身体障害者手帳(肢体)のROM・MMT評価|動作・活動の返し方

制度・実務
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身体障害者手帳(肢体)のROM・MMTは「機能障害」と「動作・活動」を分けて返します

身体障害者手帳の肢体不自由でROM・MMTの評価依頼を受けたときは、認定判断の基礎となる機能障害と、実生活での動作・活動を混ぜないことが重要です。上肢・下肢の機能障害では、MMTと他動的ROMが基本的な評価情報となり、機能障害の程度は原則として義肢・装具等を装着しない状態で判断します。

一方、診断書の「動作・活動」では、杖・義肢・装具・車いすなどを使用する生活条件も確認します。この記事では、PT・OTがROM・MMT→動作・活動をどの条件で確認し、医師へどう返すかに絞って整理します。等級そのものを決める記事ではありません。

この記事の結論:
機能障害は「義肢・装具等を外した状態でのMMT・他動ROM」を軸に整理し、動作・活動は「実際に使う補助具・装具条件」を別に記録します。最後に両者が矛盾していないか確認して医師へ返します。

身体障害者手帳の評価依頼全体の受け方や、依頼前に確認する事項は、身体障害者手帳の評価依頼|書類対応の総論で整理しています。本記事は、そのうち上肢・下肢のROM・MMTと動作・活動に範囲を限定します。

最初に「機能障害」と「動作・活動」の評価条件を分けます

最初に決めるべきなのは、何を測るかより「どちらの情報を評価しているのか」です。身体障害者手帳の肢体不自由では、機能障害を示すROM・MMTと、生活場面での動作・活動では評価条件が同じとは限りません。

身体障害者手帳(肢体)|機能障害と動作・活動の分け方
整理する情報 主に確認すること 条件の考え方
機能障害 MMT、他動的ROM、麻痺、疼痛、拘縮など 一時的な最大能力ではなく、日常的に無理なく発揮できる状態を確認する。義肢・装具等は装着しない状態で判断する
動作・活動 立位、移動、更衣など、診断書様式に示された活動 実生活で使用する杖・義肢・装具・車いす・自助具などの条件を明確にする
医師への返却 評価条件、機能障害、動作・活動 機能障害と生活能力を混在させず、両者の関係が分かる形で返す
身体障害者手帳の肢体不自由でROM・MMTによる機能障害評価と動作・活動を分けて整理する図
図:ROM・MMTによる機能障害と、実生活の動作・活動は評価条件を分けて整理します。

特に注意したいのが装具です。「普段は短下肢装具を使っているから、ROM・MMTも装具ありで評価する」わけではありません。認定判断の基礎となる機能障害と、装具を使用した生活能力を分けて記録します。

ROM・MMTは認定判断の基礎となる機能障害として整理します

上肢・下肢の機能障害では、厚生労働省の身体障害認定要領で、目的動作能力とともに関節可動域・筋力テストの所見を重視し、双方を記載することが示されています。ROMは所定の関節可動域表示・測定法に沿い、筋力は徒手筋力検査で評価します。

実務では「ROM 0°」「MMT 3」だけを返すのではなく、どの部位・運動方向を、どの条件で評価した値かまで分かるようにします。

ROM・MMTを医師へ返すときの確認項目
項目 確認する内容 返却例
部位・運動方向 左右、関節、屈曲・伸展・背屈など 右足関節背屈
ROM 他動的ROM、測定肢位、可動範囲 背臥位、他動背屈0°まで
MMT 対象運動、段階、必要に応じて代償 足関節背屈MMT 3、明らかな代償なし
制限因子 疼痛、拘縮、筋緊張、恐怖など 下腿三頭筋の短縮が疑われ、背屈終末で抵抗あり
装具条件 機能障害評価時に義肢・装具等を外していること 短下肢装具を外して評価

ROMでは、自動運動が臨床上有用な場合でも、身体障害者手帳の上肢・下肢の機能障害を整理する際は他動的ROMと混同しないことが大切です。また、屈曲・伸展など複数方向がある場合は、「動いた総量」だけでなく各運動方向の値が分かるように残します。

