【意識レベル】評価の流れと観察ポイント【JCS・GCS・ECS】

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基礎的評価
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この記事の内容
  1. この記事は「意識レベルの評価」をキーワードに内容を構成しています
  2. 意識レベルの評価は、患者の神経学的状態を把握するうえで極めて重要になります
  3. 意識の変化は重篤な疾患の兆候であることが多く、早期発見と迅速な対応が予後に大きく影響します
  4. 評価には JCS や GCS や ECS などの尺度が用いられ、状態の変化を客観的に捉えることで、適切な医療介入や治療方針の決定に役立ちます
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理学療法士として以下の経験と実績を持つリハビリくんが解説します♪

リハビリくんの実績
  1. rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設
  2. 2025 年 7 月時点:181 記事公開(月間 3 万 PV)
  3. 実務経験(医療機関、介護福祉施設、訪問リハビリ等)
  4. 講師活動(診療報酬制度、褥瘡等をテーマに講演)
  5. 脳卒中 認定理学療法士
  6. 褥瘡 創傷ケア 認定理学療法士
  7. 3 学会合同呼吸療法認定士
  8. 福祉住環境コーディネーター 2 級
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意識レベルの評価方法

医療機関、特に救急現場においては急性かつ重篤な疾患や外傷に関連して、意識レベルが変化することが常に隣り合わせとなります。

傷病者・急病者が発生した場合には、患者の意識レベルを迅速かつ正確に把握し、その情報を病院前、病院搬送後を通してスタッフ間で共有するためのツールとして、意識レベルの評価スケールを使用します。

意識レベルの評価スケールについてはいくつか種類があるが、日本では 1974 年に開発された Japan coma scale(JCS)、海外では同年に開発された Glasgow Coma scale(GCS)が最も普及しています。

その後、2003 年には JCS と GCS で指摘されてきた問題点を改善する目的で新しいスケールである Emergency Coma Scale(ECS)が開発され、現在少しずつ国内で浸透が進んでいる状況になります。

同じ意識レベルの評価でも JCS と GCS、ECS はそれぞれ評価の視点が異なる部分があるため、各評価スケーの使用方法や特徴を踏まえながら、わかりやすく解説していきます。

JCS(Japan Coma Scale)

JCS とは、Japan Coma Scale(ジャパン・コーマ・スケール)の略称になり、1974 年に太田らが破裂脳動脈瘤(くも膜下出血)発症患者の意識レベルを評価する目的で開発しています。

発表当初は「Ⅲ-3 度方式」あるいは「3-3-9 度方式」と呼ばれていましたがその後改定を行い、1986 年に現在国内で普及されている形(10 段階評価)となり、破裂脳動脈瘤患者以外にもさまざまな疾患に対して臨床使用されるようになっています。

大まかな構造としては意識障害の重症度に応じて 3 桁の大分類に分かれており、医学的な知識がなくても理解が容易であるスケールとなります。

患者を観察して、初めから開眼している場合は Ⅰ 桁、問いかけや叩くなどの刺激で開眼する場合は Ⅱ 桁、痛み刺激でも開眼しない場合には Ⅲ 桁と分類されます。

評価方法

JCS の評価の流れと観察ポイントについて解説します。

【 Ⅰ:刺激をしなくても覚醒している場合】

  1. 「○○さん!お名前言えますか?誕生日はいつですか?」→答えられない場合:JCS 3
  2. 答えられる場合→「○○さん!ここがどこだかわかりますか?」→答えられない場合:JCS 2
  3. 答えられる場合→「反応の速度や正確さ、言葉の明瞭さを観察」→正常の場合:JCS 0、はっきりしない場合:JCS 1

【Ⅱ:刺激をすると覚醒する場合】

刺激前は閉眼している状態になります。

  1. 「(普通の声量で)○○さん!」→覚醒する:JCS 10
  2. 覚醒しない場合→「(大声で)○○さん!!肩を叩く」→覚醒する:JCS 20
  3. 覚醒しない場合→「ちょっと痛いですよ!(手足などをつねる)」→覚醒する:JCS 30
  4. 覚醒しない場合は Ⅲ 桁の評価に移行

【Ⅲ 桁:刺激をしても覚醒しない状態】

痛み刺激に対する反応を観察します。

  1. 払いのける:JCS 100
  2. 少し手足を動かしたり顔をしかめる:JCS 200
  3. 全く反応しない:JCS 300

JCS では数字の末尾に対象者の状態に応じて R・I・A を付記します。

  • 不穏状態「R:restlessness」
  • 尿・便失禁「I:incontinence」
  • 無動性無言症(akinetic mutism)or 失外套症候群(apallic state)→「A」

