理学療法士のための生成AI活用ガイド|安全な始め方

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理学療法士のための生成AI活用ガイド

日々の業務を少しでも整理したい方は、働き方や優先順位の整え方もあわせて見直しておくと、AI の使いどころがはっきりします。 PT のキャリア総合ガイドを見る

生成 AI は、理学療法士の仕事を丸ごと代わりに行う道具ではありません。ただ、公開情報や自分で整理したメモを下ごしらえする用途に限定すると、学会抄録の章立て、英語論文の要点整理、院内発表スライドの骨子作成、委員会資料のたたき台づくりなどを効率化しやすくなります。

一方で、医療・介護の現場では個人情報の扱いが最優先です。そのため本記事では、患者情報を入れずに、まず何から始めるかに絞って整理します。生成 AI は「考える前の重さ」を軽くする補助役として使い、最終判断は必ず人が行う前提で読み進めてください。

このシリーズで扱う生成 AI の使い方は、公開情報や抽象化したメモを整理する用途を前提としています。患者情報、施設名、日付、画像、録音など個人が推定できる情報は入力しません。生成 AI の出力は必ず原文・要項・一次情報で確認し、最終判断は執筆者が行います。

理学療法士が生成 AI を安全に始めるための活用場面とルールをまとめた図
図:理学療法士が生成 AI を安全に使い始めるときの考え方

生成AIは理学療法士の何を楽にできるか

生成 AI が役立ちやすいのは、考えをまとめる前工程です。たとえば、学会抄録の構成整理、院内勉強会の見出し案、英語論文の大枠把握、スライドごとの要点メモ、委員会資料の順番決めなどは、患者情報を使わずに進めやすい領域です。

反対に、患者情報を含む記録の丸投げや、AI の文章をそのまま正式文書に流用する使い方はおすすめできません。生成 AI は便利ですが、不正確な表現やもっともらしい誤りが混ざることがあります。まずは「整理」「要約」「下書き」までに使う意識が安全です。

なぜ今、理学療法士が生成AIを知っておくべきか

理学療法士の業務には、考える時間を要する作業が多くあります。抄録の書き出し、英語論文の初読、院内発表の構成決め、教育資料の整理などは、内容そのものより「最初の 1 歩」が重くなりやすい場面です。生成 AI は、その最初の 1 歩を軽くしやすい点に価値があります。

医療福祉領域では慎重さが必要な一方、使いどころを限定すれば業務効率化につながります。使いこなすことを目標にする必要はありません。まずは安全な範囲で、小さく試してみることが大切です。

先に知っておきたい注意点

最初に押さえたいのは、匿名化して入れるより、原則として患者情報を入れないという考え方です。氏名、年齢、生年月日、住所、病院名、入退院日、地域名、画像、音声、珍しい経過など、個人が推定できる情報は入力しない方が安全です。

もう 1 つ大切なのは、使うサービスによってデータの扱いが異なることです。個人向けサービスと組織契約版では設定や保護範囲が違うため、無料版・個人版と、院内で契約しているサービスを同じ感覚で扱わない方が無難です。導入前に、院内ルールと契約形態を確認しておきましょう。

生成AIに入れてよい情報と避ける情報

まずは、次の基準で整理すると迷いにくくなります。

スマホでは表を横スクロールできます。

理学療法士が生成 AI に入力する情報の考え方
区分 具体例 考え方
入れてよい情報 公開論文、公開ガイドライン、学会要項、自作の章立てメモ、一般的な発表テーマ まずはこの範囲から始めると安全です。
慎重に扱う情報 施設内の一般資料、部署内テンプレ、院内向け教育スライド 院内ルール、共有範囲、契約形態を確認してから使います。
入れない情報 氏名、年齢、生年月日、病院名、日付、画像、録音、希少症例の詳細、組み合わせで個人特定につながる情報 原則として入力しません。

迷ったときは、「公開情報かどうか」「個人が推定されないか」の 2 点で判断します。親記事の段階では安全側に倒して、患者情報は入力しない前提で統一するのがわかりやすいです。

理学療法士がまず試しやすい活用場面

最初に試すなら、患者情報を使わずに始めやすく、効果も実感しやすい用途から入るのがおすすめです。

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理学療法士向け生成 AI の用途別使い分け早見表
用途 向く AI 向いている理由 注意点
学会抄録の章立て・下書き ChatGPT 長文整理、要点抽出、書き換え、文字数調整を進めやすいためです。 患者情報や未公表データは入力せず、要項と自分のメモを基準に仕上げます。
英語論文の初読 DeepL / NotebookLM DeepL は文書翻訳、NotebookLM は資料ベースの整理に向いています。 翻訳や要約だけで結論づけず、必ず原文に戻って確認します。
院内発表スライドの骨子作成 Gemini / Microsoft 365 Copilot スライドの流れ、見出し案、要点整理の初稿を作りやすいためです。 表現の正確性や院内ルールへの適合は人が確認します。
委員会資料・勉強会資料のたたき台 ChatGPT / Gemini 構成案、要点整理、想定質問づくりに使いやすいためです。 正式配布前に、内容の妥当性と引用元を見直します。

