立ち上がり動作分析|30秒観察と図版・記録シート

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立ち上がり動作分析|30 秒観察と 4 フェーズで迷わない( Sit to Stand )

立ち上がり( Sit to Stand )の動作分析は、上手いフォーム探しではなく、どの相で崩れたかを短時間で決める作業です。新人 PT / OT / ST や、申し送り・カルテの言葉をそろえたい方は、まず 4 フェーズで相分け → 30 秒で観察 → 1 行で記録の順に固定すると、評価と介入がつながります。

本記事は、立ち上がりの観察ポイントを現場で言語化するページです。5 回法や 30 秒法の点数・基準値を詳しく見るページではなく、側面 20 秒→正面 10 秒の観察ルーチン、よくある失敗、修正 1 手、記録テンプレ、配布用 PDF までを 1 ページで整理します。

同ジャンルで回遊して、動作分析の “型” を統一する 立ち上がりは、共通の順番(事実→仮説→次の一手)を親記事で固定すると、観察と記録のブレが減ります。

動作分析のやり方(親:型)へ

現場の詰まりどころ(先に最短導線)

まずは迷いが出やすい場所だけ先に飛べるようにしておきます(読ませるゾーンなのでボタンは置きません)。

ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方や手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。評価・記録・報告の「型」をまとめて整理したい方は、PT キャリアガイドも参考になります。

PT キャリアガイドを見る

まず結論:立ち上がりは 4 フェーズで見ると判断が速い

立ち上がりは、相分けを固定すると観察と修正が速くなります。臨床では、①準備 → ②離殿(臀部が浮く) → ③伸展 → ④再安定(立位保持)の 4 フェーズで見ると、どこで止まり、何を 1 つ変えるかが決めやすくなります。

大事なのは「筋力がない」で止まらず、条件をそろえたうえで、どの相で崩れたかを先に決めることです。立ち上がりは椅子高さ・足位置・上肢支持の影響を受けやすいので、条件固定と相分けをセットで使います。

立ち上がり( Sit to Stand )の 4 フェーズ早見(成人・臨床用)
フェーズ 目的(何ができれば OK か) 側面で見る 正面で見る
① 準備 足位置・骨盤・体幹の前提が整い、前へ出る準備ができる 足部の引き込み、骨盤前傾、体幹前傾の作り方 左右の足位置、膝の向き(内外反)
② 離殿 臀部が浮き、荷重が座面から足へ移る 前傾不足、足が遠い、踵が浮く 荷重左右差、膝が内側に入る
③ 伸展 股・膝の伸展が進み、重心が上方へ移る 体幹の戻しが早すぎないか、膝折れ・過伸展がないか 骨盤の逃げ(回旋・側方偏位)、患側回避
④ 再安定 立位で 2〜3 秒止まり、次の動作へ移れる ふらつき、膝折れ、過伸展 支持基底面の偏り、ステップで逃げる

※表は横スクロールで読めます(スマホ前提)。

立ち上がり動作分析の 4 フェーズを整理した図版
立ち上がり動作分析の 4 フェーズを、30 秒観察で見る順番に沿って整理した図です。

安全と準備(中止基準・環境・声かけ)

立ち上がりは「できる/できない」の境界でふらつきやすい動作です。ふらつき増悪、めまい、顔面蒼白、強い疼痛などがあれば中止し、まず条件を整えてから観察します。

  • 椅子高さ:低すぎると必要な前傾や下肢モーメントが増え、比較がぶれます
  • 上肢支持:肘掛け・手すり・手の位置は、毎回そろえないと所見が変わります
  • 足部条件:踵が滑る、足底が浮く、履物が不安定だと原因が「出力」ではなく「条件」になります
  • 声かけ:最初は「いつも通り立ってください」。次に「ゆっくり」など 1 つだけ追加します

30 秒観察ルーチン:側面 20 秒→正面 10 秒

見る量が多すぎると所見が散らばります。観察を 30 秒に収め、相ごとに 1 行だけ書ける形にすると、比較もしやすくなります。

30 秒観察ルーチン(側面 20 秒→正面 10 秒)
時間 視点 見る項目(最小セット) その場での 1 手
側面 0〜20 秒 矢状面 足の引き込み、体幹前傾、離殿、伸展、再安定 足を 1 足長だけ引く/椅子を 2〜3 cm 高くする
正面 20〜30 秒 前額面 荷重左右差、膝の内外反、骨盤の逃げ(側方偏位) 足幅を指 2 本分だけ広げる/視線を正面固定

※「いっぱい直す」のではなく、条件変更は 1 つだけにすると原因が追いやすくなります。

フェーズ別チェック表(見る→書く→確かめる)

「できていない」ではなく、どの相で止まるかを先に決めてください。相が決まると、仮説も修正も 1 つに絞りやすくなります。

フェーズ別チェック表(臨床の最小セット)
フェーズ 観察(まず書く事実) 次に疑うこと すぐ試す修正( 1 つだけ )
① 準備 足が遠い/踵が浮く/骨盤後傾で座っている 前傾の作り方が弱い、足部条件が悪い 足を引く/坐骨に座り直す
② 離殿 臀部が浮かない/反動が大きい/膝が内側に入る 前傾不足、荷重左右差、下肢出力の偏り 「鼻を膝の上へ」1 回だけ cue/足幅を少し広げる
③ 伸展 体幹が早く起きる/膝折れ/過伸展 股関節伸展の出力不足、膝伸展への依存 体幹を起こすタイミングを遅らせる cue/軽い手支持を許可する
④ 再安定 立位で止まれない/一歩出て逃げる 支持基底面が狭い、恐怖、感覚入力不足 足幅を指 2 本分広げる/「立って 2 秒止まる」だけ指示する