関節がほとんど動かず「強直」と記載してよいか迷う場合は、身体障害者手帳の強直肢位とROM記載で、固定肢位と他動運動の整理を確認してください。

一時的な最大能力ではなく「日常的に無理なく発揮できる能力」を見ます

身体障害認定基準では、肢体不自由を無理をして一時的に発揮した能力だけで判断しない考え方が示されています。評価室で一度だけできたことを、そのまま日常的な能力として返すのは避けます。

たとえば歩行距離を確認するときも、「一度だけ何m歩けたか」だけでなく、疼痛・疲労・症状増悪などを含めて、日常的にその能力を発揮できるかを整理します。

返却するときの考え方
「最大で30m歩行できた」だけではなく、「普段の条件で無理なく継続できる範囲」と「その能力を制限している機能障害」を分けて伝えます。

ただし、リハ職が独自に「この状態なら○級」と判定するのではありません。リハ職は測定値と所見を整理して医師へ返し、診断書では医師が意見を記載し、最終的な認定は自治体側で行われます。

動作・活動は実際の補助具条件を明記します

機能障害を確認したら、次に生活場面の動作・活動を整理します。ここでは「装具なしで評価する」という機能障害側の条件を、そのまま生活場面へ持ち込まないことがポイントです。

肢体不自由の診断書には、立位や家の中の移動などについて、手すり・杖・松葉杖・義肢・装具・車いすなどの使用条件を示す項目があります。実際に使用している補助具がある場合は、その条件を明確にして能力を返します。

動作・活動を返すときに添える条件
確認場面 弱い記載 返しやすい記載
立位 立位可能 手すり使用で立位保持可能。手放しでは不安定
屋内移動 歩行可能 短下肢装具・T字杖使用で屋内移動。見守りを要する
更衣 一部介助 上衣更衣では右上肢操作が困難で、袖通しに介助を要する
階段 困難 手すり使用でも昇降時に介助を要する

診断書の動作・活動欄には所定の判定方法があります。リハ職が独自の基準で○・△・×を決めるのではなく、評価に用いる自治体の最新様式を確認し、医師が判断できる具体的な能力と条件を返すようにします。

ROM・MMTと動作・活動が食い違うときは理由を確認します

身体障害者手帳では、機能障害と日常生活上の制限が矛盾していないかも重要です。ROM・MMTから予想される能力と実際の動作・活動が大きく異なる場合は、その差を説明する要因がないか確認します。

機能障害と動作・活動が合わないときの確認例
見えている状況 追加で確認すること 返却時の考え方
MMTに比べ歩行能力が低い 疼痛、感覚障害、運動失調、疲労など 歩行能力だけでなく、低下を説明する所見を併記する
上肢麻痺に比べADL介助量が大きい 認知機能、高次脳機能、他部位障害など 肢体不自由以外の影響を分けて記載する
ROM制限が小さいのに実用性が低い 痙縮、運動失調、巧緻性、感覚障害など ROMだけでは説明できない機能障害を具体化する

重要なのは、ADLの介助量そのものを等級へ置き換えることではありません。「なぜその動作が難しいのか」を、肢体の機能障害と結びつけて整理することが、医師へ返す情報として有用です。

医師へは「評価条件→ROM・MMT→動作・活動」の順で返します

医師への返却では、長い文章よりも、機能障害と生活能力の条件が区別できることを優先します。以下はリハ職から情報提供する場合の整理例です。

下肢の返却例

評価条件:右下肢。機能障害は短下肢装具を外して評価。

ROM・MMT:右足関節背屈は他動0°まで。足関節背屈MMT 3。背屈終末で下腿後面に抵抗を認める。

動作・活動:普段は短下肢装具とT字杖を使用。屋内移動は見守りを要し、段差では介助を要する。

ここでは、「装具を外した状態で確認した機能障害」と「装具を使って生活しているときの移動能力」が混ざっていません。この区別ができると、診断書へ反映するときに条件を読み違えにくくなります。

