10 gモノフィラメント検査は「3部位・3回答」で判定します
10 gモノフィラメント検査は、糖尿病患者の足部で保護感覚の低下を確認し、足潰瘍や切断リスクの評価につなげる検査です。IWGDF 2023では、両足の3部位を対象に、フィラメントを皮膚へ垂直に当てて曲がるまで加圧し、接近から除去までを約2秒で行います。
各部位では実刺激2回と偽刺激1回を組み合わせ、3回答中2回正答でその部位の保護感覚ありと判定します。この記事では、PT・OTなどが迷いやすい「どこに当てるか」「何回行うか」「どう判定するか」「何を記録するか」に絞って整理します。
先に結論:左右それぞれ3部位を、患者から見えない条件で評価します。皮膚へ垂直に当ててフィラメントが曲がるまで加圧し、接近→接触→除去まで約2秒。各部位で実刺激2回+偽刺激1回を行い、3回答中2回正答ならその部位の保護感覚ありと判断します。
検査部位は左右それぞれ3部位を確認します
10 gモノフィラメント検査では、足底の決められた部位を同じ条件で確認します。本記事と配布シートでは、IWGDFで示される足底部位に沿って、左右それぞれ以下の3部位を記録します。
| 部位 | 確認位置 | 注意点 |
|---|---|---|
| 母趾足底 | 母趾の足底面 | 潰瘍・胼胝・瘢痕・壊死組織へ直接当てない |
| 第1中足骨頭部足底 | 前足部内側の足底面 | 皮膚へ垂直に当て、滑らせない |
| 第5中足骨頭部足底 | 前足部外側の足底面 | 同一部位へ連続して機械的に接触させない |

検査部位に潰瘍、強い胼胝、瘢痕、壊死組織などがある場合は、その場所へ直接フィラメントを当てません。検査不能部位として理由を記録し、足部全体の所見と合わせて評価します。
正しいやり方は「説明→垂直に加圧→3回答→判定」です
検査では、単に「触れたか」を聞くだけではなく、患者が刺激を予測できない条件をつくり、毎回同じ方法で行うことが重要です。
- 刺激感覚を説明する:最初に手、肘、額などへモノフィラメントを当て、どのような感覚かを患者に確認してもらいます。
- 足元を見えないようにする:閉眼または視線を外してもらい、どこへ刺激しているか視覚的に分からない状態にします。
- フィラメントを垂直に当てる:検査部位の皮膚へ垂直に接触させ、フィラメントが曲がる程度まで加圧します。
- 約2秒で刺激を終える:フィラメントを近づけるところから接触し、離すまでの一連の時間を約2秒とします。
- 反応を確認する:圧刺激を感じたかを確認し、必要に応じてどちらの足・どのあたりで感じたかも確認します。
- 実刺激2回+偽刺激1回を行う:同じ部位について実際の刺激を2回行い、その間にフィラメントを当てない偽刺激を1回組み込みます。
- 3回答で部位判定する:3回答中2回以上正答なら、その部位の保護感覚ありと判定します。
「約2秒」は接触時間だけではありません。フィラメントを近づけ、皮膚へ接触して曲がるまで加圧し、離すまでの一連の動作全体を約2秒で行います。「1〜2秒押し続ける」という意味ではない点に注意してください。
判定は各部位の3回答中2回正答を基準にします
各部位では、実刺激2回と偽刺激1回の計3回答を確認します。2回以上正答すれば、その部位の保護感覚あり、2回以上誤答すれば保護感覚なしと判定します。
| 3回答の結果 | 部位判定 | 記録 |
|---|---|---|
| 3回正答 | 保護感覚あり | 3/3 正答 |
| 2回正答 | 保護感覚あり | 2/3 正答 |
| 1回正答 | 保護感覚なし | 1/3 正答 |
| 0回正答 | 保護感覚なし | 0/3 正答 |
重要なのは、モノフィラメントの1部位の結果だけで糖尿病性末梢神経障害やLOPS全体を確定しないことです。足部の神経学的評価では、10 gモノフィラメントに加えて、痛覚、温度覚、128 Hz音叉による振動覚など少なくとも1つの追加評価を組み合わせて考えます。
モノフィラメントだけで糖尿病性末梢神経障害を診断しません
10 gモノフィラメントは、早期の糖尿病性末梢神経障害を細かく診断するための検査というより、保護感覚低下があり足潰瘍リスクの高い足を見つけるための検査として位置づけます。
感覚低下を認めた場合は、モノフィラメントだけで判断を完結させず、以下を合わせて確認します。
- 128 Hz音叉などによる振動覚
- 痛覚または温度覚
- 足部の皮膚・爪・胼胝・潰瘍の有無
- 足部変形
- 足背動脈・後脛骨動脈などの循環所見
- 過去の足潰瘍・切断歴
- 履物と日常の足部管理状況
左右差が大きい、急に症状が出現した、運動障害が目立つ、糖尿病性末梢神経障害として典型的でないなどの場合は、糖尿病以外の原因も含めて医師へ共有します。
よくある判定ミスは「押し方・見せ方・回数」の3つです
検査結果を安定させるには、部位数を増やすよりも、同じ条件で正しく刺激することが重要です。
| よくある失敗 | 問題点 | 修正方法 |
|---|---|---|
| フィラメントを軽く触れるだけ | 規定した圧刺激にならない | 垂直に当て、曲がるまで加圧する |
| 長時間押し続ける | 刺激条件が変わる | 接近から除去まで約2秒で行う |
| 皮膚上を滑らせる | 触覚刺激が追加される | 垂直に接触し、そのまま離す |
