理学療法士が論文投稿前に確認したこと

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理学療法士が論文投稿前に確認したこと

論文を書き始める前後で、意外と止まりやすいのが「投稿前に何を確認すればよいのか」という点です。

私自身も、療養型病院で褥瘡に関する内容を論文化しようと考えたとき、投稿規定、倫理審査、匿名化、共著者、利益相反など、確認すべき項目が想像以上に多いと感じました。本文を書く力だけでなく、投稿前の準備を整える力も必要だと実感しています。

この記事では、理学療法士が論文投稿前に確認したい項目を、現場目線で整理します。なお、必要な手続きは投稿先・所属施設・研究デザインによって異なります。最終判断は投稿規定、所属施設の方針、倫理審査委員会などで確認してください。

投稿規定を先に読む

最初に確認すべきなのは、投稿先の投稿規定です。

投稿規定には、論文の種類、文字数、要旨、図表数、参考文献の書き方、倫理審査、利益相反、著作権、投稿承諾書などが書かれています。日本理学療法士協会雑誌 Up to Date の投稿規程でも、投稿承諾書や利益相反に関する項目が示されています。

投稿規定で先に確認したい項目
確認項目 見るポイント
論文の種類 原著・症例報告・短報など
文字数 本文・要旨・図表の上限
倫理審査 承認番号・同意・記載方法
利益相反 COI 申告の要否
著作権 譲渡・二重投稿・転載条件
提出書類 投稿承諾書・チェックリスト

先に投稿先を決めずに書き始めると、あとから文字数や図表形式、倫理審査の記載で修正が大きくなることがあります。私は、まず投稿規定を読むことが最短ルートだと感じました。

次に確認したいのが、倫理審査、同意取得、匿名化です。

人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針は、人間の尊厳と人権が守られ、研究が適正に推進されるよう、研究関係者が遵守すべき事項を定めています。診療録などの既存情報を研究目的で扱う場合も、個人情報の管理や同意、オプトアウトなどの確認が必要になることがあります。

日本理学療法学会連合は、雑誌や学会への投稿条件として倫理審査委員会の承認が必須になってきていること、倫理審査委員会の承認後に研究を始めることが研究者の責務であると説明しています。

倫理面で確認したい項目
項目 確認すること
倫理審査 必要性・承認番号・審査時期
同意 文書同意・口頭同意・オプトアウト
匿名化 氏名・日付・施設名・写真の扱い
既存情報 診療録や評価表の二次利用
保管方法 データ管理・アクセス権限

倫理委員会が院内にない場合の考え方は、倫理委員会がない病院で論文を書くには?で整理しています。

症例報告か研究かを整理する

投稿前には、自分の原稿が「症例報告」なのか「研究」なのかを整理する必要があります。

症例報告は、臨床的または学術的に意味がある 1 例または少数例の経過を共有する形式です。一方で、複数例を集めて傾向を分析したり、統計処理を行ったりする場合は、後ろ向き研究として扱われる可能性があります。

症例報告か研究かで確認したい視点
視点 症例報告に近い 研究に近い
対象 単例・少数例 複数例
目的 症例からの学びを共有 傾向や関連を分析
統計 基本的に行わない 行うことがある
倫理審査 投稿規定で確認 必要になりやすい

この違いは、症例報告と後ろ向き研究の違いで詳しく整理しています。ここを曖昧にしたまま投稿準備を進めると、倫理審査や同意取得、本文の書き方で迷いやすくなります。

図表・写真・個人情報を確認する

理学療法領域の論文では、評価表、経過表、写真、図表を使うことがあります。ここで注意したいのが、個人情報や施設情報が残っていないかです。

症例写真では顔、背景、名札、病室番号、カレンダー、撮影日などから個人や施設が推測されることがあります。表の中にも、年齢、性別、疾患名、入退院日、病棟名などが組み合わさることで個人が特定される可能性があります。

図表・写真で確認したい個人情報
場所 確認したい内容
写真 顔・名札・背景・病室番号
日付・年齢・施設名・病棟名
患者名・ID・施設ロゴ
本文 固有名詞・地域名・詳細すぎる経過
ファイル名 患者名や施設名が残っていないか

