行動 |
現場の詰まりどころ(よくある失敗)
事故が起きやすいのは、技術不足よりも「判断基準と記録の不統一」です。
- 開始基準が担当者で違う:保留理由まで統一する
- 中止理由が曖昧:「どの段階で何が起きたか」を残す
- 再開条件が残らない:次回開始レベルを固定で共有する
関連:ICU 離床をチームで回す全体設計は、ICU 早期離床をチームで回す手順にまとめています。
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、環境要因の影響を受けている可能性もあります。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 中止基準は数値で統一すべきですか?
A. 施設基準がある場合は数値で統一するのが安全です。一方、冷汗や危険行動など “ 前兆 ” も重要なため、具体的所見もセットで運用すると再現性が上がります。
Q2. 同日に再開しても良いですか?
A. 原因対応後に安定が確認できれば、段階を下げて再開できる場合があります。
次の一手(現場で回すための行動)
参考文献
- Hodgson CL, et al. Critical Care. 2014;18:658. DOI: 10.1186/s13054-014-0658-y
- Nydahl P, et al. Ann Am Thorac Soc. 2017. DOI: 10.1513/AnnalsATS.201611-843SR
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。


