心理・メンタル評価まとめ|抑うつ・不安尺度5つの使い分け

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心理・メンタル評価|抑うつ・不安尺度は「何を見たいか」で選ぶ

リハ場面で気分の落ち込み、不安、意欲低下がみられたとき、最初に決めたいのは「どの尺度が有名か」ではなく「何を確認したいか」です。不安と抑うつを分けて見たいのか、抑うつ症状を経時的に追いたいのか、高齢者を対象にするのかで候補は変わります。

このページでは、HADS/PHQ-9/QIDS-J/GDS-15/SRQ-Dを目的別に整理し、「この場面ならどの尺度へ進むか」を判断できる形にまとめます。各尺度の細かな採点方法ではなく、心理・メンタル評価の入口を決めるためのハブです。評価全体から探したい場合は、評価ハブを確認してください。

心理・メンタル評価の選び方ガイド。目的に応じてHADS、PHQ-9、QIDS-J、GDS-15、SRQ-Dを選ぶ考え方を整理した図版
図:心理・メンタル評価は、尺度名ではなく「何を評価したいか」から選びます。

結論|抑うつ・不安の5尺度を目的から選ぶ

尺度選択では、対象者の疾患名だけでなく、不安も評価するのか、抑うつをどこまで詳しく見るのか、対象年齢、継続評価の目的を先に決めます。「どれが最も優れているか」ではなく、「今回の目的にどれが合うか」で選ぶのが基本です。

※スマートフォンでは表を左右にスクロールできます。

心理・メンタル評価5尺度の目的別使い分け
見たいこと 候補 選びやすい場面 確認したい点
不安と抑うつを分けて確認したい HADS 身体疾患を有する患者で、不安と抑うつを二軸で整理したい場面 合計だけではなく、不安と抑うつを分けて確認する
抑うつをスクリーニングし、その後も追いたい PHQ-9 初回の拾い上げから経時変化まで、同じ尺度で確認したい場面 睡眠・食欲・疲労など、身体状態と重なる症状も背景と合わせて解釈する
抑うつ症状の重症度や症状領域の変化を見たい QIDS-J 抑うつ症状を複数の領域から整理し、変化を追いたい場面 正式な採点方法に従い、単純な項目合計として扱わない
高齢者の抑うつをスクリーニングしたい GDS-15 高齢者・老年期の抑うつ症状を確認する場面 認知機能や回答可能性も確認し、点数だけで診断しない
施設ですでにSRQ-Dを運用している SRQ-D 抑うつのスクリーニングとして既存の院内・施設運用がある場面 SRQ-DとSRQ-DⅡを混同せず、使用する版と利用条件を確認する

1つの尺度ですべてを評価する必要はありません。一方で、目的が同じなのに毎回尺度を変えると経時比較が難しくなるため、継続評価では使用尺度をそろえることも重要です。

迷ったときの選び方|まず「不安も見るか」を決める

尺度名から選ぼうとすると迷いやすいため、最初に今回何を知りたいのかを決めます。大まかには次の順で整理できます。

  1. 不安と抑うつを分けて見たい:HADSが候補になります。
  2. 抑うつを入口から経時的に追いたい:PHQ-9が候補になります。
  3. 抑うつ症状の重症度や症状領域を詳しく追いたい:QIDS-Jを検討します。
  4. 高齢者の抑うつスクリーニングが主目的:GDS-15を検討します。

SRQ-Dをすでに使用している施設では、既存の運用を踏まえて選択できます。ただし、名称が似ているSRQ-DとSRQ-DⅡを同じ尺度として扱わないことが重要です。使用している版や利用条件を確認してから運用します。

HADS|不安と抑うつを二軸で整理したい

HADSは、不安と抑うつを分けて確認したい場面で候補になります。身体疾患を有する患者を対象として開発された尺度で、リハ場面でも「不安が前景なのか、抑うつが前景なのか」を共有したいときに整理しやすいのが特徴です。

一方で、得点だけから診断や介入の可否を決めるものではありません。疼痛、息切れ、睡眠、環境変化などの背景と、離床・自主練習・活動参加への影響を合わせて確認します。

PHQ-9|抑うつの入口評価から経時変化まで追いたい

PHQ-9は、抑うつ症状をスクリーニングし、その後の変化も同じ尺度で追いたい場面で候補になります。初回の拾い上げと継続評価を一本化したいときに使いやすい尺度です。

ただし、睡眠、食欲、疲労など、身体疾患や治療の影響でも変化しうる症状を含みます。リハ場面では、点数だけでなく疼痛、不眠、呼吸困難、活動量、薬剤変更などを併記すると解釈しやすくなります。

QIDS-J|抑うつ症状の重症度と症状領域を追いたい

QIDS-Jは、抑うつ症状の重症度と経時変化を、複数の症状領域から確認したい場面で候補になります。厚生労働省の資料でも、抑うつ症状の重症度を評価する尺度として示されています。

