協調性検査(協調運動機能評価)のやり方・判定【フローと図解で即実践】
協調性検査(協調運動機能評価/協調性テスト)は、運動の滑らかさ・正確性・タイミングを観察し、小脳性/感覚性(脊髄・末梢)/前庭性/大脳性の失調を素早く見極めるためのベッドサイド必須スキルです。本稿では鑑別フロー → 代表的検査の要点 → 図解(指鼻・膝打ち・踵膝) → 判定のコツまでを 1 ページで完結します(関連語:小脳性失調 評価/反復拮抗運動障害)。
協調運動機能とは/評価の意義
協調運動機能は、多関節・多筋の活動が秩序立って協働し、運動を円滑・正確・適時に遂行する能力です。主に 小脳系・固有感覚系(後索)・前庭系・錐体/錐体外路系が関与し、いずれかの破綻は「運動失調」を呈します。協調性の低下は転倒や ADL 低下に直結するため、ベッドサイドで短時間に鑑別して、訓練設計(視覚/足底入力の重みづけ、固視訓練、タイミング練習など)へ即時に橋渡しすることが重要です。
協調性検査の評価フロー(鑑別の道筋)
| ステップ | チェック | みるポイント | 主な示唆 | 次アクション |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 深部感覚(位置覚・振動覚)+ ロンベルグ | 閉眼で体幹動揺↑/偽性アテトーシス | 感覚性(脊髄・末梢) | 視覚代償・足底入力最適化・体性感覚再教育 |
| 2 | 失調出現部位 | 体幹優位(四肢は保たれる)か | 前庭性 | 固視・前庭眼反射訓練・頭位変換の評価 |
| 3 | 四肢協調検査の質 | 測定過大/運動分解/動作時振戦/反復障害 | 小脳性/大脳性 | タイミング学習・誤差フィードバック・課題難易度調整 |
代表的な協調性検査(要点早見表)
日常で頻用する検査を目的/手順の要点/異常所見/判定のコツで整理しました。
| 検査 | 目的 | 手順(要点) | 異常所見の例 | 判定のコツ |
|---|---|---|---|---|
| 指鼻試験 | 上肢の測定能とタイミング | 検者の指 ↔ 自鼻を交互にタッチ | 測定過大/過小、動作時振戦、遅延 | 距離を変化させ空間認知も観察 |
| 膝打ち試験 | 反復拮抗運動 | 手掌/手背で膝を交互に叩く | 反復変換運動障害、協働収縮不能 | ゆっくり→速くで規則性を比較 |
| 踵膝試験 | 下肢の測定能 | 踵を対側膝に当て→脛上を足関節まで滑走 | 測定異常、分解、振戦 | 閉眼で悪化=感覚依存、視覚で改善を確認 |
| 向こう脛叩打 | 下肢のタイミング/強度制御 | 一側踵で反対側脛前面を反復叩打 | 測定障害、リズム不良 | 1–2 回/秒の速度指示で困難性評価 |
| Arm Stopping Test | 終末到達の誤差制御 | 肘伸展→耳朶へタッチ | 過大/過小測定 | 片側差と学習の可否を確認 |
| 線引き試験 | 視覚下の距離/方向制御 | 平行線間に横線を描画 | 過大/過小、振戦 | 非利き手比較で習熟影響を除外 |
図解:指鼻試験のやり方・評価ポイント
図解:膝打ち試験のやり方・判定
図解:踵膝試験のやり方・異常所見
判定のコツとピットフォール
- 速度依存性:低速で正常でも高速で崩れることあり。速度漸増で顕在化。
- 条件の統一:姿勢・支持基底面・視覚条件を固定。再評価は同条件で。
- 体幹 vs 四肢:体幹のみの失調=前庭性を示唆。四肢の明確な測定異常=小脳性を優位に考える。
- 閉眼悪化:ロンベルグ陽性や偽性アテトーシスは感覚性の重要サイン。
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ミニ FAQ(協調運動機能評価)
指鼻試験と鼻指鼻試験の違いは?どちらを優先する?
鼻指鼻は検者の指 ↔ 自鼻の往復で測定能+空間認知を評価しやすく、指鼻は単発到達で終末誤差を把握しやすいです。まずは距離変化と速度漸増を組み込み、必要に応じて両者を併用します。
反復拮抗運動障害(dysdiadochokinesia)の判定のコツは?
膝打ち試験でゆっくり→速く(例:60→90→120 bpm)にテンポを上げ、規則性の崩れ・左右差・協働収縮を観察します。視覚のペーシングで改善する場合はタイミング依存の要素が強いと考えられます。
閉眼で悪化する失調は「小脳性」ではなく「感覚性」と考えるべき?
はい。閉眼で著明に悪化し、開眼で改善する場合は感覚性(後索・末梢)が示唆されます。小脳性は開閉眼で大差なく、測定過大/運動分解/動作時振戦が目立つ傾向です。判別に迷うときはロンベルグ試験+四肢協調検査を組み合わせます。
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:神経リハ(小脳性失調・感覚性失調)、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、摂食・嚥下
参考文献
- 望月 久. 協調性障害の理学療法 ―バランス能力の評価・改善への考え方―. 理学療法の歩み. 2007;18(1):8–13. J-STAGE / CiNii
- 水澤 英洋. 小脳失調症の病態と治療 ―最近の進歩―. 日本内科学会雑誌. 2012;101(3):669–674. J-STAGE
- 河島 則天. 感覚性運動失調に対するリハビリテーションアプローチ. Jpn J Rehabil Med. 2019;56(2):110–115. J-STAGE / PDF
- Klockgether T. Milestones in ataxia. Mov Disord. 2011;26(6):1134–1141. Publisher


