敗血症の早期リハ|J-SSCG 2024の推奨と開始判断

臨床手技・プロトコル
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敗血症の早期リハは推奨されますが、開始時期を一律には決めません

J-SSCG 2024では、敗血症患者のPICS予防として早期リハビリテーションを行うことが弱く推奨されています(GRADE 2D)。ただし、「早期リハが推奨されている=できるだけ早く立位・歩行まで進める」という意味ではありません。

敗血症患者では、呼吸不全・循環不全や治療の進行状況によって、積極的な離床より全身管理を優先する場面があります。ICU・急性期病棟では、まず生命危機からの回復・安定化を確認し、呼吸・循環・意識・治療状況を踏まえて、その日に許容できる活動度を判断することが重要です。この記事では、PT・OT・STが迷いやすい「いつ開始を検討するか」「いつ積極的離床を見送るか」を整理します。

離床全体の安全確認・段階的な進め方から整理したい方はこちらです。

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J-SSCG 2024はPICS予防として早期リハを弱く推奨しています

J-SSCG 2024のCQ7-1では、PICSの予防に早期リハビリテーションを行うことをGRADE 2Dで弱く推奨しています。一方で、敗血症患者に限定した早期リハの有効性・有害性は定まっておらず、定義、種類、開始時期、実施期間についても一定の見解は得られていません。

J-SSCG 2024の推奨を臨床でどう読むか
確認点 J-SSCG 2024の位置づけ 実務での考え方
早期リハ PICS予防として弱く推奨 早期から適応を検討する
推奨の強さ GRADE 2D 全例に同じ時期・内容で実施するという意味ではない
敗血症に限定した効果 有効性・有害性は定まっていない 病態と治療段階を含めて個別に判断する
開始時期 一定の見解は得られていない 発症後の日数だけで決めない

したがって、J-SSCG 2024の推奨は「敗血症なら早く歩かせる」という指示ではありません。早期からリハビリテーションの必要性を検討しつつ、実際に離床・運動療法まで進めるかは、その時点の全身状態から別に判断します。

開始判断は「何日目か」より生命危機から回復・安定しているかを先に見ます

敗血症患者の離床・運動療法では、まず生命を脅かす状態から回復または安定しているかを確認します。重症患者リハビリテーション診療ガイドライン2023(J-ReCIP 2023)でも、生命危機からの回復または状態の安定を確認したうえで、離床・運動療法の開始を検討するとされています。

そのため、「ICU入室後○時間」「敗血症発症後○日」といった時間だけでは開始を決めません。少なくとも、呼吸・循環・意識・治療状況を確認し、現在の患者が予定する活動による負荷を許容できるかを考えます。

敗血症患者で離床・運動療法を検討するときの確認軸
領域 確認すること 判断につなげる視点
循環 血圧、心拍、循環作動薬、循環動態の推移 治療下で安定しているか、悪化方向ではないか
呼吸 酸素化、呼吸数、呼吸仕事量、酸素・人工呼吸条件 活動による酸素需要増加を許容できる状態か
意識・鎮静 覚醒、指示理解、興奮、鎮静状態 予定する活動を安全に実施できるか
治療・処置 全身管理、出血、処置予定、デバイス、安静指示 離床より優先すべき治療がないか
前回の反応 前回介入時の症状、バイタル変化、回復状況 同じ負荷を継続・増量できるか

これらは敗血症専用の絶対的なGO/STOP基準ではありません。J-ReCIP 2023でも、安全かつ有効な離床・運動療法の開始基準と時期について統一されたコンセンサスはなく、医療チームによる総合的な判断が必要とされています。

「早期リハを行う」と「積極的に離床する」は分けて考えます

敗血症の急性期で特に区別したいのが、早期からリハビリテーションを検討することと、早期から立位・歩行などの積極的な離床を行うことです。

J-SSCG 2024では、リハビリテーション実施によって酸素需要が増加するため、呼吸不全・循環不全が存在する患者では実施の是非に注意するとしています。さらに、全身管理を優先する状況では、早期離床や早期からの積極的な運動が禁忌となる場合があることも示されています。

そのため、実務では次の順番で考えると整理しやすくなります。

  1. 全身管理を優先すべき状態が残っていないかを確認する
  2. 生命危機から回復・安定化しているかを確認する
  3. 現在の呼吸・循環・意識で予定する活動を許容できるかを判断する
  4. 実施中の反応を確認し、活動量を維持・増量・減量する
敗血症の早期リハ判断|開始を検討する流れ
敗血症の早期リハ判断を簡潔に整理した図版。J-SSCG 2024の推奨をふまえ、全身管理、安定化、安全性確認、その日の活動度、反応による調整の流れを示しています。

つまり、敗血症の早期リハは「実施する/しない」の二択ではありません。ベッド上で行う介入を含め、その時点の病態に合わせて活動内容を選び、状態が整えば離床・運動療法へ進めます。

