胸鎖乳突筋の触診方法|位置・作用・注意点をわかりやすく解説

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胸鎖乳突筋とは

胸鎖乳突筋は、頸部の前外側を斜めに走る代表的な筋です。

耳の後ろにある乳様突起から、胸骨柄と鎖骨内側部へ向かって走行します。頸部の回旋・側屈・屈曲に関与し、姿勢評価や頸部痛、呼吸補助筋の評価でも確認されることがあります。

触診では、首の前外側にある太い筋腹を確認します。ただし、前頸部には頸動脈や神経、リンパ節など重要な構造があるため、強く押し込まず、軽く触れて筋の走行と収縮を確認することが大切です。

触診・評価記事をまとめて確認したい方へ

胸鎖乳突筋は、頸部ROM・姿勢評価・呼吸補助筋の理解につながる基本の触診部位です。

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この記事でわかること

  • 胸鎖乳突筋の位置
  • 起始・停止・作用
  • 胸鎖乳突筋の触診方法
  • 触診時の注意点
  • 臨床でみるポイント
  • カルテ記録例

胸鎖乳突筋の解剖

胸鎖乳突筋は、胸骨頭と鎖骨頭を持つ筋として整理すると理解しやすくなります。

胸鎖乳突筋の解剖整理
項目 内容 臨床での見方
起始 胸骨柄、鎖骨内側部 首の下方で2つの頭を意識する
停止 側頭骨の乳様突起、上項線外側部 耳の後ろから筋の走行を追う
走行 頸部前外側を斜めに走る 乳様突起から胸骨・鎖骨方向へ確認する
支配神経 副神経、頸神経叢の枝 肩すくめや頸部運動とも関連して考える

胸鎖乳突筋は、頸部の表層で触れやすい筋ですが、周囲に重要な血管・神経があるため、触診では圧の強さに注意します。

胸鎖乳突筋の作用

胸鎖乳突筋は、片側で働く場合と両側で働く場合で作用が変わります。

胸鎖乳突筋の主な作用
働き方 主な作用 確認しやすい動き
片側収縮 同側側屈、反対側回旋 顔を反対側へ向ける動きで確認しやすい
両側収縮 頸部屈曲に関与 仰臥位で頭部を軽く持ち上げる動きで確認しやすい
呼吸補助 努力性吸気の補助 呼吸苦や努力呼吸時に緊張を確認する

臨床では、単に筋名を覚えるだけでなく、頸部回旋・側屈・呼吸補助筋としての働きをセットで確認すると評価につなげやすくなります。

胸鎖乳突筋の触診方法

胸鎖乳突筋は、乳様突起から胸骨・鎖骨へ向かう筋腹を軽く確認します。

触診では、頸動脈周囲を強く押さないことが重要です。筋をつまむように強く圧迫するのではなく、走行を確認しながら筋収縮を軽く触れます。

胸鎖乳突筋の触診手順を3ステップで整理した図版
胸鎖乳突筋は、乳様突起と胸骨・鎖骨を確認し、頭部を反対側へ軽く回旋して筋腹をやさしく触診します。

STEP1:乳様突起と鎖骨内側を確認する

まず、耳の後ろにある乳様突起と、胸骨柄・鎖骨内側部の位置を確認します。

胸鎖乳突筋は、この上方と下方のランドマークをつなぐように斜めに走ります。

STEP2:頭部を反対側へ軽く回旋する

確認したい側の胸鎖乳突筋を出しやすくするため、頭部を反対側へ軽く回旋します。

たとえば右胸鎖乳突筋を確認する場合は、顔を左へ軽く向けると右側の筋腹が浮き上がりやすくなります。

STEP3:筋腹を軽く触れて収縮を確認する

頸部前外側に浮き上がる筋腹を、指腹で軽く触れます。

必要に応じて、仰臥位で頭部を少し持ち上げる、または軽く回旋抵抗を加えると筋収縮を確認しやすくなります。

触診のコツ

  • 乳様突起から走行を追う
  • 頭部を反対側へ軽く回旋する
  • 指腹で軽く触れる
  • 前頸部を強く押さない

触診で確認したいランドマーク

胸鎖乳突筋の触診では、乳様突起、胸骨柄、鎖骨内側部を確認すると走行を整理しやすくなります。

胸鎖乳突筋の触診で意識したいランドマーク
ランドマーク 位置 確認ポイント
乳様突起 耳の後ろ 停止部の目安として確認する
胸骨柄 前胸部中央上方 胸骨頭の起始部として確認する
鎖骨内側部 鎖骨の内側1/3付近 鎖骨頭の起始部として確認する
頸部前外側 耳後部から胸骨・鎖骨方向 筋腹の走行を軽く追う

ランドマークを先に確認してから筋腹を追うと、胸鎖乳突筋を「首の前の筋」として曖昧に触るよりも、位置関係を理解しやすくなります。

斜角筋・僧帽筋との違い

胸鎖乳突筋は、斜角筋や僧帽筋上部線維と混同しやすい部位です。

胸鎖乳突筋と混同しやすい筋
部位 特徴 見分け方
胸鎖乳突筋 頸部前外側を斜めに走る 反対側回旋で筋腹が確認しやすい
斜角筋 頸部外側の深部にある 胸鎖乳突筋より深く、強く押し込まない
僧帽筋上部線維 後頸部から肩甲帯へ走る 肩すくめで収縮を確認しやすい

