脳卒中評価スケール5選|目的別の使い分けと記録シート

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脳卒中評価スケール5選は「何を確認したいか」で選びます

脳卒中の評価スケールは、有名かどうかではなく、今回の評価で何を確認したいかを基準に選びます。本記事では、JSS・SIAS・FMA・BRS・FACTを対象に、神経学的重症度、機能障害、感覚運動機能、運動回復段階、体幹機能という役割の違いを整理します。

結論として、5尺度をすべて実施する必要はありません。評価目的に合う中心尺度を決め、別の領域を確認する必要があるときだけ補助尺度を追加します。記事後半では、再評価でそろえる条件と、測定結果を残せるA4記録シートPDFも紹介します。

この記事で扱う5尺度

  • JSS:神経学的重症度
  • SIAS:脳卒中による機能障害
  • FMA:感覚運動機能を中心とした回復
  • BRS:麻痺の運動回復段階
  • FACT:体幹機能

5尺度だけで脳卒中評価のすべてを網羅するわけではありません

JSS・SIAS・FMA・BRS・FACTは、それぞれ神経学的重症度や機能障害、感覚運動機能、運動回復段階、体幹機能を捉える尺度です。これらの結果だけで、ADL、歩行能力、バランス、高次脳機能、生活環境、社会参加まで評価できるわけではありません。

たとえば、FMAやBRSで運動麻痺の変化を確認できても、その変化が更衣や移乗の自立へ直結するとは限りません。脳卒中後の全体像を捉えるときは、患者ごとの課題に応じて、活動や参加、認知・高次脳機能、環境因子などを別に評価します。

脳卒中評価スケール5選で確認できる主な領域
スケール 中心となる領域 主に確認できること 単独では判断しにくいこと
JSS 神経学的重症度 脳卒中重症度の定量化と経時変化 体幹機能、ADL、離床の可否
SIAS 機能障害 運動・感覚・体幹などの障害像 実生活での自立度や参加状況
FMA 感覚運動機能 運動麻痺や感覚運動機能の程度 実際の上肢使用やADLの自立度
BRS 運動回復段階 上肢・手指・下肢の回復段階 同じ段階内にある運動能力の細かな差
FACT 体幹機能 脳卒中後の体幹機能 立位、歩行、ADL全体の自立度

目的別に中心尺度を選ぶ早見表

最初に決めるのは病期ではなく、今回の評価結果を何の判断に使うかです。目的が明確であれば、中心となる尺度を1つ選び、必要な領域だけ補助評価を追加できます。

脳卒中評価スケール5選の使い分け。JSS、SIAS、FMA、BRS、FACTの主な評価領域と向いている場面を整理した図版
JSS・SIAS・FMA・BRS・FACTは、評価する領域と使用目的を分けて選びます。
JSS・SIAS・FMA・BRS・FACTの目的別使い分け
確認したいこと 中心尺度 評価結果の使い方 必要に応じて追加する評価
神経学的重症度や前回からの変化 JSS 重症度と経時変化をチームで共有する 体幹、運動麻痺、活動、全身状態
脳卒中による障害像を広く確認する SIAS 介入で優先する機能障害を整理する ADL、歩行、認知・高次脳機能
運動麻痺を詳しく定量化する FMA 上肢または下肢の変化を項目単位で追う 実用性、活動量、ADL
麻痺の回復段階を短く共有する BRS 上肢・手指・下肢の段階を申し送る FMAなどによる詳細な定量評価
座位や動作の土台となる体幹機能 FACT 体幹機能の変化と介入課題を整理する 立位、バランス、移乗、歩行

脳卒中評価スケール5選の特徴と使いどころ

各尺度は、同じ脳卒中患者を対象としていても、評価している領域が異なります。名称だけで選ばず、尺度が捉える内容と、評価後に決めたいことを一致させることが重要です。

1.JSS:脳卒中の神経学的重症度を数値で共有する

JSS(Japan Stroke Scale)は、脳卒中の神経学的重症度を定量化する尺度です。急性期などで、現在の重症度や前回評価からの変化を共通の数値で共有したい場面に向いています。

