書類作成のROM・MMT・ADL評価依頼|確認から返却まで

制度・実務
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書類作成のROM・MMT・ADL評価依頼|最初に確認すること

診断書・意見書などの作成にあたり、PT・OTへROM・MMT・ADLの評価依頼が来たときは、すぐに測定を始めるのではなく、「何の書類の、どの欄に使う情報か」を最初に確認します。書類や制度が違えば、必要な評価項目や記載方法も同じとは限りません。

基本は、依頼内容を確認する → 評価条件をそろえる → 必要なROM・MMT・ADLを評価する →「結果+条件+生活上の意味」で返すという流れです。本記事では、制度をまたいで使える共通フローと、医師・依頼元へ返すときの整理方法を解説します。

書類作成のための評価依頼でROM・MMT・ADLを確認してから返却するまでの共通フロー
図:書類名・目的の確認から、測定条件、ROM・MMT・ADL評価、依頼元への返却までを整理した共通フロー

なお、この記事で示す返却方法は、rehabilikunによる実務上の情報整理の型です。各制度の公式様式や認定基準そのものではありません。実際の対応では、使用する書類・様式、依頼医師の意図、施設内の運用を優先してください。

評価を始める前に確認する5項目

最初に確認したいのは、評価項目そのものではなく、書類・対象欄・評価時点・条件・返却方法です。「ROMを測ってください」という依頼だけでは、必要な関節や自動・他動の扱いまで決まらないことがあります。

書類作成の評価依頼で最初に確認する5項目
確認項目 確認する内容 確認する理由
書類・様式 何の診断書・意見書・申請書類か 制度や様式によって必要な所見が異なるため
対象欄 ROM、筋力、移動、ADLなど、どの欄へ反映する情報か 不要な評価を増やさず、必要情報を落とさないため
評価時点 現在、退院時、症状安定後など、いつの状態を示すか 同じ患者でも時点によって結果が変わるため
評価条件 体位、補助具・装具、疼痛、疲労など 数値や介助量を解釈できるようにするため
返却方法 期限、返却先、必要な記載量 依頼元が使える形に情報を整理するため

特に重要なのが「どの欄に使うか」です。書類名だけ分かっていても、医師がROM値を求めているのか、ADL上の制限を確認したいのかで、PT・OTが返す情報は変わります。

返却は「結果+条件+生活上の意味」で整理する

依頼元へ返すときは、評価値を並べるだけではなく、その値がどの条件で得られ、生活上どのような意味を持つかまで短く整理します。書類へ転記する文章をリハ職が完成させることよりも、医師が判断に使える情報を分かりやすく渡すことが重要です。

返却メモの基本構成

  1. 依頼情報:書類名、対象欄、評価時点
  2. 評価条件:体位、自動・他動、補助具、疼痛、疲労など
  3. 評価結果:必要なROM、MMT、移動・ADL所見
  4. 生活上の意味:どの動作に、どのような制限・介助が生じているか

たとえば、ROMを「右肩屈曲90°」だけで返すよりも、「座位・他動で右肩屈曲90°、疼痛で終末制限あり。上衣更衣では袖通し時に介助を要する」のように、測定条件と生活場面を分けて添えると情報の意味が伝わりやすくなります。

ただし、すべてのROM・MMT・ADLを毎回記載する必要があるわけではありません。依頼された書類と対象欄を確認し、判断に必要な情報だけを返すことが基本です。

ROMは角度だけでなく測定条件を残す

ROMでは、角度と同じくらい「どの条件で測定した値か」が重要です。とくに書類作成では、異なる条件の値を同じものとして扱わないようにします。

まず使用する様式に測定方法の指定があるか確認します。特別な指定がない場合は、日本リハビリテーション医学会などの標準的な関節可動域測定法を基本にしつつ、書類上必要となる条件を記録します。

ROMを返すときに残したい情報
項目 確認例 記録する意味
関節・運動方向 右肩屈曲、左足関節背屈など どの運動の値かを明確にする
体位 背臥位、座位など 測定条件の違いを区別する
自動・他動 自動ROM、他動ROM 運動機能と関節可動性を混同しない
制限因子 疼痛、筋緊張、拘縮など 角度が制限された背景を示す
変動 疲労、日内変動、症状増悪など 単一測定値だけでは表せない状態を補足する

記録例:右肩屈曲:座位・他動90°。90°付近で肩前面痛が増強し、それ以上の挙上は困難。

ここで重要なのは、「90°だから何級」「この値だからこの制度に該当する」とリハ職側で短絡しないことです。ROMは書類上の判断材料の一部として、測定条件を再現できる形で返すことを優先します。

MMTは段階だけでなく代償や実施条件を添える

MMTも「3」「4」といった段階だけでは、依頼元が状態を十分に読み取れない場合があります。対象筋・運動、左右、実施肢位に加えて、必要に応じて代償動作、疼痛、関節可動域制限、筋緊張などを補足します。

MMTを返すときの整理
情報 書き方の例
対象 右膝伸展、左股関節外転など
結果 MMTの段階を記載
条件 評価肢位、支持の有無など
補足所見 疼痛、代償、ROM制限、疲労による変化など

