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この記事は「半側空間無視」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。
Heilman らによると半側空間無視とは「大脳半球損傷の反対側に提示された刺激を報告したり、刺激に反応したり、与えられた刺激を定位することの障害」と定義されています。
半側空間無視はリハビリテーションの進行を阻害し、在宅復帰を困難にする要因であることが多くの研究により判明しており、脳卒中診療においては半側空間無視の評価と治療が重要になります。
半側空間無視が疑われる患者を診察する際には、線分二等分検査、抹消試験、図形模写などの検査を行うことが一般的となりますが、これらの机上検査は利便性が高い一方、半側空間無視の一側面しか捉えることができないという欠点があります。
半側空間無視は日常生活に多大な影響を及ぼすことから、ADL 場面の半側空間無視について評価することも重要になります。そこで、こちらの記事で ADL 場面の半側空間無視の重症度を評価する Catherine Bergego Scale(CBS)について紹介させていただきます。
こちらの記事で半側空間無視についての理解を深め、臨床における脳卒中診療の一助になると幸いです。是非、最後までご覧になってください!
【簡単に自己紹介】
30代の現役理学療法士になります。
理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。
現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。
臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。
そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。
理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです
登録理学療法士
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
【理学療法士の転職はマイナビコメディカル】
理学療法士は 2013 年頃より毎年 10,000 人程度が国家試験に合格し続けています。これは医療系の専門職の中では看護師に次ぐ有資格者の増加率となっており、1966 年にはじめての理学療法士が誕生した歴史の浅さを考えれば異例の勢いと言えます。
人数が増えることは組織力の強化として良い要素もありますが、厚生労働省からは 2019 年の時点で理学療法士の供給数は需要数を上回っていると報告されており、2040 年度には理学療法士の供給数は需要数の約 1.5 倍になると推測されています。このような背景もあり、理学療法士の給与、年収は一般職と比較して恵まれているとはいえず、多くの理学療法士の深刻な悩みに繋がっています。
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半側空間無視(USN)とは
半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect : USN)は、損傷大脳半球と反対側の刺激に気がついたり、反応したり、その方向に向いたりすることが障害される病態になり、リハビリテ ーションを進める上で重要な阻害因子となります。
半側空間無視(USN)は、右半球損傷に好発する神経学的な症候群であるため、左半側空間無視の発現頻度が高いと報告されています。
右半球損傷に好発する理由としては Kinsbourne(1977)の説が非常にわかりやすいと思います。
脳機能は右脳が左右の空間を、左脳が右空間を主に監視しています。左脳を損傷した場合に、左脳によって右空間を監視することはできなくなりますが、右脳が左右の両側を監視することができるため、右の半側空間無視が発生しないと考えられます。
右脳を損傷した場合には、左脳では右空間しか監視することができないために、左空間を監視することができなくなります。
このように左右の脳で役割が異なっていることもあり、右半側空間無視よりも左半側空間無視が生じやすいということになります。
参考:Kinsbourne(1977)
左側の半側空間無視が出現しやすい理由を説明させていただきましたが、半側空間無視は脳卒中後遺症の中でも出現する頻度が高い症状の 1 つになります。
その割合としては、先行研究によると脳卒中発症後急性期で 70〜80 % 程度の患者に認められると報告されています。また、その後も症状の改善が認められないことも比較的多く、急性期から慢性期に経過しても 40 % 程度の患者に残存するといわれています。
左側への意識が向かない、物を無視してしまうような症状が認められた時に、半側空間無視なのか半盲なのか分からず、両者を混在して考えてしまうことがあると思います。この 2 つの病態については全く別物であり、それぞれ独立した症状であるため、違いを正しく理解する必要があります。