QIDS-Jでは、各設問の点数をそのまま単純合計するわけではありません。正式な採点方法を確認し、継続評価では同じ方法で結果を比較します。

GDS-15|高齢者の抑うつを確認したい

GDS-15は、高齢者の抑うつ症状をスクリーニングしたい場面で候補になります。老年期を対象として尺度を選びたい場合に、まず検討しやすい選択肢です。

ただし、高齢者であれば機械的にGDS-15を選ぶのではなく、質問内容を理解して回答できるかも確認します。認知機能やコミュニケーション能力の影響が大きい場合は、尺度得点だけではなく観察や他職種からの情報も合わせて判断します。

SRQ-D|すでに施設運用がある場合は版を確認する

SRQ-Dは抑うつ症状のスクリーニングに用いられてきた尺度で、すでに院内・施設で標準化されている場合は選択肢になります。

注意したいのは、SRQ-DとSRQ-DⅡの扱いです。東邦大学医療センター大森病院の案内ではSRQ-DⅡについて使用許諾窓口が示されているため、名称だけで判断せず、実際に使用する版、入手方法、利用条件を確認してください。

スクリーニング尺度は診断そのものではない

心理・メンタル評価で最も避けたいのは、「点数が高い=うつ病」「点数が低い=問題なし」と機械的に判断することです。これらの尺度は、症状を共通の枠組みで整理し、必要な評価や支援につなげるために使用します。

リハ場面では、尺度得点に加えて、疼痛、睡眠、息切れ、疲労、薬剤変更、生活イベント、環境変化などを確認し、さらに離床・自主練習・ADL・IADL・活動参加へどのような影響が出ているかまで共有すると、結果を支援につなげやすくなります。

点数化より安全確認を優先する場面があります。
「死にたい」「消えたい」などの訴え、自傷行為、自殺の具体的な計画、急激な精神状態の変化など、安全上の懸念がある場合は、合計点だけで判断せず、施設の手順に従って主治医・看護師・精神科や心理職などへ速やかに共有します。

尺度を選んだ後|正式な実施方法を確認してから評価する

尺度が決まったら、次はその尺度が想定する実施方法・回答方法・採点方法を確認することが重要です。すべての心理尺度を同じ方法で読み上げたり、回答を補助したりできるわけではありません。

  • 尺度名と版を確認する:類似した名称や改訂版を混同しない
  • 正式な実施方法に従う:自己記入、質問方法、記入補助などを独自に変更しない
  • 経時比較では条件差を記録する:回答方法、補助の有無、身体状態など前回との違いを残す
  • 得点だけで終わらせない:背景とリハへの影響を合わせて共有する

尺度を選んだ後の「前提確認 → スクリーニング → 共有 → 再評価」という具体的な運用は、抑うつ評価の流れで詳しく整理しています。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。

Q1. 院内で1つだけ標準化するならHADSがよいですか?

一律にHADSが最適とはいえません。不安と抑うつを分けて確認したいならHADS、抑うつの入口評価から経時変化まで追いたいならPHQ-9、高齢者の抑うつスクリーニングならGDS-15など、まず評価目的から決めます。

Q2. スコアが高ければ、うつ病と判断してよいですか?

尺度得点だけで診断は確定できません。得点は症状を整理する情報の1つとして扱い、本人の訴え、経過、身体状態、生活背景、多職種からの情報などと合わせて解釈します。必要に応じて医師や専門職による評価へつなげます。

Q3. 再評価は1週間・1か月などに固定したほうがよいですか?

すべての尺度・対象者に共通する一律の再評価間隔は設定せず、尺度が想定する評価期間、症状の変化、治療・支援の変更、評価目的、施設の運用を踏まえて決めます。経時比較では、前回と異なる条件があれば、その違いも記録します。

Q4. 自己記入が難しい患者では、読み上げて実施してよいですか?

尺度ごとに標準的な実施方法が異なるため、まず各尺度の正式な実施要領を確認します。読み上げや記入補助を独自判断で加えるのではなく、許容される方法を確認し、実施条件が異なる場合は記録に残します。

次の一手|尺度を選んだら運用へ進む

このページで尺度の候補を決めたら、次は「どう実施し、どう共有し、どう再評価するか」を整えます。


参考文献

  1. Zigmond AS, Snaith RP. The Hospital Anxiety and Depression Scale. Acta Psychiatr Scand. 1983;67(6):361-370. doi: 10.1111/j.1600-0447.1983.tb09716.x. PubMed: 6880820
  2. 八田宏之, 東あかね, 八城博子, 他. Hospital Anxiety and Depression Scale日本語版の信頼性と妥当性の検討. 心身医学. 1998;38(5):309-315. doi: 10.15064/jjpm.38.5_309
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  6. Yesavage JA, Brink TL, Rose TL, et al. Development and validation of a geriatric depression screening scale: a preliminary report. J Psychiatr Res. 1982-1983;17(1):37-49.
  7. 東邦大学医療センター大森病院 心療内科. 当科作成の東邦大式抑うつ尺度(SRQ-DⅡ). 公式ページ

著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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