認定理学療法士は「取得 → 更新」まで設計すると迷いません
認定理学療法士は、臨床の専門性を「第三者に伝わる形」に整える資格です。いっぽうで新生涯学習制度では、取得だけでなく 5 年ごとの更新がセットになっています。最初に “ 取得後 5 年でどう維持するか ” まで見通しておくと、学会参加や研修選びのムダ打ちが減り、年度末の駆け込みを避けやすくなります。
この記事は、① 位置づけ → ② 取得要件 → ③ 更新要件 → ④ つまずき回避の順で、全体像を 1 ページに圧縮して整理します。更新制度の各論(ポイント配分・申請フロー・費用など)を詳しく確認したい場合は、認定理学療法士の更新制度と要件(ポイント・時期・費用)で “ 実務 ” を深掘りできます。
認定理学療法士とは(登録・認定・専門の関係)
新生涯学習制度では、認定理学療法士・専門理学療法士は 「登録理学療法士を基盤」として設計されています。つまり、認定だけを単独で考えるのではなく、前期研修/後期研修 → 登録 → 認定(分野別)という “ 階段 ” の上に載るイメージです。
実務上は、院内外での教育・標準化(評価の言語合わせ、ガイドライン実装、症例検討の質向上)に効きやすい一方、更新の設計が甘いと “ 取ったのに維持がきつい ” になりがちです。先に更新要件( 3 本柱)を押さえ、学会参加や研修を “ 点数化できる活動 ” に寄せて積み上げるのが最短ルートです。
最短で迷わない「 5 分フロー」
まずは、全体の流れを “ 固定の型 ” として持つのがコツです。新制度では、申請・更新ともにマイページ運用が前提になるため、「履修の記録が残る行動」を選ぶほど、後から差し戻しや確認に強くなります。
| 段階 | やること | 詰まりやすい点 | 先に決めるコツ |
|---|---|---|---|
| 前提 | 登録理学療法士を維持( 5 年更新) | 登録の更新忘れ | 年度初めに対象期間を確認 |
| 取得 | 指定研修+臨床認定カリキュラム+学術研修大会 | 期限(履修日から 5 年) | 「何年で取るか」を先に決める |
| 維持 | 更新要件 3 本柱(活動 1 つ+ 100 点+更新時研修) | 要件①が抜ける | 学会発表 or 士会雑誌投稿を計画に入れる |
| 申請 | 取得期間の最終年度に更新申請 | 締切直前の差し戻し | 四半期ごとに証憑を整える |
取得要件(新制度):まず “ 3 点セット ” を押さえる
新制度( 2022 年度以降)の認定理学療法士は、登録理学療法士を取得していることが前提です。さらに申請要件は大きく 3 つで、履修は 履修日から 5 年間が有効期間とされています(年度をまたぐと設計が崩れやすいので注意)。
具体的には、① 指定研修カリキュラム( e ラーニング)、② 臨床認定カリキュラム(分野別)、③ 日本理学療法学術研修大会への参加です。指定研修は 12 コマ( 1 コマ 90 分)で同年度内に全コマ履修が必要、臨床認定は 必須 15 コマ+選択 5 コマ以上(計 20 コマ)が示されています。
取得スケジュールの立て方(忙しい人ほど “ 先に埋める ” )
現場で多い失敗は「年度末に一気に詰める」パターンです。指定研修( e ラーニング)は同年度内に完結させる必要があるため、 4〜 6 月に着手 → 夏までに完了の流れにしておくと、臨床認定(教育機関の開催日程)に時間を回せます。
臨床認定は、教育機関への直接申込が必要で、受講完了は “ 申請する前年度まで ” とされている点がポイントです。つまり、申請年度に入ってから慌てても間に合わないケースが出ます。いちばん安全なのは、申請年度の 1 年前までに臨床認定を完了しておき、申請年度は学会参加や症例のアウトプットに時間を回す設計です。
更新制度(新制度): 5 年ごと、要件は “ 3 本柱 ”
新制度の更新は 5 年ごとで、取得期間の最終年度に更新申請を行う必要があります。前提として、登録理学療法士を取得(かつ失効していない)ことが条件で、登録の更新は別に行う扱いです。更新の活動対象は、原則として 2022 年 4 月以降の活動が基準として示されています。
更新要件は、① 指定のアウトプット活動を 1 つ、② 維持・研鑽のための活動で 100 点、③ 更新時研修( e ラーニング 5 コマ)の 3 つを “ すべて満たす ” ことです。ここで重要なのは、要件①は 100 点の内訳に使用できない点で、「点数は足りているのに、要件①がない」事故が起こりやすいところです。