まず、半盲は眼球を固定したときの視野における障害(視覚の欠損)になります。半盲と半側空間無視の違いとして症状を認識できるか、できないかという違いがあります。半盲の場合は自身が視覚の欠損があるということを認識することができます。そのため、半盲の場合は障害を認識し、視覚の欠損がある側に顔の向きを大きく向けるなどの代償動作で対処することができます。
一方、半側空間無視は眼球の動きを制限しないときの視覚の欠如になります。空間における障害であり、半盲は自身が視覚の欠損があるということを認識することができますが、半側空間無視では自身の障害を認識することができないため、代償動作を行わないことを特徴とします。
半側空間無視(USN) 臨床症状
半側空間無視は上述したように、空間に注意を向けることに困難を示し、空間内の対象あるいは空間そのものに気づくことができなくなります。
実際に臨床で目にすることでいえば、ベッドサイドでは 「顔や視線が常に健側を向いていて頸部が横に曲がっている」「臥位姿勢が斜めになっていて、左側の手足が柵などに当たっていたとしても無頓着」「座位姿勢が患側に傾いてしまう」「患側にいる人に気付かない」「患側から声を掛けられても気付かない」などの症状が認められます。
このような無視症状は日常生活動作(ADL)の阻害要因として直接的に関与しており、半側空間無視の有無によって、その後の人生が大きく左右されるといっても過言ではないほど重大な後遺症の 1 つとなります。
先行研究においても、半側空間無視を呈する患者は半側空間無視を認めない患者よりも退院時の日常生活動作(ADL)能力が低く、転倒リスクが高いことから、活動制限や Quality of Life(QOL) の低下の原因となると報告されています。
また、これらの問題は患者のみに留まらず介護負担も明らかに増大するため、半側空間無視という症状は患者を取り巻く家族や介護者にまで波及する脳卒中後遺症となります。
以上のように半側空間無視は脳卒中後遺症の 1 つの症状として重要性が高いものになり、その無視症状が ADL に影響を与える程度というのはリハビリテーション専門職として正しく評価する必要があります。
そこで近年注目されている評価尺度が日常生活動作(ADL)における半側空間無視の徴候を評価する Catherine Bergego Scale(CBS)になります。
Catherine Bergego Scale(CBS)
Catherine Bergego Scale(CBS)は半側空間無視の評価方法の 1 つになります。脳卒中患者の ADL を観察することで半側空間無視を定量的に評価することができます。日本語での呼び方はキャサリン・ベルジェゴ・スケールとなります。
Catherine Bergego Scale(CBS)は、脳卒中患者の半側空間無視(USN)を識別・評価するためのシンプルで使いやすい評価ツールであることが特徴になります。医師や看護師、リハビリテーション専門職などの医療従事者が ADL 場面を観察することにより、短時間で評価することができます。
また、Catherine Bergego Scale(CBS)は 合計 10 項目の ADL 場面の半側空間無視について評価しますが、各項目を客観的評価(理学療法士や看護師などの医療従事者が採点)と主観的評価(患者自分自身で採点)のそれぞれで評価します。
客観的評価と主観的評価のどちらも活用する評価尺度はそれほど多くはないと思いますが、Catherine Bergego Scale(CBS)ではこの特徴によって、単に半側空間無視の程度を点数化するだけではなく、病態失認の程度まで同時に評価することができます。
Catherine Bergego Scale(CBS)の欠点としては、観察に基づく質的評価ツールになるため、評価者の潜在的なバイアスや主観性に影響される可能性があります。そのため、評価者にも評価の経験値を積み重ね、評価の質を高める必要があります。
CBS 評価項目
Catherine Bergego Scale(CBS)の評価項目は 10 項目の日常生活動作から構成されています。
- 【整容場面】
整髪または髭剃りのときに左側を忘れることはありますか? - 【更衣場面】
左側の袖を通すとことや、左側の履き物を履いたりすることが難しいと感じることはありますか? - 【食事場面】
食事の時に、左側にある食べ物を食べ忘れるはありますか? - 【食後場面】
食事の後、口の左側を拭くことを忘れることはありますか? - 【左側への注意場面】
左側を見ることが難しいと感じることはありますか? - 【身体管理場面】
生活で左半身の管理を忘れてしまうことはありますか?(例:左腕を肘掛けにかけるのを忘れる、左足を車椅子のフットレストに置くのを忘れる) - 【音への管理場面】
左側からの環境音や左側から声を掛けられた時に、気付きにくいようなことはありますか? - 【空間への注意場面】
歩いていたり、車椅子を駆動している時に、左側の家具やドアなどにぶつかってしまうことはありますか? - 【移動場面】
歩くのに慣れた場所(居室やリハビリ室など)で左側に曲がることが難しいと感じることはありますか? - 【物品探索場面】
部屋や風呂場で左側にある物をうまく見つけられないことはありますか?