上肢の返却例

評価条件:右上肢。機能障害は装具を使用せず評価。

ROM・MMT:右肩屈曲は他動90°まで。肩屈曲MMT 3。疼痛により終末域で制限あり。

動作・活動:上衣更衣では右上肢を袖へ通す操作が困難で一部介助を要する。

例文はそのまま診断書へ転記するための固定文ではありません。実際の測定値、対象部位、使用している様式、医師から求められた情報に合わせて調整してください。

よくある失敗は「評価条件を混ぜること」です

身体障害者手帳の肢体不自由では、数値を増やすよりも、どの条件の情報なのかを明確にすることが重要です。

ROM・MMT評価依頼で避けたい記載
避けたい例 問題点 修正
装具ありのROM・MMTだけを返す 機能障害の評価条件が不明確になる 機能障害は義肢・装具等を外した条件で整理する
自動ROMだけを返す 認定で重視される他動的ROMが分からない 他動的ROMを明示し、自動ROMを加える場合は分ける
MMTの数字だけを返す 対象運動や代償、関連所見が分からない 部位・運動方向と必要な補足所見を添える
「歩行不可」「更衣介助」だけを書く 機能障害との関係や補助具条件が分からない 補助具・介助条件と困難の理由を添える
一度だけできた最大能力を能力として返す 日常的に無理なく発揮できる能力と一致しないことがある 疼痛・疲労・持続性を含めて普段の能力を整理する

よくある質問

Q1. 短下肢装具を普段使っている場合、装具あり・なしのどちらで評価しますか?

目的を分けます。肢体不自由の機能障害の程度は、原則として義肢・装具等を装着しない状態で判断します。一方、動作・活動では、実生活で使用している装具や杖などの条件を明記します。「どちらか一方」ではなく、機能障害と生活場面を別に評価することがポイントです。

Q2. ROMは自動と他動のどちらを測ればよいですか?

上肢・下肢の機能障害の認定では、MMTと他動的ROMが基本です。自動ROMも臨床情報として有用な場合がありますが、他動的ROMと混在させず、「自動」「他動」を明記して返します。

Q3. ADLが低ければ、肢体不自由も重いと考えてよいですか?

ADL介助量だけでは判断できません。認知機能、高次脳機能障害、他の疾患や障害などがADLへ影響していることもあります。ROM・MMT・麻痺などの機能障害と、動作・活動がなぜ低下しているのかを分けて整理します。

Q4. PT・OTが等級まで予測して医師へ返した方がよいですか?

本記事では等級判定ではなく、医師が診断書を作成するための評価情報を整理することを目的としています。測定条件、ROM・MMT、麻痺や制限因子、動作・活動を具体的に返し、等級に関する判断は医師と認定機関の手続きへ委ねます。

次の一手

身体障害者手帳(肢体)の評価依頼では、まず「機能障害」と「動作・活動」の条件を分けるところから始めます。機能障害は義肢・装具等を外した条件でMMT・他動ROMを整理し、動作・活動では実生活の補助具条件を明記します。

評価依頼全体の受け方、様式・時点・依頼内容の確認へ戻る場合は、身体障害者手帳の評価依頼|書類対応の総論を確認してください。ROM記載で強直・固定肢位の扱いに迷う場合は、身体障害者手帳の強直肢位とROM記載へ進むと整理しやすくなります。

参考文献

  1. 公益社団法人日本リハビリテーション医学会 障がい者福祉委員会作成,厚生労働省・国立障害者リハビリテーションセンター監修.身体障害者診断書の書き方:総論・肢体不自由
  2. 厚生労働省.身体障害認定基準の取扱い(身体障害認定要領)について
  3. 厚生労働省.身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害認定基準)について
  4. 日本整形外科学会,日本リハビリテーション医学会,日本足の外科学会.関節可動域表示ならびに測定法(2022年4月改訂)

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。制度・書類の記事では、公式資料と実務上の整理を分け、現場で確認すべき条件が伝わる構成を心がけています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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