認知症ケアチームの記録は何を残す?ラウンド・カンファから再評価までつなぐ
認知症ケアチームのラウンド・カンファで重要なのは、助言した内容だけで終わらせず、「何が起きているか」「なぜ起きている可能性があるか」「何を行うか」「誰が担当するか」「いつ確認するか」「結果をどう見直すか」まで追える形で残すことです。
本記事では、認知症ケア加算における認知症ケアチームのラウンド・カンファ記録を、実務で使いやすい形に整理します。あわせて、院内運用を補助する「認知症ケアチーム ラウンド・カンファ 記録・再評価シート」のPDF版・Excel版も配布します。
この記事の結論:ラウンドで把握した課題を、カンファでの助言だけで終わらせず、「担当」と「再評価時期」を決め、結果・見直しまで同じ流れで追える形にすると、院内共有と継続評価がしやすくなります。
認知症ケアチームのラウンド・カンファは制度上どう位置づけられている?
認知症ケア加算1では、認知症ケアチームによるカンファレンスや病棟巡回が、チーム活動の一部として位置づけられています。
実務では、病棟巡回で把握した課題をカンファレンスで整理し、病棟スタッフや関係職種へ助言し、その後の経過を追っていく流れになります。したがって、ラウンドとカンファは別々の出来事ではなく、「観察 → 検討 → 助言 → 再評価」を1本でつなげて記録できる形にしておくと運用しやすくなります。
なお、本記事で配布するシートは、厚生労働省の届出様式や診療録の代替ではなく、院内運用を補助する独自様式です。使用する場合は、自院の規程や記録方法に合わせて調整してください。

無料ダウンロード|ラウンド・カンファ 記録・再評価シート
PDF版は印刷・手書き用、Excel版は院内で編集して使いたい場合に向いています。どちらもA4縦1枚で、ラウンドからカンファ、再評価、見直しまでを同じ紙面で追える構成です。
このシートで記録したいのは、助言した事実そのものではなく、助言がその後どう実施され、どう変化したかまで追えることです。そのため、観察事実、背景・要因、助言・ケア方針、担当、再評価時期、結果・見直しを1枚の中でつなげています。
記録シートでは何を残す?7つの記録領域に分ける
ポイントは、観察した事実と背景の推測を分けたうえで、助言を「担当・再評価・結果」までつなげることです。本シートでは、院内で追跡しやすいよう次の7領域に整理しています。
| 記録領域 | 残す内容 | 書くポイント |
|---|---|---|
| 患者・記録情報 | 病棟、患者ID、実施日、記録者、初回/再評価 | 誰の、いつの記録かが後から分かるようにする |
| 課題・観察された事実 | 実際に確認した行動、症状、変化、場面 | 「不穏」などの抽象語だけで終わらせず、何が起きたかを書く |
| 背景・要因 | 疼痛、睡眠、排泄、活動性、環境、薬剤、意思疎通など | 観察事実と推測を混同しない |
| チームの助言・ケア方針 | 実施するケア、環境調整、観察強化、追加評価 | 担当者が実施内容をイメージできる具体性を持たせる |
| 担当・再評価時期 | 担当職種・担当者、次に確認する時期 | 誰が何を行い、いつ確認するかを明確にする |
| 結果・見直し | 変化、未実施の理由、継続・変更する内容 | 「実施した」で終わらせず、次の判断へつなげる |
| 次回確認・関連記録 | 次回確認事項、せん妄、身体的拘束、転倒、疼痛などの関連記録 | このシートだけで完結させず、必要な専用記録へつなぐ |
最初に分けるのは「観察された事実」と「背景・要因」
記録で最も混ざりやすいのが、「実際に起きたこと」と「なぜ起きたと考えたか」です。ここを分けると、カンファレンスで検討する論点が明確になります。
たとえば「夜間不穏あり」だけでは、具体的に何が起きているのか分かりません。まずは、「22時以降にベッドからの離床を繰り返した」「立ち上がり時にふらつきがみられた」「声かけ後も再度離床した」など、観察した内容を事実として残します。
そのうえで、疼痛、睡眠、排泄、日中活動量、環境刺激、薬剤、視聴覚、意思疎通など、背景として考えられる要因を整理します。要因は確定診断ではなく、チームで検討する仮説として扱うことが重要です。
記録の分け方
事実:「22時〜1時に3回離床した」
背景・要因:「就寝前の疼痛、排泄、日中活動量低下の影響を検討する」
ラウンド→カンファ→再評価をどうつなげる?
