VOCSN-VCの排痰補助|カフ療法の使い方・設定・手順

臨床手技・プロトコル
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VOCSN-VCの排痰補助|カフ療法は「準備→設定→実施→回収→再評価」で行う

VOCSN-VCで排痰補助を行うときは、カフ療法を開始するだけでなく、患者状態と処方の確認、カフ設定の確認、マスク・回路の準備、分泌物の回収、終了後の再評価と換気復帰までを一連の流れとして考えることが重要です。

この記事では、VOCSN-VCのカフ(排痰補助)療法について、個別患者への設定値を示すのではなく、どの設定項目を確認するか、どの順番で実施するか、マスク使用時に何へ注意するか、効かない・Leak Alarmが出るときにどこを確認するかを医療従事者向けに整理します。実際の設定値・実施条件は、医師の処方、取扱説明書、施設手順を優先してください。

VOCSN-VCで排痰補助を行うときの基本的な流れ
順番 確認すること 次の判断
1. 開始前確認 患者状態、処方、回路、マスク、分泌物の回収手段 安全に開始できるか
2. 設定確認 Preset、Cough Cycles、吸気・呼気の圧と時間、Breath Syncなど 処方と一致しているか
3. カフ療法 患者反応、リーク、同調、アラーム、機器モニタ 継続できるか
4. 痰の回収 喀出または別途準備した吸引による分泌物の回収 排出までつながったか
5. 再評価 呼吸状態、呼吸音、分泌物、SpO2、機器モニタ 追加実施・終了・相談を判断
6. 換気復帰 人工呼吸への復帰、回路・マスク、アラーム 元の換気状態へ安全に戻ったか

VOCSNとVOCSN-VCの違い|VCには排痰補助機能はあるが内蔵吸引はない

VOCSN-VCは、人工呼吸器と排痰補助装置を一体化した機器です。 カフ(排痰補助)療法では、陽圧と陰圧を交互に気道へ加えて分泌物の排出を促します。

一方、VOCSNに搭載される吸引器、酸素濃縮器、ネブライザの機能は、VOCSN-VCには搭載されていません。したがって、VOCSN-VCでカフ療法後に吸引が必要な患者では、外部の吸引手段を別途準備してから開始します。

VOCSNとVOCSN-VCで混同しやすい機能
機能 VOCSN VOCSN-VC 実施時のポイント
人工呼吸 あり あり カフ療法終了後の換気復帰まで確認する
カフ(排痰補助) あり あり 処方された設定を確認して実施する
内蔵吸引 あり なし 必要時は外部吸引を準備する
Cough + Suction 吸引機能を搭載するVOCSNで使用可能 内蔵吸引を前提にしない VOCSN用手順をそのままVCへ当てはめない

ここが重要です:「カフ療法で痰を上げること」と「上がった痰を回収すること」は分けて考えます。VOCSN-VCでは、必要な患者に対して喀出介助や外部吸引まで準備したうえで開始します。

開始前確認|患者・処方・回路・マスク・回収手段をそろえる

カフ療法を開始する前は、画面操作より先に患者状態、処方、呼吸回路、マスク、分泌物の回収手段を確認します。特に人工呼吸への依存度が高い患者では、カフ療法中だけでなく、終了後に元の換気へ確実に戻れることまで含めて準備します。

VOCSN-VCカフ療法の開始前チェック
確認項目 具体的に見ること 目的
患者状態 呼吸状態、SpO2、顔色、意識・反応、分泌物、循環状態 開始前の基準と安全性を確認する
処方 使用Preset、吸気・呼気圧、各時間、回数、Breath Syncなど 処方された条件と一致させる
電源・回路 電源、接続、屈曲、結露、水溜まり、回路構成 換気・カフ療法の中断や誤作動を避ける
マスク マスク種類、位置、ずれ、意図しないリーク カフの圧・流量を適切に伝える
痰の回収 喀出可能か、外部吸引が必要か、必要物品があるか 上がった分泌物を回収できるようにする
緊急時対応 代替換気手段、アラーム対応、報告先 機器停止や患者状態悪化に備える

マスクでは「換気時のリーク補正」と「カフ療法時のリーク」を分けて考える

VOCSN-VCには非侵襲的換気で使用できるリーク補正機能があります。しかし、換気時にリーク補正が可能であることと、カフ療法中にマスクから空気が漏れてもよいことは別です。

