構成障害のリハビリ|OT向け課題・記録・ADL【PDF・Excel】

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構成障害のリハビリは「崩れ方」と手がかりへの反応から考える

構成障害のリハビリでは、模写や配置課題が崩れたという結果だけで練習方法を決めるのではなく、どこで崩れたか、どの手がかりで変化したか、その変化が生活場面でもみられるかを確認することが重要です。構成課題には視空間認知、知覚、注意、計画、運動など複数の機能が関与するため、片側の省略や図形の回転をすべて構成障害として扱うことはできません。

この記事では、OTが構成障害を疑う患者に対して、課題の選び方 → 観察するポイント → 手がかりの入れ方 → 難易度調整 → 記録 → ADLへの接続までを整理します。記事内で使用できるExcel・PDFの「構成障害の観察・練習シート」も用意しています。

先に結論

構成課題では、最初から「枠を使う」「中心線を見る」などの方法を固定するのではなく、まず可能な範囲で自然な反応を観察し、必要な手がかりを加えたときの変化を確認します。課題紙で改善しても、生活場面で同じ変化がみられるとは限らないため、最後はADLで再確認します。

まず確認するのは「何が崩れたか」と「構成障害だけで説明できるか」

構成障害は、単一の認知機能だけで生じるものではありません。文献ではconstructional apraxiaと呼ばれることがありますが、実際の構成課題には視空間、知覚、注意、計画、運動など複数の要素が関与します。

そのため、模写の誤りを見つけたら、すぐに練習方法を決めるのではなく、誤りの特徴と、他の高次脳機能障害や運動機能の影響を切り分けることから始めます。

構成課題が崩れたときに追加確認したいポイント
観察された反応 追加で確認したいこと OTが次に見るポイント
部分同士の位置関係が崩れる 全体像の把握、空間関係、計画 部分を示したとき、枠や位置情報を加えたときに変化するか
片側の要素を繰り返し見落とす 半側空間無視、視野、探索行動 左右差が一貫しているか、探索を促すと変化するか
形は保たれるが向きが変わる 方向認知など他の視空間機能 向きの判断そのものに誤りがないか
図形の一部だけを描き始め、全体がまとまらない 部分と全体の捉え方、計画 全体を示す手がかりや境界情報で変化するか
線が不正確・震える・到達できない 運動麻痺、失調、巧緻性、視覚・運動機能 構成能力とは別に運動遂行上の制約がないか

特に、「左側を省略した=構成障害」「回転した=構成障害」と一対一で結びつけないことが大切です。片側性の見落としが目立つ場合はUSN、行為手順や道具操作そのものが崩れる場合は失行など、別の評価視点も必要になります。

OTは単純図形・複合図形・空間配置・ADLを使い分ける

構成障害の練習では、難しい図形をたくさん実施することより、何を確認するための課題なのかを明確にすることが重要です。単純図形、複合図形、空間配置では、それぞれ観察しやすい反応が異なります。

構成障害の観察・介入の考え方。課題を行い、崩れ方を観察し、必要な手がかりを選び、反応の変化を確認して次の課題やADLへつなげる流れ
構成障害では固定した手順を全員に当てはめるのではなく、課題の崩れ方と手がかりへの反応を確認し、次の課題やADLへつなげます。
構成障害で使う課題と観察ポイント
課題 主に観察すること 次の判断
単純図形の模写 開始位置、大きさ、形、基本的な位置関係、自己修正 より複雑な構成へ進む前の反応を確認する
複合図形 全体と部分の関係、開始方法、要素間の配置、省略・付加 知覚的・計画的な手がかりへの反応を見る
空間配置 相対的位置、左右・上下関係、空間全体の利用 片側性の探索障害や方向認知などもあわせて確認する
ADL・物品配置 衣服、整容物品、食器、机上物品などの実生活での位置関係 机上課題で得られた変化が生活へつながっているか確認する

初回から複雑な課題だけを用いると、どこでつまずいているのか判断しにくくなります。一方、単純図形が描けたからといって、複数要素の位置関係や生活場面での構成に問題がないとは判断できません。

手がかりは「正解を教える」のではなく反応の変化を見るために使う

構成課題では、手がかりの有無による変化が次の介入を考える情報になります。最初から同じ手がかりを全員へ使用するのではなく、可能な範囲で自然な反応をみてから、その患者に必要な情報を追加します。

構成課題で使用できる手がかりの例
手がかり 使い方の例 確認する反応
枠・境界 描画範囲や図形の外枠を明確にする 全体の配置や大きさが整うか
ランドマーク 開始点、角、中心などを示す 位置関係の捉え方が変化するか
部分への指さし 見落としている要素へ注意を向ける 見落としなのか、構成そのものが困難なのかを確認する
全体への注意 描き始める前に図形全体を確認する 部分から描き始めた場合と構成方法が変化するか
計画の言語化 どこから始めるか、どの部分を次に配置するか整理する 構成手順や部分間の関係が変化するか

OT領域では、構成課題の一種であるparquetry課題について、境界情報の量で課題難易度が変化し、知覚的な手がかりと計画に関する手がかりを組み合わせる考え方が報告されています。ただし、特定の手がかりをすべての患者へ同じ順番で用いる標準プロトコルではありません。

難易度は患者の反応に合わせて調整する

難易度調整では、「基準線を外したら次は複合図形」といった固定した順番を作る必要はありません。どの条件で崩れ、どの情報を加えると変化したかをもとに次の課題を選びます。

