運動強度の決め方| METs → RPE で迷わない 5 分フロー

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結論:運動強度は METs → RPE → 条件固定で決めます

運動強度で迷いにくい順番は、① METs で活動候補を作る ② RPE と Talk test、所見で “その人のきつさ” に合わせる ③ 速度・坂・休憩・時間を固定して、次回比較できる形にする、の 3 段です。心拍は便利ですが、薬剤や不整脈、日内変動の影響を受けるため、このページでは「心拍だけで決めない」を前提にそろえます。

このページで答えるのは「どの指標を主役にして、どう合わせ、何を残すか」です。週の運動量、活動別の細かな METs 一覧、疾患別の詳細な中止基準は親記事・子記事に分け、このページは “決め方” の 5 分フローに絞ります。

関連(同ジャンル回遊):運動療法(筋トレ・有酸素・安全管理)の全体像はハブに集約しています。

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関連:有酸素運動の運動処方(親記事)
参照:METs 早見表(生活動作・家事・運動)

5 分で決まる「強度設定」フロー

強度設定は、指標を増やすより「順番」を固定した方が速くなります。まずは ①目的を 1 行で固定 → ②活動候補( METs ) → ③相対強度( RPE ・所見) → ④条件を残して再評価、の流れを毎回同じにします。

この順番を守るだけで、症例が変わっても迷いにくくなり、説明・記録・申し送りがそろいます。

運動強度の決め方フロー図。METs で候補を選び、RPE で調整し、Talk test と所見で確認し、条件を固定して記録、次回に向けて調整する流れを整理した図版
図: METs で候補を選び、 RPE で調整し、 Talk test・所見で確認、条件を固定して記録、次回に向けて調整する 5 分フロー。
運動強度を決める 4 ステップ(現場の標準手順)
ステップ やること 判断の目安 記録の型
1 目的を 1 行で固定する 体力づくり/ ADL への転移/症状が出ない範囲づくり 目的( 1 行)
2 活動を選ぶ( METs で当たりを付ける) 軽い/中等度/高強度の候補を作る 活動名+条件(速度・坂・補助具 等)
3 相対強度で合わせる( RPE ・所見) 会話できるか/息切れ・疼痛・めまいの程度 RPE+所見(出現タイミング)
4 段階づけして再評価 分割/休憩/速度・負荷の調整で “成立条件” を作る 時間(分)+休憩(分)+次回の変更点

絶対強度と相対強度:ズレる前提で組むと迷いません

METs は「活動そのものの強さ(絶対強度)」をそろえるのに向きます。一方、同じ 4 METs でも、疼痛・不安・慢性疾患・当日の体調で “きつさ” は変わります。ここが、現場で「表は見たのに決められない」原因です。

実務では、METs を “入口” に置き、 RPE と所見で相対強度を合わせてから、条件(速度・坂・休憩)を固定して再評価できる形に落とします。ズレたら理由を考え込みすぎず、「調整 → 成立条件の記録」に寄せる方が回りやすいです。

METs の基本: 1 MET は “候補出し用” として使います

MET( metabolic equivalent )は、活動の強度を「安静時の何倍か」で表す単位です。慣用的に 1 MET = 3.5 mL O2/kg/min を基準にし、活動候補を素早く絞る共通言語として便利です。

目安の式は 2 つで、① VO2( mL/kg/min )= METs × 3.5、② kcal = METs × 体重( kg )× 時間( h )です。ただし臨床では “厳密な推定” よりも、「どの活動を、どんな条件で行ったか」を残す方が再評価に効きます。

METs・ RPE・心拍・ Talk test の使い分け

指標は「正しいものを 1 つ選ぶ」ではなく、目的に合うものを主役にして、弱点を補うのが実務向きです。特に心拍は、薬剤( β 遮断薬など)や不整脈で外れやすいので、 RPE と所見を同時に使う前提にします。

