BOS・COM・安定限界の最短整理
BOS(支持基底面)は身体を支える面、COM(重心)はその投影位置、安定限界は「転ばずに COM を移動できる範囲」です。臨床でいう“バランス不良”は、① COM 制御の誤差、② 安定限界の縮小(疼痛・拘縮・不良姿勢など)、③ 感覚統合の誤重みづけ(視覚/体性感覚/前庭)のいずれか、もしくは複合で説明できます。
用語の全体像はバランス概念ハブを参照してください。本記事は評価と訓練パラメータに落とし込み、mCTSIB・Mini-BESTest・FGA・BBS・TUG へ橋渡しします。
評価での使い方(どの尺度と結ぶ?)
mCTSIB は支持面(硬/柔)と視覚(開/閉)を操作し、感覚統合の偏りを可視化します。BOS・COM の概念を踏まえると、所見を訓練パラメータへ直結できます。歩行や方向転換での“安定限界の使い方”は FGA が有効です。ステップや多方向切替の客観指標としては FSST も併用候補です。
縦比較やベースラインの追跡は BBS・TUG、多面的な弱点抽出は Mini-BESTest を選び、所見から「どのパラメータをどれだけ動かすか」を決めます。
※この表は横にスクロールできます。
パラメータ | 易→難 | 狙い | 関連評価 | 安全管理 |
---|---|---|---|---|
BOS(足幅・支持様式) | 広→狭/片脚/タンデム | 安定限界の操作・方略切替 | mCTSIB, Mini-BESTest | 介助者配置・転倒方向の予測 |
支持面の硬さ | 硬→柔(フォーム等) | 体性感覚の信頼性低下への適応 | mCTSIB | 足関節内外反・膝折れの保護 |
視覚情報 | 開眼→視覚制限→閉眼 | リウェイティングの促通 | mCTSIB | 閉眼時は常時介助・周囲クリアランス |
外乱(大きさ/方向) | 小→中→大/単方向→多方向 | 反応的バランスの強化 | Mini-BESTest | プッシュ&リリース時の後方介助 |
タスク特異性 | 静的→動的→歩行中 | 目標 ADL への汎化 | FGA, BBS・TUG | 障害物・床面・転回スペースの確保 |
処方の組み立て(順序とチェック)
原則は 土台(感覚統合)→安定限界の再学習→反応/予測の統合。最初に mCTSIB で「信頼できる感覚」を見極め、BOS・支持面・視覚の組み合わせで負荷を微調整します。次に外乱や動的課題を段階づけ、FGA の難所をタスク特異的に再現します。静的→動的の段階づけの考え方は静的 vs 動的バランスも参照ください。
介入の全体像は PTキャリアガイドのフロー を参考に、評価→介入→再評価を1サイクルで設計。再評価には Mini-BESTest または BBS・TUG を用い、最小可検変化を意識して縦比較します。
よくある質問(FAQ)
BOSを広げれば常に安全ですか?
静的には安定化しますが、動的課題では歩幅や方向転換の自由度を損ない代償が増えることがあります。目標タスクに合わせて調整します。
閉眼訓練はいつから導入すべき?
まずは開眼で姿勢戦略を学習し、体性感覚の信頼性を確認した後に段階的に視覚制限→閉眼へ進めます。常時介助と環境管理が前提です。
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