構成障害ドリルは「枠・基準線・記録」でズレを整える
構成障害( visuoconstructive deficit )のドリルは、課題を増やすよりも、枠・基準線・点検順・記録語を固定することが重要です。模写や配置課題で「右へ寄る」「比率が崩れる」「回転する」「一部を省略する」といったズレを拾い、次回の難易度調整につなげます。
この記事では、OT が臨床で使いやすいように、30 秒チェック → 5 分手順 → PDF 課題シート → 記録の型で整理します。構成障害そのものの総論ではなく、「今日の介入で何を見て、どう練習し、どう記録するか」を決める記事です。
この記事で決めること
この記事で決めるのは、構成障害に対してどのズレを優先して見るか、そして次回の課題条件をどう変えるかです。まずは配置・比率・回転・省略/過剰の 4 つに分けて、同じ条件で 2 回比較します。
一方で、失行、半側空間無視、注意障害、視覚性記憶などの鑑別を本文内で広げすぎると、ドリル記事としての役割がぼやけます。鑑別に迷う場合は、兄弟記事へ回し、本記事では「枠で整えて比較する」運用に絞ります。
まず 30 秒で崩れ方を分ける
最初に見るのは、上手い・下手ではなく、どの方向に、どの要素が崩れているかです。配置、比率、回転、省略/過剰に分けると、次に使うドリルが決めやすくなります。
| 観察ポイント | よくある崩れ | 最初の当て方 | 記録語 |
|---|---|---|---|
| 配置 | 右/左/上/下に偏る、中心がずれる | 枠+基準線で中心を確認する | 右偏位、左偏位、上方偏位 |
| 比率 | 縦長、横長、一部だけ大きい | 枠内で同じ大きさを保つ | 縦長化、部分拡大 |
| 回転 | 斜めになる、向きが変わる | 基準線と角の位置を見比べる | 右回転、斜線化 |
| 省略/過剰 | 線が抜ける、描き足す | 分割してから統合する | 左下省略、線の過剰 |
5 分手順は「描く → 点検 → 修正」で固定する
構成障害のドリルは、毎回の手順が変わると比較できません。まずは描く → 点検 → 修正を 1 セットにして、点検する順番も固定します。

| 順番 | やること | 見る点 | 声かけ例 |
|---|---|---|---|
| 1 | 一度だけ描く | 開始位置、全体の置き方 | 「まず 1 回だけ描いてみましょう」 |
| 2 | 点検する | 中心線 → 角 → 辺 → 全体 | 「中心線と角だけ見てみましょう」 |
| 3 | 1 か所だけ修正する | 最もズレた要素 | 「直す場所は 1 つに絞ります」 |
| 4 | 記録する | ズレ方向、修正可否 | 「次回も同じ条件で比べます」 |
難易度は 1 要素だけ変える
難易度調整で最も避けたいのは、基準線、図形の複雑さ、配置条件、見本提示を同時に変えることです。変える要素は 1 つだけにすると、改善したのか、条件が変わっただけなのかを判断しやすくなります。
| 要素 | 初級 | 中級 | 変更の考え方 |
|---|---|---|---|
| 基準線 | 枠+基準線あり | 枠のみ | 中心が安定してから基準線を外す |
| 図形 | 単純図形 | 複合図形 | パーツ数を 1 つずつ増やす |
| 配置 | 自由配置 | 指定配置 | 3 × 3 マスなどで位置を指定する |
| 見本提示 | 近い/長め | 遠い/短め | 距離か時間のどちらかだけ変える |
構成障害ドリル PDF を使う
以下の PDF は、構成障害のドリルを初級 → 中級 → 分割 → 配置の 4 枚にまとめた課題シートです。まずは同条件で 2 回実施し、崩れ方が再現するかを確認してから、次回に 1 要素だけ変更してください。
中身をプレビューする
記録は 5 項目で次回につなげる
記録は長く書くより、次回の課題条件が決まる形にします。最低限、配置、比率、回転、省略/過剰、点検後の修正可否を残せば、次回の変更点が明確になります。
| 項目 | 記録例 | 次回の打ち手 |
|---|---|---|
| 配置 | 図形全体が右方へ偏位 | 枠+中心線を継続 |
| 比率 | 上部パーツが大きくなる | 枠内同サイズで再実施 |
| 回転 | 右回転あり、角の位置確認で一部修正 | 角→辺→全体の点検を固定 |
| 省略/過剰 | 左下の線を省略 | 分割課題で省略箇所を確認 |
| 点検→修正 | 口頭手がかりで 1 か所修正可 | 自己点検へ移行する |
現場の詰まりどころは「課題を増やしすぎること」
現場で詰まりやすいのは、改善が見えないまま課題を増やしてしまうことです。構成障害では、課題数を増やすよりも、同条件で 2 回比較し、ズレ方が再現するかを見た方が次の打ち手を決めやすくなります。
もう 1 つの詰まりは、点検が長くなりすぎて疲労が先に出ることです。点検は中心線、角、辺、全体の順に短く行い、修正は 1 か所だけに絞ります。
よくある失敗と回避策
| 失敗 | なぜ困るか | 対策 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 課題を次々変える | 改善か条件差か分からない | 同条件で 2 回比較する | 同条件/変更あり |
| 点検が長い | 疲労で質が落ちる | 点検は 1 回、順番固定 | 点検後修正の可否 |
| 複数要素を同時に変える | 次回の難易度設定が曖昧になる | 変えるのは 1 要素だけ | 変更した条件 |
| ズレを言語化しない | チームで共有できない | 右/左/上/下、回転、省略で残す | ズレ方向 |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. まずどの課題から始めればいいですか?
初回は、枠+基準線ありの課題から始めます。同条件で 2 回実施し、配置、比率、回転、省略/過剰のどれが再現するかを確認してください。
Q2. 点検では何を見ればいいですか?
点検は、中心線 → 角 → 辺 → 全体の順にします。迷う場合は、中心線と角の位置だけに絞ると、声かけと修正が短くなります。
Q3. 本人がズレに気づけない場合はどうしますか?
最初は OT が「右に寄っています」「角が下がっています」のように方向だけ提示します。修正点は 1 つに絞り、慣れてきたら本人の指差し点検へ移行します。
Q4. 生活場面にはどうつなげますか?
更衣の左右合わせ、整容時の位置確認、机上物品の定位置管理など、配置と比率が必要な場面へつなげます。課題紙だけで終わらせず、最後に生活場面を 1 つ選ぶと実装しやすくなります。
Q5. 失行や USN と混ざる場合はどう考えますか?
本記事では構成障害のドリル運用に絞ります。行為手順の誤りが主であれば失行、片側の見落としが主であれば USN の視点も併せて確認してください。
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参考文献
- Cubelli R, Della Sala S. Constructional Apraxia. Cortex. 2018;104:127. DOI: 10.1016/j.cortex.2018.02.015 / PubMed: 29587996
- Gainotti G, Trojano L. Constructional apraxia. Handb Clin Neurol. 2018;151:331-348. DOI: 10.1016/B978-0-444-63622-5.00016-4 / PubMed: 29519467
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