記録では合計値だけでなく、前回から変化した項目と、評価した時間帯を残します。数値が変化したときは、患者の覚醒状態や全身状態、検査条件なども確認し、尺度の結果だけで原因を決めつけないことが重要です。

注意:JSSは神経学的重症度を把握する尺度です。JSSの点数だけで離床の可否や運動負荷を決定せず、病状、バイタルサイン、神経症状の変化、医師の指示、離床時の反応などと合わせて判断します。

2.SIAS:脳卒中による機能障害を広く整理する

SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)は、脳卒中による機能障害を総合的に評価するための尺度です。運動機能だけでなく、感覚や体幹など複数の領域を確認できるため、初回評価で障害像を整理したい場面に適しています。

再評価では、毎回すべての項目を省略してよいという意味ではありません。施設の運用や評価目的に従いながら、変化を追う項目、今回確認していない項目、別評価で補った領域を記録上で区別します。

3.FMA:感覚運動機能の変化を詳しく捉える

FMA(Fugl-Meyer Assessment)は、脳卒中後の感覚運動機能を定量的に評価する代表的な尺度です。運動麻痺の変化を詳しく追いたい場合や、上肢・下肢のどの項目で変化したかを確認したい場合に向いています。

一方で、FMAの点数が改善しても、日常生活で患側上肢を使用できるとは限りません。評価結果は、実際の動作、使用頻度、代償、ADLなどと合わせて解釈します。全項目を実施するのか、特定領域を追跡するのかも、あらかじめ記録してください。

4.BRS:麻痺の運動回復段階を簡潔に共有する

BRS(Brunnstrom Recovery Stage)は、脳卒中後の上肢・手指・下肢における運動回復を段階で捉える方法です。短い表現で共有しやすく、申し送りやカンファレンスで運動麻痺の概況を伝える場面に適しています。

ただし、同じ段階でも、動かせる範囲、運動の滑らかさ、代償、速度、実用性には差があります。BRSだけで詳細な変化を捉えにくい場合はFMAなどを追加し、段階と定量評価を使い分けます。

BRSとFMAの役割の違いは、BrunnstromとFMAの違い|評価目的と使い分けで詳しく整理しています。

5.FACT:脳卒中後の体幹機能を評価する

FACT(Functional Assessment for Control of Trunk)は、脳卒中後の体幹機能を評価する尺度です。座位や動作に必要な体幹機能を確認し、どの課題で体幹制御が難しくなるかを整理したい場面に向いています。

再評価では、足底の接地、座面の高さ、使用した支持物、介助の有無など、結果へ影響する条件をそろえます。FACTの結果は体幹機能を示すものであり、点数だけで立位・歩行・離床の安全性を判断するものではありません。

複数の尺度は「異なる領域を確認するとき」に組み合わせます

尺度を増やす目的は、評価項目を埋めることではありません。中心尺度だけでは答えられない問いがあり、その問いが介入方針や多職種共有に必要な場合に、異なる領域の評価を追加します。

脳卒中評価スケールを組み合わせる考え方
評価場面 中心尺度の例 追加を検討する領域 整理できること
神経学的重症度と体幹機能を分けて確認する JSS FACT、全身状態、活動評価 重症度と動作上の課題を混同せずに共有できる
障害像を広く確認し、体幹を詳しくみる SIAS FACT、ADL、歩行、認知・高次脳機能 機能障害と実際の活動上の問題を分けて整理できる
運動回復を簡潔かつ詳細に共有する BRSまたはFMA 必要に応じてもう一方を追加 回復段階と項目ごとの変化を使い分けられる
体幹機能と実際の動作を比較する FACT 移乗、立位、歩行などの活動評価 体幹機能の問題が動作へどう影響しているか検討できる

病期は尺度選択の参考になりますが、「急性期だから必ずこの3尺度」「回復期だから週1回」と固定する必要はありません。患者の状態、評価目的、施設の運用、評価結果を使う場面に合わせて決めます。

