療法士の指導を見える化する実務【 2026 改定 】

制度・実務
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令和 8 年改定の論点は「療法士の指導」を病棟アウトプットとして見える化することです

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令和 8 年度改定では、療法士の専門性を活かした指導等を、病棟の中でどう位置づけ、どう見える化するかが重要な論点になりました。現場で見るべきポイントは、「新しい言葉が出たか」よりも、誰が・どこで・何を残すと病棟のアウトプットとして説明しやすいかです。

本記事では、制度文言の解釈で終わらせず、① 何が論点として示されたか② どこまでが確定資料で具体化しているか③ 監査・院内共有に耐える記録テンプレまで、現場の「迷い」を減らす形でまとめます。

最終更新:2026 年 3 月 6 日(厚労省「議論の整理」+ 医科全体版 反映)

令和 8 年改定(リハ)の全体像から押さえる

改定(リハ)の要点をまとめて確認

関連:疾患別リハの専従・上限を先に整理
続けて読む:計画・運用の簡素化論点

結論|独立の新設加算というより、兼務規定・記録・病棟運用の明確化として読むと迷いません

今回の論点は、「療法士の指導」だけを単独で新設評価する話として読むより、病棟に配置された PT / OT / ST の専門性を、病棟運用の中でどう発揮し、どう記録するかを明確化する流れとして読む方が実務に落とし込みやすいです。

現時点で確定資料として拾いやすいのは、A233 / A304 / A308-3 における病棟専従者の兼務規定指導内容を診療録に記録すること、そして病棟専従者が算定できる疾患別リハの単位制限です。まずはこの 3 点を院内で揃えると、制度変更に振り回されにくくなります。

何が示され、何が確定したか

「療法士の指導等」をどう読むか:議論の整理と確定資料のつながり
段階 示された内容 実務での読み方 先に決めること
議論の整理 病棟内に限らず専門性を活かした指導等を推進する観点から、疾患別リハや病棟の業務に専従の PT / OT / ST が従事できる業務の範囲を広げる方向が示された 「指導」を、個別介入の外にも広げて病棟アウトプットとして整理する必要がある 何を “指導” として残すかを定義する
確定資料 A233 / A304 / A308-3 で、病棟専従者の兼務規定、指導内容の診療録記録、算定制限などが具体化 まずは病棟で回るルール・記録の置き場所・兼務表を作る 兼務区分表、病棟共通欄、3 行テンプレを固定する

確定資料で現場影響が大きい 4 点

病棟専従療法士の運用で、先に揃えたい確定ポイント
論点 確定資料で見えること 現場で起きやすい詰まり 最小の対策
兼務規定 病棟専従者の兼務可否が、加算区分ごとに整理されている 「兼務 OK / NG」が人でズレる 兼務区分表を 1 枚にする
指導内容の記録 指導内容を診療録に記録することが明記されている 指導したのに残らない/個人メモで終わる 病棟共通欄に短文テンプレを固定する
3 日以内開始割合 病棟の評価では、3 日以内のリハ開始割合が指標になる 介入したが、病棟のアウトプットに結びつかない 起点・共有・開始日を同じ様式で残す
疾患別リハ算定制限 病棟専従者が算定できる疾患別リハ単位数に上限が整理されている 病棟業務と出来高リハの境目が曖昧 「個別リハ」と「病棟運用」を置き場所で分ける

対象になりやすい「指導等」を、PT・OT・ST で具体化します

「指導等」は、患者本人への説明だけでなく、家族・病棟スタッフへの教育、環境調整、退院後の自己管理設計まで含めて整理すると実務で使いやすくなります。ここでは、臨床で頻出し、かつ記録に落としやすいものを中心に並べます。

療法士の「指導等」例(病棟アウトプットとして残しやすい整理)
職種 指導の例 記録の要点 患者アウトカムの例
PT 離床・移乗・歩行の安全指導、転倒予防、疼痛自己管理、運動強度( Borg / RPE )教育、自主練メニュー設計 禁止条件/中止基準、介助量、補装具・歩行補助具、病棟内動線、宿題(頻度・回数) 転倒リスク低下、活動量維持、退院後の運動継続
OT ADL 手順指導、更衣・整容の代償手段、家屋評価(動作導線)、自助具選定、認知面の生活上の工夫 「できる ADL 」と「している ADL 」の差、環境調整案、家族の介助手順、危険動作 介助量の最適化、在宅生活の破綻予防
ST 嚥下の自己管理(姿勢・一口量・ペース)、食形態の説明、コミュニケーション支援、失語・構音への家族指導 誤嚥リスク、食形態・水分、実施条件、代替手段、家族への観察ポイント 誤嚥性肺炎予防、栄養摂取の安定、意思疎通の改善

疾患別リハと病棟運用で「置き場所」を分けるコツ

現場の混乱ポイントは、同じ指導でも、どこに残すかです。結論はシンプルで、疾患別リハは “個別介入の記録” を厚く病棟運用は “病棟として回す教育・共有” を厚くすると整理しやすくなります。