この中で最初の 1 本にしやすいのは、学会抄録の章立てと下書きです。次に、英語論文の要点整理、院内発表スライドの骨子作成へ広げると、クラスター化もしやすくなります。

用途別におすすめの生成AI

ChatGPT は、抄録の骨子づくり、長文の整理、資料の要点抽出などに向きます。ファイルアップロードや Projects に対応しているため、継続的に下書きを育てたい作業と相性が良いです。

DeepL は、英語論文や海外資料をまず日本語で把握したいときの入口として使いやすいです。PDF、Word、PowerPoint などの文書翻訳に対応しているため、英語の壁を下げやすくなります。

NotebookLM は、PDF や Web、Google ドキュメントなどの資料をもとに、ソースに基づいた形で整理したいときに向きます。論文や資料の読み違いを減らしたい場面で使いやすいです。

Gemini は、Google Workspace 中心で資料を作る人と相性が良く、Google スライドでは新しいスライド生成、要約、書き直し、Drive 参照などに対応しています。

Microsoft 365 Copilot は、PowerPoint をそのまま使う人向けです。プロンプトや参照ファイルからプレゼンのたたき台を作れますが、出力内容は必ず人が見直す必要があります。

現場の詰まりどころ

理学療法士が生成 AI に触れようとして止まりやすいのは、何を入れてよいのかわからないどの AI を使えばよいのかわからない出てきた文章をどこまで信用してよいのかわからないの 3 点です。ここをあいまいにしたまま触ると、不安だけが残って続きにくくなります。

最初は、公開情報だけを使う用途を 1 つに絞るAI の出力は下書きとして扱うの 3 つで十分です。たとえば「学会抄録の章立てだけ」「英語論文の要点整理だけ」のように始めると、現場でも試しやすくなります。関連:忙しい中でも学び方と優先順位を整える流れも、先に押さえておくと取り組みやすくなります。

よくある失敗

生成 AI を使い始めるときに起こりやすい失敗は、だいたい共通しています。便利そうだからいきなり患者情報を入れてしまうこと、AI の出力をそのまま正解として扱うこと、引用元や原文を確認しないこと、使っているサービスのデータ取り扱いを確認しないことです。

医療職では、速さよりも安全性と再確認の手順が大切です。生成 AI は、考える前の材料を整える補助役として使うと強い一方、責任まで代わってくれるわけではありません。だからこそ、まずは公開情報や抽象化メモに限定して、再確認の手順込みで運用するのが現実的です。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

理学療法士が生成 AI を使っても大丈夫ですか?

使い方を誤らなければ、業務の下ごしらえには役立ちます。大切なのは、患者情報を入れないことと、出力を必ず人が確認することです。まずは公開情報や自作メモの整理から始めると、安全に試しやすくなります。

患者情報を消せば入力しても大丈夫ですか?

親記事では、安全側に倒して原則入力しないと考えるのが無難です。個人が推定される要素は、単独ではなく組み合わせでも生じるため、「少し消したから大丈夫」とは言い切れません。

無料版でも使えますか?

使えることは多いですが、データの扱い、管理機能、組織向け保護はサービスや契約形態で異なります。無料版・個人版と、組織契約版を同じ前提で考えない方が安全です。

最初に試すなら何がよいですか?

学会抄録の下書き、英語論文の要点整理、院内発表スライドの骨子づくりが始めやすいです。いずれも患者情報を使わずに始めやすく、効果を実感しやすいからです。

次の一手

このテーマは、1 本で終わらせるより親記事 → 子記事の流れで育てる方が価値が高くなります。次に作るなら、まずは「学会抄録を生成 AI で下書きする方法」、次に「英語論文を生成 AI で読む方法」、その次に「院内発表のスライドを生成 AI で作る方法」の順がおすすめです。

まずは自分の業務の中で、患者情報を使わずに試せる 1 場面を決めてください。抄録の章立て、論文の初読、発表スライドの骨子づくりのどれか 1 つに絞ると、AI の使いどころが見えやすくなります。


参考文献

  1. 個人情報保護委員会.医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス.2026 年 4 月 3 日閲覧.
  2. 個人情報保護委員会,厚生労働省.「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」に関する Q&A(事例集).平成 29 年 5 月 30 日作成,令和 7 年 6 月一部改正.2026 年 4 月 3 日閲覧.
  3. 厚生労働省.医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第 6.0 版(令和 5 年 5 月).2026 年 4 月 3 日閲覧.
  4. OpenAI.ファイルアップロードに関する FAQ.2026 年 4 月 3 日閲覧.
  5. OpenAI.データコントロールに関する FAQ.2026 年 4 月 3 日閲覧.
  6. OpenAI.ChatGPT のプロジェクト.2026 年 4 月 3 日閲覧.
  7. Google.Google スライドで Gemini と共同作業する.2026 年 4 月 3 日閲覧.
  8. Google.NotebookLM の詳細.2026 年 4 月 3 日閲覧.
  9. DeepL.AI document translation: instant, accurate, secure.2026 年 4 月 3 日閲覧.
  10. Microsoft.PowerPoint の Copilot を使用して新しいプレゼンテーションを作成する.2026 年 4 月 3 日閲覧.

著者情報

rehabilikun のプロフィール画像

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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