胸鎖乳突筋は、顔を反対側へ向けたときに前外側へ浮き上がる筋として確認しやすいです。

斜角筋はより深部に位置するため、頸部外側を強く押し込んで探すのは避けます。

臨床でみる場面

胸鎖乳突筋は、頸部痛、姿勢評価、呼吸補助筋、嚥下や頭頸部アライメントを考える場面で確認されます。

頸部痛・可動域制限

頸部回旋や側屈で痛みや制限がある場合、胸鎖乳突筋の緊張や左右差を確認することがあります。

ただし、筋だけを原因と決めつけず、頸椎可動性、肩甲帯、姿勢、神経症状の有無もあわせて確認します。

姿勢評価

頭部前方位や頸部の過緊張がある場合、胸鎖乳突筋が目立って緊張していることがあります。

座位姿勢、肩甲帯の位置、呼吸パターンとあわせて確認すると評価につなげやすくなります。

呼吸補助筋としての評価

努力呼吸時には、胸鎖乳突筋が呼吸補助筋として働くことがあります。

呼吸苦、SpO2低下、頻呼吸、肩で息をする様子がある場合は、胸鎖乳突筋の緊張だけでなく全身状態を確認します。

現場の詰まりどころ

胸鎖乳突筋の触診で迷いやすい場面は、「強く押しすぎる」「斜角筋と混同する」「筋名だけ覚えて作用と結びつかない」の3つです。

触診が苦手な背景には、個人の努力不足だけでなく、見本となる先輩・共通の評価手順・記録の型が少ない環境要因もあります。

評価を学べる環境づくりも大切です

評価・記録・働き方を含めて、PTとしての伸ばし方を整理しています。

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新人が間違えやすいポイント

胸鎖乳突筋の触診では、以下のような間違いが起こりやすいです。

  • 頸動脈周囲を強く押してしまう
  • 斜角筋と混同する
  • 僧帽筋上部線維と混同する
  • 頭部回旋の向きを間違える
  • 痛みを出すために強く触りすぎる
  • 呼吸補助筋としての視点を忘れる

まずは、乳様突起から胸骨・鎖骨へ向かう斜めの走行を確認し、軽い収縮で筋腹を触れることが大切です。

評価・記録での使い方

胸鎖乳突筋周囲を評価した場合は、触診所見だけでなく、頸部運動、疼痛、左右差、呼吸状態とあわせて記録します。

胸鎖乳突筋周囲を評価したときの記録例
場面 記録例
触診所見 右胸鎖乳突筋に軽度圧痛あり。左と比較し筋緊張亢進を認める。
頸部回旋 左回旋時に右胸鎖乳突筋の収縮を確認。右頸部前外側に違和感あり。
姿勢評価 頭部前方位を認め、両側胸鎖乳突筋の緊張が目立つ。
呼吸補助筋 努力呼吸時に胸鎖乳突筋の活動が目立つ。呼吸状態とSpO2を継続確認。

記録では「胸鎖乳突筋が硬い」だけでなく、「どの動きで症状が出るか」「左右差があるか」「姿勢や呼吸と関連するか」まで書くと共有しやすくなります。

触診時の注意点

胸鎖乳突筋の触診では、前頸部を強く押し込まないことが重要です。

  • 頸動脈周囲を強く圧迫しない
  • 痛みを出す目的で押さない
  • めまい・気分不快があれば中止する
  • 神経症状がある場合は無理に評価しない
  • 呼吸苦がある場合は全身状態を優先する
  • 必要に応じて医師・看護師へ共有する

胸鎖乳突筋は触れやすい筋ですが、頸部はリスクのある部位です。軽い触診と運動時の確認を基本にし、強い圧迫は避けます。

FAQ

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

胸鎖乳突筋はどこにありますか?

胸鎖乳突筋は、耳の後ろにある乳様突起から、胸骨柄と鎖骨内側部へ向かって走る頸部前外側の筋です。

胸鎖乳突筋の作用は何ですか?

片側では同側側屈と反対側回旋、両側では頸部屈曲に関与します。また、努力呼吸時には呼吸補助筋として働くことがあります。

胸鎖乳突筋はどう触診しますか?

乳様突起と胸骨・鎖骨内側部を確認し、頭部を反対側へ軽く回旋させます。頸部前外側に浮き上がる筋腹を指腹で軽く触れます。

胸鎖乳突筋の触診で注意することはありますか?

前頸部や頸動脈周囲を強く押さないことが重要です。めまい、気分不快、強い痛みがある場合は中止します。

胸鎖乳突筋は呼吸にも関係しますか?

はい。努力呼吸時には呼吸補助筋として働くことがあります。呼吸苦やSpO2低下がある場合は、筋緊張だけでなく全身状態を優先して確認します。

次の一手

胸鎖乳突筋を理解したら、頸部ROMや呼吸補助筋、姿勢評価とあわせて確認すると臨床につなげやすくなります。


参考文献

  1. Moore KL, Dalley AF, Agur AMR. Clinically Oriented Anatomy. 9th ed. Wolters Kluwer; 2023.
  2. Standring S, editor. Gray’s Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice. 42nd ed. Elsevier; 2020.
  3. Drake RL, Vogl AW, Mitchell AWM. Gray’s Anatomy for Students. 5th ed. Elsevier; 2023.
  4. StatPearls. Anatomy, Head and Neck, Sternocleidomastoid Muscle. NCBI Bookshelf

著者情報

この記事は、臨床での評価・記録・新人教育に活用しやすい形を意識して作成しています。頸部痛、めまい、しびれ、呼吸苦などがある場合は、無理に触診を続けず、必要に応じて医師・看護師など多職種と情報共有してください。

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