CBS 評価方法 点数の付け方
日常生活動作(ADL)の実施状況について、対象者と観察者それぞれの立場から評価を行います。10 項目の設問に対して、半側空間無視の程度に基づいて 0 ~ 3 の 4 段階で判定をします。
- 無視なし (正常に実行)
- 軽度の無視 (左側の見落としが時々みられる)
- 中等度の無視(恒常的な左側の見落としがみられる)
- 重度の無視 (左側を全く探索できない)
Catherine Bergego Scale(CBS)の得点範囲は 0 ~ 30 点となります。最高点は 30 点となり、30 点に近いほど半側空間無視の症状が重度であることを意味します。反対に最低点は 0 点となり、0 点に近いほど半側空間無視の症状が軽度であることを示します。
評価項目となる 10 項目のうち麻痺などの影響で実施することができない項目がある場合には、施行可能な項目の平均点を割り当てて合計点を算出します。
CBS 半速空間無視 評価用紙 pdf
Catherine Bergego Scale(CBS)の評価用紙はこちらから無料でダウンロードすることができます。
CBS カットオフ値
Catherine Bergego Scale(CBS)の得点範囲は 0 ~ 30 点となります。ADLの項目ごとの評価も有効ですが、合計点によって半側空間無視の症状の総合評価を行うこともできます。
- 0 点:行動の無視なし
- 1 ~ 10 点:軽度の行動の無視
- 11 ~ 20 点:中程度の行動の無視
- 21 ~ 30 点:重度の行動の無視
半側空間無視の重症度分類
Catherine Bergego Scale(CBS)の結果で半側空間無視の重症度を判定することは有用ですが、多様な症状が出現する半側空間無視に対しては、複数の評価尺度を組み合わせることで、より評価の精度を向上させることが求められます。
本邦では 1981 年に半側空間無視の重症度分類(福井)が報告されているため、そちらをご紹介します。
こちらの重症度分類は神経学的診察と日常生活の観察から半側空間無視の程度を 5 段階に分類する方法になります。Grade 1 ~ 5 の 5 段階に分類されており、Grade 1 が最も軽度、Grade 5 が最も重症となります。
近年では、消去現象を認めない半側空間無視の報告もあるため、これらの分類に該当しない半側空間無視もありますが、多くの半側空間無視はこちらの指標で段階づけすることができる優れた臨床的分類となります。
- ときに片側空間の物体を認知しないこともあるが、ADL にはほとんど支障がない
- 両側刺激による消去現象を認めるが、片側刺激は認知可能である
- 片側刺激でも末梢部分を見落とすことがある
- 片側のみの刺激でも全部見落とし、空間軸変位・崩壊現象を伴うことが多い
- 片側を完全に無視し、常に頭頸部が右を向いており、空間軸変位・崩壊現象を伴う
左半側空間無視 リハビリテーション
半側空間無視は脳卒中患者のリハビリテーションにおいて重要な機能予後増悪因子になります。
そのため、これまでさまざまなアプローチ方法が検討・実行されており、現在でも日々試行錯誤されながら半側空間無視へのリハビリテーションは実施されています。
半側空間無視に対するリハビリテーションアプローチは、大別すると Top-down アプローチと Bottom-up アプローチ、そしてニューロモデュレーションに分類することができます。
【Top-down アプローチ】
- Sustained attention training
- Visual scanning
- 左への手がかりの提示
【Bottom-up アプローチ】
- Caloric stimulation
- Electrical stimulation
- Neck vibration
- Proprioceptive stimulation
- Trunk rotation
- Eye patched and hemi spatial glass
- Optokinetic stimulation
- Prism adaptation
【ニューロモデュレーション】
- rTMS(theta-burst stimulation を含む)
- tDCS
Top-down アプローチは聴覚や視覚などの手がかりによって自発的空間探索を促すものであり、Bottom-up アプローチは受動的な刺激により無意識に無視側へ注意を向けさせるものになります。
近年ではニューロモデュレーションとして、反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimu-lation:rTMS)や経頭蓋直流電流刺激(trans-cranial direct current stimulation:tDCS)なども注目されています。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「半側空間無視」をキーワードに考えを述べさせていただきました。
こちらの記事が、半側空間無視についての理解を深めることに繋がり、臨床における脳卒中診療に少しでもお力添えになれば幸いです。
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