VOCSN Clinical and Technical Manualでは、一体型リークを持つマスクはカフ療法を有効に届けにくくする可能性があり、カフ療法中は一体型リークのないマスクへ一時的に変更するよう示されています。普段のNIV用マスクとカフ療法時のインターフェース条件が異なる場合は、施設手順と患者ごとの処方を確認してください。

回路条件を変更したときはPre-Use Testの要否を確認する

メーカーのClinical and Technical Manualでは、Ventec One-Circuitやその構成を変更した場合、またはCircuit Typeを変更した場合に、治療開始前のPre-Use Testを実施するよう示されています。

Pre-Use Test中は換気療法が停止するため、人工呼吸が必要な患者では代替換気を含む安全確保が必要です。実施のタイミング・方法は、使用中のソフトウェア版の取扱説明書と施設手順に従ってください。

VOCSN-VCのカフ設定|設定値ではなく「何を決める項目か」を確認する

VOCSNのカフ療法には、吸気・呼気の圧と時間、サイクル数、Breath Syncなど複数の設定項目があります。重要なのは、数値を暗記することではなく、それぞれが何を調整する設定なのかを理解したうえで、処方された内容と一致しているかを確認することです。

VOCSN-VCで確認する主なカフ療法の設定項目
設定項目 何を決めるか 確認ポイント
Cough Preset 保存されたカフ療法設定の組み合わせ 患者に処方されたPresetか
Cough Cycles カフ療法で行うサイクル数 処方された回数と一致しているか
Insufflation Pressure 吸気相で加える陽圧 処方値と一致しているか
Insufflation Rise Time 吸気圧が設定圧へ立ち上がる速さ 処方と患者反応を確認する
Insufflation Time 吸気相を持続する時間 処方時間と一致しているか
Exsufflation Pressure 呼気相で加える陰圧 処方値と一致しているか
Exsufflation Time 呼気相を持続する時間 処方時間と一致しているか
Pause Time 呼気相終了から次の吸気相までの休止時間 処方とBreath Syncの条件を確認する
Breath Sync 患者の吸気努力に同期してカフを開始する機能 On / OffとFlow Triggerの条件を確認する

Breath SyncがOnの場合は、患者の吸気努力をFlow Triggerで検出してカフ療法へ入ります。同調が悪いと感じるときは、マスクフィットだけでなく、患者の呼吸努力、Breath Sync、Flow Triggerの条件も確認対象になります。

マスクで排痰補助を行う手順|換気復帰までを1セットとして考える

実施順は、開始前確認→設定確認→カフ療法開始→分泌物回収→再評価→換気復帰に固定すると整理しやすくなります。設定されたサイクルを実施すること自体ではなく、患者へ安全に療法が届き、分泌物の排出につながったかを確認します。

  1. 患者状態と処方を確認する:開始前の呼吸状態、SpO2、分泌物、処方されたカフ設定を確認します。
  2. 回路とマスクを確認する:回路の接続・屈曲・結露、マスクの種類・位置・リークを確認します。
  3. 痰の回収手段を準備する:VOCSN-VCには内蔵吸引がないため、必要な患者では外部吸引などを準備します。
  4. カフ療法の設定を確認する:使用するCough Preset、Cough Cycles、吸気・呼気の圧と時間、Breath Syncなどが処方内容と一致していることを確認します。
  5. カフ療法を開始する:開始後は患者から離れず、表情、呼吸努力、SpO2、リーク、同調、アラームを確認します。
  6. 機器モニタを確認する:Cough Cycles、Cough Volume、Peak Cough Flow、気道内圧などを患者反応とあわせて確認します。
  7. 上がった分泌物を回収する:喀出または準備した外部吸引などで分泌物を除去します。
  8. 再評価する:呼吸状態、呼吸音、SpO2、分泌物、機器モニタを開始前と比較します。
  9. 換気への復帰を確認する:カフ療法終了後に人工呼吸へ戻っていること、回路・マスク・アラームに問題がないことを確認します。
VOCSN-VCの排痰補助におけるカフ療法の実施フロー。開始前確認、設定確認、カフ療法開始、痰の回収、再評価、換気復帰の順に示す図版
VOCSN-VCのカフ療法は、開始前確認から分泌物の回収、再評価、換気復帰までを一連の流れとして確認します。図中の機器画面・設定値は概念的な表示であり、個別患者への推奨設定値ではありません。

カフ療法中に確認できる主なモニタ

VOCSNでは、カフ療法開始後に専用のモニタ画面が表示されます。代表的な項目は、Cough Cycles、Cough Volume、Peak Cough Flow、カフ療法中の気道内圧です。