再評価では「目的・条件・変化の理由」をそろえます

評価を介入へつなげるには、点数だけでなく、比較できる記録を残すことが重要です。再評価では、次の3項目をそろえます。

再評価でそろえる3項目
確認項目 記録する内容 記録例
1.評価目的 今回の結果を何の判断に使うか 上肢運動機能の変化を確認し、練習課題を見直す
2.測定条件 時間帯、装具、支持物、介助、姿勢など 午前、短下肢装具あり、座位、口頭指示のみ
3.変化の理由 どの項目が変わり、何が影響したと考えたか 体幹保持は改善したが、疲労後に患側へ傾斜した

再評価するタイミング

再評価は、一律の曜日や間隔だけで決めず、次のような変化や節目に合わせます。

  • 神経症状や全身状態に変化があったとき
  • 動作能力や介助量が変化したとき
  • 介入内容や目標を見直すとき
  • カンファレンスや多職種共有の前
  • 転棟、退院、サービス変更などの節目
  • 施設で定めた定期評価の時期

定期評価日を決めることは比較条件をそろえるうえで有用ですが、状態変化があった場合は予定日を待たず、必要性を判断して再評価します。

点数を介入へつなげる記録方法

評価結果は、結果・解釈・次の行動の順で記録すると、介入へつながりやすくなります。

記録例

FACT再評価。前回より支持なしで保持できる課題が増えた。一方、患側へのリーチでは骨盤の支持が崩れる。次回は足底接地と骨盤保持をそろえ、患側への重心移動を再確認する。

「点数が上がった」「変化なし」だけで終わらせず、どの項目で、どの条件下に、どのような変化があったかを残してください。

脳卒中評価スケール記録シートPDF

評価を継続して比較するには、中心尺度だけでなく、評価目的、測定条件、点数、変化した項目、次の対応を同じ形式で残すことが重要です。

A4用紙1枚で使用できる記録シートを、初回評価、再評価、カンファレンス前の情報整理に活用してください。

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よくある質問

NIHSSを5選に入れていないのはなぜですか?

NIHSSも脳卒中の神経学的重症度を評価する重要な尺度です。ただし、本記事はJSS・SIAS・FMA・BRS・FACTの5尺度について、リハビリテーション場面での役割を整理する構成としています。JSS・NIHSS・CNSなど重症度尺度間の違いは、記事末の重症度評価記事で確認してください。

1つの尺度だけで評価してもよいですか?

今回確認したい領域が1つであれば、中心尺度を1つに絞ることは可能です。ただし、その尺度が扱わない領域まで評価できたことにはなりません。介入方針を決めるために体幹、活動、認知・高次脳機能などの情報が必要であれば、目的に応じて別の評価を追加します。

再評価はどのくらいの頻度で行いますか?

全患者に共通する固定頻度はありません。神経症状や動作能力の変化、目標の見直し、カンファレンス、転棟・退院など、評価結果を使う時点から逆算します。施設で定期評価日を設ける場合も、状態変化があれば必要に応じて前倒しします。

尺度の点数が改善してもADLが変わらないのはなぜですか?

尺度が評価している領域と、ADLで必要となる能力が異なるためです。運動機能が改善しても、体幹、バランス、注意、手順理解、環境設定、患側の実使用などが制限となる場合があります。どの機能が改善し、活動のどこで制限が残っているかを分けて確認します。

次の一手

5尺度の役割を整理した後は、脳卒中評価全体の位置づけを確認するか、急性期で使用する重症度尺度の違いを深掘りすると理解しやすくなります。


参考文献

  1. Gotoh F, Terayama Y, Amano T, et al. Development of a novel, weighted, quantifiable stroke scale: Japan Stroke Scale. Stroke. 2001;32(8):1800-1807. doi: 10.1161/01.STR.32.8.1800. PubMed: 11486108.
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  7. Sato K, Maeda K, Ogawa T, et al. The Functional Assessment for Control of Trunk (FACT): an assessment tool for trunk function in stroke patients. NeuroRehabilitation. 2021;48(1):59-66. doi: 10.3233/NRE-201533. PubMed: 33386820.
  8. 厚生労働省. 「国際生活機能分類―国際障害分類改訂版―」(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載について. 2002. 厚生労働省公式ページ.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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