| 患者が検査部位を見ている | 視覚情報から回答できる | 閉眼または視線を外して実施する |
| 実刺激だけを繰り返す | 予測による回答を区別しにくい | 実刺激2回に偽刺激1回を組み込む |
| 胼胝や潰瘍へ直接当てる | 適切な感覚評価にならない | 直接刺激せず、検査不能理由として記録する |
| 1回だけで可・不可を決める | 正式な部位判定と異なる | 3回答中の正答数で判定する |
モノフィラメント本体の状態も確認します
モノフィラメントは繰り返し使用すると、一時的または長期的に曲がる力が変化することがあります。そのため、実施手順だけでなく、使用している製品の管理方法もそろえる必要があります。
使用回数による劣化や交換目安は製品によって差があるため、使用中の製品添付文書・メーカー指示を優先してください。施設内で複数人が使う場合は、保管方法、曲がりの確認、交換基準も共有しておくと運用しやすくなります。
記録は「部位・3回答・判定・追加所見」を残します
「モノフィラメント可/不可」だけでは、次回評価時にどの部位で何が変わったのか比較できません。最低限、左右の検査部位、3回答の結果、部位判定、検査不能理由、追加神経評価、足部所見を残します。
| 項目 | 記録例 |
|---|---|
| 実施条件 | 10 gモノフィラメント。視線を外し、定めた手順に沿って実施。 |
| 右足 | 母趾足底3/3、第1中足骨頭部2/3、第5中足骨頭部3/3。各部位で保護感覚あり。 |
| 左足 | 母趾足底1/3、第1中足骨頭部2/3、第5中足骨頭部3/3。母趾足底で保護感覚低下。 |
| 追加評価 | 128 Hz音叉による振動覚、足部皮膚所見、循環所見を追加確認。 |
| 対応 | 足部セルフチェックと履物を確認。結果をチームへ共有し、足部リスクを再評価。 |
再評価時期をモノフィラメント検査だけで「1か月・3か月・6か月」と固定するのではなく、LOPS、PAD、足部変形、潰瘍既往などを含む足部リスクに応じて決めます。
10 gモノフィラメント検査の記録シートをダウンロードできます
左右3部位、実刺激2回+偽刺激1回、3回答中2回での部位判定を同じ形式で残せる「10 gモノフィラメント検査 記録シート A4 v2」を作成しました。PDFは印刷・手書き用、Excelは施設内での記録や運用に合わせて編集する場合に使用できます。
10 gモノフィラメント検査 記録シート A4 v2
左右3部位の3回答、部位判定、追加神経評価、足部所見、対応、再評価・申し送りをA4 1枚で記録できます。
記録シートは検査結果を整理するための補助ツールです。糖尿病性末梢神経障害やLOPSの総合判断は、他の神経学的評価、足部所見、病歴、循環評価などと合わせて行ってください。
10 gモノフィラメント検査でよくある質問
10 gモノフィラメントは足のどこに当てますか?
本記事と配布シートでは、左右それぞれ母趾足底、第1中足骨頭部足底、第5中足骨頭部足底の3部位を確認します。潰瘍、胼胝、瘢痕、壊死組織には直接当てません。
1部位で感じなければLOPSと判断してよいですか?
モノフィラメントの部位判定と、LOPSや糖尿病性末梢神経障害の総合判断は分けて考えます。モノフィラメントで保護感覚低下を認めた場合は、振動覚、痛覚、温度覚などの追加神経評価や足部所見と合わせて判断します。
偽刺激はなぜ必要ですか?
患者が刺激のタイミングを予測して回答していないかを確認するためです。同じ部位で実刺激2回と偽刺激1回を組み合わせ、計3回答の正答数で判定します。
再評価は1か月・3か月・6か月のどれにすればよいですか?
モノフィラメント単独で固定した再評価間隔を決めるのではなく、LOPS、末梢動脈疾患、足部変形、潰瘍既往などを含む足部リスクに応じて評価頻度を決めます。新たな皮膚異常、感覚変化、履物トラブルなどがある場合は予定時期を待たず再評価します。
次は足部全体のリスク評価へつなげます
10 gモノフィラメント検査で分かるのは、糖尿病足評価の一部分です。結果を確認した後は、皮膚、足部変形、末梢循環、潰瘍既往などを統合して、足潰瘍リスクと今後のフォローを整理します。
参考文献
- Schaper NC, van Netten JJ, Apelqvist J, Bus SA, Fitridge R, Game F, et al. Practical guidelines on the prevention and management of diabetes-related foot disease (IWGDF 2023 update). Diabetes Metab Res Rev. 2024;40(3):e3657. doi:10.1002/dmrr.3657.
- American Diabetes Association Professional Practice Committee for Diabetes. 12. Retinopathy, Neuropathy, and Foot Care: Standards of Care in Diabetes—2026. Diabetes Care. 2026;49(Suppl 1):S261-S276. doi:10.2337/dc26-S012.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