カフ療法中に確認できる主なモニタ
モニタ 確認できること 読み方のポイント
Cough Cycles 実施済みのサイクル数と設定された総サイクル数 設定どおり進行しているか確認する
Cough Volume 直近のカフで送気された容量 単独値ではなく前回値や患者反応とあわせて見る
Peak Cough Flow 直近のカフにおける最大流量 分泌物・リーク・患者反応とあわせて評価する
Pressure カフ療法中の陽圧・陰圧 療法が設定条件で実施されているか確認する

これらの機器モニタだけで「排痰できた」と判断するのではなく、実際に分泌物が移動・回収できたか、呼吸状態がどう変化したかを合わせて評価します。

効かない・Leak Alarmが出るとき|患者→マスク→接続→回路→設定の順に確認する

排痰補助の効果が乏しい場合やLeak Alarmが出る場合は、最初から設定値の変更へ進まず、患者状態→マスク→接続部→回路条件→設定・回路試験の順に切り分けます。旧Leak Alarm記事で扱っていた内容も、このトラブルシューティングへ統合します。

VOCSN-VC排痰補助のトラブルシューティング
困りごと まず確認すること 次の対応 記録すること
排痰効果が乏しい マスクの一体型リーク、意図しないリーク、接続、分泌物 インターフェースと回路条件を整えて再評価する マスク条件、分泌物、患者反応
マスクから漏れる 鼻梁、口角、頬、下顎、マスク位置 強く締める前に位置・サイズ・張力を見直す 漏れ部位、体位、再調整後の変化
呼吸と合わない 患者努力、Breath Sync、Flow Trigger、疲労 一旦停止し、患者状態と設定を確認する ずれたタイミング、患者反応
Leak Alarmが反復する マスク、コネクタ、回路の外れ・屈曲・結露 患者安全を確認してから原因を順に切り分ける 発生時刻、場面、原因候補、対応、結果
痰が上がるが回収できない 外部吸引の準備、口腔内、痰性状、体位 回収方法を整えて気道内に残さない 回収方法、量、性状
回路変更後から異常 回路構成、Circuit Type、接続 Pre-Use Testを含め施設手順で再確認する 変更内容、テスト結果、再発有無

Leak Alarmでは「患者安全」を最初に確認する

Leak Alarmが鳴ったときは、アラームを止めることよりも患者状態の確認を優先します。SpO2、呼吸努力、顔色、意識・反応、換気状態を確認したうえで、マスク周囲、接続部、回路条件へ進みます。

  1. 患者状態:SpO2、呼吸努力、顔色、意識・反応、換気状態を確認する
  2. マスク周囲:鼻梁、口角、頬、下顎側のずれ・漏れを確認する
  3. 接続部:コネクタや回路接続部の緩み・半挿入を確認する
  4. 回路条件:屈曲、圧迫、結露、水溜まり、回路の引っ張りを確認する
  5. 設定・回路:回路構成やCircuit Typeを確認し、必要時はPre-Use Testへ進む

マスクリークでは、原因が分からないままストラップを強く締めるのではなく、まずマスク位置、漏れている部位、体位、回路の引っ張りを確認します。原因が特定できない反復アラームや換気不良が疑われる場合は、無理にカフ療法を継続せず、施設手順に沿って対応してください。

一旦止めて再評価する場面|患者変化があればサイクル完遂を優先しない

カフ療法中に患者状態が悪化した場合は、予定したCough Cyclesを最後まで行うことよりも安全確認を優先します。開始前からの変化、換気状態、循環、分泌物の回収状況、アラームをまとめて再評価します。

  • 呼吸努力や呼吸困難が明らかに増加した
  • SpO2低下など酸素化の悪化がみられる
  • 顔色、意識、反応に変化がみられる
  • 著しい心拍数変化など循環状態の悪化が疑われる
  • 強い咳込み、嘔気・嘔吐などが出現した
  • リークやアラームによって適切な療法を継続できない
  • 上がった分泌物を回収できず、気道確保に懸念がある

また、メーカーのClinical and Technical Manualでは、ブラを伴う肺気腫の既往、最近の圧外傷、気胸または縦隔気腫を起こしやすい状態などでは、カフ療法を使用する前に医療専門職へ確認するよう示されています。非侵襲的インターフェースについても、気道開存を維持できない状態や胃内容物誤嚥リスクなどでは事前確認が必要です。