下表の “主役” を 1 つ決めると、残りは補助になり、判断がぶれにくくなります。

運動強度指標の使い分け(主役にする場面と落とし穴)
指標 強み 弱み(落とし穴) 主に向く場面
METs 活動選択が速い/強度区分が簡単 個体差と条件差でズレる 候補出し/説明/介入の入口
RPE( Borg ) 相対強度を拾える/薬剤影響を受けにくい 慣れが必要/初回は高めに出やすい 慢性疾患/高齢者/日内変動が大きい人
心拍( %HRR 等) 数値化しやすい/進行管理に便利 β 遮断薬・不整脈・反応性で外れる 健康成人/負荷試験がある環境/教育目的
Talk test 簡単/その場で共有できる 主観でブレる/環境の影響 歩行・エルゴ等の有酸素の調整
所見(症状・観察) 中止・中断判断に強い “決める” だけだと強度が残りにくい 術後/心肺疾患/体調変動が大きい人

強度区分の目安: METs・ RPE・心拍・ Talk test を 1 枚でそろえる

最初に「軽い/中等度/高強度」の言葉をそろえると、スタッフ間のすり合わせが速くなります。METs は区分の入口に置き、 RPE と Talk test で “その人のきつさ” を合わせます。

心拍は補助指標として有用ですが、内服・不整脈・測定環境の影響を受ける前提で扱うと、臨床で破綻しにくいです。

強度区分のクロス表(目安): METs/ RPE/心拍/ Talk test
区分 METs(目安) RPE( CR10 ) Borg( 6-20 ) 心拍(目安) Talk test(目安)
軽い < 3.0 0〜2 6〜10 個別(上がりにくいことも多い) 会話は余裕
中等度 3.0 〜 5.9 3〜4 11〜13 %HRR 40〜59 など(目安) 短文なら会話可
高強度 6.0 以上 5〜7 14〜17 %HRR 60 以上など(目安) 会話が難しい

※心拍の数値は環境でズレやすいため、 RPE と Talk test を同時に使い、所見(息切れ・疼痛・めまい等)を必ず添えます。β 遮断薬や不整脈がある場合は、心拍を “主役” にしない運用が安定します。

「強度」を実際に決める:段階づけと調整のコツ

同じ活動でも、速度・坂・休憩で強度は変わります。したがって “強度設定” は、最初から 1 回で当てにいくより、短時間で試す → 観察 → 調整 の方が速いです。

実務では、①中等度の候補を選ぶ ② 5 〜 10 分で実施 ③ RPE と所見で「予定よりきつい/楽」を判定 ④速度・休憩・分割で調整します。これを 1 回回すだけで、その人の “成立条件” が固まりやすくなります。

強度が合わないときの調整パターン(その場で迷わない)
状況 よくある原因 調整(次アクション) 再評価ポイント
きつすぎる 速度が速い/休憩が少ない/不安・疼痛 速度を下げる/分割( 5 分× 2 )/休憩追加 RPE、息切れ、疼痛
楽すぎる 刺激不足/活動が軽い 時間を伸ばす/速度を上げる/活動を 1 段上げる 会話の余裕、 RPE
日によって変動 体調・内服・睡眠・環境 「その日の条件」を 1 行で残し、微調整 時刻、内服、体調

中止・中断の考え方:数値より所見を優先する場面

心不全や COPD、術後などでは、METs や心拍を主役にすると危うい場面があります。こうしたケースでは、強度の “正確さ” より、所見を拾って段階づけする運用が重要です。

中止・中断の線引きは施設ルールや病態で変わるため、数値の丸暗記より「見逃しやすい所見」をチームで共有し、再現できる記録を残す方が実務的です。前後差の残し方は リハ前後の血圧チェック手順 を参照してください。

記録の型:強度は「条件」を残すと再評価が速くなります

強度設定がうまくいかない原因の多くは、数値ではなく「条件が残っていない」ことです。再評価の比較を成立させるために、最低限「活動名+条件+時間(分)」をセットで残します。

RPE と所見を添えると、次回の微調整が 1 回で決まりやすくなります。下の形は “使い回し” が効くテンプレです。

運動強度の記録テンプレ(使い回し用)
項目 書き方のコツ 再評価で効く理由
活動名 歩行/エルゴ/掃除機 固定ワードで短く 共有と検索が速い
条件 平地、速度、補助具、坂 変動しやすい要素を優先 同条件比較が成立
時間(分) 10 分× 2(休憩 3 分) 分割と休憩を必ず書く 段階づけが再現できる
RPE RPE 13 終了直後に確認 相対強度の軸になる
所見 息切れ、疼痛、めまい 種類+出現タイミング 中断・調整の判断材料