練習問題

JCS を活用した意識レベルの判定に慣れるために事例問題を用意しています。以下の事例の JCS を判定してみてください。

問題 1

70 歳の男性が交通事故で搬送された。呼びかけで開眼せず、大きな声で呼びかけながら痛み刺激を加えると、かすかに開眼するが直ぐに眼は閉じてしまう。【答え:JCS 30】

問題 2

在宅生活をしている 86 歳の女性。朝起きた時から、いつもと様子が違うことに同居家族が気付き、救急外来を受診した。開眼はしており、声かけに対する返事はあるが自分の名前や生年月日が言えない。着衣を観察すると失禁していることが判明した。【答え:JCS 3-I】

問題点と課題

JCS は簡便に使用することができるメリットがある一方で覚醒の判断材料として「開眼の有無」のみが大分類の判定基準となっているため、評価者によりスコアのばらつきが出たり、一部の患者で意識レベルを正確に反映できないという問題があります。

例えば、強いめまいにより苦痛で開眼できない患者や、外傷で顔が腫れて物理的に開眼できない患者の意識レベルの判定が正確に行うことができないという問題になります。

このような事例において、評価者の主観的な感覚が入ることで、評価者によって異なるスコアがつけられる可能性が考えられます。

また、意識障害の重症度の重要な判断材料の 1 つとして、脳幹部が障害されている場合に除脳硬直や除皮質硬直という症状の出現があげられますが、JCS にはそれらに関係する項目もありません。

GCS(Glasgow Coma Scale)

GCSとは、Glasgow Coma Scale(グラスゴー・コーマ・スケール)の略称となります。1974 年に英国グラスゴー大学の Teasdale らによって発表された意識障害の評価スケールとなります。日本でも使用されていますが(特に脳神経外科領域)、海外で幅広く使用されていることが特徴となります。

JCS は「覚醒(開眼)」という部分が評価の大部分になりますが、GCS は E(開眼機能)、V(言語機能)、M(運動機能)の 3 要素に分けて詳細に意識レベルを評価できます。

GCS は鋭敏かつ正確に患者の意識レベルを表現することが可能であり、特に脳幹障害の表現ができる部分が優れています。一方、評価方法に複雑な部分があるため習得に訓練が必要であり、医療従事者であっても習熟に時間がかかるという問題点が報告されています。

評価方法

GCS(Glasgow Coma Scale) は E(開眼機能)、V(言語機能)、M(運動機能)の 3 要素について評価を行います。

E(開眼機能)は 1 ~ 4 点、V(言語機能)は 1 ~ 5 点、M(運動機能)は 1 ~ 6 点のいずれかで判定します。

合計点の得点範囲は 3 ~ 15 点になり、最高得点が 15 点で正常、3 点に近いほど意識障害が重度ということになります。

E(開眼機能)

E(Eye opening)は開眼するかどうかを評価する項目になり、4 段階で評価します。点数が低いほど意識障害の程度が重度であることを意味しています。

  1. 自発的に開眼
  2. 呼びかけで開眼
  3. 痛み刺激で開眼
  4. 開眼しない

E(開眼機能)を評価するための刺激には声かけと痛み刺激の 2 種類があります。

「○○さん!大丈夫ですか!」と呼びかけて開眼すれば 3 点、「ちょっと痛いですよ!」と手足などをつねることで開眼すれば 2 点となります。

V(最良言語反応)

V とは Verbal の頭文字になります。Verbal とは「言語」や「話し言葉」を意味しています。V は日本語で「最良言語反応」、英語では Best Verbal Response となります。

この項目では言語機能を 5 段階で評価します。点数が低いほど意識障害の程度が重度であることを意味しています。

  1. 見当識の保たれた会話
  2. 会話に混乱がある
  3. 言葉に混乱がある
  4. 理解不能の声
  5. 発声がない

まず始めに時間、場所、人物に関する質問を行い見当識を確認します。具体的には「今日は何月何日ですか?」「ここはどこですか?」「今は何時ですか?」「目の前にいるのは誰ですか?」などを確認します。

見当識に関する質問に対して適切に答えることができていれば 5 点、適切に答えることは難しいものの文章レベルでやりとりができれば 4 点、単語レベルでのやりとりができれば 3 点、「あー」「うう」などの発声が可能であれば 2 点、発声を認めなければ 1 点と判定します。

M(最良運動反応)