ラウンドで情報を集め、カンファでケア方針と担当を決め、設定した時期に結果を確認する流れにすると、助言が口頭だけで終わりにくくなります。
- ラウンド:患者の状態、実際に起きていること、現在のケアを確認する。
- 整理:観察された事実と、背景として考えられる要因を分ける。
- カンファ:実施するケア・評価・環境調整などを具体化し、担当を決める。
- 再評価時期を決める:患者の状態、介入内容、緊急性に応じて、いつ確認するか決める。
- 結果を確認する:変化の有無だけでなく、実施できなかった理由も確認する。
- 見直す:継続・変更・中止・追加評価など、次の対応へつなげる。
制度上のチーム活動の頻度と、個々の患者に対する再評価時期は同じではありません。状態変化が大きい患者や安全面の確認が必要なケースでは、次回の定例ラウンドを待たずに確認するなど、自院の運用に合わせて設定します。
記録例|助言だけで終わらず再評価まで残す
記録例では、長い経過を書くより、「事実→要因→助言→担当→再評価→見直し」が追えることを優先します。以下は書き方を示すための一例です。
| 欄 | 記載例 |
|---|---|
| 課題・観察された事実 | 22時以降にベッドからの離床を3回認めた。立ち上がり時にふらつきあり。声かけ後はいったん臥床するが再度離床した。 |
| 背景・要因 | 就寝前の疼痛、排泄状況、日中活動量、夜間の環境刺激との関連を確認する。 |
| チームの助言・ケア方針 | 就寝前の疼痛と排泄状況を確認する。日中の覚醒・活動状況を共有し、夜間環境を見直す。 |
| 担当・再評価時期 | 看護:夜間の疼痛・排泄・離床状況を記録。リハ:日中活動時の状態を確認。患者の状態に応じて設定した時期に再確認する。 |
| 結果・見直し | 離床状況、疼痛、排泄、日中活動の変化を確認し、現方針の継続・変更をカンファレンスで検討する。 |
| 次回確認事項 | 離床回数だけでなく、発生時刻、前後の状況、安全性、本人の訴えを確認する。 |
記録例は院内の記録基準を示すものではありません。実際には、患者の状態と自院の診療録・看護記録・リハ記録などとの役割分担に合わせて調整してください。
身体的拘束・せん妄はこのシートだけで記録を完結させない
身体的拘束やせん妄に関する専用記録が必要な場合は、本シートをその代わりに使用しません。ラウンド・カンファで関連する問題を確認したことは残しつつ、必要な院内様式・診療録・専用記録へ接続します。
今回の配布シートでは、「せん妄リスク・症状」「身体的拘束」「転倒」「疼痛」「栄養・脱水」などを関連確認として整理できます。ただし、このチェックだけで各領域に必要な評価・記録を満たすという意味ではありません。
特に身体的拘束については、実施日の考え方、必要性のアセスメント、具体的な実施内容、解除へ向けた検討など、別に確認すべき事項があります。認知症ケア加算における身体的拘束実施日の扱いは、認知症ケア加算|身体的拘束実施日の算定・記録で整理しています。
記録で起こりやすい4つの抜け
記録テンプレートを導入しても、「何を書くか」より運用上の抜けで追跡できなくなることがあります。特に次の4点を確認します。
| 起こりやすい抜け | 問題 | 見直し方 |
|---|---|---|
| 「不穏」「拒否」だけで終わる | 実際に何が起きたのか共有できない | 行動、時間、場面、前後の状況など観察事実を残す |
| 助言だけ残して担当がない | 誰が実施するのか曖昧になる | 実施内容と担当をセットで決める |
| 再評価時期が決まっていない | 結果が回収されず、助言が一度きりになる | 介入内容と状態に応じて次に確認する時期を決める |
| 専用記録を1枚へ詰め込む | 身体的拘束やせん妄などの必要記録が不足する可能性がある | 本シートは論点整理に使い、必要な専用記録へ接続する |
PT・リハ職はラウンド・カンファで何を共有する?
リハ職は、活動場面で得られた事実を、病棟ケアへつなげる情報として具体的に共有することが重要です。「歩ける・歩けない」だけでなく、どの条件で状態が変わるかを伝えると、病棟での対応に反映しやすくなります。
- 離床・活動時の覚醒状態と時間帯による違い
- 移乗・歩行時の安全性と必要な介助
- 疼痛や疲労が行動・活動へ与えている影響
- 指示理解やコミュニケーションの特徴
- 環境や声かけによって反応が変化する条件
- 病棟で再現しやすい活動方法や環境調整
リハ記録の詳細をそのまま転記する必要はありません。ラウンド・カンファでは、病棟スタッフが次のケアへ反映できる情報に絞り、必要な詳細は各職種の記録を参照できるようにします。
よくある質問
この記録・再評価シートは厚生労働省の公式様式ですか?
いいえ。rehabilikunblogが院内運用を補助する目的で作成した独自様式です。認知症ケア加算の届出に使用する公式様式40の10・40の11などとは別のものです。
このシートだけ残せば診療録や看護記録は不要ですか?
不要にはなりません。本シートはラウンド・カンファの課題、助言、担当、再評価を一続きで整理するための補助用です。診療録や看護記録などについては、自院の規程と必要な記録方法に従ってください。
再評価は24時間・48時間・72時間のどれにすればよいですか?
本シートでは固定していません。患者の状態、介入内容、安全面、変化の速さ、自院の運用に応じて設定します。チーム活動の頻度と、個別患者の再評価時期は分けて考えます。
身体的拘束の記録もこのシートで兼ねられますか?
身体的拘束が関連していることをラウンド・カンファで確認するためには使えますが、身体的拘束に必要な専用記録の代替とはしません。実施の必要性、具体的な行為・時間、解除へ向けた検討など、自院で必要な記録へ接続してください。
次の一手|施設基準と届出様式を確認する
ラウンド・カンファ記録を整えたあとは、「誰がチームを構成し、どのように運用するか」と「どの届出様式を使用するか」を分けて確認すると整理しやすくなります。
認知症ケアチームの全体像を確認する
届出を確認する
参考文献
- 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定について[Internet].2026.
- 厚生労働省.診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日保医発0305第6号)[Internet].2026.
- 厚生労働省.基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年度)[Internet].2026.
- 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定説明資料:身体的拘束の最小化の推進―認知症ケア加算の見直し[Internet].2026.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