昇圧薬の使用だけで離床可否を決めません

敗血症性ショックでは昇圧薬を使用する場面があるため、「昇圧薬を使っている患者は離床できないのか」という疑問が生じます。しかし、離床可否を薬剤使用の有無だけで決めることはできません。

重要なのは、現在の循環動態、治療の推移、全身管理を優先すべき状態かを含めて判断することです。循環不全が存在する患者では、J-SSCG 2024でも早期リハの実施可否へ注意するよう示されています。

そのため、循環動態が不安定な状況で「早期リハだから」と積極的な離床を優先するのではなく、医師・看護師を含むチームで現在の治療状況を共有し、自施設の離床基準に照らして活動度を決めます。

記録は「実施内容」だけでなく判断根拠と次回条件を残します

敗血症患者では治療条件や全身状態が変化するため、「端座位を実施」「離床中止」といった結果だけでは、次回の担当者が同じ判断を再現しにくくなります。

記録では、何を行ったかに加えて、なぜその活動度を選んだか、患者がどう反応したか、次回は何を確認して進めるかを残します。

敗血症患者の早期リハで残したい記録
項目 記録する内容 記録の考え方
実施前 呼吸・循環・意識、治療条件、前回からの変化 開始判断に影響した情報を残す
活動度 実施した姿勢・運動・離床内容 その活動度を選んだ理由も残す
反応 自覚症状、呼吸・循環反応、回復状況 実施前後の変化が分かるようにする
中止・負荷軽減 中止または負荷を下げた理由 どの時点で何が変化したかを残す
次回条件 再確認する治療条件、活動度、注意点 次回担当者が判断を引き継げる形にする

たとえば「立位中止」だけで終えるのではなく、「循環動態の変化により立位を中止。臥位へ戻して回復を確認。次回は治療状況と循環動態を再確認して活動度を再検討」のように、中止理由→回復→次回判断までつなげます。

敗血症の早期リハで避けたいのは「推奨=離床」と考えることです

敗血症患者の早期リハでは、ガイドラインの「弱く推奨」という結論だけを切り取り、活動度を先に決めないことが重要です。

敗血症の早期リハで迷いやすい判断
迷いやすい考え方 整理の仕方
早期リハ推奨だから早く立たせる 早期から適応を検討することと、積極的離床を行うことを分ける
発症○日目だから開始する 日数より生命危機からの回復・安定化と現在の全身状態を見る
昇圧薬使用中だから一律に中止する 薬剤名だけでなく循環動態・治療の推移・施設基準を含めて判断する
歩行できなければリハの意味がない 全身管理を優先しながら、その時点で許容できる介入を選ぶ
中止したら介入失敗 反応を捉えて安全に止め、次回条件を明確にすることも重要な評価と考える

敗血症の早期リハでよくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 敗血症の早期リハは何日目から始めますか?

敗血症患者すべてに適用できる「発症後○日目」という開始日は定まっていません。J-SSCG 2024でも早期リハの開始時期について一定の見解は得られていないとされています。離床・運動療法では、生命危機からの回復・安定化を確認したうえで、呼吸・循環・意識・治療状況を含めて判断します。

Q2. 敗血症性ショックで昇圧薬を使用していたら離床できませんか?

昇圧薬を使用しているという情報だけで可否を決めることはできません。循環不全が存在する患者では実施の是非へ注意し、現在の循環動態、治療の推移、医師の治療方針、自施設の離床基準を含めて活動度を判断します。

Q3. J-SSCG 2024が早期リハを推奨しているなら、早く立位・歩行まで進めるべきですか?

そうではありません。J-SSCG 2024はPICS予防として早期リハを弱く推奨していますが、全身管理を優先する状態では早期離床や早期からの積極的運動が禁忌となる場合も示しています。その日の全身状態に応じて活動度を決めます。

Q4. 敗血症患者では何を記録すると次回の離床判断につながりますか?

実施前の呼吸・循環・意識と治療条件、選択した活動度、実施中の反応、中止・負荷軽減の理由、次回の確認条件を残します。「何をしたか」だけでなく「なぜその活動度にしたか」が分かる記録にすると、担当者が変わっても判断を引き継ぎやすくなります。

次の一手|具体的な開始・中止基準を共通化する

敗血症特有の判断を整理したら、次は一般的な重症患者の離床開始・中止基準をチームでそろえます。敗血症患者でも、具体的な数値だけを単独で使うのではなく、症状・経過・治療条件と合わせて判断してください。

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参考文献

  • 志馬伸朗,中田孝明,矢田部智昭,他.日本版敗血症診療ガイドライン2024(J-SSCG2024).日集中医誌.2024;31:S1165-S1313.公式PDF
  • Unoki T, Hayashida K, Kawai Y, et al. Japanese Clinical Practice Guidelines for Rehabilitation in Critically Ill Patients 2023 (J-ReCIP 2023). J Intensive Care. 2023;11:47. doi:10.1186/s40560-023-00697-w. 本文

著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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