結論:退院時情報提供は「宛先別に書くこと」を固定すると漏れません
退院時の情報提供で一番多いミスは、忙しさではなく宛先(家族・施設・ケアマネ)ごとに必要な情報が違うのに、同じ文面で渡してしまうことです。結論として、退院時情報提供は共通の最小セット(変更点/注意点/フォロー先)を 1 枚に集約し、宛先別に “上乗せで書く項目” を固定すると、漏れが激減します。
本記事は、回復期リハ病棟の現場でそのまま使えるように、宛先別テンプレと 5 分フロー、 O K / N G 早見をまとめます。「何を書くか」「誰に渡すか」「どこに残すか」を先に決めて、退院直前の変更が伝わらない事故を減らします。
なぜ「宛先別」に分けないと漏れるのか
退院時に渡す情報は、同じ患者さんでも宛先で “使い方” が違います。家族は「今日からどう介助するか」、施設は「現場で再現できる手順」、ケアマネは「サービス設計の材料」を求めます。ここが混ざると、情報はあるのに必要な人に必要な形で届かない状態になります。
また、退院前は食形態・移動手段・介助量・福祉用具などの変更が重なりやすく、「最新」をそろえるだけでも難しくなります。退院直前の更新を回す土台として、まずは退院前 72 時間チェックの “置き場” と “締めの場” を作っておくと、情報提供の品質が安定します。
共通の最小セット:まずは 3 ブロックだけ固定します
宛先別に分ける前に、全員に共通で渡す内容を 3 ブロックに固定します。ここが揃うと、長文にしなくても “最新” が伝わります。
| ブロック | 書く内容(最小) | 書き方のコツ | 例 |
|---|---|---|---|
| 変更点 | 退院直前に変わったこと(最新) | 「前→今」を 1 行で | 歩行:四点杖→ T 字、食形態:常食→刻み |
| 注意点 | やってはいけない/止めどき | 危険サインを 1 行で | 息切れ強い日は屋外歩行中止、むせ増加で一段戻す |
| フォロー先 | 困ったときの相談先・次の予定 | 「誰に/いつ」をセットで | 通所:週 2 開始、外来:○月、ケアマネ:○日連絡 |
宛先別に「上乗せで書くこと」を固定します

共通 3 ブロックに、宛先別の “上乗せ” を足します。ポイントは、宛先を増やしても項目を増やしすぎないことです。
| 宛先 | 相手が困るポイント | 上乗せで書くこと(最小) | 渡し方(おすすめ) |
|---|---|---|---|
| 家族 | 介助が自己流になりやすい | 介助の手順/見守り基準 | 説明+紙 1 枚 |
| 施設 | 現場再現ができず介助量が上がる | 介助量/補助具/禁忌 | 要点 3 行 |
| ケアマネ | サービス設計の材料が足りない | 必要サービス/頻度/連携先 | 短く整理 |
そのまま使える:退院時情報提供テンプレ( PDF )
5 分フロー:書く → 最新化 → 渡す を同じ順番で回します
退院前は “全部を完璧に” では回りません。おすすめは、同じ順番で 5 分だけ回して、最新化の漏れを減らすことです。
| タイミング | やること | 残すこと |
|---|---|---|
| 退院前 | 共通 3 ブロックを書く | 下書き |
| 最終確認 | 宛先別に上乗せ | 宛先チェック |
| 直前更新 | 変更点を 1 行追記 | 更新日時 |
| 当日 | 渡す・説明する | 渡した記録 |
現場の詰まりどころ:よくある失敗
| NG | OK | 最小修正 |
|---|---|---|
| 全員に同じ文面 | 宛先別に整理 | 上乗せを固定 |
| 長文で要点不明 | 3 ブロックに絞る | 変更点/注意点/フォロー先 |
| 直前変更が反映されない | 更新日時を書く | 1 行追記 |
評価や記録の迷いは、個人の努力だけでなく、教育体制・共有文化・テンプレ不足など “環境要因” の影響も受けます。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q 1:情報提供が長くなります。
まずは「変更点/注意点/フォロー先」の 3 ブロックだけを固定してください。長文化より、最新化を優先します。
Q 2:家族と施設で内容が変わります。
変わって問題ありません。家族は介助、施設は再現性、ケアマネはサービス設計を優先します。
Q 3:退院直前の変更に追いつきません。
全部を書き直すより、変更点を 1 行追記して更新日時を残す運用が実践的です。
次の一手
まずは、宛先別に「何を書くか」を固定してください。そのうえで、退院直前の変更を “ 1 行で更新する運用” を作ると、共有漏れが減ります。
参考文献
- Kripalani S, LeFevre F, Phillips CO, et al. Deficits in communication and information transfer between hospital-based and primary care physicians: implications for patient safety and continuity of care. JAMA. 2007;297(8):831-841. doi: 10.1001/jama.297.8.831
- Kattel S, Manning DM, Erwin PJ, et al. Information transfer at hospital discharge: a systematic review. J Patient Saf. 2020;16(1):e25-e33. doi: 10.1097/PTS.0000000000000248
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