よくある失敗( NG パターン )と、見落としやすい理由

現場で多いのは、「筋力がない」で止まるケースです。実際は、足部条件・前傾の作り方・荷重左右差のどれかで詰まっていることが多く、修正は小さくて済みます。

立ち上がりの “よくある失敗” OK / NG 早見(原因と対策)
NG(起きがち) 見えること(事実) 理由(ありがちな原因) まず 1 手(最短の修正)
足が遠いまま立とうとする 離殿できない/反動が増える 重心を前へ運べない(条件の問題) 足を 1 足長だけ引く(踵が滑らない環境)
前傾が作れず、体幹が起きたまま 臀部が浮かない/膝だけ前へ出る 骨盤後傾、恐怖、 cue が曖昧 「鼻を膝の上へ」1 回だけ cue
患側を避ける(左右差が大) 健側へ寄る/骨盤が逃げる 疼痛、感覚低下、出力不足 足幅を少し広げる+視線正面(まず転倒回避)
立てても止まれない 立位で一歩出る/ふらつく 支持基底面が狭い、恐怖、再安定が不足 「立って 2 秒止まる」だけ指示する

回避の手順(チェック)|原因を “条件→相→出力” の順で潰す

最短で安定させるなら、①条件(環境)→ ②相(どこで詰まるか)→ ③出力(筋・協調)の順で確認します。出力の前に条件を整えると、評価も介入もぶれにくくなります。

  1. 条件を固定:椅子高さ、足底接地、滑り、上肢支持の有無
  2. 相を決める:①準備/②離殿/③伸展/④再安定のどこで止まるか
  3. 修正は 1 つだけ:足を引く、足幅を変える、 cue を 1 つ追加、椅子を 2〜3 cm 高くする
  4. 反応を書く:できた/できないではなく、どこが変わったかを書く

記録テンプレ(カルテに残る)|事実→仮説→修正結果を 1 行で

所見が長いほど共有されません。おすすめは、相 + 事実(見えたこと)+ 仮説 + 修正結果を 1 行で残す形です。

  • 例 1(離殿):②離殿:足部が遠く前傾不足で臀部離れず → 条件要因を疑い足を引く → 離殿は成立、再安定が次課題
  • 例 2(左右差):②離殿:健側優位で患側荷重が不足 → 疼痛 / 出力不足を疑う → 足幅拡大でふらつき減、患側荷重は段階付けが必要

型の全体像は親記事へ:動作分析の記録テンプレ(親)

記録シート PDF|そのまま使える A4 1 枚版

立ち上がりの観察をそのまま残したい方向けに、条件固定・ 4 フェーズ・ 1 行要約まで 1 枚で書ける記録シートを用意しました。印刷して使いたい方は、下のボタンから開いてください。

記録シート PDF を開く(ダウンロード)

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よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 動作分析と、 5 回法・ 30 秒法は何が違いますか?

動作分析は、どの相で崩れたか、何を 1 つ変えるかを決めるための見方です。 5 回法や 30 秒法は、回数や時間でパフォーマンスを把握し、再評価で比較するための評価です。つまり、本ページは「どう見るか」、テストは「どう測るか」が主役です。

Q2. 観察は側面と正面、どちらが優先ですか?

おすすめは側面 20 秒→正面 10 秒です。側面で「準備→離殿→伸展→再安定」のどこで止まるかを決めると、正面では荷重左右差・膝の内外反・骨盤の逃げに絞って見られます。

Q3. 立てるけれど、立位で止まれません。

④再安定の問題です。まずは足幅を指 2 本分だけ広げる、次に「立って 2 秒止まる」だけを目標にしてください。歩き出しは次の課題として分けると整理しやすくなります。

Q4. 「筋力がない」で終わらせないコツはありますか?

最初に見るのは出力そのものではなく、条件(椅子高さ・足位置・上肢支持)相(どこで止まるか)です。条件を 1 つ変えただけで離殿や再安定が改善するなら、筋力だけが原因ではない可能性が高いです。

次の一手(回遊の最短導線)


参考文献

  1. Schenkman M, Riley PO, Pieper C. Whole-body movements during rising to standing from sitting. Phys Ther. 1990;70(10):638-648. doi: 10.1093/ptj/70.10.638
  2. Janssen WGM, Bussmann HBJ, Stam HJ. Determinants of the sit-to-stand movement: a review. Phys Ther. 2002;82(9):866-879. doi: 10.1093/ptj/82.9.866
  3. Etnyre B, Thomas DQ. Event standardization of sit-to-stand movements. Phys Ther. 2007;87(12):1651-1666. doi: 10.2522/ptj.20060378
  4. Mao YR, Wu XQ, Zhao JL, et al. The Crucial Changes of Sit-to-Stand Phases in Subacute Stroke Survivors Identified by Movement Decomposition Analysis. Front Neurol. 2018;9:185. doi: 10.3389/fneur.2018.00185

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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