筋力低下がADL制限に関係していると考えられる場合でも、MMT値だけで因果関係を断定せず、実際の動作所見を別に確認します。

記録例:右膝伸展MMT 4。座位で評価。疼痛なし。立ち上がりでは右下肢への荷重が少なく、左上肢支持を併用する。

ADLは「できる・できない」より場面と介助内容を返す

ADLでは、「自立」「見守り」「介助」といった言葉だけで終わらせず、どの環境で、何を使い、どの部分に手助けが必要かを明確にします。

同じ「歩行自立」でも、病棟内のみ自立なのか、屋外も可能なのか、杖・装具が必要なのか、疲労によって見守りが必要になるのかで生活上の意味は変わります。

ADLを返すときの書き方
項目 情報が不足しやすい書き方 条件を含めた書き方
歩行 歩行見守り T字杖で病棟内歩行。方向転換時にふらつきがあり近接見守りを要する
移乗 一部介助 ベッドから車椅子への立ち上がり初動で体幹支持を要する
更衣 更衣介助 上衣は自立。下衣は立位保持が不安定で引き上げ時に一部介助を要する
入浴 入浴困難 浴槽またぎで疼痛と片脚立位不安定性があり、身体支持を要する

ADL尺度を使用している場合はその結果を共有できますが、書類側が知りたい内容と尺度の点数が完全に一致するとは限りません。必要に応じて、点数とは別に具体的な生活場面を短く添えると伝わりやすくなります。

ROM・MMTとADLが一致しないときは「矛盾を消す」のではなく理由を書く

書類作成で迷いやすいのが、ROMやMMTの数値と実際のADLがきれいに一致しないケースです。この場合、無理に数字と生活機能を一致させる必要はありません。むしろ、なぜその差が生じているのかを確認します。

身体機能とADLが一致しないときに確認すること
見えている状況 確認したいこと 返却時のポイント
筋力は比較的保たれているが歩行に見守りが必要 バランス、疼痛、感覚、注意機能、疲労など MMTとは別に、見守りが必要な理由を書く
ROM制限があるがADLは自立している 代償動作、環境調整、補助具の使用 どの方法で自立しているかを書く
訓練室では可能だが病棟では介助が必要 環境、時間帯、疲労、介助者、認知面など 最大能力と普段の実行状況を分けて書く

書類へ返す情報では、「数値が良いのに介助が必要だからおかしい」と考えるのではなく、身体機能・活動・環境条件を分けて説明することが重要です。

例:右膝伸展MMTは4だが、方向転換時に右膝折れがみられるため病棟歩行は近接見守りとしている。疲労後に膝折れが増える。

このように、評価値そのものと実際の生活場面を別々に記載すると、依頼元が状態を読み取りやすくなります。

制度ごとの評価項目は各書類の様式で確認する

書類作成の共通フローは同じでも、何を評価すべきかは制度によって異なります。本記事の共通フローを確認したら、実際に使用する制度・書類の様式へ進んでください。

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制度名だけで「この評価を必ず行う」と決めず、まず実際の様式と依頼内容を確認してください。とくに身体障害者手帳、障害年金、要介護認定では、評価結果が使われる目的や判断方法が異なります。

書類用の評価依頼で起こりやすい4つの失敗

手戻りが起こる原因は、測定技術そのものよりも、依頼目的と評価条件が共有されていないことにあります。

書類作成の評価依頼で避けたい対応
よくある対応 問題点 修正方法
依頼されたROMをすぐ全部測る 対象欄に不要な評価が増える 書類・対象欄を先に確認する
角度・MMTだけ返す 測定条件や生活上の意味が分からない 必要な条件とADL所見を添える
ADLを「自立」「介助」だけで返す どの場面で何が必要か分からない 環境・補助具・介助内容・理由を書く
制度ごとに同じ返却内容を使う 様式が求める情報とずれる可能性がある 各制度の様式・記載要領を確認する

評価項目を増やすことより、「この情報は何の判断に使われるのか」を明確にしてから測定するほうが、依頼元との手戻りを減らしやすくなります。

よくある質問

Q1. 「ROMとMMTをお願いします」とだけ依頼されたら、どこまで測ればよいですか?

最初に、何の書類で、どの欄へ反映するための依頼かを確認します。対象部位や必要な運動方向が分からないまま全身を測定するのではなく、使用する様式と医師が必要としている情報を確認してから評価範囲を決めます。

Q2. ROMは自動と他動のどちらを測ればよいですか?

使用する様式や記載要領に指定がある場合はそれを優先します。指定が明確でない場合も、自動・他動のどちらで測定した値か分かるように記録してください。必要性が不明な場合は、依頼元へ確認してから評価します。

Q3. ROMやMMTの結果とADLが一致しない場合はどう返しますか?

無理に一致させず、数値と生活場面を分けて記載します。疼痛、バランス、疲労、感覚障害、代償動作、環境、補助具など、差が生じる背景を確認し、必要な範囲で補足します。

Q4. 装具や杖を使用した状態でADLを評価してよいですか?

書類や依頼目的によって必要な条件が異なるため、一律には決められません。普段使用している補助具・装具の条件を記載したうえで評価し、装具なしの情報も必要かどうかは使用する様式や依頼元へ確認します。

参考文献

  1. 厚生労働省.障害者手帳について[Internet].厚生労働省
  2. 厚生労働省.身体障害者手帳に係る交付手続き及び医師の指定に関する取扱いについて[Internet].厚生労働省
  3. 日本年金機構.国民年金・厚生年金保険 障害認定基準[Internet].日本年金機構
  4. 日本リハビリテーション医学会.関節可動域表示ならびに測定法改訂について(2022年4月改訂).Jpn J Rehabil Med.2021;58(10):1188-1200.doi:10.2490/jjrmc.58.1188

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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