NRS-2002 の評価方法と判定|すぐ使えるスコア表

栄養・嚥下
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NRS-2002 とは?対象と使いどころ

NRS-2002 は、入院患者の栄養リスクを 栄養状態(0–3)疾患重症度(0–3)、そして 年齢 70 歳以上の加点(+1) の合計で判定するスクリーニングです。入院時にまず初期 4 問でスクリーニングし、該当すれば本評価へ進みます。合計が 3 点以上なら栄養介入を優先して検討します。この記事では、臨床で迷いやすいポイントに絞って手順と判定のコツを整理しました。

再評価は週 1 回を目安に、病状変化(発熱・手術・感染増悪・経口摂取低下など)があれば適時行います。現場では BMI と体重減少%の算出、食事摂取量%の把握、疾患重症度の目安化がつまずきやすい箇所です。本文のスコア早見やダウンロード資材で、評価から初動までを素早く回せるようにしました。栄養・嚥下ハブ も参照ください。

臨床で役立つ評価の運用術を体系的に学ぶ(理学療法士キャリアガイド)

実施手順(初期 4 問 → 本スコアリング)

①初期スクリーニング:BMI < 20.5 ?/過去 3 か月の体重減少?/最近 1 週間の摂取低下?/重症疾患・大手術の有無? のいずれかに該当すれば本評価へ。②本スコアリング:栄養状態(食事量低下・体重減少・BMI 等)、疾患重症度(代謝ストレスの程度)をそれぞれ 0–3 で判定し、70 歳以上なら +1 を加点します。③合計点で介入要否を判断し、計画へ落とし込みます。

記録は病棟カンファレンスや回診前に 2–3 分で完了する運用を目標にしましょう。入力のばらつきは、食事摂取率の共通目安(例:完食 100%、主食半分+副菜少量 50% など)をチームで共有すると軽減します。関連:MST(栄養スクリーニング)

スコアリングと判定の読み方

合計 0–2 点は経過観察、合計 3 点以上で栄養介入を推奨します。栄養状態 0–3 は「食事摂取の低下・体重減少・低 BMI」等を総合的にみて段階化、疾患重症度 0–3 は「代謝ストレス(感染・炎症・手術侵襲・ICU 管理等)」の強さを目安に段階化します。どちらも客観指標(体重・摂取率・炎症所見)と臨床像を合わせて判断してください。

迅速な可視化のため、以下の早見表と自動計算ツールを用意しました。既往の低栄養(例:がんサルコペニア)や急減量がある場合は、点数に現れにくい危険信号として備考に記しておくと安全です。関連:CONUT

スコア早見と対応
合計スコア 解釈 初動の目安
0–2 低リスク 経過観察、週 1 回または病状変化時に再評価
≥3 栄養介入推奨 栄養ケア計画、ONS(経口栄養補助)導入、必要に応じ経腸/静脈、栄養科へコンサルト

判定後の初動フロー(現場の回し方)

合計 ≥3:①摂取障害の原因同定(嚥下・疼痛・せん妄・NPO 指示等)→②ONS の処方・持続可否を確認→③必要に応じて経腸/静脈栄養を検討→④48–72 時間で再評価し、目標エネルギー/タンパク到達度をチェックします。合計 0–2:病状変化や摂取率の低下があれば臨時再評価を行います。

腎・肝機能や循環動態、浮腫の影響を踏まえ、体重・摂取記録はできる限り毎日同じ条件で記録します。フレイルの視点も合わせて評価し、運動や嚥下訓練の併用でアウトカムを底上げしましょう。関連:フレイルに対するリハビリ

よくある落とし穴(安全運用のコツ)

BMI の過小/過大評価:浮腫・腹水・切断では見かけの体重がブレます。継時変化と臨床像で補正を。②「過体重=低リスク」ではない:短期間の急減量や摂取率の低下は強い警告です。③疾患重症度の解釈:術後や感染増悪は代謝ストレスが上がります。病棟プロトコルで「中等度/重度」の代表例を共有しておくと判定が安定します。④再評価の抜け:NPO 解除、抗菌薬変更、発熱などイベント時は必ず再評価。

なお、本文中ほどにある自動計算ツールは BMI と体重減少%を即時計算し、合計スコアと推奨アクションを自動表示します。評価運用全体の負担軽減にご活用ください。文脈上の補足はこちら → 評価の回し方(PTキャリアガイド)

ダウンロード資材(評価にすぐ使える)

FAQ(タップで開閉できます。もう一度タップで閉じます。)

再評価はどのくらいの頻度で行いますか?

原則は週 1 回です。病状変化(発熱・感染増悪・手術・摂取率低下・NPO 解除など)があれば臨時で再評価します。急性期~周術期では 48–72 時間での見直しが実用的です。

食事摂取率はどうやって見積もりますか?

病棟共通の目安を決めると再現性が上がります(例:完食=100%、主食半分+副菜少量=50%、数口=10% など)。看護・栄養・リハで同じ基準を使いましょう。

疾患重症度(0–3)の判断が難しいです

院内で代表例を共有しましょう(軽度:選択的術前、慢性疾患の軽度増悪/中等度:肺炎・大手術後/重度:ICU・敗血症・多発外傷 等)。炎症所見や臨床経過も合わせて判断します。

参考文献

  1. Kondrup J, Rasmussen HH, Hamberg O, Stanga Z; Ad Hoc ESPEN Working Group. Nutritional Risk Screening (NRS 2002): a new method based on an analysis of controlled clinical trials. Clinical Nutrition. 2003;22(3):321–336. DOI:10.1016/S0261-5614(02)00214-5PubMed:12765673

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