現場の詰まりどころ(よくある失敗→回避)

強度設定で詰まりやすいのは「表は見たのに、結局どう進めるか決まらない」場面です。多くは、迷いが “条件” と “相対強度” に分解できていません。

→ よくある失敗(原因と次アクション)へ
→ その日の条件チェック(抜け漏れ防止)へ
関連(総論):有酸素運動の運動処方(強度設定・中止基準・記録)

よくある失敗:原因を決め打ちせず “次アクション” を固定する

強度設定で詰まりやすいポイントと解決策
よくある失敗 原因 対策(次アクション) 記録ポイント
METs だけで決めてしまう 個体差・条件差を無視 RPE と所見で必ず補正する RPE、息切れ、疼痛
心拍だけで決める 薬剤・不整脈で外れる 心拍は参考、主軸は RPE 内服、 HR 反応、所見
再評価で比較できない 条件が残っていない 速度・坂・休憩を固定して記録 条件 1 行

その日の条件チェック:変動が大きい人ほど “ 1 行メモ ” が効きます

強度が日によってズレるときに残したい最小セット( 1 行で良い)
項目 残す理由
時刻 午前/午後、食後何時間 体調と反応の差が出やすい
内服・条件 β 遮断薬、鎮痛薬、吸入など 心拍や息切れの反応が変わる
症状のベースライン 息切れ、疼痛、ふらつき “増えた” を判断しやすい
環境 寒い、混雑、騒音 主観強度が上がりやすい

ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方や手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。評価・記録・報告の「型」をまとめて整理したい方は、PT キャリアガイドも参考になります。

PT キャリアガイドを見る

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1.中等度と高強度の境目は何 METs ですか?

一般的な目安として、中等度= 3.0 〜 5.9 METs、高強度= 6.0 METs 以上です。臨床では、数値だけで決め切らず、 RPE と Talk test(会話のしやすさ)を合わせて “その人のきつさ” をそろえるとズレにくくなります。

Q2.患者さんの「きつさ」と METs が合いません

METs は絶対強度なので、疼痛・不安・疾患・体調で相対強度は変わります。まずは速度を落とす、分割する、休憩を増やす等で “成立条件” を作り、 RPE と所見で合わせます。比較ができるように、条件(速度・坂・休憩)を 1 行で残すのがコツです。

Q3.β 遮断薬内服だと心拍で強度設定できませんか?

心拍反応が鈍く、見かけ上低く出ることがあります。心拍だけで決めず、 RPE と所見(必要時は血圧や SpO2 の前後差)を主軸にして、段階づけで調整すると運用が安定します。

Q4.Talk test はどう使えばいいですか?

歩行やエルゴでは、会話が余裕=軽い、短文なら会話可=中等度、会話が難しい=高強度の目安として使えます。数値がそろいにくい場面でも共有しやすいので、 RPE とセットで運用すると判断が速くなります。

Q5.記録は最低限、何を残せばいいですか?

まずは「活動名+条件+時間(分)+ RPE +所見」の 5 点で十分です。条件の中では、速度・坂・補助具・休憩の取り方など、次回ズレやすい要素を優先して残すと再評価が速くなります。

次の一手


参考文献

  1. Centers for Disease Control and Prevention. How to Measure Physical Activity Intensity. CDC
  2. Piercy KL, Troiano RP, Ballard RM, et al. The Physical Activity Guidelines for Americans. JAMA. 2018;320(19):2020-2028. doi:10.1001/jama.2018.14854
  3. Borg GA. Psychophysical bases of perceived exertion. Med Sci Sports Exerc. 1982;14(5):377-381. PubMed
  4. Fletcher GF, Ades PA, Kligfield P, et al. Exercise Standards for Testing and Training: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation. 2013;128(8):873-934. doi:10.1161/CIR.0b013e31829b5b44
  5. Herrmann SD, Willis EA, Ainsworth BE, et al. 2024 Adult Compendium of Physical Activities: A third update of the energy costs of human activities. J Sport Health Sci. 2024;13(1):6-12. doi:10.1016/j.jshs.2023.10.010

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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