記録|設定だけでなく「患者反応・回収・次回条件」を残す

VOCSN-VCの排痰補助では、設定値だけを記録しても次回の再現には十分ではありません。どの条件で実施し、患者がどう反応し、分泌物を実際に回収できたかまで残します。

VOCSN-VCカフ療法で残したい記録項目
項目 記録内容 次回に役立つこと
開始条件 日時、体位、開始前の呼吸状態、分泌物 同じ条件で比較できる
インターフェース マスク種類、位置、フィット、リーク 効きやすいマスク条件を再現できる
カフ設定 Preset、Cough Cycles、吸気・呼気の圧と時間、Breath Syncなど 処方条件を確認できる
機器モニタ Cough Volume、Peak Cough Flow、実施Cycle数など 前回との変化を比較できる
分泌物 喀出・吸引方法、量、性状、回収できたか 排痰補助が排出までつながったか確認できる
患者反応 SpO2、呼吸努力、表情、循環変化、苦痛 負荷と回復を比較できる
トラブル Leak Alarm等、原因候補、実施した対応、結果 再発時の確認を短縮できる
終了後 換気復帰、呼吸状態、分泌物、次回の見直し条件 次回の準備条件を共有できる

VOCSN-VCマスク排痰補助の記録シート

既存のA4記録シートでは、マスク、回路、リーク、同調、分泌物の回収、患者反応を同じ形式で記録できます。シート内の時間や実施量は個別患者への推奨設定ではありません。 実際の運用では、現在の処方、取扱説明書、施設手順を優先してください。

VOCSN-VC 記録シートPDFを開く

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PDFが表示されない場合は、上の「VOCSN-VC 記録シートPDFを開く」から確認してください。


統合したLeak Alarm 5分フロー

旧Leak Alarm記事で配布していたA4シートも、このページへ統合して残します。患者状態、マスク周囲、接続部、回路条件、Pre-Use Test、申し送りを同じ順番で確認するための補助資料です。

「5分」は固定された医学的な中止・対応基準ではなく、確認順を整理するためのシート名称です。 患者状態が不安定な場合は時間に関係なく安全確保と報告を優先してください。

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PDFが表示されない場合は、上の「Leak Alarm 5分フローPDFを開く」から確認してください。


よくある質問

Q1. 普段NIVで使っているリーク付きマスクのままカフ療法を行えますか?

VOCSN Clinical and Technical Manualでは、一体型リークを持つマスクはカフ療法を有効に届けにくくする可能性があるため、カフ療法中は一体型リークのないマスクへ一時的に変更するよう示されています。患者ごとの処方、使用しているマスク・回路、施設手順を確認してください。

Q2. VOCSN-VCでもCough + Suctionを使えますか?

VOCSN-VCにはカフ療法機能がありますが、内蔵吸引機能はありません。VOCSN用のCough + Suction手順をそのままVOCSN-VCへ当てはめず、吸引が必要な患者では外部の吸引手段を準備します。

Q3. VOCSN-VCの排痰補助が効いているかは何で判断しますか?

実際に分泌物が移動・回収できたか、呼吸状態や呼吸音がどう変化したかを中心に確認します。Cough VolumeやPeak Cough Flowなどの機器モニタも参考になりますが、単独の数値だけで効果を判断せず、患者反応とあわせて評価します。

次の一手


参考文献・参照資料

  1. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構. オールインワン VOCSN ベンチレータ 添付文書. 2023年4月 第1版. 承認番号23000BZX00038000. PMDA
  2. カフベンテックジャパン株式会社. VOCSN-VC Ventilator. 製品情報
  3. カフベンテックジャパン株式会社. オールインワン VOCSN Ventilator. 製品情報
  4. Ventec Life Systems. VOCSN Clinical and Technical Manual. Clinical Resources
  5. Ventec Life Systems. VOCSN Clinical Quick Start Guide. PDF
  6. Ventec Life Systems. VOCSN Cough Therapy Protocol. Clinical Resources
  7. Shah NM, Ramsay M, D’Cruz RF, et al. Mechanical insufflation-exsufflation use in neuromuscular disease: a single centre cohort study. BMJ Open Respir Res. 2025;12(1):e002651. doi:10.1136/bmjresp-2024-002651.
  8. Shah NM, Apps C, Kaltsakas G, et al. The effect of pressure changes during mechanical insufflation-exsufflation on respiratory and airway physiology. Chest. 2024;165(4):929-941. doi:10.1016/j.chest.2023.10.015.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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