更新の中身(要件①〜③)を “ 事故らない言葉 ” に翻訳
要件①は、都道府県士会学術雑誌への投稿(筆頭著者)か、ブロック学会・都道府県学会での一般発表(筆頭演者)のいずれかを 1 つ行うことです。「いつかやる」だと年度末に詰みやすいので、 5 年の前半 2〜 3 年で 1 回、アウトプット枠を計画に組み込むのが安全です。
要件②は 100 点の獲得で、点数は学習時間換算(例: 30 分= 0.5 点)の仕組みが提示されています。要件③は更新時研修( e ラーニング)で、共通研修 4 コマ+分野別研修 1 コマの計 5 コマ( 1 コマ 60 分)として示され、複数分野を所持する場合は分野ごとに受講が必要とされています。
現場の詰まりどころ( “ 点数は足りるのに更新できない ” を防ぐ)
詰まりは大きく 3 つです。① 要件①を忘れる(点数だけ集める)、② 証憑が散らばる(参加証・修了証が出せない)、③ 分類がブレる(どの大項目に入れるか迷い、後から修正が必要になる)です。更新は “ 書類作業 ” というより、日常の学習ログの質で勝負が決まります。
| 論点 | NG 例 | OK 例 | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 要件① | 点数 100 点だけ集めて満足 | 学会発表 or 士会雑誌投稿を 1 回確保 | 5 年の前半に計画化 |
| 証憑 | 参加証を紙のまま放置 | 受領当日に PDF 化して保管 | ファイル名を日付+イベントで統一 |
| 分類 | 根拠なしでカテゴリを決める | 点数基準の “ 大項目 ” に沿って記録 | 迷った理由をメモしておく |
| 時期 | 締切直前の駆け込み申請 | 四半期レビューで不足を前倒し修正 | 年度後半は “ 予備枠 ” として残す |
よくある質問(FAQ)
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Q1. 認定理学療法士は「まず取得」か「まず更新設計」か、どっちが先ですか?
A. 先に “ 更新設計 ” です。更新要件には要件①(アウトプット 1 つ)があり、点数とは別枠で必須です。取得直後に計画を持っていないと、 5 年後に「点数は足りるのに要件①がない」が起こりやすいので、取得前から “ 5 年で 1 回のアウトプット ” を予定に入れるのが安全です。
Q2. 忙しくて学会参加が難しい年があります。更新の点数はどう組むのが現実的ですか?
A. 「毎年大きく取る」より、「毎月少しずつ積む」設計が安定します。点数は学習時間換算の考え方が示されているため、オンデマンドや e ラーニングなど “ 日常に差し込める学習 ” をベースにして、学会参加は “ 年 1 回の底上げ ” として位置づけると負担が偏りにくくなります。
Q3. 複数分野の認定を持っている場合、更新時研修は 1 回で済みますか?
A. 分野ごとに更新時研修の受講が必要とされています。共通研修を省略できない扱いも示されているため、複数分野を維持する場合は、更新年の負担が増える前提で、前半の年に点数を前倒しで積んでおくのがコツです。
Q4. 取得要件の “ 指定研修 ” と “ 臨床認定カリキュラム ” は、何が違いますか?
A. 指定研修は全分野共通の e ラーニングで、同年度内に全コマ履修が必要です。臨床認定カリキュラムは分野別で、教育機関が開講し、必須+選択のコマを組み合わせて受講します。実務では、指定研修を早めに終わらせ、教育機関の日程に合わせて臨床認定を “ 申請前年までに完了 ” させると失速しにくいです。
Q5. 最新情報はどこを見ればいいですか?(年度で変わりそうで不安です)
A. 一次情報は日本理学療法士協会の「生涯学習」ページと、更新申請マニュアル/点数基準の PDF です。点数基準は更新されることがあるため、年度が変わるタイミング( 4 月前後)と、更新対象年の前半で一度チェックしておくと安心です。
おわりに
認定理学療法士は、「要件を知る → 年間計画を作る → 証憑を残す → 四半期で見直す → 最終年度に申請」のリズムに乗せると、忙しい年があっても維持しやすくなります。次は、あなたの状況(取得直前/取得直後/更新が近い)に合わせて、学会・研修・アウトプットの “ 優先順位 ” を具体化していきましょう。
面談前の整理として「できることの棚卸し」や「職場選びの軸」を固めたい場合は、面談準備チェックや職場評価シートも活用しながら、次の行動を前倒しで決めていくのがおすすめです。