図表は「見やすさ」だけでなく、「公開して問題ない形になっているか」を確認する必要があります。特に、個人名・所属施設名・患者 ID・撮影日が残っていないかは投稿前に確認したいポイントです。

共著者・謝辞・利益相反を確認する

投稿前には、共著者、謝辞、利益相反も確認します。

共著者は、名前を載せる前に本文内容、著者順、所属、連絡先、投稿先を確認しておく必要があります。日本理学療法士協会雑誌 Up to Date の投稿規程でも、投稿承諾書や利益相反の確認が示されています。

共著者・謝辞・利益相反で確認したい項目
項目 確認すること
共著者 著者順・所属・最終確認
謝辞 協力者への掲載許可
利益相反 COI 申告の要否
投稿承諾 全著者の同意
連絡先 責任著者の情報

共著者確認は後回しにすると、投稿直前で止まりやすい項目です。本文が完成してからではなく、早めに相談しておく方がスムーズです。

論文投稿前チェックリスト

投稿直前に確認したい項目を、実務用のチェックリストとしてまとめます。

論文投稿前チェック5項目
論文投稿前に確認したい 5 項目
理学療法士の論文投稿前チェックリスト
分類 チェック項目 確認ポイント
投稿規定 論文種別・文字数・図表 投稿先のルールに合っているか
倫理 倫理審査・同意・オプトアウト 必要な手続きが済んでいるか
匿名化 氏名・日付・施設名・写真 個人や施設が特定されないか
本文 目的・方法・結果・考察 論文種別に合った構成か
図表 表番号・図番号・凡例 本文との対応が取れているか
参考文献 形式・ DOI ・リンク 投稿規定の形式に合っているか
共著 著者順・所属・承諾 全著者が確認済みか
COI 利益相反 申告の有無を明記できるか
提出書類 投稿承諾書・チェック表 添付漏れがないか

この表は、投稿直前だけでなく、研究メモを作る段階でも使えます。最初に確認項目を並べておくと、あとから「倫理審査が必要だった」「図表形式が違った」といった戻り作業を減らしやすくなります。

現場の詰まりどころ

論文投稿前に詰まりやすいのは、本文そのものよりも、本文以外の確認です。

論文投稿前によくある詰まりどころ
詰まりどころ 起こりやすい問題 先にできる対策
投稿先を後で決める 文字数や形式の修正が増える 最初に投稿規定を読む
倫理審査を後回し 投稿条件を満たせない 研究デザイン時点で確認
匿名化が曖昧 個人情報が残る 本文・図表・写真を点検
共著者確認が遅い 投稿直前で止まる 著者順と承諾を早めに確認
提出書類の漏れ 差し戻しになる 投稿チェック表を作る

研究や論文化を進めると、相談できる人や学べる環境の有無も大きく影響します。臨床と研究の両立に悩む場合は、理学療法士のキャリア整理フローも参考になります。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

論文投稿前に最初に確認することは何ですか?

最初に確認したいのは投稿規定です。論文種別、文字数、図表数、倫理審査、利益相反、提出書類などが投稿先ごとに異なるため、先に読むことで修正の手戻りを減らせます。

倫理審査は投稿前に確認すればよいですか?

投稿前では遅い場合があります。研究として実施する場合は、原則として研究開始前に倫理審査の要否を確認する必要があります。既存情報を使う後ろ向き研究でも確認が必要になることがあります。

症例報告でも同意は必要ですか?

投稿先や施設方針によって異なります。症例報告でも、対象者の同意取得や匿名化、本文中の倫理的配慮の記載を求められることがあります。

写真を使うときに注意することはありますか?

顔、名札、背景、病室番号、撮影日、施設ロゴなどから個人や施設が推測されることがあります。写真を使う場合は、同意取得と匿名化の両方を確認する必要があります。

共著者確認はいつ行うべきですか?

投稿直前ではなく、原稿作成の早い段階で確認する方が安全です。著者順、所属、役割、最終原稿の確認、投稿承諾を早めに整理しておくと差し戻しを防ぎやすくなります。

次の一手

論文投稿前の確認項目が見えたら、次は「倫理審査」と「研究デザイン」を整理すると進めやすくなります。

研究や学びを続けやすい環境も整理したい方へ

教育体制や相談環境によって、研究や論文化の進めやすさは変わります。

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参考文献

著者情報

rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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