急性期リハ「 3 日以内」介入の作り方| 2026 改定に備える運用と記録
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令和 8 年度( 2026 )改定に向けた議論では、急性期での「より早期のリハビリテーション実施」を進めるため、早期加算等の“実行度”を高める設計(例:入院から 3 日までの初回介入を要件化する議論)が論点として提示されています。
ただし、現時点では「議論段階」です。通知・疑義解釈が出る前から断定せず、まずは院内で“ 3 日以内に初回介入を成立させる仕組み”を作っておくのが、スタートダッシュとして一番効きます。
なぜ「 3 日以内」が焦点になるのか
中医協の資料・議事では、現行の早期加算等が「リハ開始から 14 日目まで算定できる」構造である一方、例えば「入院から 3 日までに開始しなければならない」といった開始日要件は現状ない、という整理が示されています。その上で、より早期介入の実効性を高める方向性が論点として提示されています。
要するに「加算があるのに、開始が遅れている患者が一定数いる」ことが課題です。だからこそ、改定で要件が明確化された場合に備え、現場の動線・オーダー・評価・記録を“最短で回る形”に寄せておく価値があります。
「 3 日以内」の定義を現場で迷わないための前提
改定後の定義は通知で確定しますが、運用設計は「曖昧でも揺れない」ように作れます。おすすめは、院内ルールを次の 2 段に分けることです。
①原則:入院日を 0 日目として 72 時間以内に初回介入(評価+安全な最小介入)を実施、②例外:医学的に不安定な場合は“できない理由”と“次の再評価時点”を明記し、可及的速やかに実施する、の 2 本立てにします。
現場の詰まりどころ(よくある失敗)と対策
「 3 日以内」を落とす原因は、患者側よりも“仕組み側”が大半です。下の表をそのまま部門ミーティングに持ち込める形にしてあります。
| 詰まりどころ | 典型パターン | 対策(仕組み) | 記録ポイント(最小) |
|---|---|---|---|
| 依頼が来ない | 主治医オーダー待ち | 入院時スクリーニング→自動紹介の院内ルール | 紹介基準に該当した根拠(例:移動能力 / 廃用リスク) |
| 検査・処置で空かない | CT / MRI / カテ後で延期 | “可否確認の窓口”を 1 本化(病棟リーダー等) | 実施可否の判断根拠(バイタル / 禁忌) |
| 週末・祝日 | 金曜入院→月曜まで持ち越し | 週末最小体制( 10 分評価+最小介入)を用意 | 週末実施の有無と、次回介入予定 |
| 誰が行くか曖昧 | PT / OT / ST の優先順位が未定 | 病棟別の「初回担当」割り当て表 | 初回担当者・初回実施日(時刻) |
| 重症で実施できない | 安静 / 不安定で見送り | “見送りテンプレ”で再評価を固定化 | 見送り理由+再評価の日時条件 |
当日から回せる「 5 分フロー」
初回介入は「長くやる」より「遅れない」ことが優先です。 5 分で完結する形に落としておくと、週末や検査の合間でも回せます。
①安全確認( 60 秒):意識・呼吸・循環・禁忌の有無/②最低限の機能( 120 秒):起き上がり・端座位・立位可否(または離床不可の理由)/③最小介入( 60 秒):呼吸・循環を崩さない範囲の段階刺激/④次の一手( 60 秒):次回の目標と介入条件を明文化、の順です。
「返戻を減らす」記録の最小セット
改定で開始日要件が入ると、返戻リスクは「実施したのに証明できない」側に寄ります。だから記録は、 SOAP を丁寧に書くより、要件に当たる“事実”を落とさないことが大切です。
最低限は、①初回介入日(時刻)、②実施可否の判断根拠(バイタル・禁忌・安静度)、③実施内容(評価+最小介入の実施)、④見送りの場合は理由と再評価予定、⑤多職種共有(病棟・主治医へ報告)です。
週末・祝日でも「 3 日以内」を守る小さな工夫
金曜入院の持ち越しが一番の落とし穴です。週末は“フル介入”でなく、前述の 5 分フローを回すだけでも「初回介入が成立」し、次の本介入へつなげやすくなります。
体制を作るときは、①対象病棟の優先順位、②最小提供の時間枠、③記録テンプレの統一、④翌営業日に引き継ぐ項目(目標・禁忌・注意点)を固定しておくと、属人化しません。
医学的安全性を外さない(“早ければ良い”ではない)
早期介入の議論は「早く起こせば良い」という単純化が危険です。脳卒中では“超早期かつ高用量”の離床が予後に不利に働く可能性が示され、ガイドラインでも高用量の超早期離床を推奨しない方向が示されています。
重要なのは、医学的安定性を確認しながら「短く・頻回」など安全域での段階刺激を設計することです。見送りが必要なときは、見送り自体を“正しい医療判断”として記録で証明できる形にしておきます。
よくある質問(FAQ)
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Q1. 「 3 日以内」は入院日基準ですか?発症日基準ですか?
現時点では通知で確定していないため断定はできません。ただ、中医協資料では「例えば入院から 3 日までに開始しなくてはいけない、といったルールは現状ない」という整理が示されており、今後“入院から”を起点に要件化する議論が想定されます。院内運用は「入院日を 0 日目として 72 時間以内」を原則にしておくと、表記ゆれに強いです。
Q2. 週末に人がいなくて間に合いません
週末はフル介入ではなく「評価+安全な最小介入( 5 分フロー)」を回す設計が現実的です。対象病棟を絞り、テンプレで記録を統一し、翌営業日に“本介入へ引き継ぐ項目”を固定すると破綻しにくくなります。
Q3. 重症で安静指示のときはどうすればいい?
医学的安定性が最優先です。見送りの場合は「見送り理由(バイタル、禁忌、安静度)」と「再評価の条件(いつ・何が満たされたら実施するか)」を明文化しておくと、改定後に要件が入っても説明可能性が上がります。
Q4. PT だけでなく OT / ST も初回介入に含めるべき?
要件がどう定義されるかで変わりますが、現場では「初回は PT が安全確認と基本動作の可否を押さえ、必要に応じて OT / ST へ当日中に連携する」運用が回しやすいです。病棟特性(脳卒中、術後、呼吸など)で初回担当の優先順位表を作るのがおすすめです。
参考文献・一次情報
- 中央社会保険医療協議会 総会(第 627 回)資料(令和 7 年 11 月 14 日)
- 令和 8 年度診療報酬改定の基本方針の概要(厚生労働省 PDF)
- Bernhardt J, et al. Efficacy and safety of very early mobilisation within 24 h of stroke onset (AVERT): a randomised controlled trial. Lancet. 2015;386(9988):46-55.
- Powers WJ, et al. 2019 Update to the 2018 Guidelines for the Early Management of Acute Ischemic Stroke. Stroke. 2019.
- Rethnam VR, et al. Early mobilisation post-stroke: a systematic review and meta-analysis of individual participant data. Disabil Rehabil. 2022;44:1156-1163.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下
おわりに
「安全の確保 → 段階刺激 → 記録で証明 → 再評価」のリズムを先に作っておくと、改定で“早期介入”が要件化されても現場が崩れません。面談前の整理として、チェックリストと職場評価をまとめて準備したい方は、こちら(面談準備チェック&職場評価シート)も活用してみてください。