制度上の評価を意識しすぎて同じ内容を二重記載するより、「患者単位で追う欄」と「病棟で共有する欄」を分けた方が、監査でも院内共有でも通りやすくなります。

疾患別リハと病棟運用での “置き場所” の分け方
観点 疾患別リハ側に置く 病棟共通欄に置く 分け方のコツ
主役 その日の評価・介入・反応 病棟全体で共有したい指導条件 個別セッションで完結するか、病棟で回すかで分ける
指導内容 患者ごとの介助量・自主練・禁止条件 夜間トイレ動作、食事姿勢、離床ルールなどの共通事項 複数患者に繰り返すなら病棟側へ寄せる
監査で見られやすい点 実施・内容・反応の一貫性 配置の意義が病棟アウトプットに結びついているか 「配置した結果、何が良くなったか」を一言で残す

現場の詰まりどころ:指導をやっているのに評価されにくい 3 パターン

多くの病棟で、指導自体はすでに行われています。それでも評価されにくいのは、記録の形式共有の単位がズレているからです。次の 3 パターンは、先に潰しておくと手戻りが減ります。

よくある失敗(NG)と、通る形(OK)の置き換え

よくある失敗(NG)と、通る形(OK)の置き換え
失敗パターン NG(例) OK(置き換え) 記録ポイント
指導が「感想」止まり 「転倒に注意するよう説明」 「夜間トイレ動作は FWW 使用、立位ふらつき増で 1 人介助。ナースコール基準を共有」 条件(いつ)/手段(何を使う)/基準(中止・コール)
病棟共有に乗らない 個人メモに残して終わる 病棟の共通欄(申し送り、計画、教育資料)に転記して運用化する 共有の置き場所を 1 つ決め、そこに集約する
退院後につながらない 「自宅でも運動するよう指導」 「週 3 日、10 分 × 2、 Borg 11〜13。痛み増悪( NRS +2 )で中止し受診」 頻度・量・強度・中止基準をセットで

そのまま使える:指導を「見える化」する記録テンプレ(短文で OK )

ポイントは、長文にしないことです。監査・院内共有で効くのは「抜けがない短文」です。ここでは、誰でも同じ書き方に寄せられるテンプレを用意します。

テンプレ 1:患者・家族への指導( 1 分で書く)

  • 目的:(例)退院後の転倒予防/誤嚥予防/介助量の最適化
  • 内容:(例)手順 3 点(姿勢/手段/ペース)
  • 条件:(例)疼痛増悪、 SpO2 低下、ふらつき増で中止
  • 宿題:(例)頻度・回数・強度( Borg )
  • 理解:本人・家族の反応(復唱できた/実演できた 等)

テンプレ 2:病棟スタッフへの共有(申し送り用)

  • してよい:(例)日中トイレは FWW で見守り
  • してはいけない:(例)夜間の単独歩行は不可
  • コール基準:(例)立位でふらつき/呼吸苦/疼痛増悪
  • 観察:(例)むせ、眠気、注意低下、介助量増

テンプレ 3:退院後につなぐ(指導の “出口” を書く)

  • 想定生活:(例)屋内は杖、屋外は FWW
  • リスク:(例)段差、夜間動作、服薬後のふらつき
  • 対策:(例)手すり位置、動線変更、運動の中止基準
  • フォロー:(例)外来/訪問/通所へ申し送り

テンプレ 4:病棟共通欄に貼る「 3 行版 」(最小セット)

  • 目的:(例)転倒/誤嚥/介助量を悪化させない
  • 指導(やる/条件):(例)日中トイレ:FWW 見守り。夜間単独不可。ふらつき増でコール
  • 宿題/観察:(例)週 3 日 10 分 × 2( Borg 11〜13 )。むせ・眠気・介助量増を観察

まずは病棟で「 3 行版 」に統一し、回ることを優先します。必要になった項目だけ、テンプレ 1〜3 を追加してください。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. これは独立の新設加算ですか?

A. 現時点では、「療法士の指導」だけを単独で新設評価する項目として読むより、病棟専従療法士の兼務規定、指導内容の診療録記録、病棟アウトプットの見える化として読む方が安全です。

Q2. 「指導等」は、患者指導だけを指しますか?

A. 患者本人への説明に限らず、家族指導、病棟スタッフへの教育、環境調整、自主練設計など、療法士の専門性を活かした支援全般として整理すると実務で使いやすくなります。

Q3. 疾患別リハの記録に書けば十分ですか?

A. 個別介入の整合性としては有効ですが、病棟機能としての説明力を高めるには、申し送り・計画・教育資料など、病棟の共通欄にも集約できる設計が安心です。

Q4. まず何から着手すると失敗しにくいですか?

A. 最初は、① 病棟で頻出の指導テーマを 1 つ選ぶ、② 共有の置き場所を 1 つ決める、③ テンプレで短文運用を 2 週間回して改善、の順がスムーズです。

次の一手

運用を整えたあとに、職場環境の詰まりも点検しておきましょう

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参考資料

  • 厚生労働省.令和 8 年度 診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理.PDF
  • 厚生労働省.令和 8 年度 診療報酬改定について【医科全体版】.PDF
  • 厚生労働省.診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(別添 1).PDF

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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