構成課題の難易度を調整する要素
調整する要素 負担を小さくする例 負担を大きくする例
図形の複雑さ 単純な形、要素数が少ない 複数の部分からなる図形
境界情報 枠や部分の境界を明確にする 境界情報を減らす
位置情報 開始点やランドマークを示す 位置の手がかりを減らす
見本 見やすい位置に提示する 視線移動や保持がより必要な条件にする
手がかり量 OTが必要な情報を提示する 自己探索・自己修正を増やす
課題の生活性 机上の図形課題 物品配置、更衣、整容など実生活に近い課題

反応を比較したい場合は、一度に多数の条件を変えすぎない方が「何によって変化したか」を解釈しやすくなります。ただし、必ず1要素だけ変更するという公式ルールがあるわけではありません。患者の疲労、理解度、注意状態、課題の目的に応じて調整してください。

構成障害の観察・練習シート【Excel・PDF】

記事の考え方を臨床で使いやすいように、「自然な反応 → 手がかり → 反応の変化 → 次の課題 → ADL」を記録できる4ページ構成のシートを作成しています。

配布シートの構成
ページ 内容 主な目的
1 単純図形の模写 基本的な構成反応と手がかりへの反応をみる
2 複合図形・部分と全体 部分間関係、全体構成、開始方法をみる
3 空間配置 相対的位置や左右・上下の配置をみる
4 記録とADLへの接続 有効な手がかりと次の課題、生活場面を整理する

構成障害の観察・練習シート(OT)

Excelは院内用に編集したい場合、PDFはそのまま印刷して使用したい場合に利用できます。いずれも標準化検査・診断用紙ではなく、OTの観察・練習を補助するための資料です。

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記録は「自然な反応→手がかり→変化→次の課題」で残す

構成課題の記録では、「右へずれた」「模写困難」と結果だけを書くよりも、手がかりを加える前後で何が変わったかを残すと、再評価やチーム共有に使いやすくなります。

構成障害の記録で残したい内容
項目 記録例
課題 複合図形の模写を実施
自然な反応 右側の部分から開始し、左側要素の配置にずれを認めた
使用した手がかり 図形全体への指さしと左側要素の位置確認を実施
反応の変化 左側要素への探索が増え、部分間の位置関係を一部修正できた
次に確認すること 空間配置課題でも片側性の見落としがみられるか確認する
ADL 更衣・整容時の左右探索や物品配置でも同様の反応があるか確認する

このように記録すると、単なる課題成績ではなく、どの情報が患者の遂行を助けたかを次回の介入へ引き継げます。

机上課題の改善はADLで再確認する

模写や配置課題が改善しても、それだけで生活上の問題が改善したとは判断できません。最後は、その患者が実際に困っている生活行為へ戻して確認します。

たとえば、更衣では衣服の上下・左右や各部分の位置関係、整容では道具と身体部位の位置関係、食事では食器や物品の配置などを観察できます。机上課題で有効だった枠、ランドマーク、言語化などが、生活場面でも助けになるとは限らないため、ADLで改めて反応を確認します。

ポイント:「図形が描けるようになったか」だけでなく、「生活のどの場面で、どの手がかりがあれば遂行しやすくなるか」まで確認すると、OT介入として次の方針を決めやすくなります。

構成障害のドリルを使うときの注意点

今回の配布シートは、構成障害を診断したり、重症度を点数化したりする標準化評価ではありません。構成課題に対する反応を観察し、練習やADL評価へつなげるための補助資料です。

また、模写の成績は視覚、注意、理解、運動麻痺、失調、使用手、疲労などにも影響されます。前回より描画が悪化した場合も、構成能力だけの変化と決めず、その日の全身状態や実施条件を確認してください。

構成障害そのものが視空間・知覚・注意・計画・運動など複数の要素を含むため、特定の崩れ方だけから原因機能を断定するのではなく、他課題や生活場面を組み合わせて解釈することが重要です。

よくある質問

Q1. 模写が崩れれば構成障害と考えてよいですか?

模写の失敗だけでは判断できません。視覚、注意、半側空間無視、運動麻痺、失調、理解、方向認知などの影響も考えられます。どのように崩れ、どの手がかりで変化するかを確認し、他の評価とあわせて解釈します。

Q2. 最初はどの手がかりから入れればよいですか?

全員に同じ手がかりを使う必要はありません。可能な範囲で自然な反応を確認したうえで、観察された問題に応じて枠、ランドマーク、指さし、全体への注意、計画の言語化などを選びます。

Q3. 半側空間無視と構成障害はどう分けますか?

両者は併存することがあります。片側の要素を繰り返し見落とす場合は、構成課題の成績だけで判断せず、探索行動や他のUSN評価、ADLでの片側性の見落としも確認します。

Q4. 配布シートの結果を点数化して経過比較できますか?

このシートは標準化尺度ではないため、独自の合計点を診断や重症度判定に使用することは想定していません。経過を見る場合は、使用した課題、実施条件、自然な反応、手がかり、反応の変化、ADLでの変化を記録して比較してください。

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構成課題で左右差のある見落としが目立つ場合は、USNの評価・介入を別に確認してください。

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参考文献

  1. Gainotti G, Trojano L. Constructional apraxia. Handb Clin Neurol. 2018;151:331-348. doi: 10.1016/B978-0-444-63622-5.00016-4. PubMed: 29519467.
  2. Cubelli R, Della Sala S. Constructional Apraxia. Cortex. 2018;104:127. doi: 10.1016/j.cortex.2018.02.015. PubMed: 29587996.
  3. Neistadt ME. Using research literature to develop a perceptual retraining treatment protocol. Am J Occup Ther. 1994;48(1):62-72. doi: 10.5014/ajot.48.1.62. PubMed: 8116785.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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