M とは Motor の頭文字であり「運動」を意味しています。M は日本語で「最良運動反応」、英語では Best Motor Response となります。

この項目では運動機能を 6 段階で評価します。点数が低いほど意識障害の程度が重度であることを意味しています。

  1. 命令に従って四肢を動かすことができる
  2. 痛みや刺激の部位を認識している
  3. 痛みや刺激に対して四肢を引っ込めることができる(逃避反応)
  4. 痛みや刺激に対して屈曲反応を示す
  5. 痛みや刺激に対して伸展反応を示す
  6. 痛みや刺激に対して反応しない

指示通りに四肢を動かすことができれば 6 点となります。5 ~ 2 点の評価は、痛みや刺激に対する四肢の反応により判定を行います。全く反応がない場合には 1 点となります。

結果の解釈、重症度判定

得点範囲が項目ごとに異なり、E(開眼機能)は 1 ~ 4 点、V(言語機能)は 1 ~ 5 点、M(運動機能)は 1 ~ 6 点になるため、合計点の得点範囲は 3 ~ 15 点となります。

GCS(Glasgow Coma Scale)の合計点は重症度判定として活用することもできます。日本脳神経外傷学会のガイドラインによると以下の基準が報告されています。

練習問題

GCS を活用した意識レベルの判定に慣れるために事例問題を用意しています。次の事例の GCS を判定してみてください。

問題 1

自発的に開眼している。困惑している様子があり日時や生年月日を正しく答えることができない。会話は文章レベルで成立する。「両手をあげてみてください」「太ももを持ち上げられますか?」の指示通りに手足を動かすことができている。【答え:GCS14(E4V4M6)】

問題 2

閉眼しているが呼びかけにより開眼し、時間が経つと再び閉眼する。「○○さん!聞こえますか?」と声をかけると「あー」「うう」と声を発するが、単語レベルではない。手足を動かすように指示すると反応はなく、痛み刺激に対しては伸展反応を示す。【答え:GCS7(E3V2M2)】

問題点と課題

GCS(Glasgow Coma Scale)は、開眼・言語・運動の 3 つの尺度を別々に評価し、その 3 つの得点の和の 13 段階で評価するため、JCS と比較すると複雑となります。

また、開眼状態のみならず、言語機能や運動機能の評価も必要になるため、医学的知識や訓練が必要といえます。

3 要素に対して段階分けをして評価をすることもあり、JCS よりも評価に時間を要するところも課題としてあげられます。

ECS(Emergency Coma Scale)

JCS と GCS はどちらも優れた意識レベルの評価方法となりますが、それぞれ課題があることも事実であります。

これらの理由から JCS と GCS 以上に簡潔かつ正確に患者の意識レベルを評価できるコーマスケールの開発が求められ、2003 年に日本神経救急学会と日本脳神経外科救急学会の合同 ECS 委員会において新しい意識レベルの評価スケールである ECS(Emergency Coma Scale)が発表されています。

評価方法

ECS では JCS の Ⅰ 桁、Ⅱ 桁、Ⅲ 桁の大分類の構成を保持しつつ、各桁の中の子分類に工夫が施されています。

Ⅰ 桁、Ⅱ 桁については JCS では 3 段階で判定されていましたが ECS では 2 段階に簡素化、Ⅲ 桁の意識レベルは脳幹のダメージを表現する除脳硬直、除皮質硬直を含む 5 段階に細分化されています。

Ⅲ 桁を 5 段階とすることで意識レベルと特に相関性の高い運動機能を評価することが可能となり、覚醒の判断材料を開閉眼のみではなく、「自発的な開眼、発語または合目的な動作のうちどれか一つを観察できること」と定めたことが ECS の優れた部分と評価されています。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!この記事では「意識レベルの評価」をキーワードに考えを述べさせていただきました。

意識レベルの評価は救急医療において極めて重要であり、JCS・GCS・ECSといったスケールが使用されます。JCS は日本で開発され、開眼の有無に基づく簡便な評価法ですが、主観的要素や限界もあります。

GCS は開眼・言語・運動の 3 要素で構成され、詳細な評価が可能な一方で、習得には訓練が必要です。

2003 年に開発された ECS は、両者の課題を踏まえ、より簡潔かつ正確な評価を目指しており、特に運動反応や脳幹障害の判定に優れています。

こちらの記事が日常の診療に少しでもお役に立つと幸いです。

参考文献

  1. 髙橋千晶,奥寺敬.新しいスケール:Emergency Coma Scale の開発の経緯と有用性の検討について.Journal of the Japanese Council of Traffic Science.Vol.16,No.1,2016.
  2. 卜部貴夫.意識障害.日本内科学会雑誌.第99巻,第5号,平成22年,p168-175.

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